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心理学の博士号をもつジャーナリストのマリア・コニコヴァは、2015年、プライベートで悲運が重なった。物事が悪い方へ転がる中、不運やコントロール不能な事象について書籍を読みあさった彼女がたどりついたのが、未経験のポーカーである。
ポーカーには誤解が多い。その筆頭がギャンブルと混同されがちだという点だ。世界大会で優勝すれば、何億円もの賞金が一度に手にできるため無理はない。しかし、その頂に立つまでに連日何時間も続けられる死闘を勝ち残ることがどれだけ心身ともに厳しいか。
ポーカーは対戦相手のカードが見えない不完全情報ゲームである。数学的な最適解を求めながらも相手の手の内を探り、自分を順応させていくことが重要となる。自分が正しいと判断したことでも、相手の感情や行動によって全く異なる結果を生むこともある。そして自分自身でさえも、焦りや怒りといった感情で空回りすることも。まさに人生の縮図といえる。
だからこそ、マリアは人生の教材としてポーカーを選んだのである。
さらにポーカーのもう一つの特徴。それは現段階では参加者の大半が男性で、極端に女性が少ないという事実である。実社会同様、極端な差異は圧力を生み、対女性に対しては攻撃性が増す。女性は正しい決断をする前に、男性ならば直面しないさまざまな弊害を乗り越えることからスタートする必要があるのだ。
勝負以外での男性からの侮蔑や弱さを装う老人や同性からの裏切り、自分自身の短絡さに打ちひしがられながらもマリアは女性プレイヤーとしてではなく、一プレイヤーとして世界を目指した。しかも一年という短い期間で。
彼女がポーカーのメンターを依頼したのは、エリック・サイデル。世界一のタイトルを何度も勝ち取り、生涯の獲得賞金は“40億円”を超える圧倒的なトッププレイヤーだ。トップと評されるのは賞金額だけではない。オンラインポーカーの台頭やポーカーアプリの出現、さらにトーナメントとなると連日の長時間プレイとなる世界において、30年以上も一流の座に君臨していることは並大抵の努力では実現しえない。
ジャレッド・テンドラー著 『ザ メンタルゲーム』 |
さらに二人のこの挑戦に協力し、助言を与えた人物たちもまた、ポーカーで億を稼いでいる一流プレイヤーばかりである。ポーカープレイヤーの誰もが憧れるのブレスレット(タイトル)ホルダーであるダン・ハリントンからはポーカーの基礎戦略を。ポーカーソフトの開発者フィル・ガルフォンドからは観察眼を。そして、エリック・サイデルから別格と評されているラッキー・チューイことアンドリュー・リヒテンバーガーからは集中力を。そしてトップレベルのスポーツ選手・投資家などから依頼が絶えない一流のメンタルコーチであるジャレッド・テンドラーからは彼女自身の欠点の見直しを伝授された。心理学の素養の上に一流のアドバイスが加わった、まさに身銭と人生をかけた挑戦である。
本書はポーカーを土台にしているが、確率や戦略を解説したものではない。もちろんポーカーシーンでは専門用語が出てくるが、本書のテーマは正しい意思決定を学び、自信を持って人生を切り開くことである。
マリアは本書のなかで、自分の感情や判断ミス、体調にいたるまで正直に表現豊かに記している。心理学者という肩書がありながらも、自分の感情コントロールができていなかった点赤裸々に。
頭では理解していても、現実の感情がそこに言い訳を与えてしまう事実、それを認識することで彼女の人生は変化していく。以前なら妥協して引き受けた仕事も、冷静に交渉をして好条件を引き出せるようになっていく。まさに、自分自身で己の価値を高めていく術を身につけたのだ。
人生にはどうしても不確定な要素がつきまとう。そんななかでも、目の前にある見落としがちな情報をつかみ、その現状に適応し、冷静に意思決定したうえで、自信をもって行動する。どんな世界でもどんなステージでも通用する、人生において大切なスキルを本書は教えてくれる。
■ニューヨークタイムズ紙が選ぶ「2020年注目の100冊」
ニューヨーカー誌のライターであり心理学博士の著者は、運と決断の相互作用を学ぶためポーカーを選んだ。本書は、想像よりもはるかに高額な勝負の世界へと彼女をいざなった旅の記録だ。(100 Notable Books of 2020)
■「彼女は、プレッシャーの中で人生の重要な決断をするときのスキルと運の相互作用について研究しました。彼女が触発されたゲーム理論の生みの親である数学者ジョン・フォン・ノイマンの考え方は、ポーカーからヒントを得たものでした。実生活では他人に本心を悟られないようにする「ちょっとしたごまかし」つまりブラフが重要だと考えました。ポーカーはチャンスとコントロール、スキルと運の相互作用であり、その意味で実生活を反映しているのです」
―ワシントンポスト紙
A psychologist finds herself at the poker table(心理学者がポ―カーテーブルで発見した自分とは)
■「物語に引き込まれるあまりに、学習の仕方や集中のコツ、意思決定の上級レッスンを受けていることに半分以上読み進めるまで気づかなかったほどだ。私は本書を二度読破したが、いまだに頭から離れない」
―デヴィッド・エプスタイン『Range』著者
■「あらゆる参加型ジャーナリズムの中でも特異な結果が生まれた一例といえる。本書はポーカーについてのみならず、 運とは何か、スキルの科学、そして競争相手を出し抜く術までをも教えてくれる」
―ジョシュア・フォア『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』(エクスナレッジ)著者
■「この本を読んだからといって一夜でポーカーチャンピオンにはなれないし、マリア・コニコヴァ本人ほど聡明になることも決してないだろう。しかしそれに匹敵する価値が、本書にはある。彼女と同じように考える術を教えてくれるからだ。ここまでハラハラドキドキの自伝にも、ここまで洞察の深い行動科学の書籍に出合えることも、なかなかない。世界有数の競技人口を誇るゲームをマスターした心理学者が、その二つを融合させて語るのだ。楽しめないはずがない」
―アダム・グラント『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)著者
■「大好きな本だ。本書は見たこともないカリスマ性に溢れた世界に、私を連れていってくれ、コントロールについての私の自己欺瞞に気づかせてくれた。さらには、対戦相手にもっと注意を払うべきだと教えてくれた。私の場合はテニスにおいてだが。物語は巧みに構成されており、自らが被験者となる実験の中で、女性嫌いの男、アグレッシブなプレイヤーといった色濃いキャラクターたちが次々と登場する冒険は、最初から最後まで飽きさせない。自分の中での最速記録で読破してしまった」
―エリック・ラーソン、”The Splendid and the Vile”著者
■「まさに王道の、素晴らしい物語だ。勝ち目のないヒロイン、ヨーダのような師匠、クセのある登場人物たち。それに加えて究極のスキルと馬鹿げた運との関係性についての洗練された洞察。さらに、注意の払い方や客観的な思考法、意思
決定の質の向上といった基礎の入門書でもある。本書を読むのは、まるでストレートフラッシュを引き当てるような感覚だ。信じられない幸運、そしてそれは長いことあなたの記憶に残るだろう」 ―ダニエル・H・ピンク、『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時』(三笠書房)著者
■「人は誰でも自分を深く知りたいと思うが、マリア・コニコヴァはそれをポーカーを通して成し遂げた。チャンピオンになる過程で、彼女はポーカーの技術以上のことを学んだ。ポーカーを通して彼女は、感情の調整、リスクと不確実性への対処、より知的な意思決定、絡み合った偶然とスキルの役割の紐解き、そして自信の付け方までを身に付けたのだ」
―グレッチェン・ルービン、”The Happiness Project”、”Better Than Before”著者
■「心理学の名著はたくさんある。ポーカーの良書もいくつかある。だが、本書のような本はない。マリアが新人からワールドクラスのポーカープレイヤーになるまでの冒険は、熟練のプロだろうとフルハウスも知らない素人だろうと、きっとワクワクするに違いない。しかし、なにより本書を際立たせているのはその正直さと謙虚さだ。運や不確実性の理解がいかに重要か、そしてハイステークスで人生を変えかねない意思決定に迫られたときにそれらがどんな姿をするかを教えてくれる。このテーマについて、本書より優れたお手本は思い当たらない。強く推薦する」
―ネイト・シルバー、ファイブサーティエイト創設者兼編集長
マリア・コニコヴァ(Maria Konnikova) ハーバード大学を卒業後、コロンビア大学で心理学の博士号を修得。ニューヨーク大学ジャーナリズム大学院に客員研究員として在籍。「ニューヨーカー」誌でコラムを連載するほか、「ニューヨーク・タイムズ」誌、「ウォールストリート・ジャーナル」誌、「ワイアード」誌など多数の媒体に寄稿するジャーナリスト。2019年に人格社会心理学会の優秀科学ジャーナリズム賞を受賞。同年、ホストを務めるポッドキャスト番組の功績により全米雑誌賞にノミネートされる。 他の著書に『シャーロック・ホームズの思考術』(早川書房)、『The Confidence Game――信頼と説得の心理学』(ダイレクト出版)。本書執筆のために始めたポーカーでは、国際大会優勝、トーナメントでの通算賞金30万ドル超と、華々しい実績を残している。 原題: The Biggest Bluff: How I Learned to Pay Attention, Master Myself, and Win
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ただし、この物語はまだ荷造りの段階にまで進んでいない。まだ2時間ある。丸々2時間もだ。2時間でできることは山ほどある。だからこそ、とあるテーブルが周りから際立って見える。
そのテーブルには8人のプレイヤーがしかるべき場所に座り、カードを受け取り、ポーカープレイヤーがやるべきことをやっている。
しかし、真ん中の椅子、シート6が空席のままだ。通常の状況では珍しいことではない。プレイヤーがバストして退場し、代わりの新しいプレイヤーが到着するまで、そこは空席になるからだ。ただしこのケースでは、バストでの退場は発生していない。
その空いた席の前にある緑のフェルトの上には、色分けされたチップの山が、額面の高いものから順に左から右へと綺麗に並べられていた。そしてハンドがディールされる度に、ディーラーが手を伸ばしてそこから貴重なアンティ―全てのプレイヤーが自分のカードを見るために支払わなければならない強制徴収額―を奪っていく。そして2枚のカードを、捨てカードの置き場であるマックと呼ばれる場所に無造作に投げる。そこにプレイヤーがいないからだ。
1ラウンド毎に、丁寧に積み重ねられたチップは少しずつ低くなっていく。しかしそこは空席のまま。世界で最も権威あるポーカーイベントに参加するためにお金を払ってなお姿を現さないとは、一体どんなアホだろうか? メインイベントの真っ最中にみすみす自分を「ブラインドダウン(ハンドをプレイせずに、参加費だけで自分のチップをすり減らすこと)」させるとはどれほど間抜けなのだろうか?
その天才は、残念ながら、本書の著者である……(続きを読む)
億乃細道様 投資歴6年
この本は心理学者のマリアが初心者からプロのポーカーのチャンピオンに上り詰めていく中で、自分の失敗や成功に基づき、正しい意思決定、自信を持って人生を切り開くことの重要性を書き綴った本である。なお、各章に色々な事例が書かれており、かつ、ボリュームもあるため、辛坊強く読む必要がある。 勝負に勝つためのマニュアル本ではないが、自分の人生に何らかの参考になりそうだ。
炎のディーラー様 投資歴26年