『指数先物の高勝率短期売買
検証の鬼から学ぶトレード戦略を開発する秘訣』
著 者 コラ・レディ
訳 者 山下恵美子
監 修 長岡半太郎
2020年2月発売
定価 本体5,800円+税
A5判 302頁
ISBN 978-4-7759-7262-5 C2033
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そのために、ギャンのルールとか、ダイバージェンスとか、チャートパターンとか、ペナントとか、トレンドラインとか、フィボナッチリトレースメントとか、エリオット波動とか言われるものは一切登場しない。チャートすら、本書には1つもない。その理由は、この種のものはすべて主観的な判断にゆだねられているので、検証できないだけなく、検証に値しないし、クオンツトレードとは程遠いものだからだ。 また、本書には、短期間で大儲けできるような手法も戦略もまったく書かれていない。
本書の真の目的は、魚を恵んでやることではなく、魚の釣り方を伝授し、それで一生食べていけるようにさせることである。本書では、読者自身がトレード戦略を構築するためのフレームワークを提供しているので、本書掲載のパターンを学習すれば、読者独自のトレード戦略を開発するうえでの大きなエッジが得られるだろう。
市場分析は小難しいロケットサイエンスではない。価格データを解明することこそが市場分析である。ただ、本書を読み込むためには勉強と集中力が必要で、真剣に努力する必要がある。本書のトレード戦略をいくつか学び、読者にとってうまくいく新しいトレードシステムを構築するのに必要なツールが得られるならば、経済的な自立はもう手の届くところに来ているだろう!
第1章 短期トレードのルール
第2章 だれからも聞かれたことはないが、テクニカル分析って何?
第3章 ビルディングブロックス
第4章 クオンツトレードの統計量
第5章 バックテストの例
第6章 $SPYの高確率トレードパターン
%プレー
連続下落と連続上昇
最大、最小、その他もろもろ
月末、四半期末、SQの前後
経済イベント
ルール34
ドリフトを忘れるな
第7章 すべてのトレーダーが読むべき10冊の本
競馬の格言
サヨナラ
用語集
さて、本書では本文中に「クオンツ」という言葉がときどき出てくるが、クオンツ関係者は、これに少なからず違和感を覚えることだろう。クオンツそのものは前世紀の終わりに登場し、それは金融市場における磁気データの集積とコンピューティングを背景としていた。その当初は、コンピューターを使えば金融市場の構造やメカニズムを明らかにできるのではという期待が持たれ、少なからぬ先達がこの課題に挑戦したが、結果は厳しいものであった。複雑系の一種である金融市場は、ほかの分野とは異なり、ハードシステム系の方法論では容易には解き明かせなかったのである。このため実務者たちは現実的な解法として、定量的な分析結果を専門家の経験知によって確認するトライアンギュレーション法や、プロトタイプを運用しながら改善を図る仮説演繹法を使ってきた。これらのアプローチはかなり成功し、今日のクオンツ運用の礎となっている。
一方で、本書記載の内容は、市場全体をうまく説明したものではなく、どこまでいっても単なる断片的な検証結果の集積にすぎない。ここでは市場におけるそのアイデアの再現性は確認されていない。だがこれは、中の仕組みはよく分からなくても実際のモノの役に立てばそれで良いとする実証主義の文化のアメリカや、あるいは唯物論的世界観に依拠した社会を形成する共産主義の国々では、それほど唐突なことではない。そして、データサイエンスや機械学習といった先進的な科学パラダイムは、それらの世界観と親和性が極めて高く、その意味で言えば、大量のデータを分析したことを正しさの根拠とすることもあながち間違いとは言い切れないのである。現に、著者の言う「クオンツ」の考え方をいち早く導入して行動した人たちは、この30年ほどの間に大成功を収めてきた。彼らはほかの多くの人がそれを使うのを躊蹲している間に、先行者メリットを思う存分享受したのである。
現実のトレードにおいては、何も市場を包括的に説明できる必要もなければ、意思決定の背景に学術的な理論を必要とするわけでもない。しかし、おそらく将来においても、本書のような帰納的なアプローチは、リクツ先行型の日本の社会には簡単には受け入れられないだろう。そして、多くの人が懐疑的であればあるほど、その方法の成果は大きくなる。私たちは世の中の大多数の人々が真実に気づくその日まで、静かに黙々とデータの分析とトレードの実践を行っていけばよい。
最後に、翻訳にあたっては以下の方々に感謝の意を表したい。山下恵美子氏はこれまでの訳書に引き続き正確な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。
2020年1月
長岡半太郎
本書は過去5年にわたって私が書いてきたブログの記事のなかから最高の戦略を選び、アップデータしたものだ。さらに私の探求を新たなレベルに引き上げるべく、新たな戦略も加えた。
本書は簡単な言葉で書くように努めた。不快なマーケットジャーゴンで読者を困惑させたくなかったからだ。また、本書に掲載したトレード戦略の結果を読者が再現できるように過去のトレード例も提示した。本書を読んでいくなかで、この意図から外れた箇所があったらご容赦いただきたい。
だれでも人生における目標というものを持っているはずだ。高校で人気者になる、アイビーリーグの大学を卒業する、高報酬の仕事に就く、美人の妻と結婚する、かわいい子供に恵まれる、夢の家に住む、世界旅行をする……。すぐにリストは50、あるいは100ものことを思いつくだろう。そんな私の目標の1つは、私が情熱を注ぐテーマ、つまりトレードに関する本を書くことだった。
それから最後に、本がベストセラーになることで得られるお金と名声も魅力の1つであることを私は否定するつもりはない。
本書はトレードに熱心に取り組んでいる人にとってはすぐに効果が現れるだろう。本書を読みながら、そして本書を読んだあとでも毎日市場を観察していれば、本書に出てくるトレードパターンの新たな例を、今現在進行中の市場のなかに見つけることができるはずだ。本書から最高の結果を得るためには、これらのパターンを実際にトレードして、練習を重ねることである。これらの新しい概念を実験して、それをあなたのトレード戦略に徐々に追加していく。そうすれば新しい戦術への扉が開かれ、自信をもってトレードできるようになるだろう。練習を重ねれば、別のパターンを見つけられるようにもなるはずだ。パターンは発見されるのを待ちながら、そこに存在しているのである。
これらのセットアップを最大限に活用するための重要なポイントは以下のとおりである。
チャートや図に何らかの予測的価値があるとするならば、そのチャートを生みだす数字にはその情報が含まれていると私は思っている。価格には偶然とは考えにくい予測的な意味があり、チャートがなくても日々の価格の高値、安値、始値、終値、出来高を見れば値動きはおのずと分かると私は思っている。
「お前の目はお前を欺くかもしれない。目に見えるものは信用するんじゃない」とオビ・ワン・ケノービは言った。
投資本を読んでいていつも疑問に思うのは、「もしこれらのシステムが本当に良いものなら、なぜ著者はそれを使って自分で稼がないのだろうか。なぜそれらのシステムを教えるような本を書くのだろうか」ということだ。
これに対しては、私には私なりの答えがいつくかある。1つは、本書を書くためのリサーチをしている間に私は多くのことを学んだということだ。もちろん、私はこれらのシステムの多くを長年にわたっていろいろな市場で使ってきたが、どのシステムにも必ず新たなニュアンスの違いや修正点が現れる。私はシステマティックトレーダーではあるが、現在の栄光に満足し、お金を永遠に生みだすブラックボックスを使い続けることは不可能だと思っている。どのシステムも常にリサーチが必要で、進化させ続ける必要がある。古い道は捨てて、新たな道を切り開くことが重要だと私は思っている。
「アイデアを盗むような人のことは気にするな。それがあなたのオリジナルなら、それをやつらの口の奥深くに詰め込めばいいだけさ」――ハワード・H・エイケン
システム開発とトレードは常に進化するプロセスだ。その継続的なプロセスこそが、人をシステムそのものではなくて、成功するシステマティックトレーダーにするのである。
市場は多くの非効率を隠したポケットを持つ大きな場所だ。しかし、それらのポケットは常に変化している。本書はさらなる非効率を探すうえでの出発点として最高の場所だと私は思っている。その非効率を自ら見つけたとき、成功をかみしめることができるのだ。
また、私はほかのシステム開発者、トレーダー、リサーチャーたちからなるコミュニティーともつながりを持ちたいと思っている。ほかの人とは違って、私は、システムを共有することでシステムの価値が低下するとは思っていない。毎年、何兆ドルというお金が市場に投じられる。市場にはトレンドフォロワー、カウンタートレンドフォロワー、バイ・アンド・ホールドの投資信託、直感でトレードするデイトレーダーをはじめ、ほかにもたくさんのタイプのトレーダーやシステムフォロワーたちがいる。
あなたがどんなシステムを持っていようと、どんなアプローチを使おうと、そういったシステムやアプローチをあなたよりもうまく使える人が必ずいるものだ。興味を持ったコミュニティーとアイデアを共有することで、彼らからもアイデアを学ぶことができる。「与えよ、さらば与えられん」ということわざもあるではないか。
最終的に私は本を書くことにした。私が書いたものを読者が楽しんで読んでくれることを願ってやまない。
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