2019年7月発売
定価 本体2,800円+税
A5判 222頁
ISBN 978-4-7759-7253-3 C2033
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ウォーレン・バフェットの投資信条とは、「他人が強欲になっているときに恐れて、他人が恐れているときに強欲になる」というもので、それを基に反復可能な手法を打ち立て、巨額な富を築いてきた。ただ、この言葉はよく聞くが、実行するのは簡単ではない。その証拠に、2人目のバフェットはいまだに出現していない。このバフェットの投資の神髄をさらに深く考察すると、「バフェットほど、人間の行動を理解している人はいない」ということになる。
バフェットは人々がストレスを受けると、不合理になることを十分に理解し、それを投資に生かしてきた。その手法を短期売買で再現可能にしたのが本書である。
本書では、幅広い検証や実例を通して、恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売ることが最も高勝率なトレード法だということを検証してきた。この手法のエッジは21世紀になってからの激動を潜り抜けてきたことでも分かるように、今後も長く残り続けるだろう。本書から示唆や刺激を受けて、ぜひ読者なりの人間の行動に基づいた「恐怖で買い、強欲で売る」短期売買手法を確立してほしい。
監修者まえがき
免責事項
謝辞
第1章 恐怖と強欲と相場
第2章 RSIパワーゾーン戦略
第3章 クラッシュ戦略
第4章 ボラティリティのトレード
第5章 ボラティリティパニック戦略
第6章 VXXのトレンド戦略
第7章 新高値を利用したトレード
第8章 TPS戦略――恐怖と強欲の高まり
第9章 恐怖から生じるギャップ
第10章 市場で恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売る
付録1 リスクに比べて大きな利益を得るための優れたトレードの構成(コナーズ・リサーチ・トレーダーズ・ジャーナル 第7巻)
付録2 損切りの逆指値を置くと、今でもパフォーマンスが落ちる(コナーズ・リサーチ・トレーダーズ・ジャーナル 第3巻)
付録3 本書のトレード戦略のためのアミブローカー用アドオンのソースコード
付録4 ローレンス・A・コナーズによるその他の著書
付録5 個人指導のお知らせ
付録6 資産運用会社およびファミリーオフイス向けプライベートコンサルティングのお知らせ
付録7 アミブローカーのプログラミング入門
付録8 相関リスク
付録9 トレードに関する教材
付録10 RSIの計算式とコナーズRSIの計算法
定量的なデータを用いて市場の未来を説明しようとする戦略は20世紀の終わりごろから盛んになった。この方法は、データの取得に努力を要し、同じ方法を取る人間が限られているうちは大変うまく機能してきた。他人が持っていないデータを持ってさえいれば、また効率的な執行ができる立場にいれば、労せずして簡単に収益を上げられる時期が確かにあったのである。だが、現在ではこういったアプローチを取り巻く状況は一変している。データはだれでも安価に手に入るようになり、複雑な戦略の実行は極めて容易になった。定量的なアプローチでもって市場を攻略しようとする人は飛躍的に増えたのである。
これに伴い、それまで大変良好なパフォーマンスを示してきた戦略の優位性が、時間の経過とともに手のひらの上の淡雪のごとく消えていくのを私は数多く見てきた。今日では、定量的分析においてデータを多く集めただけでは、また複雑なモデルにそれを学習させようとするだけでは、その多くは、せいぜい過去の見かけ上のバックテスト結果を良くすることができるにすぎず、将来の再現性はおぼつかなくなってきているのである。もはや、どんなニッチなアノマリーであれ、遠からずそれが人口に膾炙することを前提に話を進めざるを得ない時代に私たちは生きている。
だが、こうした環境下にあっても、いつまでも消えずに残るバイアスもわずかながら存在する。市場参加者の恐怖と強欲に起因するものはその代表的なもののひとつである。本書はこうしたバイアスを利してトレードする具体的な方法を子細に解説している。著者が本文中で繰り返し述べているように、ここでのエッジは市場参加者が人間であるかぎり、永遠に消えることはない。今後は、こうした時系列データを用いた定量的なトレード戦略の関心は、市場参加者の心理的弱点に基づくものや市場の制度的な要因に基づくもの(どちらも容易には消し難いバイアスをもたらす)に焦点が移っていくのではないだろうか。
なお、本書では最近の相場書にふさわしく、アウトライトの資産だけではなく、オプションを利用してより機能的なトレードポジションを構成する方法がそこかしこに紹介されている。オプション取引にかかわる環境変化はまだ進行中であり、オプションを使いこなせることは、いまだ計り知れない優位性をその投資家にもたらす。この分野にはまだ多くの宝が眠っている。詳しく学びたい方は、本書と合わせ、『先物市場の高勝率トレード――市場分析、戦略立案、リスク管理に関する包括的ガイドブック』(パンローリング)などをぜひ参照されたい。
最後に、翻訳にあたっては以下の方々に感謝の意を表したい。山口雅裕氏はこれまでの訳書に引き続き正確な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。
2019年6月
長岡半太郎
市場は変化する。それは常に変わるものだ。だが、人間の感情は変わらない。感情、特に恐怖と強欲が市場で極端に高まったときを特定して、その過程を体系化・定量化して、そこで何度も繰り返してトレードを行おう。