■序文
ほとんどのトレーダーは、いわゆるフィボナッチトレーディングのというものを試した経験があるだろう。たいていは価格のフィボナッチリトレースメントだ。トレーダーは長年このリトレースメント(押しや戻り)を、価格の支持線と抵抗線を確認するのに役立ててきた。しかしフィボナッチリトレースメントは、この重要な比率をトレードに利用する初心者向けの使い方だ。大切なのはさまざまなトレーディングの状況でその比率をどう使うかだ。さらに、これに劣らず大切な幾何学的な調和比率もあり、それをあなたは本書で学ぶことになるだろう。
ほとんどのトレーダーが一度も教えられたことがないのは、それらの比率を価格目標の支持線や抵抗線に使うのと同じように、時間目標の支持線や抵抗線にも使う方法だ。トレーディング計画の一部として、時間と価格のフィボナッチプロジェクションを組み合わせれば、トレーディングの機会を見つける強力な方法を手にしているはずだ。時間と価格のフィボナッチでのトレーディング戦略に関して、フィボ・クイーン(本名キャロリン・ボロディン)以上に教える資格のある人はだれもいないと思う。
わたしが最初にボロディンと出会ったのは1989年のことで、『ギャン・エリオット』という雑誌(その後発展して『トレーダーズワールド』誌になった)の1回目の会議がシカゴで開催されたときだ。わたしはギャン・トレーディング自宅学習コースをその会議で初めて発表したのだが、彼女はそのコースを受講した最初のひとりだった。しかし1989年当時、彼女は金融市場の初心者でもトレーディングの新人でもなかった。ほとんどのトレーディング教育関係者とは異なり、彼女は働きだしてからずっと金融市場で生きてきた。10代のころのフロアのランナーから始まり、ファンドアドバイザーを経て、デイトレーディングの指導者になるまで。彼女は市場に関してひたむきに学んできたが、それだけではなく、トレーディングビジネスのほとんどすべての面で長い間、実践的な経験を積んできた。
1989年以降の数年間、わたしたちは連絡を取り合い、ツーソンとシカゴ間でチャートや分析やトレーディング戦略をファクスでやり取りし合った。1993年に、わたしは彼女に、ツーソンへ引っ越してきてわたしと仕事をするようにと説得した。それからまもなくして彼女は、ファンド向けに分析とトレーディング戦略を提供してくれるならわたしが払っていたのとは比較にならない高給を出すという申し出に口説き落とされ、わたしから離れていった。しかし私たち2人はその後現在まで友人であり、事業提携者であり続けている。
彼女はわたしのダイナミックトレーディング方式を20年近く研究してきた。そして本書で登場するわたしのダイナミックトレーディングというソフトウエアのバージョン1を1997年にリリースして以来、彼女はそれをずっと使っている。ボロディンとわたしの関係ほど、「学生が教師になる」良い例はない。近年では、彼女が若いころに私から学んだのと同じほど、私が彼女から学んでいる。特に本書であなたも学ぶことになる、彼女のシンメトリーのセットアップやトレーディング戦略に関してそう言える。
わたしはかっての彼女の指導者であり、永遠の友人であることをとても誇りに思っている。また、あなたが今、手にしている彼女の本がトレードをするにあたって最も貴重な参考書の1冊になると確信している。
コロラド州スティームボート・スプリングズ
ロバート・マイナー(ダイナミックトレーダー・グループ)
■感謝の言葉
長年にわたる多くの先生方にお礼を申し上げます。まず私の指導者ロバート・マイナー氏に。私が氏に初めて会ったのは、1987年にニューヨーク株式市場が大暴落したブラックマンデーの直後、シカゴのミッドランドホテルでの会議においてでした。ほかに長年にわたって私の教育に貢献してくださった方々として、ロバート・クラウス(私が指導者に会うことになる会議に行くよう説得してくれた)、ラリー・ペサベント、ブライス・ギルモア、デビッド・パターソン、マーク・ダグラス、それから http://woodiescciclub.com/ のウッディーに。
私の新しい仕事仲間であるジョン・カーター、ヒューバート・センターズ、それに http://tradethemarkets.com/ のチームは、私が自分のビジネスを営業し発展させていくうえで手助けや支援をしてくれました。感謝します。
リチャード・カルスト(別名RMK)には、私のチャットルームで支えてくれたことに感謝したいと思います。おかげで私はときに命拾いをすることができました!
コンピューターに関するアドバイスや、バーチャル・チャットルームでチャートを生で見せる映像に関して、ジョン・ヘイトールに感謝します。またこの映像をコンピューターの画面共有技術に導入するのを手伝ってくれたトッド・フィリップスにも感謝したいと思います。私のチャットルームはそれ以降、完全に変わりました。
私を信頼し、仕事を支援してくれたデニス・ボルツおよびリチャード・ローレンスに感謝します。友人であるヘッジファンドリサーチのジョー・ニコラスに感謝します。彼は私のビジネス関係のファイルを保存していたので、私が「何かやっている」と思ったに違いないのです。ウィリアム・キッダー、別名「アンクル・ビル」に。私が18歳のとき、ウォール街で最初の仕事先であるDLJで自分の能力を見せる機会を与えてくれたことに感謝します。
さらに、友人でありクライアントであるフィールーズ・アミールパービス博士も大切な人です。博士は2004年12月に亡くなられました。博士とその家族は、私が家族の一員であるかのように扱ってくれました。あるいは彼の言い方では私を「養子」にしてくれました。そのような彼らにお礼を言います。
最後になりますが、特にこの本の執筆期間中に愛情と支援を頂いたキングファミリー全体に感謝したいと思います。結局のところクイーンにはキングが必要なのです。このファミリーは、私が過労であやうくノイローゼになりそうなときに正気を維持するのに本当に役立ちました。皆さん全員に感謝です!
キャロリン・ボロディン(別名フィボナッチ・クイーン)
■第1章 フィボナッチ数と黄金比
フィボナッチという名前にまだなじみがない人でも、映画『ダ・ヴィンチ・コード』が封切られた2006年に、何か聞いたような気がするかもしれません。ジャック・ソニエがパリのルーブル美術館で殺害されているのを発見されたとき、この亡くなった登場人物の奇妙な姿勢は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』という有名な絵を模倣していました。この絵は、フィボナッチ比率が人体にどのように現れるかを描いたものと言われてきました。映画の登場人物が、何らかの手掛かりか暗号のひとつとしてフィボナッチ数について話し始めたとき、映画に好奇心をそそられた人々もいました。わたしはと言えば、ただ含み笑いをしながら思ったものです、「そろそろだれかがフィボナッチを真剣に受けとめるときなのよ」と。
フィボナッチ級数やこの級数の特性はイタリアの数学者レオナルド・デ・ピサによって有名になりました。フィボナッチ級数は0と1で始まり、級数の次の数は前の2つを足して導き出すことで、無限大に続きます。例えば55+89=144、89+144=233、144+233=377、という具合に(次の級数を参照)。
0、1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233、377、610、987……無限大
この級数でとても興味を引かれるところは、無限大のほうへ進むにつれて級数内に定数が見つかるという点です。級数の数同士の関係では1.618の比率、つまり、黄金比、黄金分割、黄金率と言われるものであることが分かるでしょう(例えば55×1.618=89で、144は89の1.618倍)。最初のいくつかの数字よりもあとになると、級数のどの連続した2つの数字を取っても黄金比が見つかるでしょう。さらに1.618の逆数は0.618であることにも注意してください。
この級数とその特性に熱を入れたホームページはかなりの数に上ります。フィボナッチという語句を好みのサーチエンジンに入力するだけで、この主題に関して山ほどの情報があるのに驚くことでしょう。
黄金比は多くのさまざまな場所で見つけることができます。1.618の比率は目で見て心地よいとされているために、建築ではいわゆる「黄金方形」で使われています。また「完全なプロポーション」に顔を整形するのに、これらの比率を役立てている整形外科医も実際にいます。さらに、自然界にもこの比率は見つかります。花、オウムガイの貝殻、アンモナイト化石など、多くの場所で見つけることができます。わたしがとても魅力的だと思うのは、この比率が隠された神秘的な知識のシンボルとして知られている星形五角形(図1.1)のなかで現れるということです。それでわたしは、星形五角形内の比率にはひょっとしたら市場に対する隠れた秘密があるのではないかと思いついたのです!
教育を受けていた一時期、わたしは実際にユダヤ神秘主義を勉強しました。カリフォルニアのゴールデンドーン寺院からきた教師のひとりが楽しめると思うよと言って、『数学マジックランドのドナルド』というディズニーのアニメを手渡してくれました。別の学生はすでにそのアニメに目を留めていました。ドナルドダックがこのディズニーのアニメのなかで手に星形五角形を彫ってもらったからです。子供たちに数学を教えるために製作されたこのアニメのなかで、ドナルドダックは数学マジックランドを冒険しています。そこでプラトンやピタゴラスのところを訪れ、「数学に関する秘密の集まり」について話し、黄金分割について学びます。そのアニメは、0.618と1.618の比率が自然界や建築物のどこに存在するかを説明していました。ディズニーが1959年にリリースしたこのアニメは、インターネット上でまだ見ることができますし、また見る価値が十分にあります。アニメの終わりに使われる引用文はガリレオからで、「数学とは神が宇宙を書き表すのにお使いになった言葉である」というものです。わたしはこれは本当だと信じています。この級数に由来するフィボナッチ数とその比率の「暗号」を十分な時間をかけて研究すれば、わたしの言ったことにしだいに賛成してくれるか、少なくともそれを理解してくれると思います。これは、わたしが真実であると考えたからというだけでむやみに受け入れるべきものではありません。あなたが自分自身の旅で発見し、自分に納得させなければならないものです!
ほとんどのトレーダーにとって大切なことは、これらの比率を当てはめることによって相場の重要な支持線や抵抗線を見分け、それによってトレードを行う重要な機会、すなわちセットアップを決めるのに役立てることができるということです。十分なデータが得られるあらゆる市場でこれらの比率を当てはめる方法を、わたしはあなたに教えるつもりです。したがって、そのテクニックを適切に使えばあなたはトレーダーとして極めて優位に立つことができるでしょう。
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