SP波動率利用売買
その3
過剰反応利用売買(2)
SP波動率25%で決めた天底を判断基準にする過剰反応利用売買は,比較的リスクが少ない易しい売買法と思います。しかし,もともと過剰反応はあまり発生しないぱずですし,それを利用する売買でも,それなりのリスクがあるはずです。そこで今回は,1995年の大納会を終えて区切りがついたので,前回紹介したSP波動率25%の天底抜l〜100位のFAI貸借銘柄について,1988年の大発会から1995年の大納会までの8年間のデータを使い,過去8年間の過剰反応利用売買成績,過剰反応の出現状況および過剰反応からみた値頃や日柄とリスクとの関係を調べてみました。
表lと2をご覧ください。過去8年間における下げと上げの過剰反応利用売買成績です。表の内容の読み方は,前回と同じです。前回紹介した94/10/21〜95/10/31の成績と比べると,少し違います。とくに上げ過剰反応利用の場合,前回は過剰反応率65%以上の場合の損失(一)は0%でしたが,過去8年間では10%前後になっています。やはり長い間には,損失になるリスクが出てくる時期があるものです。
図lをご覧ください。上げの過剰反応率〔SP変化率)を60%,下げの過剰反応率を-60%とした場合。-の過剰反応の発生状況です。図は,少々紛らわしいと思いますが,4図に分けた棒グラフで,上げと下げの状況を比較するため,次のように描いてあります。
横軸は立会年月日で,各図の上下中央に,月初めの位置(縦方向の点線を描いてある位置)に月番号,l月の下に年番号(西暦)を書いてあります。縦軸は,上段が上げ過剰反応の出現回数,下段が下げ過剰反応の出現回数で,2回おきに横方向に点線を描いてあります。
1988と1989の2年間は,上Iヂ過剰反支応が毎月現れていますが,Tげ過剰反応ばほとんど現れていません。しかし1990年以降,ときどき下げ過剰反応が集中的に多発し,その間を埋めるように上げ過剰反応が散発しています。天底数上位のl00銘柄全部を対象とすれば,売買チャンスが少ないといえないかもしれません。
銘柄数をもっと増やせば,当然,芙発生回数も増えてきます。また,過剰反応率の取り方を変えれば,発生回数も増えたり滅ったりします。しかし,発生回数の大きまさは違ってきますが,発生状況は図lとほぼ同じような傾向になります。
図2をご覧ください。100銘柄全体に出現した8年間の天井がら直後の底までのSP下降率(SP変化率がマイナスの場合です)および底から直後の天井までのSP上昇率(SP変化率がプラスの場合です)を求めてみました。
左上の図は,l%刻みで丸めたSP下降率の分布図(棒グラフ)です。横軸は下降率の値で,10%おきに目盛り数字と縦方向の点線を書いてあります。縦軸は出現回数(出現度数)です。また図の右上の枠内に,SP波動率25%の天底間の総出現回数,SP下降率の平均値,標準偏差等を書いてあります。なお,SP波動率が25%のため,25%より小さい下降率はありません。
下降率が65%以上になると出現回数が滅り始め,100%以上はあまりありませんが,最大下降率は168%にもなっています。このような銘柄を下降率50や60%から仕掛けると,運が悪かったことになり,大損しそうです。
左下の図は,左上の図の出現回数を,大きいSP下降率から小さいほうの順(降順)に累積し,全体を100%にした累積相対度数分布図です。ただし図を上下に拡大するため,縦軸の50%以上の部分を省略してあります。横軸はSP下降率,縦軸は累積相対度数(%)です。
SPT降率が50%以上,60%以上,70%以上,80%以上,…
になった割合すなわち累積相対度数(過去のデータに基づく確率に相当します。以下同様です)は約50%,33%,18%,8%,…です。この図から,次のことがおおまかに読み取れます。
SP下降率が50%以上になったときを下げ過剰反応とみなして仕掛けると,さらに株価が下がってSP下降率が60%以上になってしまう割合は約(33/50)xl00=66%,下降率が70%以上になってしまう割合は約(18/50)xl00=36%,下降率が80%以上になってしまう割合は約(8/50)xl00=16%,…になります。このような割合が,「過剰に下げた」と考えた仕掛けの判断が冒すリスクに相当します。仕掛開始のSP下降率や読み取る幅を変えても,同様に読み取れます。したがって,損失を蒙るリスクを減らすには,下降率の増加に応じて増し玉することが必要になります。
増玉率を10%の等間隔にした場合,仕掛開始の下げ過剰反応率が-50%〔マイナスの符号を除去すると下降率になります)なら,下降率が60%以上になってl回目の増し玉が必要になる割合は,上記と同様に読み取って,約(33/50)x100=66%,さらに下降率が70%以上になって2回目の増し玉が必要になる割合は約(18/50)x100=36%,さらに下降率が80%以上になって3回目の増し玉が必要になる割合は約(8/50)x100=16%,…。
下降率がいくつのときから仕掛けるか,増し玉する回数や単位数や値頃(SP変化率)をどのようにするか,資金力と相談しながら,左下の図を参考にして決めることができると思います。増し玉の仕方によって,利益率が変わってきます。
右上の図は,底から直後の天井までのSP上昇率の分布図,右下の図は,降順の累積相対度数分布図です。下降率の場合と同様に,空売りで仕掛ける上げ過剰反応利用売買の参考になると思います。
底や天井あるいはそれらの近辺を正確に予測することは不可能です。損切りしなければならないリスクは売買につきものと考えリスクに対処する必要があります。
図3をご覧ください。左側の6図は,仕掛けを開始する下げ過剰反応を-50%,-60%,-70%,-80%,-90%および-100%とした場合の,仕掛開始からSP波動率25%の天井決定日(天井を決定して手仕舞う日)までの立会日数の分布です。右側の6図は,上げ過剰反応の場合です。各回の右上の枠内に,総度数(総出現回数),平均値,標準偏差等を書いてあります。
横軸は立会日数で,30日おきに日盛り数字と縦方向の点線を書いてあります。ただし,451日以上は省略してあります。縦軸は出現度数です。いちばん上の2図を例として,簡単に説明します。
下げ過剰反応率-50%で「買」を仕掛け始めると,SP波動率25%の底が2日後(最小値)から198日後(最大値)までの間に決定され,手仕舞うことになります。仕掛後30立会日以内に手仕舞うことが多く,その後60日までは手仕舞う回数が減りますが,75日前後に小さい山があります。現物売買なら,増し玉との関係もありますが,手仕舞うまでの日数がたとえ長くても,塩漬け覚悟で買持ちを続けることがてきるがもしれません。
上げ過剰反応率50%で「売」を仕掛け始めると,SP波動率25%の天井がl日後〔最小値)から475日後(最大値)までの間に決定され,手仕舞うことになります。仕掛け後120立会日以内の手仕舞いが大部分ですが,それ以上の立会日数になる場合もかなりの割合で出てきます。空売りの信用期日のことを考えると,6カ月の立会日数は120日強なので,十分な利益が出ないままで200日も300日も売持ちを続けることに我慢できるかどうか疑問です。
図4をご覧ください。図3の出現度数の降順の累積相対度数分布図で,上段が下げ過剰反応の場合,下段が上げ過剰反応の場合です。6種類の仕掛開始過剰反応率の違いは,折れ線の種類で区別してあります。ただし,横軸の仕掛開始がら手仕舞いまでの立会日数は,図の左右を拡大するため240日までにしてあります。この図から,次のようなことがおおまかに読み取れます。
仕掛開始の下げ過剰反応率を-50%とした場合,手仕舞いまでの立会日数が30日以上になる割合は約47%,60日以上になる割合は約15%,90日以上になる割合は約5%,120日以上になる割合は約0.5%です。
仕掛開始の下げ過剰反応率をもっと低くすると,この割合は少し滅ってきます。しかし‐80%以下にすると,ほとんど変わりません。手仕舞いまでの日数が120日(約半年間)以上になる割合は,いずれも約0.5%以下です。運が悪くない限り,仕掛け始めてから半年以内に手仕舞えそうです。
仕掛開始の上げ過剰反応率を50%とした場合,手仕舞いまでの立会日数が30日以上になる場合の割合は約82%,60日以上になる割台は約50%,90日以上になる割合は約33%,120日以上になる割合は約18%です。下げ過剰反応利用の場合に比ベ,手仕舞いまでの日数が長くかかる場合がたくさん出てきます。仕掛開始の上げ過剰反応率をもっと高くすると,この割合は少し滅ってきます。しかし,手仕舞いまでの日数が120日以上になる割合は,いずれも13〜21%程度です。信用期日のことを考えると,適当なところで,欲をかかずに手仕舞うか損切りすることが必要になりそうです。
1996年は,プロと称する人の多くが強気ですが,弱気の人もいます。戦後50年間に経験したことがなしい世紀末の「大変な時代」を迎えているのは確かなようですから,過去10年や20年の経験からは想像できない現象が起こるかもしれません。まして過去8年間のデータの分析ではまったく役に立たないかもしれません。しかし,過去の経験と知識を頼りにして未来を予測せざるを得ません。次回は,損切りを含めた値頃や日柄を考慮して手仕舞ったらどうなるかについて紹介する予定です。
追記)1996年の大発会現在,天底数上位100銘柄のうち,直近256立会日の終値で調べたSP変化率が50%以上の銘柄を下記します。興味のある方は,今後の株価の動きを観察してください。なお大発会現在,SP変化率が-50%以下の銘柄はありません。
1888若葉建 (53.8%) 6951日電子 〔56.7%)
1889佐伯建 (58.6%) 6989北陸電気工〔68.3%)
4103大陽東洋酸 (60.l%) 6997ケミコン 〔53.9%)
5302日カーボン (61.7%) 7964セガ (68.2%)
5391アスク (53.9%) 8059第一実 (61.5%)
5957日東精 (53.5%) 8259十字屋 (56.3%)
6013タクマ (58.5%) 9105ナビライン(56.5%)
6203豊和工 (64.4%) 9110新知海運 (53.l%)
6310井関農 (53.l%) 9742アイネス (80,3%)
6393油研工 (63.5%)
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