特別連載

SP波動率利用売買

その7

サヤ取り(2)

 今回は,次のようなシミュレーション結果を紹介します。

比較したシミュレーション条件

1)目標利益率:目標とする利益の程度で,仕掛値合計(売値と買値の合計)に対す る比率。6%と8%にした場合を比較。

2)サヤ波動率:サヤの動き(波動)の天底を決める基準にする波動率。仕掛値合計 の8%と10%にした場合を比較。

3)検討立会日数:仕掛けの可否を判定するため,過去のサヤの動きを検討する立会 日数。120日(約半年間)と240日(約1年間)にした場合を比較。

4)低位銘柄群:仕掛けの可否を判定する立会日ごとに,FAI貸借銘柄を終値の昇 順(低→高の順)に並ベ,低位l〜50位,51〜100位,101〜150位, 151〜200位,201〜250位および251〜300位の50銘柄ずつの6 群に区分し,群ごとの成績を比較。

5)仕掛判定立会日(時期):1990年l月から1995年12月まで,毎月l回 (合計72回),月末の立会日に仕掛けの可否を判定し,時期による違いを比較。

 仕掛けと手仕舞い

l)仕掛組合せの判定と仕掛け:各群内の2銘柄のすべての組合せ〔各1,225通 り)から,仕掛判定立会日前日までの検討立会日数期間中におけるサヤの天度数が 2以上の組合ぜを抽出。判定立会日直前のサヤの天底が「天井」なら,2銘柄の順 序を逆にしてサヤを再計算(直前の天底が必ず「底」になる)。

 ついで,サヤの天井値(天井の数が複数ならその最大値)を求め,この値が検討立 会日数期間中のサヤの最大値である組合せを抽出。仕掛判定立会日のサヤが最大値 より大なら,翌立会日の寄りつきで売りと買いを1単位ずつ仕掛げる。

2)増し玉:仕掛け後,終値のサヤが仕掛値合計の10%以上大(狙いと逆方向に動 いた場合)になったら,翌立会日の寄りつきで1単位ずつ増し玉。このときの仕掛 値を含めた仕掛値の平均で新たな仕掛値合計を求め,目標利益率に対応するサヤの 値を再計算。

3)手仕舞い:仕掛け後,終値のサヤが目標利益率以上になったら,翌立会日の寄り つきで一括手仕舞い。仕掛けの判定後,120日(約半年間)経っても終値のサヤが目標利益率以上にならなかったら,翌立会日〔仕掛け開始後120日になる)の寄りつきで手仕舞い(損切り)。

シミュレション結果の整理項目

1)仕掛組合せ数:仕掛けた2銘柄Zの組合せ数。

2)勝数:仕掛組合せ数のうち,目標利益率を達成した組合せ数。

3)負数:目標利益率を達成できなかった損切り組合せ数。

4)勝率:100×勝数÷仕掛け組合せ数%

5)平均仕掛回数:増し五回数を含めた仕掛組合せごとの仕掛け回数の平均。まった く増し玉しなかったときはl,増し玉した組合せがひとつでもあれば1より大にな る。

6)平均手仕舞日数:仕掛け開始から一括手仕舞いまでの立会日数の平均。この値  は,負数(手仕舞日数が120日)が多ければ多いほど大きくなる。

7〕平均損益率:仕掛値合計に対する値洗い損益率の平均。売買の取引コストを往復 4%とみなせば,(平均損益率一4)が平均実損益率になる。

 表lをご覧ください。サヤ取り結果り総括表です。

 目標利益率が6%の場合は8% の場合にくらべ,仕掛け組合せ数は同じですが,勝率が高く,平均仕掛回数がやや少なく,平均手仕舞日数が短く,平均損益率がやや低くなります。サヤ波動率が8%の場合は10%の場合より,仕掛け組合せ数が多く,勝率がやや低く,平均仕掛回数がやや少なく,平均手仕舞日数がやや長く,平均損益率がやや低くなります。

 検討立会日数が120日と240日の場合は,仕掛組合せ数以外,差がはっきりした傾向はみられません。低位群間の差も同様です。

 表2をご覧ください。判定年月とサヤ取り結果の関係の表,8枚中の1枚です。紙幅の関係で,勝抜,負数および勝率だけを示してあります。仕掛組合せ数は勝数と負数の合計で,これが0の場合は”.”で表してあります。

 低位群によっても,年によっても,年内の月によっても,勝率も仕掛回数もバラバラです。省略した他の項目でも,他の7枚の表でも同様です。

 表3をご覧ください。売銘柄と買銘柄の10%SP波動率の天底数と勝数,負数および勝率の関係の表,48枚中の1枚です。天底数と勝率の関係はあまりはっきりしません。しかし,売銘柄でも買銘柄(夫3にはありませんが)でも天底数が2以下の場合,勝率がやや低いようです。省略した他の47枚の表でも同様です。

 表4をご覧ください。仕掛前の検討立会日数期間中のサヤ天底数とサヤ取り結果の関係の表,8枚中のl枚です。検討立会日数が120日の場合はサヤ天底抜が3以下,240日(表は省略しました)の場合は5以下の勝率がやや低そうです。他の7枚の表でも同様です。なお,サヤ波動率が8%の場合は10%の場合より,検討立会日数が240日の場合は120日の場合より,当然,天底数が多い組合せが多くなります。

 表5をご覧ください。私の手元に,1992年以降の信用の売り残と買い残のデータがあります。これを使い,1992〜1995年のサヤ取り結果と,仕掛時における売銘柄と買銘柄の貸借倍率の関係を調べてみました。表5は,48枚中の1枚です。

 貸借倍率は,売り残が0(銘柄によっては,非賃借銘柄だった時期を含めます)のため計算できない場合を”?”で表し,10倍以下はl倍刻みで,10を超えて100倍までは10倍刻みで丸め,100倍を超えたものは一括してあります。期待したのですが,はっきりした傾向はみられません。なお,売銘柄と買銘柄の売り残と買い残の4通りの組合ぜても同様な表を作りましたが,やはり同様です。

 しかし,表の貸借倍率は,仕掛判定時の1時点におけるl断面の倍率にすぎません。銘柄ごとの賃借倍率の動きをとらえて解析すれば,はっきりした傾向を掴めるがもしれません。もっと詳細な解析が必要かもしれません。

 表6をご覧ください。判定時(終値で判定)と仕掛時(始値で仕掛け)のサヤの変化率とサヤ取り結果の関係の表,8枚中の1枚です。

 仕掛けたすべての組合せについて,検討立会日数の期間中から仕掛け後120日まで,パソコンのテレビの画面に売銘柄と買銘柄の日足およびサヤの折れ線グラフを描き,眺めてみました。その結果,判定時と仕掛時のサヤの変化の大きさとサヤ取り結果に関係がありそうに思いました。

 そこで,判定時と仕掛時のサヤの変化率を次のように定義し,表6のようにまとめてみました。

    サヤ変化率=100×(仕掛時のサヤ-判定時のサヤ)

         ÷判定時のサヤ%

 表は,サヤ変化率を0.5%刻みで丸め,低位群との関係を示したものです。サヤ変化率が1%以上の場合,勝率が高くなっています。サヤ取りで良い結果を得るには,この点も考慮する必要がありそうです。

 表7をご覧ください。10%SP天度数が2以下の銘柄,およびサヤ天底数は検討立会日数が120日の場合は3以下,240日の場合は5以下の組合せを除いたサヤ取り結果の総括表です。表lの総括表とくらべてください。

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