「商品先物市場」98年10月号掲載

 小豆相場の天井についての考察

株式会社三忠 金野秀樹(konno@sanchu.co.jp) 


 相場の世界には「天井三日」と言う言葉がある。天井と言うのは買い相場の絶頂で、「黙って買っていれば誰でも儲かるのではないか。」と錯覚を起こす事がある。私自身も罫線、場帖、あるいは黒板を見ながら、そう言う錯覚を受ける時があるが、そう言うときが天井である事の方が多い。そう言う体験は印象に残るので、確かに「天井三日」と言うイメージはあるが、実際にはどうなのであろうか。
 林輝太郎氏によると「小豆相場は、あらゆる相場の中でも、最も相場らしい値動きをすると言われている。それは米相場があった時代から言われていることだ。」。こういう背景があるために、小豆相場には根強い人気があるのであろう。やはり、小豆相場の天井について興味が持たれる。
 「天河サヤ線」では、天井圏でのサヤの動きは「好況の逆ザヤ−同ザヤ−前途悲観の逆ザヤ」と言う流れを説明している。しかし、「歴史は繰り返す」と言う、テクニカル派のコンセプトに基づくならば、理論だけではなく、過去の検証をしてこそであろう。
 天井についての考察は色々な方法があると思うが、今回は、1980〜98年前半のデータを使い、サヤ(限月間の値段の差)と季節についての考察を中心にした。もともと天井についての考察は「売り」の為のものなので、売買に繋げることが出来なければ評論家の論文に終わってしまう。最終的には「こういうパターンになったら、売り場探し」と言う所まで探りたい。

・天井の特徴

 まず、期間中の天井をピックアップしたが、グラフを見ての判断なので、私の主観的な部分がある点を留意していただきたい(表1)。

表1 小豆相場の天井

サヤ
構成期間(月)
1980年8月

1
1981年9月
逆-順
1.5
1982年2月
順-逆
1
1983年7月
順-逆
1
1984年6月

8
1985年6月

1〜3
1986年8月

1
1987年12月

3
1988年6月

1
1989年5月
逆-順-逆
1
1990年5月

1
1992年12月

6
1993年9月
順-逆
1
1994年3月

3
1995年1月

7
1996年12月

2
1997年10月
順-逆-順
1
1998年2月

3

 期間中、4月と11月には天井が無かった。
 そこで、便宜的に12〜3月のものを春の天井、5〜10月のものを天候相場の天井とする事で、以下の特徴を見ることが出来た(表2)。

表2 天井圏のサヤ

春の天井
天候相場の天井
 計 

0
4
4

6
2
8
転換
1
5
6
 計 
7
11
18

・春の天井

 殆どが逆ザヤでの天井構成であった。サヤ転換している年もあるが、順ザヤから逆ザヤに転換しての天井であるため、実質、逆ザヤでの天井と言っても良いであろう。
 この春の天井ではサヤ出世しての天井構成となるため、期間も長いときでは半年にも及ぶことがある。

・天候相場での天井

 サヤ転換しながらの天井構成となったケースが約半数を占めるが、「サヤ変わりに注意」と昔から言われていることの証明になろう。
 6月以降の順ザヤ天井については、新穀・旧穀の格差によるものである可能性もあったが、旧穀限月のみで比較しても順ザヤであったため、実質的にも順ザヤと判断して問題ないであろう。この順ザヤでの天井は、天候相場で人気が相場を持ち上げるいる事の表れであろう。
 逆ザヤでの天井が2回あるが、「好況の逆ザヤ」で、サヤ出世しての高納会する流れが延長され、6月に天井になったケースが一つ(84年)と、もう一つは、1番天井を抜いていく上昇でありながら先限が伸びきれずに「前途悲観の逆ザヤ」と成っての天井(86年)であった。
 天候相場での天井構成は、「天井三日」の如く、1ヶ月以内の場合が多い。2〜3ヶ月に及ぶ場合もあるが、2番天井を取りに行くパターンの時で、やはり底値圏とは違う値動きの様だ。

・売り方を考える

 どちらの場合でも、天井を売り上がるよりも、確認後に売り玉を建てる事を基本方針とする。

・春の売りは当限に注意

 春の天井圏では急落があって、一見天井打ちの様に見せかけても、当限が崩れない内は再び当限高に引っ張られる展開に成ることがある。逆ザヤの当限が納会するか、「高値が荷を呼んだ」結果で当限が崩れるか、のいずれかで逆ザヤが解消されるまでは、本玉を入れての売り方針は待つべきであろう。また、逆ザヤが解消されてからも、「夢よ、もう一度。」の急反発があることもあるので、売り安心とはしないで、流れに注意すべきだ。ただ、天井を打った相場は、底打ちするまでは下げ相場である事から、大局で売り方針で良いので、資金配分と建ち玉の操作を間違えなければ、大きな失敗は無いであろう。

・天候相場での売りは流れを重視

 サヤ変わりがあれば、それは天井構成上の重要な指標になるであろう。ただ、「サヤ変わり、即、売り」では無く、「サヤ変わりは売り出動準備」としたい。
 その他に関しては、特筆すべきサヤの変化の特徴が見当たらないため、流れを重視であろう。
 基本的には、天候相場の売りでは場帖と罫線によって相場の流れを捉える事を、最重要視したい。
 限月の選択としては、期先限月3本の内の高い限月を売りの限月とするのが良い。と言うのは、ひと相場3ヶ月と言うことを考慮に入れれば、期近限月を売っても下げ途中で納会してしまう可能性があるからだ。

 さて、98年8月は、「逆−順−逆」のサヤ転換と成っている。これは天井構成の可能性を感じる。ひと相場3ヶ月と言うことと、不作(あるいは不作人気)の年は遅く底を付けると言うことを踏まえると、11月前後までは売り方針となる。もちろん、相場に絶対は無い。最新の情報・展望については、弊社のホームページの「相場展望」のコーナーを参照頂きたい。


(記 8月20日)


※以上の記事は、投資日報社発行の月刊誌「商品先物市場」に掲載されました。
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