パンローリング トップバー パンローリング Top 相場データCD-ROM オプション倶楽部 トレーダーズショップ/書籍、DVD販売 株式コーナー Pan発行書籍 セミナー 相場アプリケーション パンレポート 掲示板 相場リンク集
メールはこちらまで

ウィザードブックシリーズ Vol.101

パンローリング発行書籍indexへ  ウィザードブックシリーズ一覧へ


バイ・アンド・ホールド時代の終焉
株は長期サイクルで稼げ!

2006年3月16日発売
ISBN4-7759-7066-6 C2033
定価本体2,800円+税
A5判 上製本 310頁

著 者   エド・イースタリング
訳 者   関本博英

→お申し込みはトレーダーズショップからどうぞ

■目次


買えば儲かる時代は終わった!

高PER、低配当、低インフレ時代の現在は、バイ・アンド・ホールド投資は不向きである!
なぜ、現在の株式市場は1980〜1990年代のブル相場と違うのか!

 株式投資のハウツー本を読んだり、投資アドバイザーの意見を聞く前に、まずはこの本書を読んでほしい。今の株式市場が1980〜1990年代と、なぜ、どのように違うのかがよく分かる――一般投資家のみならずプロにもぜひとも読んでほしい啓発的な良書である。本書ではこうした変化をもたらした基本的な要因だけでなく、経済と株式の主要な指標を包括的に統合した独自の株価分析モデルによって株式の長期サイクルを詳しく分析している。またカラーのチャートや豊富なリサーチデータを駆使して、この5年間のマーケットの変化や現在の厳しい投資環境下でも利益を上げるにはどうすればよいのかを究明している。本書はいわば投資の科学とアートを絶妙に織り込んだものともいえるもので、今の株式市場に対する根拠のない願望と合理的なビジョンの違いがよく理解できるだろう。その内容は長期にわたる詳細なデータに基づいており、投資家がどのような投資アプローチを選択しようとも、本書から将来の合理的な株式投資のスタンスと展望のヒントが得られるだろう。

■本書への賛辞

「株式市場とは値段が高くなるとなぜか株を買いたくなり、安くなるとなぜか売りたくなる地球上でも珍しい場所のひとつだ。エドはなぜこのような自滅的なことが起こるのかを、偏見や先入観を持たずにわれわれに明らかにしてくれた」――ビル・マン(投資情報の人気ウエブサイト「ザ・モトリー・フール」シニア編集長)

「投資家は株価が大きく変動することはよく知っているが、その背後にときに数十年にも及ぶ長期の上昇サイクルや下降サイクルが存在することはあまり理解していない。エドは本書のなかで、こうした長期相場がなぜ起こるのか、投資家はそうした局面でどのような投資スタンスを取るべきかについて貴重なヒントを提示している」――ロブ・アーノット(リサーチ・アフィリエイツ社会長兼フィナンシャル・アナリスツ・ジャーナル誌編集長)

「本書は株式市場の長期サイクルを分かりやすく分析した素晴らしい本である。本書を読めばマーケットのボラティリティをうまく抑えながら、厳しい投資環境下でもコンスタントに利益を上げる方法を知ることができる。真摯な個人投資家だけでなく、投資のプロにもぜひとも読んでほしいと思う」――ジョン・モールディン(ミレニアム・ウエーブ・インベストメンツ社長、『ブルズ・アイ・インベスティング』の著者)

「一般投資家の株式投資スパンのリターンを決定するさまざまな要因について、広く深くそして興味深い分析が加えられている。FRBの通貨政策アドバイザーとして特に興味があったのは、株式投資のパフォーマンスを大きく左右する要因としてインフレを詳しく分析したところである」――ハーベイ・ローゼンブラム(ダラス連邦準備銀行の副議長、リサーチ担当部長)

「この本は100年以上にわたる株式市場を徹底的に分析し、そこから将来のマーケットにどのように対処すべきかについて現実的なビジョンを提示している。そのベースとなっているのは経済と株式の主要指標を包括的に統合したユニークな株価分析法であり、真剣な投資家や証券市場を学ぶ学生にとって必読書である」――リチャード・シイラ(ニューヨーク大学スターン・ビジネススクールの冠講座教授[金融機関・市場歴史学]、『ア・ヒストリー・オブ・インタレスト・レート』の著者)


■著者紹介

エド・イースタリング(Ed Easterling)
ダラスの投資会社クレストモント・ホールディングズ社の設立者兼社長で、いくつかのヘッジファンドを運用するほか、「www.CrestmontResearch.com」を通じて証券市場の最新リサーチ情報を公表している。ダラスのサザン・メソディスト大学コックス・ビジネススクールで、非常勤教授としてヘッジファンドの投資マネジメントについて教えている。20年以上にわたる株式投資と証券市場の研究のキャリアを持ち、最近ではジョン・モールディン著『ブルズ・アイ・インベスティング(Bull's Eye Investing)』の数章を執筆した。サザン・メソディスト大学で経営学士、心理学士およびMBA(経営学修士)を修得。

原書: UNEXPECTED RETURNS : Understanding Secular Stock Market Cycles by Ed Easterling


目次

訳者まえがき(立ち読みページ)

謝辞
序文

第1部 始めに

第1章 旅の始めに
 正しい観点
 本書全体の10のキーポイント

第2章 原則
 最後の準備


第2部 マーケットの歴史

第3章 株式市場の歴史
 株式市場マトリックス――現実世界が見える赤い薬
 リターンとコスト
 各20年間のリターン
 大きな変動
 ボラティリティが意味するもの
 ボラティリティという小鬼
 株式市場の変動
 常に相場を張らなければ勝てないのか

第4章 金利とインフレの変動
 お金とその力
 金利について
 インフレについて
 金利とインフレ
 ダイナミックな金利の歴史
 6・50ルール
 第2部のキーポイント


第3部 長期サイクル

第5章 長期サイクル
 株式の長期サイクル
 長期相場の特徴
 インフレ・デフレと株式市場の季節
 世間の一般常識を捨てよう――株価は経済どおりには動かない
 Yカーブ効果
 価格評価

第6章 株式のサイクル
 現在の株式サイクル
 株価評価尺度としての配当
 将来のリターンの予測
 第3部のキーポイント


第4部 フィナンシャルフィジックス

第7章 フィナンシャルフィジックス
 将来の株式相場の予測
 フィナンシャルフィジックスモデル
 フィナンシャルフィジックスモデルによる株価予測の具体例

第8章 フィナンシャルフィジックスから見た株式市場の現況と将来の展望
 これまでの内容の再検討
 将来の展望
 株価評価カスケード――PERの上限
 リターンの分析――株式投資リターンの予測
 限られたリターンとマーケットの不確実さ
 第4部のキーポイント


第5部 投資哲学

第9章 投資哲学
 絶対リターン手法と相対リターン手法の違い
 リスクは敵か味方か
 リターンについて
 2つの投資手法の異なる前提
 相対リターン投資が人気のある理由

第10章 帆走に代わる舟漕ぎを
 帆走と舟漕ぎ
 川の平均深さ
 第5部のキーポイント


第6部 投資戦略

第11章 伝統的な投資法
 効果的な債券投資法の一例
 株式ポートフォリオのリバランス

第12章 投資マネジメントの進化
 株式取引の簡単な歴史
 ヘッジファンドの投資法
 将来の投資マネジメントの展望
 最後に
 本書全体の10のキーポイント
 分かれ道


注釈――情報源と方法論
 付記
 参考文献

■訳者まえがき

 皆さんは登山をされたことがあるだろうか。一昔前の登山では何日分もの食料やテントをしょって、ふうふう言いながらひたすら山頂を目指したものである。そして下山では軽くなったリュックを背に、ときに口笛を吹きながら山道を下ったものだ。それでは危険度(ケガの確率)という点から見ると、上りと下りではどちらがリスクが大きいだろうか。それは圧倒的に下りである。足下をしっかり見て歩かないと、ヒザがガクガクして坂道を転げ落ちてしまう。上り道はちょっと疲れるが楽しくも安全、下り道はよほど注意しないと危険がいっぱいである。

 1980〜1990年代の大強気相場が終わったアメリカの株式市場は、今まさにそのような局面(変動の大きいトレンドレスのチョッピー相場)にある。アメリカではこの100年間に(10年以上にも及ぶ)長期の上昇・下降相場が繰り返されてきた。それでもメジャートレンドが常に上向きだったので、株式を購入して長期保有するというバイ・アンド・ホールドは、株式投資の定番としてしっかりと定着した。しかし、筆者はこうした100年間の株式市場の歴史を振り返り、そして20年にも及ぶ大相場が終わった今、さらに株価が上値を追っていくことはあり得るのだろうかと自問する。

 株式投資にとってベストの条件とは、割安な株価、高い配当、低位安定に向かうインフレ、金利の低下、PER(株価収益率)の上昇――などである。しかし、今のアメリカにはこうした有利な条件は何も存在しない。それどころか、高い株価とPER、低い配当利回り、インフレと金利が上昇する可能性など、悪い条件ばかりがそろっている。こうした状況を考えるとこれからの局面では、従来のバイ・アンド・ホールドといった杓子定規のような投資法では利益を上げられず、新しい環境に見合った別の投資法が必要なのではないか。

 ひるがえって日本の現況を見ると、2003年4月末に大底を打った株価はそれ以降のほぼ3年間に上昇トレンドをたどり、今はちょっとした株式ブームである。しかし、日本はそれまでの13年間にわたって株価が暴落し、全世界にデフレの脅威を発し続けてきた「失われた10年」を脱したばかりである。歴史を振り返れば、株式は長期にわたって上げることもあれば、下げることもある。そうしたさまざまな局面を同じ投資法だけで乗り切ることができるのか。筆者の自問を真摯に受け止めて歴史から学ばなければならないのは、われわれ日本の投資家も同じではないか。あの有名な『証券分析』(パンローリング)を書いたベンジャミン・グレアムは、よくこう言って嘆いたという。「ウォール街の人々は何も学ばないし、すべてのことをすぐに忘れてしまう」

 本書の邦訳出版を決断された後藤康徳(パンローリング)、編集・校正の阿部達郎(FGI)の両氏には心よりお礼を申し上げたい。

 2006年3月

関本博英


■序文

 今後10年間のアメリカではこれまでの経済成長と繁栄が持続し、生活水準も引き続き向上するだろう。こうした楽観的見通しを裏付ける多くの証拠がある。これまでのアメリカの歴史を検証すると、力強い経済成長には何ら衰えは見られず、景気後退局面も極めて短期間で終わっている。しかし、底堅い経済成長が必ずしも株式市場で大きなリターンをもたらすわけではない。投資収益はインフレの動向に大きく左右される。債券の投資収益はインフレ動向に直結している金利水準によって決まり、また株式市場でもPER(株価収益率)を反映した株価を左右するのはインフレである。現在の株価はかなり高い水準にあるため、株式投資のリターンは今後しばらくはヒストリカルな平均を大きく下回るだろう。ヒストリカルな平均リターンとは好調・低調なリターンを平均したもので、歴史的な最長記録となった最近の大相場のあとには、平均以下のリターンしか見込めない時期が長期にわたって続くと思われる。この100年間の株式市場では、高リターンと低リターンまたはマイナスのリターンの時期が交互に到来した。こうした事実を踏まえると、これからの株式市場でもこうしたサイクルが繰り返されるだろう。

 1982〜1999年の長期上昇相場が2000年以降のあまり報われないチョッピーな局面(はっきりしたトレンドがなく、上下に大きく変動する相場)に移行したと言うと、皆さんはがっかりされるだろう。そして現在のこの局面は一時的な小康状態、それとも(平均以下のリターンまたはマイナスのリターンしか見込めない)長期下降相場に入ったのかと問われるだろう。その答えは本書のなかで徐々に明らかにしていく。株式市場の歴史と株式相場のトレンドを形成する基本的な要因を検証・分析すると、2000〜2010年はもとより、それ以降の10年間も株式投資のリターンは平均以下にとどまる可能性が高い。1980〜1990年代の異常な株高局面のあとに低調な相場が続いても何ら不思議ではない。

 株式市場では株価が相対的に高い時期と安い時期が交互に到来する長期サイクルを繰り返してきた。そして株安期のあとには高いリターン、株高期のあとには低いリターンがもたらされた。歴史的に見ると株式の長期平均リターンは債券のそれを上回っているが、株式がいつでも債券のリターンを上回っているわけではない。株式が債券よりもアンダーパフォームであった時期もある。しかし、好天を待ち望んでいるときに、干ばつに甘んじている必要はない。現在の株式市場が干ばつの時期であるならば、投資資金をもっと多くの実りが見込まれるアセットクラスにシフトすればよい。本書では株式市場の現況とこのマーケットを動かす主な原動力を理解し、またどのような相場環境でも利益を上げられる方法を紹介する。

 以下の各章では株式市場のダイナミックな歴史と現況、将来の見通しなどについて広範で詳細なリサーチデータを駆使して検証した。ときに地質学的な比喩を交えながら、切り立った断崖のような株式市場の大変動、揺れる山脈のような金利変動の現実を分析するとともに、経済と株式市場に特有な要因によって引き起こされる相場の形成プロセスにも焦点を当てた。一方、株式と債券投資のリターンをもたらすファンダメンタルな関係のほか、「フィナンシャルフィジックス(Financial Physics)」と呼ばれるクレストモント社の株価評価モデルを使って、さまざまな経済原則と株価との関係についても分析した(金利と株価を動かす主な原動力はインフレ動向であることなど)。

 株式投資のアプローチは相場のトレンドに乗る方法と、ファンドマネジャーの腕で利益を勝ち取るという2つの手法に大別される。前者は株式のトレンドがリターンを決定するという伝統的な投資法で、長期の忍耐が求められる相対リターン手法である。これまでは長期にわたって上昇トレンドが続いたので、この手法を使えば損失よりも多くの利益が上げられた。この投資法のベースとなっているのは現代ポートフォリオ理論(MPT)と資本資産評価モデル(CAPM)の理論で、投資のリスクは友である。すなわち、痛みなくして利益なしという投資哲学である。一方、もうひとつの投資法は株価の上昇局面でなくても、ファンドマネジャーの腕で利益を稼ぎ出すというアグレッシブなアプローチである。絶対リターン手法と呼ばれるこの投資法では、そのときの相場トレンドとは無関係に利益を追求する、すなわちコンスタントなリターンを目指している。ここではリスクは敵であり、何としても回避しなければならない。この手法の投資哲学はパフォーマンスがすべてであり、ファンドマネジャーが手にするのは成功報酬のみである。

 現在、投資界は新しい時代に向けて目覚めつつある。リスクマネジメントのツールは簡単に入手できるようになったので、投資家はこれまでのように相場の変動に冷や汗をかきながら利益を追求する必要もなくなった。今では賢明な投資家はリターンとリスクの関係をコントロールするリスクマネジメント手法を駆使して、リスクを抑えながら安定した利益を上げている。相対リターン手法と絶対リターン手法の融合も着々と進んでおり、おそらく今後10年間に投資家はリスクをコントロールしながら期待リターンをほぼ確実に手にすることができるだろう。

 今の投資家はマーケットという大海を航行する船乗りのようなものである。追い風のときはバイ・アンド・ホールドという「帆走」、向かい風のときは絶対リターン手法という「舟漕ぎ」で利益を上げることができる。1980〜1990年代には強い追い風が吹いていたので、伝統的なバイ・アンド・ホールドがベストの投資法であった。1990年代後半の株式バブルで長期の大強気相場は成層圏まで駆け上がったが、2000年のバブル崩壊でそれまでの帆走期は終わりを告げた。今では手に汗を流す舟漕ぎによってしか利益を上げることはできない。

 今の相場環境はかつての相場界のパイオニアたちが直面した1930年代初めの状況と類似しているが、それら先人たちの貴重な知恵は新しい投資時代と希望を吹聴するスローガンにかき消されてしまった。希望に満ちた投資家が今の株価水準で投資に乗り出しても、次々と嵐がやって来るというのが現実である。すなわち、平均以上のリターンが得られた株式投資の時代は、平均以下の収益しか得られない時代に移行してしまったのである。

 本書は6つの部から成っている。「始めに」と題する第1部では、それ以降で検討する基礎知識としてのコンセプトや原則について説明する。「マーケットの歴史」と題する第2部では、株式と債券市場のヒストリカルなリターンと変動性、この2つのマーケットの相関関係について検討する。「長期サイクル」の第3部では、長期サイクルの観点から第2部の内容を分析し、それらを構成する要因や現在の株式サイクルなどについて分析する。ここまでは株式市場の歴史的な検証と長期サイクルの性質などに焦点を当てたが、「フィナンシャルフィジックス」と題する第4部では株式相場を動かすさまざまな要因について分析するので、これを理解すれば一般投資家でも株式専門家などの間違った意見にだまされることはないだろう。また2000年代の残りの期間の株式投資リターンがどのようになるのかについて合理的な予測を行った。株式市場の歴史と現況の検討に続く第5部(「投資哲学」)では、リスクを許容するこれまでの相対リターン手法とファンドマネジャーのスキルがすべてを決める絶対リターン手法について説明し、相場の局面に応じてこの2つの投資法を使い分ける必要性を訴えた。続く第6部(「投資戦略」)では、いっそう厳しさを増す今の相場環境で求められる投資テクニックを紹介したあと、投資マネジメントの進化、伝統的な相対リターン手法とアグレッシブに利益を追求する絶対リターン手法の融合の可能性について検討した。

 投資知識を学ぶということは山頂に向かって登山道を一歩ずつ歩くことに似ている。登山者が重力に打ち勝って山頂に立てば、周りの山脈が一望に見渡せるように、投資家も従来の投資の考え方から脱却しなければ、現在の株式市場の現実をはっきりと見極めることはできない。株式投資で成功するには、変わることのないマーケットの原則を踏まえながら、今の状況に見合った投資戦略とツール、そして最新のテクノロジーを駆使する必要がある。株式投資の目的は利益を上げることであるが、単なる願望はそのための戦略とはならない。

 本書は株式市場の基本的な要因、将来のリターン、現在の相場環境をどのように乗り切るのかなどを理解するためのロードマップ(道路地図)である。投資家の前には合理的な投資法やランダムなやり方などさまざまな選択肢があるが、自らの投資人生をきちんと律するには、合理的な投資原則を身に付けなければならない。なお、本書に掲載されたリサーチデータやチャートの最新版を見たいときは、クレストモント社のウエブサイト(http://www.CrestmontResearch.com/)にアクセスしてください。

■第1章 旅の始めに

 「もう株式投資をやめようかと思っています」。ある晩の夕食のとき、彼はいらいらしながら最後にこうつぶやいた。現在の多くの投資家と同様に、彼もこの数年間の株式投資の成績に次第に自信をなくしつつあった。1990年代には株式を買うだけで利益が積み上がっていったが、それは株式市場が味方してくれたからである。しかし、膨れ上がった利益は二度と経験できないほどの教訓を残してまもなく消え去った。それまでずっとうまく機能してきた投資法も、損失が相次ぐとその原因はマーケットにあるとされた。大手投資顧問のプロたちも「バイ・アンド・ホールド」、「長期投資」、「ハイリターンにハイリスクは付き物」などとアドバイスしていた。こうした過去20年間の伝統的な投資の考え方は、21世紀初めの5年間にはまったく機能しなくなった。こうした従来の投資法がうまくいかず、またこれからもうまく機能しないであろう理由は明らかである。株式相場を動かす主要な要因を理解しなければ、株式投資のパフォーマンスを向上させる従来とは違う方法も見つかるはずがない。以下で述べることは、株式相場を動かす要因を理解し、どのような相場局面にも対処できる投資能力を身に付けたいと願う人々のためのものである。

 長期的な観点

 歴史の便利なところは、長期の歴史を任意の時期に区切って検証できることである。従来の投資の考え方は長期の展望に立ったものが多かったが、それを構成する短期の重要な事実を無視していたので、歴史から多くのことを学ぶチャンスを逃してしまった。本書では株式と債券市場についてこれまでとはかなり違う角度から検討する。いわば森全体というよりは、それを構成する木々に焦点を当てた。本書ではまた、さまざまな情報源から流される多様な情報をどのように読み取るのかについても詳しく説明した。  1980〜1990年代には長期の上昇相場が続いたので、株式を持っているすべての投資家が利益を手にすることができた。しかし、1990年代後半から続いた株式バブルは2000年前半に弾け、それから相場環境は一変した。それ以降の数年間に株式市場は本来の水準に戻ってしまったようだ。現在、多くの投資家は株式市場が以前の強気トレンドを取り戻し、再び平均リターンを手にできる状況が再来するように願っている。しかし、現実の相場環境を見るかぎり、少なくとも向こう数年間はヒストリカルな平均リターンが見込まれる可能性はかなり低い。

 こうした状況に当惑し、希望的観測を述べたり、またはマーケットが悪いなどと主張する専門家の意見に耳を傾けたくなったら、次のような重要な事実を肝に銘じてほしい。すなわち、ヽ式市場は多くの投資家が考えているよりもはるかに変動が大きい、▲沺璽吋奪箸諒册阿賄蟷餡箸砲箸辰禿┐任發△蝓△泙震Jでもある、3式と債券の大きなトレンドはインフレ動向に左右される、こ式と債券投資のリターンは主に投資時点の価格水準によって決まる――ということである。例えば、従来の長期投資の考え方によれば、2000年の天井圏で株式を買った投資家も、2002年のボトム圏で参入した投資家も同じ長期リターンを期待している。しかし、現実はその期待どおりにはいかず、投資を始めた株価水準によって最終リターンはまったく異なる。さらに投資家は投資人生で直面する相場環境を変えることはできないが、そのときの状況に見合った投資法を選択することは可能である。

 以下では株式市場をさまざまな観点から分析し、ヒストリカルなリサーチデータやグラフを使って歴史の教訓をくみ取り、そこから将来の株式市場を展望する。本書の目的は証券投資に役立つ実用的な知識を提供することにある。本書の内容は(筆者の会社である)クレストモント・リサーチ社のリサーチデータに基づいており、主に検討するタイムスパンは多くの一般投資家の投資期間である中期となっている(多くの投資書籍や学者の研究は主に長期投資について述べている)。従来の株式投資の考え方では5〜20年の投資分析はあまり取り上げられず、もっぱら長期の平均リターンだけにスポットが当てられてきたが、クレストモント社のリサーチはマーケットの地形、すなわち短期の天井と底を含む中期的な局面に向けられている。これからの株式投資で成功するには、そのときの相場環境に見合った投資法が必要となる。以下では長期的な観点では見えないさまざまな事実について検討する。

 正しい観点

 過去20年間にうまく機能してきた伝統的な投資法は、この数年間ではまったくだめだった。そのため多くの投資家はいらいらし、今の相場環境では何が合理的な投資法なのかを知りたがっている。いわば真実の国への旅立ちであり、その第一歩は現在の株式と債券市場の現況を正確に理解することである。

 分かれ道

 しかし、真実の国を見つけるのはそれほど簡単ではなく、まず分かれ道で立ち止まってしまう。そのひとつは真実の国に向かう道、もうひとつはうその国に至る道である。真実の国ではだれもがいつでも本当のことを言うが、うその国で聞かれるのはうその話ばかりである。その分かれ道にひとりの小人がいるが、彼が真実の国またはうその国のどちらから来たのかは分からない。そこであなたは真実の国に行く道を知るために彼にひとつの質問をする。その質問とはどのようなものだったのか。

 航海の基本

 あなたが目的地に向かって航行しようというとき、自分の出発地点と航路を知っておくことは大切である。すべての投資家にとって目指す目的地とは経済的な成功であり、過去20年間のその航路ははっきりしていた。伝統的な投資法のバイ・アンド・ホールドがうまくいったのは、それが時代を超えた優れた投資法であったからではなく、この時期の相場環境にマッチしていたからである。この伝統的な投資法を1960〜1970年代に使えば大損することは明らかであり、いつの時代にも有効な投資法というものは存在しない(以下の章では株式市場の大きなトレンドを形成する原動力を分析し、そのときの相場環境に見合った投資手法について詳述する)。

 今からほぼ2000年前のギリシャに、プトレマイオスという数学・天文・地理学者がいた。彼は当時の一般的な考えに組することなく、地球は丸いと信じていた。この事実を証明するため、彼は自分の地球儀に赤道とそこから南北の極に向かう垂直線を引いた。北極から始まるこれらの垂直線は赤道で交差して南極まで引かれた。これらの線が今の緯度と経度となった。当時の船乗りもすべての旅人と同様に、出発地点と目的地までの距離を正確に測ることが航海で成功するための絶対条件だった。昔の旅人は星や星座を観察して赤道から南北に向かう距離を知り、航行中の船乗りは地図に線を引いて東西の距離を測った。それでも船舶の座礁や迷走などが後を絶たなかったので、イギリス議会は1714年に経度法を制定し、正確な経度の測定法を発明した者には多額の報奨金を出すことにした。それから45年後にジョン・ハリソンというイギリスの時計工が地球上を正確に航行できる方法を発明し、その賞金を獲得した。彼が発明したのは、海の悪天候や高い温湿度のときでも正確に時を知らせる時計であった。

 時間は距離の問題を一挙に解決した。われわれは現在、時間帯というものでこの時計工の功績を享受している。地球は一定の時間で自転しており、ニューヨークではカリフォルニアよりも3時間早く正午になる。ハリソンは地球の自転による時間の違いを利用して、ある地点と別の地点間の距離を正確に測定できることを発見した。その当時、時間を知るために使われたのは日時計だった。彼の大きな挑戦は海上で正確な時間を知るための時計の開発だった。それが開発されたとき、船乗りたちは経度と緯度が分かるようになったので、海図に正確な位置を印して目的地の方向に進むことができた。

 船乗りの海図は投資家にとって投資プラン、航路は投資戦略に相当する。また(投資の成功という)目的地に到着するには、株式の大きなサイクルと現在の位置を知る必要がある。以下の各章を読み進むにつれて、皆さんは向かうべき方向とそこから期待できるものが分かるだろう。第1章〜第2章では皆さんが向かう正しい方向と、そのためのいくつかの道しるべについて説明する。続く第3章〜第7章ではマーケットの歴史、金利とインフレ、株式の長期上昇・下降相場と現在の局面、そしてフィナンシャルフィジックスについて検討する。第8章〜第12章では、将来の株式投資から得られる予想リターンとPER(株価収益率)の上限などについて分析する。さらに相対リターン手法と絶対リターン手法(「帆走」「舟漕ぎ」戦略)の違い、これまでと将来の投資マネジメントなどについても検討する。それらの各章を読み進めば、株式投資の失敗を避け、成功を手にするための多くのヒントが得られるだろう。投資の失敗と成功は、リスクとリターンと同様にまったく違うコンセプトである。

 リスク(損失の可能性)を避けることが賢明な投資の第一条件である。オマハの賢人(ウォーレン・バフェット)はことあるごとに、「投資の第一のルールはとにかく損をしないこと、第二のルールはこの第一のルールを忘れないこと」と言っている。本書には玉石混交の情報の正しい選別法、適切な投資決定、不合理なミスの回避などに関する有益なヒントが述べられている。一方、リターン(利益の確保)は株式投資の最終目標である。本書では株式投資に関する重要なルールを示したが、適切な投資決定を下すにはそうしたルールを十分に理解しておく必要がある。マーケットのルールを知るには、人々や出来事の歴史ではなく、マーケットの動きの歴史に目を向けるべきである。各章には投資家がベターな投資決定を下すための重要な知識が盛り込まれている。

 本書で検討するマーケットの歴史は現代(20世紀以降)のものである。歴史を学ぶ大切さについて、ジョージ・サンタヤナ(スペイン生まれのアメリカの哲学者・詩人)は1905年に著した『ザ・ライフ・オブ・リーズン(The Life of Reason)』のなかで、「過去を忘れた者は必ず同じことを繰り返す」と述べている。実証に裏付けられた合理的な説明を求める読者にとって、株式相場のトレンドと長期サイクルを形成する原動力について分析した第3部はかなり有益であろう。その各章では新しい投資手法をどのように実践したらよいのか、またそのための投資ツールやテクニックを具体的に説明している。

 株式市場マトリックスについて

 クレストモント社の最大の功績のひとつは、過去1世紀の株式投資のリターンをモザイク風に表した多色刷りの「株式市場マトリックス(Stock Market Matrix)」であろう。自らの研究論文にこれを引用したデューク大学フークア・ビジネススクールのキャンベル・ハーベイ教授も、このマトリックスを絶賛している。株式市場マトリックスはクレストモント社が2001年夏に完成したリサーチデータの集大成である、これを見ると株価が最近のピーク圏から下降したあと再び新高値を取りに行くのか、それとも下降トレンドはまだ続いているのか――などが予測できる。経験豊富な投資家との話題はもっぱら株式市場の長期リターンに関するものであり、今後はヒストリカルな平均リターンしか期待できないのかといった話になってしまう(ヒストリカルな平均リターンとは、学者や投資のプロなどがよく使う過去75年間以上の長期平均リターンである)。

 長期リターンの計算で使われる最も一般的な期間は、1920年代から現在までの期間である。しかし、この出発点は本当に合理的なものなのか。もっぱらこの期間だけを出発点にしているが、これによって長期リターンの分析を不正確なものにしていないだろうか。1929年の最高値を計算の出発点にしたときと、それ以降の株価暴落による安値を出発点にしたときでは、その結果はまったく違うものになってしまう。このようにひとつの出発点から始めたリターンの分析は、間違ったデータに基づいているという危険性がある。  しかし最近では、計算期間をもっと細かく区切って分析する試みも見られるようになった。遠い過去のある時点だけを出発点とする代わりに、各10年ごとに出発点を設定してそれぞれの期間について比較分析する。そうすればさまざまな基準に照らして、そのときの株価の割高・割安度が分かるだろう。しかし、かなり慎重な投資家は「そうした分析でもひとつの出発点を基準に株価を評価しており、10年ごとに出発点を設けること自体が分析結果を歪めることになるのではないか」という疑問を呈するかもしれない。

 こうした疑問に応えるのが、1900年以降の株式投資の年率リターンを表したクレストモント社の株式市場マトリックスである。(第3章で詳述する)このマトリックスではどの年を出発・終了点にしてもよく、任意の期間の年率リターンが分かるようになっている。そこではデータツールとしての効果を高めるために、カラー表示と補足的な情報が掲載されている。リターンの程度に応じて赤、青、緑の色分けが行われているうえ、過去1世紀の経済成長、インフレおよび歴史的な出来事なども一目で分かる。今では全世界に10万部のコピーが配布されている。

 投資予測と広告

 広告業界ではすべての広告のほぼ半分が有効であると言われるが、具体的にどの半分が有効なのかについてはよく分からない。このように広告業界では不確実な状況に対して最大の努力を払って楽観的な戦略を進めなければならないが、投資書籍や株式専門家もこれと同じようなものである。このように投資界でもさまざまな予測や玉石混交の情報があふれており、それらを正しく選別することはかなり難しい。本書では投資書籍や専門家の意見をどのように判断したらよいのかをはじめ、株式と債券市場の歴史に対する合理的な見方、将来の株式市場の見通し、投資マネジメントを向上するための効果的なテクニックなどについても詳しく検討する。

 各部のキーポイント

 各部末にはその部の内容をまとめたキーポイントを記載した。それらには各部の内容を要約したもののほか、本書全体の内容を理解するための手掛かりも含まれている。

 本書全体の10のキーポイント

  1. 異なる期間の株式投資の平均リターンが同じということはあり得ない。低いPER(株価収益率)が次第に高くなっていく期間のリターンは平均以上になるし、高いPERが低くなっていく期間のリターンは平均以下となる。
  2. 株式市場のボラティリティは多くの投資家が考えているよりもはるかに大きい。実質リターンを低下させる2つの元凶は、マイナスのリターンとリターンのばらつきである。

  3. PERのトレンドによって株式の長期上昇・下降相場が形成されるが、そのPERのトレンドを決定するのはインフレ動向である。

  4. 「Yカーブ効果」とは、PERとインフレ(またはデフレ)の緊密な関係を表したものである。

  5. 現在の株式と債券市場からは、相対的に低いまたはマイナスのリターンしか期待できない。

  6. クレストモント社の「フィナンシャルフィジックスモデル」には、株式市場の大きなトレンドを決定する経済と株式のさまざまな要因の相関関係が示されている。

  7. インフレが低位安定しているとき、株式市場の持続可能なPERのピーク水準または上限は20〜25倍であり、2004年後半現在のPERがまさにこの水準にある。

  8. アグレッシブな絶対リターン手法とはファンドマネジャーの腕によってコンスタントな利益を追求し、伝統的な相対リターン手法とはリスクを許容しながら長期のリターンを目指すものである。

  9. 長期上昇相場では株式や債券をバイ・アンド・ホールドする「帆走」戦略が極めて有効であり、長期下降相場では絶対リターンを追求する「舟漕ぎ」戦略が効果的である。

  10. 株式市場と投資マネジメントの進化に伴って、絶対リターン手法のリスクマネジメントの考え方が伝統的な相対リターン手法の投資マネジメントにも取り入れられるようになってきた。

関連製品

『わが子と考えるオンリーワン投資法』

お申し込みはトレーダーズショップからどうぞ


ウィザードブックシリーズ - 現代の錬金術師シリーズ - パンローリングライブラリ -
ウィザードコミックス
- 電子書籍 - 投資セミナーDVD - オーディオブック -
トレーダーズショップ 日本最大の投資家向け専門店
-
Copyright (C) Pan Rolling, Inc. All Rights Reserved.