東京外為市場の叙事詩

この記録の横軸になるのは、1973年に変動相場制に移行した「市場の夜明け期」 から、個人トレーダーにネットFX（インターネットを利用したリアルタイムの為 替証拠金取引）が浸透してきた現在までの、東京市場の激動の歴史だ。そして縦 軸となるのは、市場参加者から一目置かれ、20年以上にわたってリスクを取って きた「本物」のディーラー、トレーダーたちが「そのとき何を考え、どう対処し たか」のインタビューである。

彼らへの質問（一部）は次のとおり。

●印象に残っている局面はどれか
●ディーリングで最も重要視していることは何か
●勝つために必要なことは何か
●やってはいけないことは何か
●良いディーラーの条件とは何か

彼らの発言から、成功者の環境や対応・得意技はさまざまでも、トレードへの思 想や姿勢には相通じるものがあると分かるだろう。

また、本書第２部では、東京外為市場の「舞台構成」について簡潔にまとめられ ている。特に個人のFXトレーダーは、自分の戦場がどのようなルールと参加者に よって構成されており、自分と“ディール”する相手がどのような人たちである かを知っておくべきであろう。

さらに巻末用語集では、東京外為市場特有の言い回しについて簡単に補足してあ る。証券や先物出身のトレーダーはこちらで意味を確認しておくと便利だろう。

本書は為替市場の歴史のそれぞれの局面で、正面から相場に取り組み、市場に翻弄されながらも、生き抜いてきた百戦錬磨の日本人ディーラーたちのインタビュー集である。そこで展開された相場の動きや、そこでディーラーとして何を考え、いかに行動したかを知ることは、市場に関心を抱く一般的な人はもとより、プロのディーラーや、最近増加が著しい個人FXトレーダーの方にもおおいに参考になるはずだ。

1. 久保田進也　（立ち読み）
   　固定相場制から変動相場制へ――情報収集を戦略化する

2. 坂本軍治
   　相場大転換の時代――政策の与える影響を読む

3. 堀内昭利
   　通貨危機の時代――画面の値動きから相場を感じる

4. 向坊洋之
   　グローバル化の進展とデリバティブズの台頭――オプションが通貨の動きを支配する

5. 吉田稔
   　ファンド興隆期と新興市場国の復権――五つのモデルによって運用方針 を守る

6. 高橋保恵
   　もう一つの為替取引、金利の世界との融合――常勝の女性ディーラー、 経験値で勝負する

7. 福住敞綱
   　夜の東京市場――ナイトのスペシャリスト、オーダーから相場を読む

8. ジョージ舟木
   　各国中央銀行の介入とヘッジファンド――海外市場で生きる

9. 杉山公一
   　新しい市場参加者の登場――ネット環境を駆使する

1. 市場参加者の種類と相場へのかかわり方
2. 個人と組織の役割
3. 相場は動かせるか
4. ディーリングに方法はあるか
5. 東京外為市場の変遷

用語集

著者紹介

1950年群馬県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。シティバンクでチーフディーラー等、ナショナルウエストミンスター銀行で国際金融本部長を歴任。現在は、通貨・国際投資アナリストとして活躍。著書に『＜入門の金融＞外国為替のしくみ』（日本実業出版社）、 『ディーラーが明かす為替市場の素顔』（金融財政事情研究会）、『人民元は世界を変える』　『外為市場血風録』（いずれも集英社新書）がある。

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