しかし、著者はこうも指摘する。現在の知識と経験を積み重ねた状態で、その「遠
回り」を整理してみると、必要ないくつかの「ポイント」さえ押さえておけば、それ
ほどの時間をかけずに実運用に耐えられるものができるのではないか――。そうした
発想から誕生したのが、本書『システムトレード発見のポイント』である。
本書では、これらについて第2章から第5章に分けて詳しく解説する。また、シス
テムトレードが初めてという人向けに、第1章では著者が10年におよぶ実体験から学
んだ「7つの心得」について著した。一般に“常識”とされていることに疑問を持つ
と、新しい発見があることに気づくかもしれない。
さらに最後の第6章では、実際に読者が売買ルールを作るときの参考となるよう
に、実例を6つ紹介した。合理的な工夫を施した「目からうろこ」の“シンプルルー
ル”が大きな効力を発揮することに注目してほしい。
はじめに
システムトレードが日本で急激に普及し始めたのは、2000年代半ごろからでしょう
か。それ以前は、システムトレードといえば米国が中心であり、日本は米国に比べて
10年は遅れているといわれたものでした。
現在でも、その認知度や実践している投資家(トレーダー)の人口という意味で
は、米国に遠く及ばないかもしれません。しかし、システムトレードに関する「理
論」についていえば、現在の日本が米国に劣っているとは、けっして思いません。
とりわけ株式のシステムトレードに限っていえば、米国よりも一歩進んだところま
で発達してきたように思います。このままいけば、そう遠くない時期に「日本のシス
テムトレーダーは米国よりも10年進んでいる」といわれる日が来るのではないでしょ
うか。私は密かにそう期待しています。
本書では、日本のシステムトレーダーが世界で活躍するその一助になることも願
い、分析対象に日本株だけでなく、米国株も含めました。
実は、本書を執筆するにあたって「私自身の専門分野であるシステムトレードを
テーマにした内容」ということは、すぐに決まったものの、当初は米国株を対象とす
ることについて考えていませんでした。私自身が日本株専門で売買をしていることも
あり、当然のように日本株を対象に考えていたからです。
米国株を対象に含めることにしたのは、本書の編集等を担当してくださっている世
良敬明氏から「米国株のシステムトレードをテーマにした書籍がほとんどない」とい
う話を聞いたからです。そのとき、私自身が米国株のシステム作りにチャレンジする
のも面白いのではないかと思いました。「私のもっている日本株の知識をそのまま米
国株に当てはめたらどうなるだろうか……」と。
ある意味、売買ルールをゼロから作ることになるので、読者の皆様には申し訳あり
ませんが、本書は私自身の“実験台”を兼ねているともいえるかもしれません。た
だ、この米国株での実験をとおして「勝つための売買システムがいかにシンプルであ
るか」をぜひ理解してもらえればと思っています。
誤解のないように補足しておくと「シンプル」ということと「手を抜く」というこ
とは、イコールではありません。「利益を上げるために複雑なことをする必要がな
い」ということです。
トレードでは、結果(利益を上げること)がすべてとなります。その目的を達成で
きるのであれば、複雑であろうが、シンプルであろうが、かまわないのです。
本書は、ある程度のトレード経験がある方を対象としています。ただし「システム
トレード」については初めての方にも利用していただけるよう、前半には基礎的な内
容も含めました。したがって、中上級者の方であれば、第2章ないしは第3章以降か
ら読んでいただいてもかまいません。
本書をご覧いただくにあたって、利益を上げるためのアイデアを学んでいただくの
はもちろんとして、同じアイデアでも日本株と米国株ではどのような傾向の違いがあ
るかというところを意識していただくのも面白いのではないかと思います。
斉藤 正章