1年で1万ドルを110万ドル、11000%のリターンをあげたトレーダーが語る相場で勝つ方法
ラリー・ウィリアムズは、人知れずコンピューターの前に座って黙々とトレーディングに専念しているトレーダーではない。自分のシステムについては、自らの著作ではもちろん、世界中を回って各地でセミナーを開いては公開している。ラリー・ウィリアムズが広く知られるようになったのは、1987年のロビンス・ワールドカップ・チャンピオンシップで1万ドルを12カ月で110万ドルにし、チャンピオンになってからである。
(いまなお、公式の記録に残る限り、史上最高の成績)
彼のトレード手法の特徴はその統計的な裏付けをベースにした短期時間枠の回転の速い売買と、資金を効率的に増やすマネーマネージメントにあり、その理論や手法はラリーのおこなうセミナーや著書によって広められ、その後多くの成功者を生んでる。
このインタビューは、ラリー・ウィリアムズが極東、東南アジア、オーストラリアへセミナーで回った機会をとらえ、オーストラリア・シドニーのランドマーク・ホテルで行ったものである。 聞き手は、『ピット・ブル』(パンローリング)の訳者であり、現在、オーストラリアでトレーダーとして活躍している成田博之氏。
成田 ごく一般的な質問になりますが、トレーダーとして成功するための重要な要素とは何ですか? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ラリー リスクを背負うことに拒否反応を起こさないことだ。成功するというよりも、『稼ぐ』という確固たる決意がないと儲けることはできない。リスクを取ることに積極的で、しかも、スリルを楽しむくらいでないとトレーダーとしてやっていくのは難しい。ある意味では、貪欲でないとダメだろうね。儲けることに刺激を感じて、目標金額に向かってトレードする。そして、その目標を達成することで、初めて成功したといえるということだろうね。一般の人は、この「リスク」を背負うことができないからね。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
セミナーの中でラリーは、“今回のトレードは失敗する”と思うようにしていると言っている。だからこそ、ストップ(損切り)を置いて自分を守る。システムを検証して、良い数字が得られてアクションを取るにしても、それは過去の結果であって、自分を守ってくれるのはストップしかないとラリーは言う。たとえ、そのトレードがうまくいって儲けることができても、次のトレードを楽観できることにはならない。ラリーは過去、6人のトレーディング仲間を失っている。彼らは自らの命を絶つという行動に出た。ラリーの言う破滅は、投資資本を不意にすることだけを意味していたのではなかった。
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通信技術の発展が相場に何らかの影響を与えていると思いますか? オンライン・トレーディングなどもテクノロジーの進歩から生まれたのものではないですか? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
確かに、だれもがパソコンを持つ時代になって、いろいろな情報を入手している。でも、90%のトレーダーが損をしている事実は変わっていない。昔とは比べものにならないほどのリサーチがされて、いろいろな分析結果を手にしても、10%のトレーダーしか良い成績を上げていない。技術が向上してもトレーダーにはあまり助けにはなっていない。情報を早く入手しても、儲けにつながっていないケースが多い。確かに、すべてが速く動いている。早く結婚して、すぐに離婚して、すぐに儲けては、すぐに倒産。生活の流れそのものも速くなった。でも、相場で失敗する確率は30年前と変わっていない。
サイクルが短くなっただけで、トレーディングそのものは何も変わっていないわけですね。
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30年前でも今でも、市場参加者の多くはリサーチをしないまま相場を張っては損をしている。知識を身につけることに時間をかけていない。おカネが絡んでいるので、市場参加者の心理状態は非常に不安定で、何ひとつルールを守ることができない。この現象は30年前と変わっていない。だから、技術の進歩と発展とトレーディングとはそれほど深い関係にないといえるだろう。
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最近ではオンライン化も進んで、一般投資家がいろいろな情報を容易に手に入れる中で、あなた自身も、トレーディング・スタイルを徐々に短期化してきているのではないでしょうか? 少し前のあなたの著書では、どちらかというとトレンドフォロー・タイプのものが多かったように思います。いつごろから、短期トレーディングに移行していったのですか?
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確かに、私の場合は、中長期のトレンドフォロー・タイプのアプローチから始めて、いろいろと相場の動きなどを学ぶことができた。もちろん、今でも学ぶことは非常に多くある。今考えてみると、中長期の動きを理解しないで短期の流れを理解するのは非常に難しい。中長期トレーダーとしてスタートをしたことが正しかったと思う。
しかし、私の性格から短期的な動きを追う方が合っていると思った。子供のころは動きの激しいアメフトを好んでいたから、短期トレードが自分には合っていると思って、自然とトレーディング・スタイルも短期化されていった。 |
長期投資が個人スタイルにあっていれば良いと思うが、しかし気をつけたいのは多くの人が誤信している。優良株を買ってそれを長期で持ち続けさえばよいという全く根拠のない一般通年がある。一流優良銘柄でさえ、株は常に上がるわけではない。
つまり間違ったときに長期投資をすることは長い時間と大切な金と時間を投資したに
も関わらず、すべてを失いかねない。これは最大のギャンブラーとならないだろうか
? 私のもうひとつの理由は、私のマネーマネジメントのスタイルが短期トレードに合っているんだ。知っての通り、私は1万ドルの口座を1年間で100万ドルにした。これは、利益の積み上げからなっている。この積み上げ回数を多くして、目標金額を達成させるのが私のやり方だ。私が16歳の娘にトレーディングを教えて、娘が1万ドルの口座を1年間で11万ドルまでにできたのも、すべて短期トレードからだった。私のマネーマネジメントはカジノと一緒で、毎回の利を使って徐々に資金を増やしていく。トレーディング回数を増やすことで、マネーマネジメントの効果を最大限に使う。これが、中長期トレーダーと比べて、短期トレーダーの利点でもある。各自がトレーディング・スタイルを形成する上で、自分の性格をよく理解することが大切だ。そして、その性格をどのようにトレーディングにうまく生かしていくかを考える。あとは、マネーマネジメント次第だ。目標金額と期間が決まれば、どれぐらいのリスクを取っていくべきかおのずと分かってくる。
ルールといっても、システムの数が多ければ、たくさんのルールをチェックする必要があると思うのですが、例えばS&P500では、一体、どれぐらいのシステムを持っているのですか?
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私のS&P500システムはひとつだけだ。米30年物国債先物でも、システムはひとつだけだ。他のトレーダーとは違うと思うが、相関関係を取り入れたシステムトレードをやっている。
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そのシステムには、今まで一般に紹介してきたパターンなども含まれているわけですね。
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もちろん、システムには入り口と出口がある。パターンなどはその入り口に使われている。いろいろな商品間の関係もシステムに含まれている。もちろん、今でもいろいろなことを学んでいる。新しいアイデアが浮かべば、テストしてみる。その結果が良ければ、システムに取り入れていく。この繰り返しだ。
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市場の変化に合わせてシステムを変えていくということですか?
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基本的には、市場そのものは変わっていない。相場の動きはその参加者によって作り出されている。これは、100年前も今も変わっていない。確かに、前にも言ったように売買スピードは速くなったけど、価格変動を起こしているのは人間だ。人間は変わっていない。カネはカネだし、トウモロコシはトウモロコシだ。何も変わっていない。それと、「昔は良かった」とか、「以前の相場はやりやすかった」というのも、真っ赤な嘘だ。昔から相場で儲けるのは難しい。これも、変わっていないね。
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確率といえば、あなたの著書の中でバイアスについて説明していますが、あのアイデアはどのようにして得られたのですか? やはり、リサーチの中から見つけたのですか?
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もちろん、リサーチはしたが、需給関係などに注目しただけだ。確かに、いろいろなデータを検証してみると、ある時期には価格が上がる傾向があったりする。1973年に、季節要因についての本を出したけれど、これは、自然の流れについて書いたものだ。ある時期に、小麦の植え付けをして、ある時期にその刈り取りをする。ある時期に、中央銀行が市中に資金を放出して、ある時期が来ると、それを吸い上げる。これらの現象は、いまだに続いている。もちろん、毎年同じ日に、それらの現象が起きるとはいえないが、その時期には、市場がどちらの方向に動くか、事前に分かる。地図のようなもので、目標に向かってどれぐらい進んでいるとか、どこまで来たとか、チェックするにはバイアスを利用するのは効果的だと思っている。
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国や人種の違い、しいては文化の違いもトレーディングに関係しているのでしょうか?
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はっきりは分からないが、どこの国でも同じ自然の流れが存在していると思う。季節によって、何を作付けするのがよいのか、また、いつ、金を発掘したらよいのかなど、需給の関係に基づいて成り立っているものがある。アメリカでは、イースターの時期にはタマゴの需要が上がる。ファンダメンタルな動きを無視するわけにはいかない。だから、ファンダメンタルな部分のリサーチを十分にやる。何か、自然な動きが存在しないか探し出す。これが、出発点だ。それをしてから、テクニカルな部分を取り込む。この順番を間違えないようにしている。テクニカルな面だけを重視してもうまくいかない。
私はテクニカル・トレーダーではなく、コンディショナル・トレーダーだ!
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ラリー・ウィリアムズといえば、テクニカル・トレーダーというイメージがありますが、あなた自身は、テクニカル・トレーダーと思っていますか?
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私はテクニカル・トレーダーではない。コンディショナル・トレーダーだ。ファンダメンタルなコンディション(条件)が整うのを待ってからトレードするようにしている。この条件が満たされてから、テクニカルな部分をチェックする。これが私のやり方で、チャートだけを見て売買するようなことはしない。テクニカルだけでは儲からないと思う。チャートがマーケットを動かすのではなく、マーケットの動きがチャートを動かしている。チャートが金を動かしたという連中がいるが、それは違う。金価格が動いたので、チャートが動いたと言うべきだろう。需給がタイトになって価格が上がったとか、インフレ率が上昇して、金利が上がったので、金価格に影響が出たということはある。だから、マーケットの動きに注目するだけで、チャートには、それほど目を向けない。チャート・トレーディングでは、良い結果を得られるとは思っていない。ローソク足そのものは、別に何の役にも立たない。だから、ローソク足システムとかいうものがあるけれど、全く、意味がないと思う。マーケットの動きがチャートに表れているだけで、チャートがマーケットを動かしているのではない。
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しかし、一般的には、チャートを見てからマーケットの動きを判断しようとする傾向がありますよね。
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確かにそうだ。チャートだと値動きの変化をビジュアルに理解できるが、実際にマーケットを動かしている要因を、チャートから読み取るのは非常に難しい。40年近く、相場に存在しているバイアスを探しているが、分かっていることはほんの少しだ。チャートを見るのは簡単だが、マーケットを動かしている要因を探すのは難しい。
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いつごろから、相場にバイアスが存在していると気がついたのですか?
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1973年ころかな。まあ、70年代の初めだね。ある曜日は、他の曜日に比べて動きが良いとか、この日はよく動くとか、トレーディングをやっている最中にこれに気がついた。
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トレーディングを始めて、10年後ということですね。
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そうだね。学ぶのが遅くてね。(笑)
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| 私が作ったインディケーターやプライス・パターンは現在も機能する!
トレーディングのテクニックについて、最後にお聞きしたいのですが。あなたが作り出したインディケーター(指標)は、もう使えないという意見がありますが、それについてはどう思いますか?
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2000年になって、このシドニーの市場で、私が1966年に開発した%Rがうまく機能しているよ。何も変えていないけれども、ちゃんと役に立っているよ。私が1967年、1968年に作ったアキュミレーション・ディストリビューション(AD)・ラインも、いまだ健全だよ。コンセプトが正しければ、いつになっても使える。これは、インディケーターに限ったことではない。シグナルやシステムにも同じことが当てはまる。インディケーターには、それほど力を入れて調べてきたわけではないけれど、使わなくなったインディケーターといってもひとつぐらいかな。新しいインディケーターを作っては、本にその内容を書いて一般に公表するようにしている。別に、隠す必要はないと思う。その本を買ってくれれば、私にとってプラスになる。本も安くはない。道具として使えるインディケーターであれば、これからも本に書いていくつもりだよ。私は他のトレーダーと違って、その辺はオープンにしている。その理由は、私が載せるインディケーターを改良して使おうとする人が半分いて、残りの半分は、読むだけで、実際には使わない。この読むだけという連中は、次から次へと本を買い漁っていくだけで、その内容をじっくりと調べることはない。せっかく良いものを書いても、その内容を理解していないために、使いこなせないで失敗するケースが多くて、それによって、私自身が非難されることもある。でも、私自身は、それらのインディケーターを使ってトレーディングに役立たせているのは事実だからね。非難されようが、全く気にならないね。
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プライス・パターンもたくさん紹介していますが、これらのパターンにも、何ら変化は起きていないのでしょうか?
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変わっていないね。もっと、たくさんトレーディングに使えるパターンを見つけたいと思っている。(笑)
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コンセプトが正しければいいわけですね。
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その通りだ。
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インタビュアー 成田博之→ホームページ