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ウィザードブックシリーズ Vol.174



逆張りトレーダー
メディア日記を付けて投資機会を見極める

2010年12月発売/A5判 上製本 318頁
ISBN 978-4-7759-7141-3 C2033
定価本体3,800円+税

著者●カール・フティーア
監修者●長尾慎太郎
訳者●山口雅裕


著者紹介 | 目次 | 関連書籍  ◆立ち読みコーナー  監修者まえがき ・ 序文 (本テキストは再校時のものです)

メディア日記(逆張り用の場帳)を書き留めれば 「大衆筋」のポジションはわかる!

 投資やトレーディングでの逆張りの理論は、相場のかなりの部分が大衆によって動かされているという考えに基づいている。株式市場において特定の投資テーマをもとに大衆が形成されると、彼らは株価を適正価格と比べてあまりにも高くまで押し上げたり、あるいはあまりにも安くまで押し下げることがある。もしその大衆のせいで株の価格に間違いが起きたり、または大衆が適正価格と比べてあまりに高いかあまりに安いところまで相場を動かしたところを見極められるのならば、論理的にはバイ・アンド・ホールドよりも良い成果を上げられるはずだと、逆張りトレーダーは考える。本書は、大衆が周期的に熱狂と恐怖を繰り返すのを利用し、ほとんどの人が無分別だと思いかねないが実は賢い投資選択をする方法を教える。

 経験豊かなトレーダーであるカール・フティーアが逆張りトレーダーの主要な道具――メディア日記――について説明する。相場が大きな転換期を迎える前には、ほとんどいつも雑誌の表紙や新聞の大見出しがその兆しを示してくれる。だが、それらは結局、完全に間違っていると分かる。そのため、量的な指標とニュースメディアを使って大衆行動を見張り、さらに歴史的事例を振り返ることで、トレーダーや投資家は相場の転換期に利益を得る用意ができる。メディア日記の情報をどう解釈し、現在と過去の相場変動を統計的な見方でどう調整すればよいのかについて、フティーアは具体的に教えてくれる。1982〜2000年の強気相場、2000〜2002年の弱気相場、2002〜2007年の強気相場、2008年の株価暴落を振り返ることによって、株式市場がその期間に犯した多くの評価の間違いを、彼自身のメディア日記がいかにうまく見極めたかが明らかになる。さらに、彼は逆張り理論の発展を説明し、理論に貢献した重要人物に焦点を当てて、すべての逆張りトレーダーに勧めたい本を何冊か紹介している。また、逆張りトレーダーのためにバリュー投資の簡単な説明も行っている。

 逆張りトレーダーの仕事は相場の高値や安値を予測することでも、いかなる種類の正しい予測をすることでもない。フティーアはひとつの目標――バイ・アンド・ホールド戦略によって得られるリターンよりも高いリターンを得ること――に焦点を当てる。本書によって、市場平均を上回るという意外に難しい目標を達成する方法が分かるだろう。

 本書は、大衆に基づく集団思考が市場を過大評価するか過小評価するときに現れる投資機会を見極め、それを利用する技術を明かしている。

 投資ブログの第一人者であるフティーアによる本書は、大衆の振る舞いがどうして相場を動かすのかを詳しく説明し、大衆に基づく集団思考がどのように効率的市場仮説につながるのかを明らかにしている。フティーアは慎重派にも積極派にもそれぞれ具体的な戦略を示し、実用的な逆張りトレード手法を提供している。彼はテクニカル指標や定量的な情報をメディアの大見出しと組み合わせて、市場センチメントがいつ行きすぎたのかを判断する方法を教えてくれる。また、客観性を保ちつつ大衆の動きを評価し、大衆とは逆のポジションを取るべき状況を見極める道具を提供している。

■本書への賛辞 「ほとんどの著者が根本的な投資上の問題をすっかり見落としている。それは私たち自身の観察次第で結果が絶えず変わるという事実だ。ありがたいことに、カール・フティーアはこの分析の行き詰まりから抜け出す方法や超過収益を得る方法を教えてくれる――彼について行く資質があればだが……」
――ポール・M・モンゴメリー(モンゴメリー・キャピタル・マネジメントのオーナー兼CEO)



原著『The Art of Contrarian Trading: How to Profit from Crowd Behavior in the Financial Markets』

■著者 カール・フティーア(Carl Futia)

25年以上の経験を持つ株価指数先物のトレーダー。高い評価を得ている投資・トレーディングのブログ(http://carlfutia.blogspot.com/)を運営し、そこでは株式や債券やさまざまな商品市場に関する非常に具体的な価格予測を行っている。エール大学で経済学の学士号、カリフォルニア大学バークレー校で数学の修士号、同じくバークレー校で数理経済学の博士号を修得。


■目次

監修者まえがき
序文

第1章 市場で勝てるか
      投機家のエッジ
      投資家を手助けする
      市場の間違いを見つける
      証拠を見る
      マーケットタイミング
      投資のジレンマ

第2章 市場の間違い
      効率的市場
      ジェットコースターと株式市場
      株価の値動きは激しすぎるか?
      行動ファイナンス
      行動ファイナンスと利用可能な市場の間違い
      再び、うまい話はない

第3章 エッジ
      市場の間違い論
      成功には協力が必要
      協力は間違いを生む
      大衆の社会的意味
      逆張りトレーダーの考え方

第4章 大衆の賢さと愚かさ
      大衆がその構成員よりも賢いことがあるか?
      集団の賢さの必要性
      金融市場における独立した判断
      市場心理の予測
      情報カスケードが投機の渦へ流れ込む

第5章 投資大衆のライフサイクルと心理
      はじめに
      生まれてから消えるまで
      1994〜2000年の株式市場のバブル
      今度は違う――ニューエコノミー
      打ち砕かれた夢――2001〜2002年の弱気の大衆筋
      大衆の本能と確実性の追求
      大衆筋の先導者たち
      大衆筋の精神的まとまり
      影響されやすさ、ボラティリティ、崩壊

第6章 市場の間違いの歴史的文脈
      成熟した投資テーマと市場の大衆筋
      間違いなのか適正価格なのか
      市場データの入手先
      致命的な間違い
      株式市場はいつ極端な過大評価されるのか?
      株式市場はいつ極端な過小評価されるのか?
      ピークオイル論のバブル

第7章 大衆のコミュニケーション方法
      情報カスケードは投資家に何を伝えるのか
      マスメディアの役割
      個人の柔軟性と今後のメディアについて一言
      市場を見張る
      バブルと暴落の歴史を学ぶ

第8章 メディア日記のつくり方
      エッジを持つこと
      私の日記は2002年にどういう結果をもたらしたか
      切り抜きの準備
      私のメディア日記からの抜粋――2005年11月
      私のメディア日記からの抜粋――2006年6月
      雑誌の表紙を解釈する

第9章 重要な投資テーマ
      市場の話をする
      新たな時代
      戦争や国際的な政情不安が株式市場にもたらす影響
      金融危機は大衆筋を生む
      新しい産業や企業
      商品ブーム
      金利の動向と債券市場
      メディア日記を使って投資テーマを追う

第10章 日記の解釈――市場記号論
      メディアと情報カスケード
      あなたのメディア日記――情報カスケードの生きた歴史
      記号論――記号の研究
      最も重要な記号――価格チャート
      雑誌の特集記事
      新聞の大見出し
      第1面の記事と社説
      考えを固めさせる出来事
      証拠を評価する
      再び市場の記号論について

第11章 逆張りトレードの大戦略
      逆張りの投資計画
      逆張りトレーダーのポートフォリオ
      逆張りトレーダーの投資目標
      キャピタルゲイン税についての注意
      逆張り戦略1――投機をしない
      逆張り戦略2――大衆と一緒に投資をしない
      逆張り戦略3――逆張りでのリバランス
      積極的な逆張り
      積極的な逆張り向けのロングオンリー戦略
      さらに積極的な逆張り戦略

第12章 1982〜2000年の壮大な強気相場
      はじめに
      1987年の暴落
      昔を振り返る――1929〜1932年の株価暴落と弱気相場
      S&L危機、1987〜1990年の強気相場と1990年の弱気相場の大衆筋
      1991〜1994年の喜びなき上昇
      1995〜2000年、株式市場で膨らむバブル
      1987年の株価暴落に直面する積極的な逆張り
      1990年の安値
      LTCMの破たん

第13章 バブルの崩壊、2000〜2002年の弱気相場
      壮大な強気相場の終わり
      2000〜2002年の弱気相場における逆張りのリバランス
      再び長い下げ
      暴落時における逆張りのリバランス
      2000〜2002年の弱気相場での積極的な逆張り
      打ちのめされたウォール街
      サマーラリー
      2001年3月の急落
      9.11のテロ攻撃
      弱気相場の終わり
      新たな強気相場への転換

第14章 バブル後の2002〜2007年の強気相場
      弱気に巻き込まれないために
      どんな強気相場か? 強気の情報カスケードの兆候を探す
      グーグルのIPO
      不動産バブル
      2002〜2007年の強気相場での積極的な逆張り
      2005年4月――買いの機会
      2006年6月――もうひとつの買いの機会
      2007年春の積極的な逆張り
      2007年7〜10月

第15章 2008年の金融危機
      金融危機での慎重な逆張り
      住宅ローン市場の混乱
      負債デフレの悪循環の定着
      最後の貸し手
      信用危機と逆張りトレーダー
      強気相場の天井と投資配分の最初の引き下げ
      ベアー・スターンズの破たん
      ファニーメイとフレディマック
      株価暴落――リーマン・ブラザーズの破たん

第16章 逆張りの考え方と実行について
      株式市場での心理
      逆張りの名づけ親
      世論調査――あなたはどう思いますか
      端株投資家は常に間違っているか?
      過去の予測の巨人
      ポール・モンゴメリー、雑誌の表紙を使った逆張り
      根拠なき熱狂やその他のバブル
      バリュー投資――簡単な計算法

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■監修者まえがき

 本書はカール・フティーアの著した“The Art of Contrarian Trading : How to Profit from Crowd Behavior in the Financial Markets”の邦訳である。これまで“contrarian”は「逆張り投資家」と訳されることも多かったが、本来の意味のコントラリアンは「大衆の動向に同調しない人」のことであり、本書はコントラリアンの立場から投資を行う手法について書かれた数少ない書籍である。

 さて、相場の世界でよく言われることのひとつに、「大衆はいつも間違っている」というのがある。そしてそれは、大衆筋はいつも間違っているのだから彼らと反対のことをしていれば相場で儲けることができるのだと続く。この考え方は、半分は正しいが正確ではない。なぜなら、相場においては確かに大衆は間違うことが多いのも事実であるが、正しいこともあり、さらに間違っていたとしても長いときには数年にわたりその間違いが訂正されないこともあるからである。

 このため、たとえ大衆の間違いを認識できたとしても、それを利用して利益を上げるためには、その間違いがいつまで続き、その後どのように訂正されるのかを正しく判断できなければいけないことになる。これは現実的にはかなり難しい作業である。なぜなら私たちもまた往々にして大衆の一部であり、彼らに同調しているかぎり精神的な安定が得られるからである。そうした習性は人間の本性の一部であり、それに逆らって孤高を貫くには大変な努力と意思の強さ、そして見識が必要である。

 著者はマーケットにおいてコントラリアンであり続けるための具体的な手段として、経済誌(紙)ではなく一般誌(紙)の記事を利用したメディア日記をつけることを提案している。著者によるこのアプローチの解説は具体的かつ詳細で、実際に作業を要するのは特殊な機会に限定されるために、これなら日々私たちが新聞や雑誌を読むついでに行うことが可能で、大した負荷なく実践できるだろう。

 さらにここにはメディア日記の利用の仕方だけではなく、長年コントラリアン投資家として活動してきた著者ならではのノウハウがたくさん述べられている。特に上げ相場と下げ相場とでは大衆筋の間違いの犯し方とそこからの訂正の過程に大きな違いがあるという知見などは、長期投資を行う投資家にとって注目に値する。本書は数少ないコントラリアン投資の教科書として必読の書籍であると考える。

 最後に、翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山口雅裕氏は正確な翻訳を実現してくださった。阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2010年11月

長尾慎太郎



■序文

 株式市場でなかなか市場平均を上回る利益を出せない理由は何だろうか? だれがどう見ても、安く買って高く売る機会はいくらでもある。例えば、1998〜2008年の10年間を振り返ってみよう。その期間にS&P500株価指数は752から1565までの間を行き来した。この範囲でかなり大きな値動きが5回あった。1998年にはロシアが債務不履行を宣言し、ヘッジファンド大手のLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が破たんした。混乱が少し続いて、S&P500は1187から957まで20%近く下落した。だが、警戒感はすぐに消え去った。その後の株価上昇はアメリカの経済史上かつてないバブルを株式市場にもたらした。S&P500は1982年の安値102から2000年3月の高値1527まで、ほぼ1400%も上昇した。

 この株式市場の大変動で、最も大きなスリルを味わえたのはそこからだった。S&P500はその後の2年間で50%近く下落した。2002年10月に指数が安値777を付けると、投資家はネット株の衝撃的な暴落に息をのみ、企業の会計報告には意味がないのではと恐れた。しかし、その2年間の株価急落は、必要な勢いを蓄えて次の頂上まで市場を押し上げるためだけにあったかのようだった。その後5年間でS&P500は2倍以上になり、2007年10月には終値で1565の高値を付けた。

 2007年の天井からの下落は徐々に始まったので、先に待ち受ける脅威をだれも想像できなかった。1年とたたない2008年には恐慌状態になり、世界中の金融機関を破たんに追いやった。残った金融機関も倒産寸前までいった。S&P500は1年前の高値から52%も急落し、2008年11月20日は終値で752を付けた。多くの人は、さらに悪いことが起き

るのではないかと恐れた。

 この本で私は、普通の投資家がこうした株価の激しい動きから利益を得るのがなぜ難しいのかについて語るつもりだ。バイ・アンド・ホールド戦略ではベンチマークに近いリターンを狙う。その戦略よりも一貫して安く買って高く売る手法のほうが良い結果を出せそうだが、それは極めて難しい。その理由を私は説明する。あなたは、そこできちんとした情報に基づいて、自分の投資戦略を選ぶことができるだろう。

 市場平均を上回る利益を出そうとすることは自分にふさわしい選択ではない、とあなたは考えるかもしれない。必要とされる感情面の負担を考えると、やる価値はないかもしれない。こういう自覚はとても貴重で、この本の値段よりもはるかに価値がある。

 あるいは、あなたは逆張りによるトレーディングを学ぶという選択をするかもしれない。もしそうなら、厳しい道を選んだことになるだろう。しかし、現在出版されている本で、この目標を達成するのに役立つ唯一の本をあなたは手にしているとも思っている。

 私は逆張りトレーダーだ。私は多くの間違いをしてきた。また、悪い時期に大衆に加わっていることに気がつかなかった。そういう苦労を重ねて私は技術を身につけた。株価が大きく上下する理由は、みんなが大衆――同じ考えを持った人々の社会的グループ――に加わりたがるからだ。そのような大衆が株式市場で話題になっている投資に沿って生まれると、株価を適正価格よりも極端に押し上げたり押し下げたりする。なぜだろうか? 大衆は彼らに賛成しない見方は抑えて、彼らの間で一致した見方を広げる。大衆に加わっている人たちは別々ではなく一緒に行動する。そのため、それが起きると相場は大幅に適正価格から外れてしまう。

 経済の専門家たちは、株価は企業収益と配当から見て正当化できる範囲を大きく超えて変動すると考えている。私は、投資大衆が絶えず生まれては消えるから、株価があまりにも変わりやすかったり、大きく変動したりする傾向があるのだと考えている。

 これについては別の説明もできる。投資大衆のせいでミスターマーケットが値付けを間違えるのだ。ミスターマーケットとは、バリュー(割安株)投資の父であるベンジャミン・グレアムが語った投資に関する例え話の主題である。ミスターマーケットは毎日あなたのそばにいて、あなたの投資リストに加える価値があると思うものを伝える。多くの場合、彼の予想はもっともらしく、景気の状況からも正当化できるように見える。しかし、熱狂や恐れで見境がつかなくなることも多い。そのときに彼が提示する価格はばかげたものにしか見えない。投資大衆のせいで、ミスターマーケットは熱狂や恐れを定期的に繰り返す。

 投資大衆のせいで株式市場の値付けに間違いが起きるのなら、彼らが適正価格と比べてあまりにも高値や安値まで個別株や市場全体を押し動かした状況を見つけられるなら、理屈としてはバイ・アンド・ホールドの投資家よりもうまくやれるはずだ。私が本書で提案するこの方法は単純な観察に基づいている。

 情報が交わされるなかで情報カスケードと呼ばれる現象が起きると、大衆が生まれて成長する。情報カスケードという現象が起こっている間、活字メディアや電子メディアは市場の最近の劇的な動きや、それによって投資家にもたらされる利益や損失に焦点を合わせる。すると人々は持っていたもっともな疑いを脇に置いて、メディアが強調している投資テーマに乗る。こうして投資大衆が大きくなるにつれて、市場は適正価格から離れていき、評価の間違いもかなり目立ってくる。

 私はメディアで情報カスケードを追えば、ミスターマーケットが周期的に繰り返す熱狂と恐れを、逆張りトレーダーが利用できるようになると考えている。このやり方を、メディア日記をつけることで説明するつもりだ。本書の残りの3分の1で、1987年の暴落から2008年の恐慌状態までの激しく揺れ続ける期間で、逆張りトレーダーがメディア日記をどう使えばよいかの例を示す。

 警告しておくが、逆張りトレーダーになる道は厳しいうえに、望む結果が得られるかどうかも不確かである。ほとんどの人は逆張りトレーダーには向いていない。なぜなら、人はあまりにも仲間の投資家と交わったり認められたりしたがるからだ。しかし、大衆から離れ、大衆がつまらないとか無分別とみなしている賢い投資選択をする用意があるなら、この本はあなたにふさわしい。私の逆張りによる見方を実際に追いかけたい人もいるだろう。そういう人は私のブログに目を向けるとよい。それは現在、http://www.carlfutia.blogspot.com にある。

 これからの16章では、それぞれの初めに内容の簡単な要点を書いている。そのため今は、この本の構成の全体像と逆張りの過程を説明する方法を述べるだけにとどめたい。

 第1章から第5章では、逆張り法の基になる根拠を述べる。勝つ投機家もいるが、ほとんどの投機家は負ける。なぜそうなるかという疑問に答えることで、成功した投機家特有のエッジ(優位性)を見極める。また、なぜ投資大衆のせいで市場の間違いが起きるのかを見ていき、そうした大衆に特有の行動についても話す。

 第6章から第11章では、逆張りトレーディングの実際の手法を説明する。ここでは逆張りトレーダーの主な道具であるメディア日記について学ぶ。メディア日記に含まれる情報をどのように解釈し、現在と過去の値動きの統計的な見方とどう折り合いをつけるのかについて見ていく。また、慎重な逆張りと積極的な逆張り向けの、2通りの逆張りトレーディング戦略を具体的に説明する。  第12章から第15章では、これまで説明してきた技術を株式市場に当てはめる。私は1987年から2008年まで、実際にメディア日記をつけてきた。その日記が株式市場で起きた多くの株式評価の間違いをどれほど効果的に特定できたか知ると、きっと驚くと思う。

 第16章は、私が逆張りトレーダーになる過程で自分用に書いた非常に短い小論やメモを少し入れている。そこでは逆張り理論の発展を説明し、この理論に貢献した重要な人たちに焦点を当てる。また、すべての逆張り投資家が読むべき本について何冊か手短に説明する。さらに、逆張りトレーダーのために簡単に計算できるバリュー投資の説明をする。

 この本には株価チャートが1枚もないのに気づいているだろう。これには正当な理由がある。株式市場でのテクニックの説明にチャートをつけると、普通はその後どのような展開をしたかまで見えてしまう。すると、良い投資判断をすれば必ず良い結果が生まれることは明らかに思われる。しかし、現実の判断はすべて極めて不確実な状況でなされる。その時点では、あなたの選択が利益を生むか損失を生むかはまったく分からない。実際の投資判断に付きまとう、この不確かな感覚をより多く伝えるために、私は投資の選択をしたときに知ることができた事実だけに焦点を当てることにした。そのためには、チャートを説明に使わないのが一番だ。

 チャートを説明から外す理由はほかにもある。チャートを示すと、人間の目は目立った特徴におのずと引きつけられる。株価チャートの場合、普通それは高値と安値だ。しかし、本書の重要なメッセージのひとつは、株式市場の高値と安値を予測することも、どんな種類の正しい予測をすることも、逆張りトレーダーの仕事ではないということだ。逆張りトレーダーは唯一の目標に焦点を当てる。それはバイ・アンド・ホールド戦略よりも高いリターンを得ることだ。この目標を達成するために、私たちは大衆を利用する投資戦略を用いる。この戦略では安値近くで買って高値近くで売る必要はない。売値の平均が買値の平均を十分に上回り、とったリスクやお金を寝かせた時間に得られた価値を補えるだけの金額が要求されるだけだ。

 この本を書くことには冒険と喜びがあった。本書から投資結果を高めるアイデアをあなたがひとつでも得られたら、私は二重に報いられる。それでは不確かな旅を始めよう。

 2008年11月26日

カール・フティーア

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