「商品先物市場」99年2月号掲載

 小豆相場における損切りについて考える

金野秀樹(h-konno@fa2.so-net.ne.jp) 


 「引かれた玉ほど可愛がる」と言われている。「引かれ玉なんて、早く切ってしまった方が良いに決まっている。」と言うのは、相場を張ったことがなく玉を持ったときの心理を知らない者か、逆に損切りを身に付けた者の意見だ。昔から損切りが出来ない心理的な部分を克服するためとでも言おうか、買って底抜けしたときの対処法が色々と考えられてきた。

  1. 損切って、建ち玉無しにする。その後、底打ちを待って買い直し。
  2. 両建てにするか、フタをするかして、その後、
    a. 底打ちの判断で、フタを外す。
    b. 底打ちの判断で、フタを外すと同時に新規に買いを入れる。
  3. 逆張りで買い下がる。
  4. 塩漬けにして、我慢する。
  5. こらえて、底打ち後に買い増しする。
 細かいものを考えれば、もっと複雑なものもあるのだが、主なものを挙げるとこうなるであろう。1番目意外は、引かれ玉を可愛がる対処法である。問題は、実際の相場では、これらが通用するかだ。
 グラフに、底抜けと不発に終わった例を挙げてみた。底型を形成して上げ始めた時に先限であった限月の一代月足である。これは、「下げ相場の後に一応の2番底を形成して買うであろうフォームであるが、失敗となったケース」である。これを元に、上記の対処法について考えてみる。



 『やはり、手仕舞いが良さそうだ。』

 助からないケースでは、買い場が来なかった事により、両建てしても結局は両落ちする事になってしまう。もちろん、塩漬けとナンピンは論外と言うことが分かる。
 助かったケースは、どうであろうか。塩漬けとナンピンでは、2000円以上の値洗い損に耐えなければならないケースがある。心理的な要素も含めると、底練りで時間を掛けて買い玉を持ち続けていた場合は疲れてしまい、上げ相場が始まって、これから本当の上昇があると言うときにヤレヤレで手仕舞ってしまう事が多い。何と言っても、そのまま上昇しないで終わる可能性も考慮すべきであろう。
 両建ては、外し方を上手くやれば成功する場合がある。手数料を気にしなければ、底打ちしないときは両落ちすれば良い。しかし、心理的な部分の話を言えば、玉がある事によりバイアスを受けてしまうことも忘れてはならないだろう。冷静な判断が難しくなるのだ。売り玉を外したときに、どうしても高値の買い玉が意識される。もうひとつ挙げれば、建ち玉を複雑にすると、余程慣れた者でも後の対処が難しくなる。
 上記のことを踏まえると、「手仕舞いして(投げて)、次の出番を待つ」のが最良と考える。損切りについてのアドバイスとしては、「建てる時点で損切りが出来るくらいの少枚数に抑える」ことを述べておく。1枚、2枚で売買を練習すると、なるほどと感じるものである。最後に、損切りについての格言を挙げて、結びとしたい。


『悪い建ち玉は直ちに消せ』林輝太郎氏

(記 12月10日)


※以上の記事は、投資日報社発行の月刊誌「商品先物市場」99年2月号に掲載されました。
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