株価変化のカレンダー効果 第3回
日経平均(現物指数)の月効果 その一
オリエント貿易アセットマネジメント部 浅井宏作成
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第
3回は日経平均の現物指数を利用して月中の値動きについて検証します。「ラリー・ウィリアムズの短期売買法」に言及されている営業日ベースでみた日次収益率の推移を計算しました。
データとしては、日経平均(現物指数)の戦後東証開設以来の終値データ(
1999年9月末まで)を用います。日次収益率(=(当日終値÷前日終値)×100−100)、累積収益率(=1営業日からの累積変化率)、上昇日率(=前日比上昇した日の比率)、上昇日上昇率(=上昇日の収益率平均)、下落日下落率(=下落日の収益率平均)については、第1回と同じ計算式です。
第一に、月の始めを1営業日として(基点として)、日次収益率がどのように変化するのかをみてみましょう。表1は全期間のデータを使って計算した結果です。
表1をみると、1営業日と2営業日の日次収益率が比較的高く(それぞれ+
0.051%、+0.120%)、また上昇日率も50%を超えている(それぞれ56.29%と56.46%)ことがわかります。しばしば「新補は高い」といわれていますが、それを裏付けているといえそうです。また、月中の日次収益率と累積収益率の推移をみると、
@月の初めから
11営業日目までは概ね上昇基調にある、A
11営業日目をピークとして18日営業日までやや下落基調となる、Bその後、月末まで再び上昇基調が続く、
ということがわかります。
また、
20営業日目以降の日次収益率と上昇日率が著しく高くなっていることが目立ちます。ただ、各月の営業日数が異なるために、22営業日目以降データ数が減少することに注意する必要があります。そこで、次に月の終わりを
1営業目として(基点として)、日次収益率がどのように変化するのかをみてみましょう(表2を参照)。
表2をみると、1営業日目から5営業日目までの日次収益率が比較的高く、また上昇日率も
55%を超えていることがわかります。特に月の最終日の日次収益率は+0.212%と全営業日の中で最も高く、また上昇日率も63.91%と高い数値となっています。「月末最終営業日は高い」といえそうです。証券の世界では、「実質月内最終売買日」、「実質月替わり」あるいは「名実ともに月替わり」という言い方をします。
受渡し日が最終営業日にあたる売買日(最終営業日からその日を含む4営業日前)を「実質月内最終売買日」と呼びます。また、受渡し日が翌月の第1営業日にあたる売買日(翌月の第1営業日からその日を含む4営業日前)を「実質月替わりの売買日」と呼び、月の第1営業日のことを「名実ともに月替わりの売買日」と呼びます。
以前の証券会社では営業部門に対して、「実質月替わり日」と「名実ともに月替わり日」に株式営業のハッパをかけることが多く、売買高が増える傾向がありました。また、月間の目標手数料を達成するために、「実質月内最終売買日」には顧客に回転商いをさせるということもしばしばありました(資産残高型営業を標榜する現在の証券会社は変わったかもしれませんが…)。機関投資家においても、月末の運用パフォーマンスをよくみせるために、ポートフォリオに保有する品薄株に買いを入れて、値を吊り上げる操作をしていた、という話を聞きます(特にそのファンドの決算日において)。
このような行動が、株価に何らかの影響があるかもしれません。すでに上記の結果から、最終営業日には日次収益率が高いという結果が出ています。一方で、月の始めから第1営業日(名実ともに月替わり日)については、日次収益率がプラスとなる可能性が高いものの、第2営業日に比べれば日次収益率が低くなることもわかっています。
そこで、月の終わりから第3営業日目と第4営業日目に注目してみましょう。
月の終わりから第3営業日目の日次収益率は+
0.098%、上昇日率は58.94%となっています。第1、第2、第4営業日目と比べると日次収益率は低いものの、上昇変化率(上昇日の日次収益率平均)は0.79%と最も高く、下降変化率(下落日の日次収益率平均)も−0.89%と最も高くなっています。すなわち、「実質月替わりの売買日は荒れる」ということがいえそうです。また、第4営業日目の日次収益率は+
0.113%、上昇日率は56.79%となっています。第1営業日目と比べると日次収益率は低いものの、第2、第3営業日目と比べると高くなっています。「実質月内最終売買日」は日次収益率がプラスとなる可能性が高いといえるでしょう。
上記の傾向が今後も続くと仮定すると、以下のことがいえそうです。
(1)月の最終営業日は日次収益率がプラスとなる可能性が高い(月末は高い)。
(2)月の始めから第1営業日目、第2営業日目はプラスとなる可能性が高い(月初は高
い)。
(3)「実質月替わりの売買日」はボラティリティが高まる可能性が高い。
(4)月中の日次収益率のロードマップをつくると、月の始めから
11営業日目までは概ね上昇基調が続き、その後第
18営業日目までは調整局面に入る(やや下落基調となる)。その後月末まで再び上昇基調が続く。
以上の分析は、
1949年6月から1999年9月末までの日経平均の現物指数を用いて計算した結果であり、年代によって結果が異なる可能性があります。そこで10年ごとに期間を分けて同様の計算を行ってみました。
10年ごとの計算結果をみると、以下の点がわかります。
(1)月の最終営業日の日次収益率はプラスになっていることは、年代ごとで変わりはな
い。
(2)全期間をみれば、月の始めから第1営業日目の日次収益率はプラスになっているが、
1970年代(1970年1月〜1979年12月)は−0.004%(上昇日率は48.33%)とマ
イナス、また
1990年代(1990年1月〜1999年9月)も−0.114%(上昇日率は46.15%)とマイナスの日次収益率となっている。
(3)月の始めから第2営業日目の日次収益率は、
1980年代(1980年1月〜1989年12月)を除いてプラスである。
1980年代の日次収益率は−0.005%、上昇日率は52.50%である。
(4)「実質月替わりの売買日」のボラティリティが高いという点は、年代ごとに差がな
い。
(5)月中の日次収益率のロードマップをつくると、年代ごとに差がみられる。
@
1950年代:月の始めから14営業日目までは上昇基調が続く。その後19営業日目まで保合うものの、20営業日目以降は再び上昇基調に戻る。A
1960年代:月の始めから13営業日目までは上昇基調が続く。その後18営業日目まで下落基調となるが、19営業日目からは再び上昇基調に入り、月末高となる。B
1970年代:月の始めから8営業日目まで下落基調が続く。その後17営業日目まで一進一退の相場展開となり、18営業日目から月末にかけて上昇基調が続く。C
1980年代:月の始めから11営業日目までは上昇基調が続く。その後15営業日目まで保合うものの、16営業日目以降は再び上昇基調に戻り、月末高となる。D
1990年代:月の始めから9営業日目まで下落基調が続く。その後12営業日まで若干戻すものの、その後再び下落基調となる。
1990年代のロードマップが他の期間と著しく異なるのは、やはり株式の長期低迷期がその期間に含まれるためでしょう。
スペースの制約から、以下では
1990年1月から1999年9月までのデータを利用した計算結果のみを掲載します(表3と表4を参照)。
最後に、月の始めからの日次収益率のロードマップ(グラフ)を掲載します。参考にしてください。
上記の結果はいずれもすべての月の平均であり、月ごとに特性が異なることが予想されます。そこで次回(第4回)は月中の日次収益率が月ごとに変化がないかどうかを調べます。