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『相場の神々』
著者 鍋島高明 定価 1,500円+税 四六判 上製 312頁 2019年8月発売 ISBN 978-4-7759-9169-5
ここに登場する相場師は8人、いずれ劣らぬ時代を象徴するサムライ達だが、明治を代表するのは福沢桃介。本間宗久を始祖とする我が国投機史上名相場師ランキングでも十傑に入る巨人である。しょっちゅう相場を張るわけではない。ここぞという時を狙って出陣、巨利を占めて悠々と引き揚げる。勝負師は勝った時に止められる人のことである。勝ったときもっと勝ちたいという我欲を制御できるかどうかにかかっている。桃介は利子配当を不労所得として忌み嫌い、相場による儲けを最も価値ある所得として大事にする。
そして大正時代を代表するのは田附将軍・田附政次郎。「知ったらしまい」「あまりものに値なし」など数々の名言を残した。田附は終始三品市場を本陣とし、株やコメに手を出すことはなかった。田附は相場師と呼ばれることに何の抵抗感もなかった。「投機の権化」と言われるほどに相場を愛し続けた。 昭和を代表する相場師はヤマタネ・山崎種二。「鞘種」とも呼ばれ「市場のごみ」と投機師たちから“ゴミ”のように軽視される鞘を追い求め財を成した。まさに鞘も積もれば山となる。ヤマタネはケチ種の異名を冠せられた時期もある。長男富治にとってはそのあだ名は承服できなかった。筆者が「ヤマタネはケチではなかった」などと書くと、山種美術館の絵ハガキで丁重な礼状をくれた。実際ヤマタネは相場のもうけをいかに社会還元したか計り知れないものがある。熱海の海岸にある2代目「お宮の松」もヤマタネが寄贈したものである。
3人の神様に次いでは金貸しで海運業を営む乾新兵衛、「つけろ買い」の文次郎、“浪華のドンファン”小田未造は相場に大勝、名妓照葉と外遊へ。理知に長けた「静岡筋」栗田嘉記の敗北には「栗田を殺すなの」の大合唱。「発明王」寺町博は相場は下手だったが、相場をこよなく愛し鎧橋周辺に惜しげもなく散財した。市場関係者にとってはまさに神様のような存在であった。
「先物寸言」は畏友米良周が編集、発行していた「先物ジャーナル」の時代から月1回書かせてもらっていた。先物市場をよぎる多彩な顔ぶれの足跡を顕彰するよう心掛けた。だが、その米良氏もすでに他界、先物ジャーナル紙自体が休刊という名の廃刊に追い込まれたことがCX(商品先物取引)の苦渋を物語っている。東京商品取引所がJPXと統合するのを機に再生への道を歩むことを願ってやまない。政府の掲げる成長戦略の旗手としてよみがえる日を信じたい。
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