特別連載
p%天底利用リズム取り
Lその2コ
滝沢隆安
1〜10%天底の性質(1)
阪神大震災,住友銀行の不良債権処理,東京協和・安全信用組合の乱脈経営,英国ベアリングズ社のデリバティブの失敗,メキシコから始まった国際的通貨混乱による極端で急激なドル安円高,それに加えて3月決算期の益田し,政局の不安・“…。悪材料に事欠きません。今年は1月下句から,株式相場が荒れています。株式市場は昨年からの個人投資家離れ。と思ったら,突然の個人投資家の再参入。と思ったら,またまた個人投資家離れ。怖いやら,手を出してみたいやら一一。p%天底を参考にしながら反騰反落を期待し,利の薄い日計り筒内みたいなことを何回かやってみました。まことに興味が尽ぎません。
前回,立花式リズム取りが,1〜5%天底あたりを売買の判断基準にしているような気がする,と書きました。そこで,どの程
度の%の天底(以下,p%天底のpを連と呼びます)がリズム取りに適当か,まず検討してみます。図1をご覧ください。 1994年(1994/1ン4〜12/30,立会日数247日)における,FAI信用銘柄741社の株価に出現した天底抜(天井と底の出現回数の合計)です。天底率1%間隔で1〜10%まで,天底数を求めてあります。横軸は天底の出現回数,縦軸ばその出現回数だった銘柄数です。データのチラバリ方を,分布といいます。また,図1のように,…横軸にデータの大きさを取り,データの大きさごとに該当するモノの個数(度数といいます)を縦方向の棒の長さで表わした棒グ一ラフを,度数分布図といいます。図lの場合,データは1年間に出現した天底数,度数は銘柄数です。左上または右上の枠内に,総度数(図lの場合,銘柄数の合計741),天底出現回数の平均値,天底出現回数のチラバリ方の大きさを表わす尺度である標準偏差,最大の度数(銘柄数),最大と最小の天底出現回数を書いてあります。どの天底率でも,度数の分布はほぼ左右対象な山を作っています。しかし,天底率2〜8%で,奇数の出現回数が多く,偶数の出現回数が少ないのが目立ちます。これは,天底率2〜8%における1994年の天底が,底から始まり底で終わった銘柄が多かった
めです。なお,図の大きさの関係で,縦軸の目盛りの取り方が大音掛r二事〓底率ごとに違います。注意してください。署,当然ですが,天底率が大きくなるに従い,平均値と標準偏差が小さくなり,だんだん急な山になって左側に寄ってきます。天底率が小さいl%のとき,どの銘柄でも,かなりたくさんの天底が出現しています。しかし9天底率が10%ともなると,出現回数が少ない銘柄が多くなっています。1994年以前のグラフは省略しますが,1994年の天底の出現回数ば,それ以前より少し少なめです。ある天底率の天底数が少ない銘柄は9その天底率で判断する限り,大部分,株価がほとんど変化しないもの,Tがりっぱなしの∴もの,上がりっぱなしのものになります。このような銘柄は,そ÷jの天底率によるリズム取りには不向きです。リズム取りには,天hゴ;!■底の出現回数が多い銘柄のほうが向いていると思います。l年間の立会日数ば250日弱です。ウネリ取りの金言「三月また●がり60日」を考えれば,ウネリ取り向き天底数は1年間で約4回になります。リズム取りの場合,天底数はウネリ取りの場合の少なくとも2倍ぐらい,約8回程度ぐらいは欲しくなります。この点から枠内の平均値をみると,1994年の場合,天底率7%あたりが該当しています。リズム取りの場合,比較的短期間で手仕舞うことが多いため,
仕掛値と手仕舞値の値幅ばあまり大きくなりません。取引コストは仕掛値と手仕舞値の平均の約4%になりますが,前回紹介した立花氏の場合の純益は,取引コストより少なめです。天底率p%の底からの上昇率や天井からのT降車は,必ずp%以上になります。そのため,次回の天井または底までの上昇率や下降率を必ず取引コスト以上にするには,天底率を4%以上にしなければなりません。さもないと,たとえ連良く底または天井で仕掛け,次の天底で手仕舞えたとしても,取引コストを差し引げば損になる場合がててきます。立花氏のようなリズム取りの名人でも,ときどき失敗しています。取引コストを払っても,お釣りがくるようにするには,天底率を,最低でも5%以上にするほうが無難と思います。表1と表2をご覧ください。リズム取り用銘柄選択のひとつの参考資料として,天底率7%の天底抜が多かった200社(上位200社)と,ちょうど真ん中の天底数だったZ00社(中位200社)のリストを作ってみました。銘柄名を探しやすいように,コード順に並べてあります。銘柄ごとに求めた天底ば,一昨年の株価を参考にしていません。そのため,正確には,1994年の最初の木底は仮りの天底であり,本当の天底ば1993年にあったかもしれません。そこで,表lと2
の天底数は,最初の天底を除外し,2番目以降の天底数にしてあります。以後の検討も,2番目以降の天底について行います。なお,上位200社と中位200社の天底抜ば,20〜10と9〜6回です。図2をご覧ください。1994年における天底率7%の上位200社の天底の,いくつかの性質を示してあります。上段の2図は,天井からの下降車(%)すなわち100×(直前の天井値一今回の底値)/直前の天井値,および底値からの上昇率(%)すなわち100×(今回の天井値一直前の底値)/直前の底値の度数分布図です。ただし,下降率と上昇率は0.1%刻みで丸めてあります。天底率が7%でも,下降率や上昇率が10%以上の場合がたくさんあります。右上の枠内に,総度数(天井から底までの回数または底から天井までの回数),T降車または上昇率の平均値と標準偏差,最大度数(同じ下降率または同じ上昇率が出現した最大の回数),最大と最小の比率(下降率または上昇率)を示してあります。中段の2図は,天井から底までの立会日数および底から天井までの立会日数の度数分布図です。大部分の天底が,30〜40日以内の間隔で出現しています。下段の2図は,ある立会日の株価を,天底率7%で底または天井と判定するまでに掛かった立会日数の度数分布図です。大部分の天底が,20日後以内に天底と判定されていますc
図3をご覧ください。図2と同様に,1994年における中位200社の天底率7%の天底のいくつかの性質です。図2と図3を見ながら,上位200社と中位200社の天底の性質を比較してみてください。しかし,比較しにくいと思います。比較しやすくするにば,累積相対度数分布図というものを作ると便利です(「相対」は,「ァィタィ」ではなく,「ソウタィ」と読みます)。そのためには,まず,次のような手順で,累積相対度遡1重圭を作ります。簡単な例題で作り方を説明します。いま,下表のように,データがl〜8の度数が1,5,7,10,…,1だったとします。まず,累積度数を計算します。最初の累積度数は最初の度数と同じ値にし,次ば左から順に,前の累積度数に今の度数を加えて今の累積度数にします。したがって,最後の累積度数は必ず総度数になります。次に,累積相対度数(%)を,100×累積度数/総度数として全部計算します。
累積相対度数分布表(例題)
データ12345678度数1571015741累積度数16132338454950累積相対度数(%)2.012.026.046.076.090.098.0100.0
上記の例題は,データが小さい度数から大きい度数ヘ,順に累
積しています。このような順を塾といいます。昇順の累積相対度数は,総度数に対して,データがある値以下になる度数の割合を表わします。なお,データの大きい度数から小さい度数へ累積する場合ば,降順といいます。一累積相対度数分布表ができたら,横軸にデータを,縦軸に累積相対度数の点を取り,点を順に結びます。この折れ線を,累積相対度数分布図といいます。図4をご覧ください。上段の2図は,天井から底までの下降率と,底から天井までの上昇率の累積相対度数分布図(昇順)です。上位200社の折れ線ば実線で,中位200社の折れ線は破線で描いてあります。この図の使い方を考えてみま.す。ほぼ確からしいことを表わすのに,「十中八九は確か」という言葉があります。これば,「80から90%程度は確か」という意味です。いま,天底率7%で,ある銘柄の株価(日足終値)が天井値から15%Tがったとします。左側の図から,上位200社でも中位200社でも,累積相対度数は約80%です。下降率が15%になった株価ば,「十中八の確からしさで底をつけている」と考えて良さそうです。ただし,まだ底ではない可能性が約20%残っています。同様に,下降率が19%になったら,「十中九は底をつけている」と考えて良さそうです。したがって,下降率が15〜19%になった
ら,「十中八九は底をつけている」と考えても良さそうです。つまり,下降率の累積相対度数分布図は,「買い場」の値頃の参考に使えると思います。また,カラ売りしている場合,「買い場」より少し小さめの下降率のところが,「買い手仕舞い」の値頃になると思います。右側の図から,「十中八九は天井をつけている」のは,底からの上昇率が21〜27%です。この図は,「売り場」や「売り手仕舞い」の値頃を測る参考になると患います。中段の2図は,天井から底までの立会日数と,底から天井までの立会日数の累積相対度数分布図です。上段の2図と違い,上位200社と中位200社の折れ線がかなり離れています。中位200社てば,だらだらと長い立会日数の場合がたくさんあることがわかります。天井から底または底から天井までの立会日数が長い場合が多いと,天底の検討をつけるのがむずかしくなります。したがって,上位200社は中位200社より,日柄の点から考えると,天底の検討がつげやすいことになります。天度数が多い銘柄のほうが,天底数が少ない銘柄よりリズム取りに向いている9といえそうです。下段の2図ば,底と判定するまでに要した立会日数と,天井と判定するまでに要した立会日数の累積相対度数分布図です。中段と同様に,上位Z00社と中位200社の折れ線がかなり離れ,だらだ
らと長い立会日数が中位200社の場合にたくさんあります。リズム取りの場合,できるだけ早く天底の検討をつけ,値頃や日柄を測り,チャンスを狙う必要があると思います。とすれば,中段の場合と同様に,天底数が多い銘柄のほうが,天底数が少ない銘柄よりリズム取りに向いている,といえそうです。
去年の7%天底数上位200銘柄が夫1だったから今年もそうなる,どは限りません。図2〜4の天底の性質も同様です。現に,誰もが思ってもいなかった阪神大震災や極端で急激なドル安円高が起こっています。しかし,「歴史は繰り返す」といいます。また,今まで無事に生きてきたから,これからも無事に生きていくだろうと思い,私達は毎日行動しています。未来のことは,そのときになってみなけれぱ分かりません。未来のことは,過去と同じようなことが今後も続くだろうと仮定し,予測しなければなりません。予測に利用する資料は,すべてそういう類いのものにすぎないことを銘記すべきです。夫1ば,リズム取り用銘柄選択のひとつの参考資料になると思います。図2〜4は,仕掛けや手仕舞いの値頃と日柄を考える参考になると思います。そのほかにも,売買の参考になる資料をたくさん作れます。これらを,順次,紹介いたします。