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『信用取引入門――基礎知識から投資戦略まで』
2003年11月改訂版発行
ISBN 4-7759-9006-3 C0033
定価 2,940円 (本体 2.800円+税5%)
A5判 306ページ
著者 楠 雄治、福永博之、倉林るみ子
目次 | 立ち読み (PDFファイル.502KB) | 改訂版の補足内容について | 正誤表
あなたはまだ信用取引をしていないのか?
下落相場でも打つ手がある!
多くの投資家は誤解している!
信用取引なら投資選択の幅を広げることが可能なのだ!
信用取引の究極の教科書!
複雑なしくみの信用取引をやさしい言葉で解説。
このわかりやすさは、まさに「入門書」として最適です。
本書ではわかりやすさを重視し、いくつかのポイントで工夫をしました。
- 用語の特殊性や複雑で十分に理解し切れなかった部分を丁寧に解説
- 図解を重視し、概念としてつかみやすくする
- 信用取引を加えることで投資戦略に幅が生まれる。今後の投資戦略への信用取引を有効に活用できるよう、特にリスクヘッジ機能としての取引手法の解説に重点をおく
- 投資家の質問や課題を反映し、実際の取引に際して遭遇するプラクティカルな点も踏まえる
- 最近よく見かけられるようになった信用取引を解説した書籍とは一線を画して、「いかに儲けるか」とか「相場の教訓」的な解説に重点をおいた内容ではなく、個人の投資戦略の中で「いかに有効に活用するか」に焦点をあてる
- 2003年から申告分離課税一本になったことを受け、改訂版では「新証券税制」について加わりました。
New!!
2002年2月、日経平均は1万円割れまで下落し、日本の市場は、歴史的な下落傾向を見せた。これから景気がよくなるかどうかだけにかぎらず、何が起こるかは予測不可能な21世紀のはじまり。この先行き不透明感の状況下において予想可能なことと言えば、"予想通りには進まない"ということだけだろう。
専門家の「株式市場は底を打った」という予想に促されては株を"買い"、専門家の「地価は下げ止まった」という言葉に後押しされては不動産を"買う"。振り返ってみれば、バブル崩壊後の10数年間、日本の個人投資家は同じことを何回も繰り返してきた。こうした"専門家"たちの予想はほとんどあてになってこなかったのが実情であろう。
この株価下落トレンドの中、ごく普通に株を買うだけでは短期投資だろうが長期投資だろうが、うまくいくわけはない。むしろ投資などせず、金融資産をすべて郵便貯金に預けたりタンスに入れておいたほうが損をしないことを理由に賢明と言える。
もちろん、じっと我慢をして買った株が上がるの待ち続けるという方法、いわゆる長期投資は間違いではない。しかしバブル以降のように右肩下がりの日本の株式市場では、長期投資は相当な勇気と辛抱強さが必要だったはずだ。1990年代以降の日本の株式市場を冷静に振り返れば、株式を買い持ちするだけの長期投資はかなりハードルの高い投資法のひとつでだったといえるだろう。
こんな状況下、日本の株式市場では手をこまねくしかないのだろうか?
答えはノーだ。いくつかの方法があるが、その方法の中でも有力なのが「信用取引」である。信用取引は、そのルールと仕組みさえ理解しておけば、個人投資家の株式投資を強力にサポートしてくれるのだ。
買い(ロング)と売り(ショート)を自在に選択できること。つまり上げ相場であろうと下げ相場であろうと、どちらでも利益を得るチャンスがある!
リスクヘッジをしたり、レバレッジ機能を使ってハイリターンを追求したり、投資の選択肢を増やしてどんなマーケットにも対応できるのが、信用取引の最大の魅力なのだ。
3−5 税金と決済
新証券税制とは
2003年から、新証券税制がスタートしました。その主な柱は次の3点です。
- 申告分離課税に一本化(源泉分離課税の廃止)
従来個人投資家でしばしば利用されていた源泉分離課税制度が廃止され、申告
分離課税に一本化されました。
一応、申告分離課税について簡単に説明しましょう。申告分離課税とは、他の証
券取引との利益や損失と通算して、確定申告をする方法です。給与所得や配当所
得などの他の所得とは「分離」して「課税」されます。
毎年1月から12月分の株式売買について、原則、投資家が自分で税額を計算し、
翌年3月15日までに確定申告しなければならないということです。
例えば、年間の株式取引の損益を通算して、利益が出た場合、現時点では、その
10%が徴収されます。当然、通算して損失の場合は、税金はかかりません。
- 基本税率が20%。当面は2003年1月から2007年12月末までの期間限定の10%
証券取引に対する基本税率が従来の26%から20%に引き下げられました。さらに
その20%も、2003年1月から2007年12月末までの期間限定で、10%(所得税7%・住
民税3%)となっています。2008年からは基本税率に戻り20%(15%・5%)となる予
定です。
- 特定口座制度の開始
源泉分離課税が廃止され、申告分離課税に一本化されたことで、個人投資家に
とっては年間で利益が出るとわざわざ税務署に確定申告に行かなくてはならなく
なります。そこで、そうした納税の利便性を上げるため、証券会社が納税を代行
することができる制度が特定口座です。
個人投資家は一般口座と特定口座を選択する必要があります。とは言え、改めて
特定口座の申し込みをしなければ一般口座となり、基本的に株式投資で利益が出
ると確定申告の必要があります。特定口座を申し込むと、従来と同様に税の売却
時に源泉徴収ということもできるのです。
新証券税制のもとでの優遇措置
この新しい証券税制ではいくつかの特例措置が組み込まれています。その内容を
よく吟味して、自分に有利に利用しましょう。
- 譲渡損失の繰越控除
これは2003年年1月からの恒久措置で、年間の株式譲渡益との通算で損失が出た
場合、その損失を翌年の譲渡益から差し引きことができます。確定申告を条件に
翌年以降3年間にわたって可能となります。
例えば、1年目に100万円の損失が出て、2年目に50万円の利益とすると、2年目は
まだ50万円の損失として計算され、2年目単独では利益が出ていてもこの措置を
利用すれば未だ損失が出ているものとして税金はかからないということです。
- 購入額1000万円までの非課税措置
2001年11月30日から2002年末までの間に購入して継続保有し、2005年〜2007年末
までの3年間の間に譲渡した場合、購入額(取得対価の額。手数料等が含まれな
い)が1000万円となるまでのものの譲渡益は非課税となります。
購入額が1000万円を超える部分に対する譲渡益は課税されます。期間限定の暫定
措置です。一度購入した株式を最低でも2年超保有することが条件となります。
- 一般口座でのみなし取得費の特例
2003年1月〜2010年末までの8年間の譲渡が対象となる期間限定措置で、2001年9
月30日までに取得した上場株式等を上記期間に譲渡した場合の取得費の額を、納
税者の選択により2001年10月1日における終値の80%とすることが可能です。 こ
れにより、実際の取得費と2001年10月1日における終値の80%で税金上優位な取得
費を選択することができるようになりました。
- 上場株式等の配当(大口株主以外)
上場株式等の配当金への課税方法は源泉徴収方式に一本化され、20%に統一され
ました。確定申告が不要となるとともに、その20%については、2003年4月から
2008年3月末までの期間限定で、10%として優遇されることになりました。ただ
し、個人の大口株主(発行済株式総数5%以上を所有している株主)については、
20%の源泉徴収後、確定申告が必要です。
正誤表
本書「信用取引問題集」に誤りがございました。訂正してお詫びいたします。
92頁 14行目
(誤) 20万円
(正) 15万円
221頁 9行目 Q12
(誤)「このケースで委託保証金を現金で80万円預け入れたとき、許容できる評価損」
(正)「このケースで委託保証金を現金で60万円預け入れたとき、許容できる評価損」
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【週間東洋経済 2002年12月21日号】
「経営者・エコノミスト・アナリスト50人が選んだベスト経済書100」の本誌111頁で、『信用取引入門』が第76位に選ばれました。
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