羽根英樹のサヤ取りブログ
中期経営計画発表時のインパクト-その4-
01月08日
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて今回の検証では2022年1年間に発表された中期経営計画のデータを使ったことは既に述べました。場中発表と地方単独上場銘柄を除いた数は406件にもなり、これを全て読んで、中計で指標がどのように扱われているのかを調べるのは本当に大変です。中計には決まった形式がありませんから会社によってフォーマットがバラバラです。また特に指標には触れていない会社もかなりあります。更には例えば単純にROE7%という目標が書いてあったとしても、それは現在のROE目標に対してアップしているのかどうかを調べるために、前回の中計を調べて数値を比べるというような作業が必要になります。このようにして集計されたファクターをいくつかのカテゴリーに分けて、それぞれがどのくらいのインパクトがあるのかを調べました。
まずは「目標ROEのアップ」というファクターから見ていきましょうか。ROEは皆様ご存知のとおり、資本に対しどれだけの利益を上げているかを表す指標で、これが高いほど経営効率が良いと判断できます。当然ながら重視する投資家は多く、ROEが低いとアクティビストなどからも標的になります。それだけに中計に記載している会社も多く、他の指標には触れていなくてもROEだけは載せているという会社もあります。
しかしながら実際にグラフにすると全く振いません。直後のインパクトも少なく、その後は下がっています。中計全体の平均パフォーマンスからみても劣後しており、ROEのアップは株価に対してあまり影響を与えていないようです。推察するにこれは目標ROEのアップがあまりにありきたりで全くサプライズが無いためと思われます。少なくとも短期的にはROEアップは株価に影響しないようです。
中期経営計画発表時のインパクト-その3-
12月26日
前回、中計発表直後の寄り付き値と2日後の引け値の間にはモメンタムが働いていることが散布図を用いて理解しました。一番最初に全てのデータの折れ線グラフで、中計発表直後に買って2日後の引けに売っても少しだけ利益が出るという結果でしたよね?これを中計発表直後に上がったものだけを買えばもっと良い結果になるのでは?と思いませんか。散布図でモメンタムが働いているのは確認しましたから、きっと良い結果が出るはずです。図のグラフは中計発表直後の寄り付きで上がったものだけをピックアップして平均化したグラフです。最初のグラフより随分良くなっていますね?これなら寄り付きで買って2日後の引けで売っても1%程度の利益が出ることになります。全ての中計を買う最初の戦略に比べて平均利益はは4倍になりました。次回からは中計の内容とその後の値動きについて考察します。
中期経営計画発表時のインパクト-その2-
12月18日
次に中計発表直後の寄り付き値と2日後の引け値の関係を散布図(スキャッターグラフ)にしてみました。もし、中計発表直後に1%上がった株が2日後の引けで更に1%上がった場合、x軸y軸共に1%のところにひとつ点が打たれます。もし寄り直後に上がった株がその後も上がるというモメンタムが働いているという傾向があれば、右上の「第一象限」のところに点が集中するはずです。第一象限?中学の数学で習いましたよねw。同様に中計発表直後の寄り付きで下がった株が更に下がれば、グラフ左下の第三象限に点が打たれます。挙げた散布図は右上と左下(第一象限と第三象限)に点が多いので、中計発表後に上がった銘柄は更に上がり、下がった銘柄は更に下がるという「モメンタム」がはたらいていることがわかります。
理系の方以外(私も文系です)は頭痛が起こりそうなグラフだと思いますので、この検証では次回以降出てきませんのでご安心を
中期経営計画発表時のインパクト-その1-
12月15日
今年秋の投資戦略フェアの講演の中で中期経営計画が発表された後のインパクトについてお話ししました。しかし時間の制約から、かなり端折った内容になってしまいましたので、ブログ上で少し細かく述べていきたいと思います。
中期経営計画は、今後3年程度の期間、会社をどのように運営していくかの指針で、3年ごとに改訂している企業が多いようです。会社によっては中計発表後も定期的に進捗状況を発表するところもあります。ただし、その内容は特に決まっていないため、会社によって千差万別です。多くの会社ではROEなどの指標の目標値を設けたり、セグメントごとの目標を記載している事が多いのですが、中には目標数値などを一切掲載せず、ほぼ会社のPR誌になっている中計もあります。このような中計が発表された直後にどのようなインパクトがあるのかを調べたのが今回の検証です。検証データは2022年の1年間に適時開示情報(TDnet)に掲載されたものを収集。件数は場中に発表されたものと地方単独上場銘柄を除いた406件です。場中に発表されたものは、直後にインパクトが発生するため日足ベースでは測れない為です。
まずは全件の中計発表後のインパクトです。グラフを見ると発表直後の寄り付きから上昇し、2日後の引けでピークをつけていることがわかります。仮に中計発表後に翌日の寄りで買って2日後の引けで売れば平均0.25%ほどの利益になることがわかります。もちろんこれでは利益幅が小さいですし、全部の中計でトレードするのは現実的ではありません。
週をまたぐアノマリー
12月05日
パンローリングから出版されているシステムトレード系の本で「トレーディングシステム徹底比較」という書籍があります。この本はいろいろな主に短期トレードの戦略が本当に利益を上げているのを検証している本でいわばシステムトレードの検証データ集です。システムトレードの戦略の優劣を測る指標として「シャープレシオ」というものがあります。これは月次収益の平均を、標準偏差で割ったもので、損益曲線の平滑さを評価するのに使えます。簡単にいうとシステムがの損益が綺麗に右肩上がりになっていればシャープレシオは高くなります。いくら結果が良い戦略でも途中の波が激し過ぎれば不安定ですし、恐くて使えません。
このシャープレシオが優れている戦略が、「トレーディングシステム徹底比較」の中で紹介されています。それが「ワンナイトスタンド」という戦略です。売買ルールの詳細は本を見てほしいのですが、簡単に言えば、その週のトレンドが出ている方向に週末にポジションを取って週明けに手仕舞うというものです。この比較的単純な戦略(本に載っているルールはもう少し複雑)が機能するのは、次のような投資家の心理があるといます。トレンドが出ている相場でも、①週末になると土日に起こるかもしれないイベントリスクに備えて、酒末にクローズする。②その投資家が週が明けると再びポジションを取る。このような投資家行動が一種のアノマリーを作ってしまうと考えられるのです。
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