2011年2月発売/A5判 上製本 294頁
ISBN 978-4-7759-7144-4 C2033
定価 本体2,800円+税
著者 アンドリュー・ブッシュ
監修者 長尾慎太郎
訳者 永井二菜
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≪序文≫――“伝説のFXウィザード”ビル・リップシュッツ
24時間、リアルタイムでニュースが流れるハイテク時代にあって、世界のさまざまな出来事は私たちの日常を支配し、金融市場にも大きな影響を与えている。今の地球は、強毒性のインフルエンザをはじめとする感染症、大型ハリケーンなどの自然災害、イラク戦争などをはじめとする地域紛争や9.11に象徴されるテロに至るまで、イベントの連鎖社会である。しかし用意周到な投資家はこうしたイベントを利益につなげて、大きく儲けているのである。そのためにはイベントの共通点を理解し、有事に備えた市場戦略やポートフォリオを準備しておく必要がある。
FXストラテジストとして20年あまりのキャリアを誇るアンドリュー・ブッシュは、大きな事件・事故・政変などのイベントが起こったあとのマーケットで勝つためのノウハウを熟知している。それをいかんなく本書で公開してくれている!
専門家ならではの知恵とアドバイスが満載された本書では、ワールドイベント(世界規模での出来事)を3つのカテゴリー(感染症、自然災害、政治)に分けて検証し、それぞれのテーマに適した実践的戦略を紹介している。湾岸戦争、ハリケーンカトリーナといった最近の重大ニュースを引き合いにしながら、マーケットのムードを読みとり、利益になりそうな銘柄を見極める方法を伝授していく。またイベントトレーディングの過去の成功例を取り上げ、どんな局面でも応用できるように、その知られざる一部始終を明らかにしている。
今日の相場で儲けるのは容易ではない。しかし、本書で紹介するアプローチはイベントの発生時には強力な武器となることは間違いないだろう。本書の主なテーマは以下のとおりである。
●感染症(インフルエンザ、狂牛病など)の流行の型は変わっても、社会や金融市場に与える影響は変わらないこと
●地震、津波、地球温暖化といった天変地異が産業と経済に大きな影響を及ぼすこと
●政権交代や政界スキャンダルは抜け目ないトレーダーにとって素晴らしいチャンスになること
感染症、自然災害、戦争といったイベントはいまや金融市場を揺さぶる大きな出来事になった。通信手段が飛躍的に進歩したおかげでイベントの効果は短時間で全世界に波及し、世界中の相場を大きく動かすのだ。本書を読めば、今日からでもイベントトレーディングの実践的な知識と能力が身につくだろう。イベントの展開を読み、勝負どころをうかがい、大きな利益につなげるノウハウをものにしよう――いざ本番に備えて。
■本書への賛辞
「経済がグローバル化の一途をたどる昨今は、すべてのイベント(世界規模の感染症、自然災害、紛争、テロ、政変など)が資本市場に大きな影響を与える。ブッシュ氏はたぐいまれなる才能の持ち主で、世界でのさまざまな出来事が金融市場をどのように左右し、投資の絶好の機会を生み出すのかを平易な言葉でズバリと解説している。本書は、グローバルマーケットを理解したいと思っている方、日々のニュースが市場をどう動かし、決定づけるのかを知りたい方にとって必携の書になるだろう」
――ロブ・ニコルズ(フィナンシャル・サービス・フォーラム代表兼COO、元米財務次官補)「ポートフォリオマネジャー、FXディーラーという職業柄、毎日配信されるブッシュ氏のメールマガジンを5年あまり愛読してきた。彼はその特異な才能で、世界中から集めたバラバラのテーマを金融市場で勝つための戦略にまとめ上げる。この30年間、FX市場で何十億という資金を動かしてきたが、その経験から断言しよう。本書は日々のイベント(世界規模の感染症、自然災害、紛争、テロ、政変など)に対するマーケットの反応を読み解くための必読書だ」
――エリック・ネルソン(米FXコンセプツ社シニアポートフォリオマネジャー)「リアルタイムのイベントを投資の材料にすることはプロの専売特許とされてきたが、今は違う。ブッシュ氏が明かすテクニックの数々は並みの市場参加者を超一流で、リッチな市場参加者に変える。ウイットを交えながら、点をつないで線にするブッシュ氏の手並みはだれもがまねできるものではない。しかし、だれでも最悪のニュースさえも儲けのネタにできることを、本書は教えてくれる」
――アマンダ・ラング(カナダBNN放送「スクイーズプレー」キャスター)「ウォール街のアナリストにとって企業決算や失業率は予測できても、政治的なこととなると未知の領域だ。日々のイベントは株式市場だけでなく、さまざまなマーケットに大きく影響する。だからブッシュのような目利きが金融市場で存在感を増しているのだ。そして、何よりブッシュ氏の書いていることが素晴らしいのは、われわれ一人ひとりを賢い投資家に変身させてくれるからである」
――グレッグ・バリエール(米スタンフォード・ワシントン研究所チーフポリティカルストラテジスト)「金融市場を動かす要因はいろいろある。ほとんどのエコノミストやストラテジストはこうした要因をマクロ経済の視点で分析する。しかし、本書はまったく異なる切り口から、新聞の見出しが市場に及ぼす重大な影響を解説している。研究熱心なトレーダー諸氏に自信をもってお勧めしたい」
――周阿定(中華民国中央銀行副総裁)
原書『World Event Trading:How to Analyze and Profit from Today's Headlines』
監修者まえがき 序文・・・ビル・リップシュッツ 謝辞 まえがき
パート1 感染症第1章 黒死病(ペスト)――現代の範例「暗黒の時代」と呼ばれる理由 1314〜16年の大飢饉 黒い死 戦闘に勝って、戦争に負ける 死の経済効果――勝者と敗者 命あっての物種 近年の事例――1994年ネズミ雨
第2章 1918年スペイン風邪
第3章 狂牛病
第4章 SARS
第5章 鳥インフルエンザ
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パート2 自然災害第6章 ハリケーン専門機関の情報 良い知らせと悪い知らせ 最悪中の最悪 1992年のハリケーン・アンドリュー 2004年のハリケーン・チャーリーとハリケーン・アイバン 2005年のハリケーン・カトリーナとハリケーン・リタ ハリケーンのはずれ年
第7章 地震と津波
第8章 地球温暖化
パート3 政治第9章 テロリズム9.11同時多発テロ――2001年 2004年3月11日スペイン列車爆破テロ事件 2005年7月7日、ロンドン同時爆破テロ まとめ
第10章 政変
第11章 政界スキャンダル
第12章 現代の短期戦争
あとがき |
一般的に、個人投資家が機関投資家などに比して対等に立ち回れる投資機会はそれほど多くはないが、このアウトライヤー的な状況下でのトレードはその主要な構成要素の一つである。不測の事態においてはマーケットの参加者のほとんどすべての人は慌てふためき右往左往するだけで、能動的なトレードをすることはできないからだ。
そうした事例について事前に入念なリサーチを行い周到に準備をしているバイサイドはほとんどないし、現実にイベントが発生するような際には、セルサイドから過去の類似事例について簡単なレポートが出されることもあるが、実際にそれらの知見に基づいて行動を起こせる売買主体は非常に限られている。彼らにせいぜいできることは、ボラティリティの上昇に対応して事後的にレバレッジを抑えるか、βニュートラルなポジションにシフトするくらいのものでしかない。
しかし、特殊なイベントと言えども類例が過去にまったくないというわけではない。本書に解説してあるように、投資家を集団としてみた場合、その行動はエクストリームなケースにおいて一定のパターンを示す。そうしたいびつな、投資家の一方向の行動はマーケットにおいて非常に偏ったゆがみを発生させる。そのゆがみは、それがいびつであることを知る者にとって、そしてその状況下で自由に動ける者にとってまたとないチャンスをもたらすことになる。その意味でも個人投資家は非常に有利な立場にあると言える。
本書の狙いは、アウトライヤー下におけるこうした投資家の習性について事前に十分な学習を行うことによって、実際にそういった事例が発生したときに、リスクを抑える保守的な行動ではなく、より積極的に利益を取りにいくトレードを行うことを可能にすることにある。私も本書を大変興味深く読んだ。ぜひ皆さんも本書を手元において来るべきチャンスに備えていただきたい。
翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の永井二菜氏は丁寧な翻訳を実現してくださった。翻訳作業の期間中に永井さんから多くの質問をいただいたが、どんな些細な点でも納得できるまで解明して分かりやすい翻訳を実現しようとする姿勢には頭が下がる思いであった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2011年1月
長尾慎太郎
絶好の仕掛け時は流動性や相場の基調が一変するときに訪れる。トレーダーや投資家は市場の混乱にのみ込まれて、その好機を逃してしまいがちだが、それはひとえに何が起きているのか分かっていないからだ。世界規模のイベントとイベント発生時の市場心理――その複雑な関係を抑えておくことが欠かせない。
それがワールド・イベント・トレーディングの肝だ。
マーケットが判断材料を求めて絶えずアンテナを張りめぐらしているように、マクロトレーダーも常に豊富な戦略を用意し、それを実践できるようにしなければならない。そのとき、ワールド・イベント・トレーディングのスキルは最強の武器になる。
過去のイベントに精通することも、それが金融市場に与えた影響について理解することも容易ではない。異常事態の展開を読めるようになるには数多くの事例を経験するか研究するしかないだろう。イベントに伴う相場の動きを理解し、予測することも百戦錬磨の専門家でもないかぎりは至難の業だ。
アンドリュー・ブッシュは本書のなかで、そんな常識を覆し、どこを見るかだけでなく、どう見るかについても手ほどきしてくれる。グローバルな自然災害からある国の失政に至るまで幅広いイベントを網羅して、市場がなぜ、どのように反応したのかを事例ごとに丁寧に分析している。
為替ディーラー、アナリスト、文筆家として20年のキャリアをもつブッシュ氏が過去500年間に起きたイベントのなかから代表的な事例を引き、その一つひとつを吟味し、市場の反応を探る。その結果、現実の金融市場を舞台にした仮想のロードマップが完成した。ここには緊急時の市場の動きが詳細に描かれている。
本書は各国のトレーダー、学術研究者、政治家、市場参加者に向けた必読の1冊である。
ビル・リップシュッツ
(ハザーセージ・キャピタル・マネジメント社ポートフォリオ管理担当プリンシパル兼取締役)
※ビル・リップシュッツは、『新マーケットの魔術師』のトップで紹介されている
八年間負け知らずで5億ドルを稼いだ「通貨の帝王」です。
2005年を振り返ってみれば、薄商いの夏の市場を一変させたのは異例のハリケーンシーズン到来だった。フロリダ南部を通過したハリケーン・カトリーナは勢力を弱めるどころか速度を上げて温暖なメキシコ湾を抜け、アメリカの石油生産の拠点に接近した。当時、ニューオーリンズの港に立ち並ぶ倉庫にはあらゆるものが詰まっていた――バナナ、冷凍の鶏肉、トウモロコシ、木製パネル。気象レーダーに現れた名もなき点はやがて多くの人命を奪い、政府の危機対応のまずさを露呈する。南部の港町は完全にまひし、数万人の住民が路頭に迷い、アメリカ経済は大混乱に陥った。少なくとも100隻の貨物船がミシシッピ川の下流域で沈み、世界供給量の半分にあたる亜鉛が倉庫もろとも冠水した。ほぼすべての産業が打撃を受け、「世界最後の超大国」はその評判を著しく落とした。しかし、そのわずか1年後、アメリカの株価は史上最高値に迫るまでに回復した。コストのかさむ湾岸戦争の終結、政権の交代、原油価格の上昇を味方につけ、アメリカの金融市場は底力を見せつけたのだ。
しかし現実に目を向ければ、今後の自然災害は経済と市場にかつてないほどの打撃を与えるだろう。アメリカの沿岸部では住宅の建設ラッシュが続いており、地元住民の暮らしは危険にさらされている。国勢調査によると、大西洋ハリケーンの頻発地域に住む市民は8700万人で、これはアメリカの全人口のほぼ3割に当たる。ルイジアナ州からフロリダキーズにかけての沿岸部5万平方マイルには、1950年当時に比べて3.5倍の人口がひしめいている。それだけに災害が起きれば住民の避難は困難になり、対物被害は大きくなるだろう。市場も無傷ではいられない。損害保険料、トウモロコシの先物価格、株価に至るまで、影響を受けるはずだ。
市場の大きな矛盾点は、過去の実績は未来の成果を約束するものではないが、それでも歴史は繰り返すということだ。そして私たちの記憶は時間とともに薄れていく。マスコミがカトリーナを話題にすることも、今ではほとんどなくなってしまった。それでも大災害は確実にやってくる。インフルエンザが再び流行しようものなら、テレビレポーターや市場アナリストは1918年のスペイン風邪の例を勇んで引き合いに出すだろう。母なる自然はマーケットにとって、もっとも難しい材料かもしれない。しかしマーケットにとって、もっとも大きなリスクは別にある――人間の介入だ。この点に関して、私はアンドリュー・ブッシュの専門家ならではの分析力を頼りにしてきた。「過去は未来の序章、人間は忘却の動物」と心得るブッシュは国際市場の展開を見事に言い当てる。
ワシントンの武力外交、湾岸戦争、国際貿易の不均衡など、そのすべてがどう絡み、どう市場を揺さぶるのかを彼はたちまち把握してしまう。この数年でブッシュのコメントを、たぶん100回は伝えてきたと思うが、そのコメントが加わると市況のニュースは一段とおもしろくなる。本文を読んでいただければ分かるとおり、慧眼の持ち主アンドリュー・ブッシュが市場の難解な動きを鋭い指摘とユーモアを交えて解説してくれる。
クリスティーン・ローマンズ(CNNリポーター兼キャスター)
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