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脚本: 清水昭男 作画: 狩谷 ゆきひで
A5判
定価 本体 1,600円+税
2006年8月11日発売
ISBN4-7759-3030-3 C2033
オリガーキー(Oligarch)と呼ばれるこの一部の成功者たちは、迎合主義的な政権との愛憎劇を通じて、自分たちの居場所を新生ロシアの中に模索します。 世界でも最大級となった石油会社のユコス、ロシアの長者番付第一位に上りつめたホドルコフスキー…。しかし、それは、崩壊と転落に至る過程での出来事にしか過ぎませんでした。
シベリアの塀の内や異国の空の下で、かつてのオリガーキーたちが無常のときを過ごす一方、塀の外では、ロシアの新しいオリガーキーが、著しい台頭をみせている。 自らが議長国となるG8首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット/2006年7月)を前に、新生オリガーキーは、そのエネルギー政策を主軸に、国際舞台への復帰プロセスを進めている。
幸運だったのは、エネルギー価格の高騰を背景に、その疲弊した財務体質を画期的に改善し、国民生活の安定化に成功したことだ。給料や年金の支払遅延など、市場経済化の混迷で辟易としていた国民に、エルツィン大統領が与えたかった市場経済化の最低限の恩恵は、その目的を果たすに至ったといえる。さらに、公的債権者グループであるパリ・クラブとの間で、220億ドルの債務を完済するスケジュールを前倒しで実行することで合意している。ロシア危機は清算され、ロシアは債務国を脱する。
また、ロシアは、非OPEC最大の産油国である。70ドル台で推移している原油価格のさらなる上昇も予想されるなか、OPECを主体的に構成する中東地域では、政治的な不安定さが増している。それに伴って、ロシアのエネルギー政策は、世界経済への影響力を強める結果となっている。サンクトペテルブルク・サミットは、国際舞台への復帰プロセスを進めるロシアにとって、絶妙のタイミングで開催される。
一方、ロシア国内では、ガスの輸出について、国営会社であるガスプロムへの集中を進めている。また、原油については、同じく国営の石油会社であるシブネフチに、解体したユコスの石油精製施設を接収させるなど、エネルギー政策のツールとして、国営会社への権限と規模の集中が進められている。
1990年代初め、ロシア国家資産委員会の委員長だったチュバイスは、国有企業の民営化について、公正なプロセスで行われるなら、「誰が持ち主になってもかまわない」と言い切っていた。その国有企業を「買い受ける人物が適切かどうかは、時間が解決する」として、市場の神の手による適物適人の民営化が最終的に成されると信じていた。 もちろん、これによって、国有企業という資産の売却先が特定の人物に過度に集中するという事態も引き起こされ、そんな背景から、市場経済化の下で最初のオリガーキーたちが誕生する。
一方、ロシア経済に大きな恩恵をもたらしたエネルギー価格の高騰は、市場の神と民営化の間に介在しようとするプーチン政権の姿勢を、より積極化させる結果となっている。
サンクトペテルブルク・サミットのタイミングに合わせて、シブネフチは、モスクワとロンドンの証券取引所に上場(IPO)を予定している。市場の神とプーチン政権の関係もまた、国際舞台へと進出していくことになる。
2006年6月 清水昭男
2004年 "ユガンスクネフテガス、競売で国営石油会社のロスネフチが落札。" 2004年6月 ホドルコフスキーの第1回公判 2004年3月 "ロシア大統領選挙。70%を超える得票率で、ウラジミール・プーチン再選。" 2003年12月 議会選挙。「統一ロシア」圧勝。全400議席中の300議席を獲得。 2003年10月 ホドルコフスキー逮捕。 2001年 "ユコス、ニューヨーク、ロンドン、フランクフルトなどの海外の証券取引所に上場" 2000年7月 沖縄サミット 2000年3月 "大統領選挙。プーチン、50%を超える得票率を獲得、第2代目ロシア大統領就任。" 1999年12月 "エルツィン退任。プーチン首相、暫定的な大統領に。" 1999年8月 "ウラジミール・プーチン、首相就任。" 1998年12月 "エルツィン大統領、再入院" 1998年9月 中央銀行はルーブルの買い支えを放棄 1998年8月 ロシア経済危機。 1998年4月 入札でGKOが未達(入札割れ)。 1998年3月 "チェルノムイルジン首相、解任。セルゲイ・キリエンコ、首相就任。" 1998年1月 デノミ実施(1000ルーブルを新1ルーブルに)。 1997年 アジア通貨危機 1997年 "ポターニン、連邦電話会社の株式の25%を19億ドルで落札。" 1996年7月 "ロシア大統領選挙・第2回投票。エルツィンは、50%を超える得票率を獲得。" 1996年6月 ロシア大統領選挙・第1回投票。 1996年2月 ダボス会議 1995年12月 議会選挙。 1992年6月 "チュバイス、国家資産委員会委員長、副首相を兼務" 1991年12月 "ゴルバチョフ、ソ連大統領とソ連共産党書記長を辞任。" 1991年6月 ロシア大統領選挙でボリス・エルツィンが初代大統領に当選。 1989年 アフガニスタン撤退 1987年 協同組合法が施行。 1986年 レイキャビクでの米ソ首脳会談。 1983年 "スモレンスキー釈放、国有の住宅建築・修繕会社に勤務" 1981年 スモレンスキー逮捕。建設工事現場での強制労働。
作画: 狩谷 ゆきひで (かりや ゆきひで)
1960年、鹿児島県出身。「増刊少年サンデー」誌上にてデビュー。原田久仁信氏『プロレススーパースター列伝』のアシスタントを経て、「漫画ゴラク新人漫画賞」佳作入選。代表作に『心剣医』(日本文芸社)、『狼よ海を渡れ』(日本文芸社)、『悪徳弁護士禿げ鷹』(芳文社)などがある。
『マンガ LTCM -巨大ヘッジファンド崩壊の軌跡』 |
『マンガ 監査法人アーサー・アンダーセン』 |
『マンガ エンロン(Enron)』 |