本書の初版が多くの個人投資家に「必読書」として絶賛されたのは、このサヤ取りを個人で実践する秘訣が、惜しげもなく披露されていたからである。筆者自身、長きにわたってサヤ取りを実践する個人投資家。だからこそ本書には、本物ならではの分かりやすさと具体性があるのだ。
本書の特長として次の5つが挙げられる。
■相場用語集
アービトラージ
市場間のサヤ取りのこと。
板合せ(いたあわせ)
東京工業品取引所や商品先物オプション市場で、寄り付きと引けに使用されてい
る取引手法。最も多くの取引が成立する単一の値段で約定させる方法。ほかの商
品で行われている節ごとの板寄せとは異なり、売り買いの注文約定枚数が一致す
ることを条件にしていない。このため仮に、成り行き注文を出しても成立すると
はかぎらない。
委託証拠金(いたくしょうこきん)
証拠金の項参照。
板寄せ(いたよせ)
節取引で、立会開始前にすべて同時注文として扱う方式。売りと買いが同数にな
るまでセリを続けて値段を決める。東京穀物商品取引所などで行われている。証
券取引所でいう板寄せは、前述した板合せのことを指して呼んでいる。
1枚(いちまい)
取引所での最低売買単位。
往って来い(いってこい)
いったん、上下いずれかに振れた相場が、結局はもとの水準に戻ってしまうこ
と。
受け方(うけかた)
受け渡しのときに商品を受け取る側の者をいう。
埋め玉(うめぎょく)
落ち玉の項参照。
上ザヤ(うわざや)
一方の価格がもう一方の価格に比べて高いこと。
追証(おいしょう)
現物以外の取引において、未決済の建玉の計算上の損失が生じたときに、証券
(商品)会社に納めなければならない追加の保証金のこと。
大引け(おおびけ)
その日の最後の取引。
おかめザヤ
当限や先限に比べて、期中が低くなっているサヤの形。
落ち玉(おちぎょく)
手仕舞いする玉のこと。埋め玉と同義。
オプション
約束の日時、または約束の日時までの期間中に、あらかじめ決められた一定数量
の対象物をあらかじめ決められた価格で売買する「権利」。この権利に「買う権
利」と「売る権利」の2つがあり、前者をコール・オプション(Call)、後者を
プット・オプション(Put)という。
終値(おわりね)
大引けでついた値段。
片バリ(かたばり)
売りなら売り玉のみ。買いなら買い玉のみのポジションのこと。主にサヤ取りに
対比して使うことが多い用語。
期先(きさき)
先物取引において、現実に建っている限月のうち受渡までの期間が長いものをい
う。
期近(きぢか)
先物取引において、受渡期日の近くなっている限月をいう。6限月制のものは近
い2本を期近という。
逆ザヤ(ぎゃくざや)
期近から期先へ順に安くなっているサヤの形。
逆ザヤ取り(ぎゃくざやどり)
期近売り、期先買いのポジションのサヤ取り。
逆バリ(ぎゃくばり)
市場の値動き(トレンド)とは反対の方向に売買することをいう。この反対が順
バリ。
玉帳(ぎょくちょう)
売買の記録をするための帳面。
気配値(けはいね)
売り方が出す、売ろうとしている値段で一番安い値段が売り気配。買い方が出
す、買おうとしている値段の一番高い値段を買い気配という。実際に約定した値
段ではない。
後場(ごば)
午後の立会。
コンバーティブル・アービトラージ
転換社債の買いと、株式の空売りを組み合わせるサヤ取り。
裁定取引(さいていとりひき)
サヤ取りのことであるが、金融・株式関係では、好んでこの用語を使うようであ
る。
先限(さきぎり)
最も納会から遠い限月のこと。日本の商品市場では、すべての限月のうちで、こ
の先限の出来高が一番大きくなり、中心限月になることが多い。
サヤ
相関関係のあるものの価格差。
サヤすべり
順ザヤが続いて、期近になるほど値段が下がる現象。
サヤすべり取り
ローリングの項参照。
ザラバ取引
価格優先・時間優先の原則で、売り方と買い方の値段が合致した注文から取引を
成立させる方法。板寄せが、単一約定値段なのに対して、こちらは、複数約定値
段となる。日本の商品先物市場においては、オプション、東京工業品取引所の全
銘柄で、この方式が採用されている。
3番限固定サヤグラフ
サヤグラフの一種で、3番限を基準にしたグラフであることから、こう呼ばれて
いる。サヤの形の移り変わりが分かりやすいグラフ。
シーズナル・スプレッド
サヤの変化に季節的特性が生じる現象。またこれを利用してサヤ取りをするこ
と。
塩漬け(しおづけ)
買った株が下がった場合にそのまま損切りせずに、長期にわたって寝かし続ける
こと。
順ザヤ(じゅんざや)
期近から期先へ順に高くなっているサヤの形。
順ザヤ取り(じゅんざやどり)
期先売り、期近買いのポジションのサヤ取り。
順バリ
市場の値動き(トレンド)と同方向に売買することをいう。この反対が逆バリ。
ショート
売りのこと。売り持ちのポジションをショートポジションという。
商品取引員(しょうひんとりひきいん)
いわゆるブローカーのことで、日本の商品先物を扱う業者のことを指す。人のこ
とを指しているわけではない。
スクイズ
玉締めともいう。空売りの踏み上げを狙って、人為的に品不足の状態をつくりだ
し、主に当限の値段を吊り上げる状態をいう。買い仕手がよく使う戦略。嫁姑現
象が起こりやすい。
ストップ高・安
値幅制限のことをいう。多くの先物市場において、取引所は1日で動くことので
きる価格の最大幅を決めている。この最大幅まで上昇することをストップ高(リ
ミット・アップ)、反対に最大幅まで下落することをストップ安(リミット・タ
ウン)という。
ストラドル
異銘柄間のサヤ取り。
スプレッド
おもに、同銘柄の限月間サヤ取りのことをいう。
節取引(せつとりひき)
価格決定に板寄せ方式を採用している取引のこと。場節取引ともいい、午前と午
後に数回行われる。
前場(ぜんば)
午前の立会。
損切り(そんぎり)
損勘定になっているポジションに見切りをつけて、手仕舞いすること。
建ち玉(たちぎょく)
新規に建てる玉のこと。
建玉制限(たてぎょくせいげん)
投機家が保持することのできる最大建玉数のこと。多くの先物取引において、取
引所は制限を設けている。
中心限月
最も商いが多い限月。
つなぎ
ポジションをヘッジするために、別の限月に反対のポジションを建てること。
つもり売買
実際に資金を使わずに、仮想的なトレードをすること。
定期市場(ていきしじょう)
先物市場のこと。
デイトレード
建てた玉をその日のうちに決済してしまう取引方法。日ばかり商いともいう。
出来高(てきだか)
取引枚数。
手仕舞い(てじまい)
現在持っているポジションを清算すること。埋め玉。落ち玉。
転換社債(てんかんしゃさい)
CBと呼ばれることも多い。株式に転換することのできる社債。一定条件のもとで
転換対象となる株との間に値段の飛離があるとサヤ取りができる。
天狗ザヤ(てんぐざや)
当限や先限に比べて、期中が高くなっているサヤの形。
当業者(とうぎょうしゃ)
商社や生産者など、商品先物市場に上場されている商品の現物を扱って、生業に
している業者。
当限(とうぎり)
最も納会が近い限月。納会近くになると、値幅制限が外されるため、ほかの限月
より大きな動きをすることがある。日本の商品市場以外では、当限が商いの最も
活発な中心限月になることが多い。
同時出会注文(どうじであいちゅうもん)
同節に2つ以上の限月に注文を出して、一方の注文が通らなければ、もう一方の
注文を取り消す注文。
ドテン
途転。持っているポジションを手仕舞うと同時に、正反対のポジションを建てる
こと。
トラッキングエラー
約定したその節、あるいはその瞬間(ザラバの場合)だけ突飛な値段がついてし
まい、不利な売買になってしまうことをいう。
トレンド
ある期間にわたって価格が上昇したり、下落したりしているパターンが継続的に
確認できること。サヤ取りでは拡大トレンド、縮小トレンドというように使われ
る。
ドローダウン
引かされ幅。純資産曲線の天井から大底までのトレーディングの損失幅。例え
ば、取引口座が7万5,000ドルで純資産のピークとなり、そこから連敗して2万
5,000ドルの損失を出した場合、それは33.3%のドローダウンである。小さいド
ロータウンは、トレーダーや売買システムにとって望ましいパフォーマンスの特
徴である。
投げ(なげ)
損勘定の買い玉を手仕舞うこと。
ナンピン
ポジションと反対方向に相場が動いたときに、さらに同じ方向のポジションの建
ち玉を増して、ポジション全体の平均値を有利にする技法。難平とも書く。
日経225
日本の株式の代表的な指標。この指数の先物が、大阪証券取引所、SGX(シンガ
ポール取引所)、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)に上場されており、現
物株との間でさかんに、サヤ取り(裁定取引)が行われている。
値幅制限(ねはばせいげん)
ストップの項参照。
始値(はじめね)
その日の一番の寄り付きの値段のことをいう。週単位でみるときは、週の最初の
値段のこと。
バタフライ
三角方式ともいう。3つの限月を使用してサヤ取りをすること。例えば、期近を
1枚買い、期先も1枚買い、期中を2枚売り、といったポジション。
場帳(ばちょう)
相場の値段を記録しておくための帳面。
引かされる(ひかされる)
自分の持っているポジションが損勘定の状態になっていること。
引け成り(ひけなり)
引け(前場引け、あるいは大引け)の値段で約定させる成り行き注文。引けで行
われる売買は板寄せではなく板合せのため、必ず約定するとはかぎらない。
ビラミッティング
増し玉の方法。建玉を増やすときに現在持っている建玉の評価益を使うこと。取
引のレバレッジ効果を大きくすることで、ピラミッティングは利益と同様にリス
クもその可能性が増すことになる。
2つまたぎ
異限月サヤ取りをするときに限月を2つまたいで、ポジションをつくること。例
えば、連続6限月制の銘柄なら、1月限と4月眼は2つまたぎのポジションとな
る。
踏み上げ(ふみあげ)
売り方による損を承知の買い戻しが連続することにより、相場が急激に上げるこ
と。スクイズでよく起こる。
ブレイクアウト
操み合いのパターンの上限や下限を放れる価格の動き。
ブロック
スプレッド・ブロックのこと。サヤ取り用の場帳。
ヘッジ
リスク回避のことで先物取引の機能のひとつ。生産者、商社、製造業者などが値
動きによって現物取引で損失を受けるのを防ぐ手段。値下がりリスクを回避する
ために先物を売る「売りヘッジ」、値上がりリスクを回避するために先物を買う
「買いヘッジ」がある。
ポジション
建玉のこと。
ボラティリティ
価格の変動率。一定の期間にどれだけの価格変動をするかを示す数値。
曲がる(まがる)
相場で思惑が外れること。
増し玉(ましぎょく)
既存のポジションをさらに買い増ししたり、売り増ししたりして、ポジションを
増やしていくこと。ピラミッティングなどいくつかの方法がある。
マネーマネジメント
資金管理。トレードにリスク管理のさまざまな方法を用いること。
マル
業界用語では出した注文を取り消すことをいう。また、投資家がポジションをす
べて手仕舞った状態のこともいう。例えば「年末はなにがあるか分からないから
マルにしておこう」というように使われる。
銘柄(めいがら)
売買される会社の株のこと。または商品取引所などに上場されている品目。
保合(もちあい)
相場が膠着状態であり、上にも下にも動かないで小さな変動にとどまっているこ
と。
揉み合い相場(もみあいそうば)
価格が一定の範囲内で上昇も下落もせず横ばいの動きが続く相場のパターン。
約定(やくじょう)
市場で売買注文が成立したこと。
ヤリ
売りのこと。
呼値(よびね)
取引所で値段を決めるときの数量の単位。銘柄ごとに決められており、例えば東
京トウモロコシは1トン、東京金は1グラムの値段で取引されている。実際の売
買単位(1枚)は、これに倍率をかけたもので、東京トウモロコシなら50倍の50
トン、東京金なら1,000倍の1,000グラム(1kg)になる。
嫁姑現象(よめしゅうとげんしょう)
当限に近づくにしたがって、値段が上がる現象。嫁が年月を経て、姑になること
からこの名がついたといわれている。
寄り付き(よりつき)
その日の最初の取引。これでついた値段が始値。
寄り成り(よりなり)
寄り付きの値段で約定させる成り行き注文。
寄り引け同事(よりびけどうじ)
たんに同事ともいう。寄り付きと大引けの値が同じであること。
4本値
始値、高値、安値、終値の4つの値。
利食い(りぐい)
利益になった建玉を決済して、利益を確定させることをいう。損切りの反対を指
す。
リスク管理
損失を限定するために、トレードにルールを設けること。
流動性(りゅうどうせい)
マーケットでの取引量。
流動性のあるマーケット
大きな価格の変動を伴わず、多くの売買注文をこなすだけの取引量が1日のうち
にあるマーケットのこと。いいかえれば、建玉の新規や手仕舞いが容易にできる
ということでもある。実際に売買する投資家にとって、とても大切なことであ
る。
レバレッジ
てこの効果。投下された資本の額よりも大きな金額の商品や金融商品を管理する
能力。建玉のレバレッジが大きければ大きいほど利益や損失の可能性が大きくな
る。
ローカルズ
取引所のフロアで、自己資金で売買する人たちのこと。米国の取引所に多い。
ローリング
サヤすべり取りのこと。商品市場の場合は、順ザヤのプレミアムを売り続けるこ
とによって、プレミアムの剥げを取る手法。
ロールオーバー
ポジションを別の限月に移動させること。
ロング
買いのこと。買い持ちのポジションをロングポジションという。
渡し方(わたしかた)
受け渡しのときに商品を渡す側の者。
ワラント
新株引受権付社債。通常は、社債を切り離した、引受権証書の部分のみが市場に
出回って売買されている。機関投資家が、このワラントと株のサヤ取りを行って
いるといわれている。
<正誤表>
本書図表の表記に誤りがありました。以下に訂正しお詫び申し上げます。
P157 図表6-1
P169 図表6-8
P191 図表8-1
P195 図表8-3
P216 図表
以上の折れ線グラフは逆ザヤであり、限月の表記がすべて逆になります。
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