SP波動率利用売買

その5

過剰反応利用売買(4)

 前回,「何か良いアイデアはありませんか?」と書きましたら,早速読者のお一人から,ご自分の解析結果とともに「発行株式数を参考にしたらどうか」とのご意見をいただきました。ありがうございました。

 最近,下げ過剰反応を示す銘柄はなく,上げ過剰反応を示す銘柄が増えています。今回は,天底数上位100銘柄だけでなく,全FAI貸借銘柄を対象とし,読者からいただいたご意見を含めた解析結果を紹介させていただきます。

 図1をご覧ください。全FAI貸借銘柄(800社)の1987/8/1〜1996/4/30(8年9か月)の日足終値を使って求めた,SP波動率25%の天底間の変化率〔底から天井までの上昇率と天井から底までの下降率)の度数分布図と降順の累積相対度数分布図です。

 横軸は上昇率(%)または下降率(%),縦軸は度数(発生数)または累積相対度数(%)です。度数分布図の右上の枠内に,経度数(出現回数の合計)等の値を書いてあります。なお,上昇率66,6%が19回,下降率66.7%が32回で,共にほぼ同じ値の度数がその前後の度数より際だって多くなっています。その理由がわからないので少々気になりますが,計算違いではありません。

 過剰反応は,異常に上がり過ぎまたは下がり過ぎ,ということになります。会社が潰れる場合は別ですが,ふつう,行き過ぎた状態はいずれ修正されるはずです。過剰反応利用売買は,[いずれ修正されるはず」を期待まする売買ということになります。

 累積相対度数分布図を見そると,5%以下の割合で起こった上昇率と下降率は共に85〜90%(正確には86.5と86.6%)以上,1%以下の割合では110〜115%(正確にはll1.lと107.l%)以上です。異常な銘柄でない限り,過去8年9カ月の範囲内では,「十中八九」ではなく「10中9.5」あるいは「10中9.9」,このような変化率になる前に修正されるはず,ということになります。

 図2をご覧ください。SP変化率,隣合う天底間の立会日数および天底が決定されるまでの立会日数3者間の相関図です。左側の3図が天井,右側の3図が底に聞するグラフです。各回の小さな丸ひとつが出現回数1回に相当します。小さな面積の図に6000個以上の丸をそれぞれ描いてあるため,どの図も度数が非常に多い左下の部分が黒く塗りつぷされています。

 上昇率または下降率と天広間経過日数との間の相関係数はやや大きな正の値です。それほど強くありませんが,上昇率や下降率が大きい天井や底ほど長い日数がかかる傾向があります。

 天井の上昇率の大きさと天井決定日数間の相関係数はほとんどゼロですが,底の下降率と底決定日数問の相関係数はやや大きな負の値です。下降率が120%を超すような底は,きわめて短い日数で大きく反発し,底と決定されるようです。

 天広間経過日数と天底決定日数間の相関係数は,天井も底も,あまり大きくない正の値です。しかし天井の場合(左下の図),印刷の都合で小さな図にしたため分かりにくいと思いますが,右下がりの縞模様が見られます。何か理由があるのかもしれません。

 表l一lとl一2をご覧ください。天井の上昇率が100%以上(出現した割合は約2%)になった130社のリストです。日付順に並べてあります(「上昇率100%以上」にした理由は,単に,2ページに印刷できそうだがらです)。表の読み取り方は,No.lを例にすれば,次のようになります。

 『1988年2月24日,「8028ファミり一」(当時は貸借銘柄ではありません)が上昇率114.7%の13,300円で天井をつけた。直前の底値は3,600円,底から天井までの経過日数(立会日数で,暦日数ではありません)は54日。13,300円が天井と決定されたのは3日後の10.000円』

 図3をご覧ください。私の手元に,1993年10月以降,毎月初めに記録した業績データがあります。これを利用し,1993/l0/l〜1996/4/30の期間に,上昇率50%以上になった351銘柄の業債データの一部である資本金(億円),発行株数〔百万株),PBRおよび予想PERと上昇率の相関関係をグラフにしてみました。

 横軸は業績の大きさ(予想PERのグラフの左側の「一」は,予想一株利益が0以下のため予想PERが計算できなかった場合です),縦軸は上昇率(%)です。各図の上側に書いた”n”は度数(発生回数),”r”は相関係数です。PBRのnが350なのは「日住金」の現在の一株当たりの株主資本がゼロのためで,予想PERのnが292なのは計算できない場合が59例あったためです。

 資本金が250億円以上と発行株数が2億株以上の場合,上昇率が100を超えた例はありません。資本金や発行株数が多い大型株は仕手化しにくいためと思います。読者のお一人のご指摘の通りです。しかし表lに見られるように,1993年9月以前には,いくつかの大型株が含まれています。古い業債データが手元にないためグラフ化できませんでした。

 PBRやPERを売買指標として利用する人も多いようです。

 SP波動率による過剰反応利用売買に関する限り,あまり参考にならないかもしれません。しかし少ない例ですが,予想PERが650を超えるような天井の上昇率は60%以下です。

 表2一lと2−2をご覧ください。資本金250償円以上または発行株数2億株以上の大型株のうち,今年に入ってから上昇率50%以上になった112銘柄のリストです。コード順に並べてあります。表の読み取り方は,No.lを例にすれば,次のようになります。

 『「2531宝酒造」は資本金105.6億円,発行性教211.2百万株で,2月2日の株価1,370縁が上昇率76.8%で天井候補になっている。4月30日現在の株価はl,190円,上昇率は64,4%である』

 なお,No.2の「3102鐘紡」とNo.llの「4044セ硝子」の上昇率がマイナスになっていますが,前者は3月7日の286円で,後者は2月22日の436円で,すでに天井と決定されているためです。

 今年に入ってから,上昇率100%以上になった中小型銘柄が8例あります。1331極洋,3869日紙業,5454大同板,5633関特銅15707東邦船,5737東洋ァ,G20501〈Kおよび6507神州電ですこのうち,極洋,日紙業,0KKはすでに天井が決定されています。このような銘柄や表2の銘柄の日足折れ綿グラフを大きな方眼紙に描くと,上げ過剰反応利用売買の参考になると思います。

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