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ウィザードブックシリーズ Vol.293

指数先物の高勝率短期売買 検証の鬼から学ぶトレード戦略を開発する秘訣 指数先物の高勝率短期売買
検証の鬼から学ぶトレード戦略を開発する秘訣

著 者 コラ・レディ
訳 者 山下恵美子
監 修 長岡半太郎

2020年2月発売
定価 本体5,800円+税
A5判 302頁
ISBN 978-4-7759-7262-5 C2033

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著者紹介目次

検証検証検証、クオンツトレードの神髄!
ラリー・ウィリアムズ、トビー・クレイベル、ビクター・ニーダーホッファーを師と仰ぐ検証マニア

全トレーダーにとっての「生ける伝説」であるラリー・ウィリアムズやトビー・クレイベルやビクター・ニーダーホッファーを師と仰ぎ、検証にとりつかれたコラ・レディが高勝率な短期売買法を編み出すやり方を読者に、分かりやすく、手に取るように示したのが本書である。

そのために、ギャンのルールとか、ダイバージェンスとか、チャートパターンとか、ペナントとか、トレンドラインとか、フィボナッチリトレースメントとか、エリオット波動とか言われるものは一切登場しない。チャートすら、本書には1つもない。その理由は、この種のものはすべて主観的な判断にゆだねられているので、検証できないだけなく、検証に値しないし、クオンツトレードとは程遠いものだからだ。 また、本書には、短期間で大儲けできるような手法も戦略もまったく書かれていない。

本書の真の目的は、魚を恵んでやることではなく、魚の釣り方を伝授し、それで一生食べていけるようにさせることである。本書では、読者自身がトレード戦略を構築するためのフレームワークを提供しているので、本書掲載のパターンを学習すれば、読者独自のトレード戦略を開発するうえでの大きなエッジが得られるだろう。

市場分析は小難しいロケットサイエンスではない。価格データを解明することこそが市場分析である。ただ、本書を読み込むためには勉強と集中力が必要で、真剣に努力する必要がある。本書のトレード戦略をいくつか学び、読者にとってうまくいく新しいトレードシステムを構築するのに必要なツールが得られるならば、経済的な自立はもう手の届くところに来ているだろう!


著者紹介

コラ・レディ(Kora Reddy)
クオンツトレードのポータルサイト(https://paststat.com/)の共同設立者で、アメリカ株式市場に上場している銘柄の分析やバックテストを行っている。
立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

目次

監修者まえがき
ご意見について
謝辞
はじめに

第1章 短期トレードのルール

第2章 だれからも聞かれたことはないが、テクニカル分析って何?

第3章 ビルディングブロックス

第4章 クオンツトレードの統計量

第5章 バックテストの例

第6章 $SPYの高確率トレードパターン
%プレー
連続下落と連続上昇
最大、最小、その他もろもろ
月末、四半期末、SQの前後
経済イベント
ルール34
ドリフトを忘れるな

第7章 すべてのトレーダーが読むべき10冊の本

競馬の格言
サヨナラ
用語集

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監修者まえがき

 本書はトレード関連のポータルサイトの主催者であるコラ・レディが著した“$SPY High Probability Trading Strategies”の邦訳である。ここではアメリカの代表的な株価指数であるS&P500にトラックするETF(上場投資信託)である$SPYの短期トレードが紹介されている。すでに読者にトレード経験があれば、細かい周辺知識は省略して単刀直入に検証結果だけを載せてもらったほうが分かりやすいし、その分析対象も実際のトレードが困難な現物指数のデータよりも、先物やETFのデータを対象にしてくれたほうが現実的である。これは実践家のための書籍である。

 さて、本書では本文中に「クオンツ」という言葉がときどき出てくるが、クオンツ関係者は、これに少なからず違和感を覚えることだろう。クオンツそのものは前世紀の終わりに登場し、それは金融市場における磁気データの集積とコンピューティングを背景としていた。その当初は、コンピューターを使えば金融市場の構造やメカニズムを明らかにできるのではという期待が持たれ、少なからぬ先達がこの課題に挑戦したが、結果は厳しいものであった。複雑系の一種である金融市場は、ほかの分野とは異なり、ハードシステム系の方法論では容易には解き明かせなかったのである。このため実務者たちは現実的な解法として、定量的な分析結果を専門家の経験知によって確認するトライアンギュレーション法や、プロトタイプを運用しながら改善を図る仮説演繹法を使ってきた。これらのアプローチはかなり成功し、今日のクオンツ運用の礎となっている。

 一方で、本書記載の内容は、市場全体をうまく説明したものではなく、どこまでいっても単なる断片的な検証結果の集積にすぎない。ここでは市場におけるそのアイデアの再現性は確認されていない。だがこれは、中の仕組みはよく分からなくても実際のモノの役に立てばそれで良いとする実証主義の文化のアメリカや、あるいは唯物論的世界観に依拠した社会を形成する共産主義の国々では、それほど唐突なことではない。そして、データサイエンスや機械学習といった先進的な科学パラダイムは、それらの世界観と親和性が極めて高く、その意味で言えば、大量のデータを分析したことを正しさの根拠とすることもあながち間違いとは言い切れないのである。現に、著者の言う「クオンツ」の考え方をいち早く導入して行動した人たちは、この30年ほどの間に大成功を収めてきた。彼らはほかの多くの人がそれを使うのを躊蹲している間に、先行者メリットを思う存分享受したのである。

 現実のトレードにおいては、何も市場を包括的に説明できる必要もなければ、意思決定の背景に学術的な理論を必要とするわけでもない。しかし、おそらく将来においても、本書のような帰納的なアプローチは、リクツ先行型の日本の社会には簡単には受け入れられないだろう。そして、多くの人が懐疑的であればあるほど、その方法の成果は大きくなる。私たちは世の中の大多数の人々が真実に気づくその日まで、静かに黙々とデータの分析とトレードの実践を行っていけばよい。

 最後に、翻訳にあたっては以下の方々に感謝の意を表したい。山下恵美子氏はこれまでの訳書に引き続き正確な翻訳を行っていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは、パンローリング社の後藤康徳社長のおかげである。

 2020年1月

長岡半太郎



はじめに

 これまで長年にわたって投資やトレードの本を何百冊と読んできたが、そのなかで最も役立ったのは個人が書いたもので、それは簡単な言葉で書かれ、的を射たものだった。私も本書では簡単な言葉を使い、本書をシンプルで的を射たものにしたいと思っている。

 本書は過去5年にわたって私が書いてきたブログの記事のなかから最高の戦略を選び、アップデータしたものだ。さらに私の探求を新たなレベルに引き上げるべく、新たな戦略も加えた。

 本書は簡単な言葉で書くように努めた。不快なマーケットジャーゴンで読者を困惑させたくなかったからだ。また、本書に掲載したトレード戦略の結果を読者が再現できるように過去のトレード例も提示した。本書を読んでいくなかで、この意図から外れた箇所があったらご容赦いただきたい。

本書を書いた動機

 本書を書いた動機は3つある。有名な中国のことわざに、「魚を1匹やれば1日食いつなぐことができるが、魚の取り方を教えてやれば一生食いはぐれることはない」というものがある。本書における私の目的は、市場力学と、あなた自身のトレード戦略を構築するためのフレームワークを提供して、毎日のトレードで応用できるようにすることである。本書で提示しているパターンを理解・学習することで、トレード戦略を開発するうえでの大きなエッジが得られるだけでなく、市場の動きを合理的に解釈して、トレードの勝ち負けに起因する不安も和らげることができるはずだ。市場を見て、自信をもってトレードの意思決定をすることができるようになれば、それは金と等しい価値を持つものになるだろう。

 だれでも人生における目標というものを持っているはずだ。高校で人気者になる、アイビーリーグの大学を卒業する、高報酬の仕事に就く、美人の妻と結婚する、かわいい子供に恵まれる、夢の家に住む、世界旅行をする……。すぐにリストは50、あるいは100ものことを思いつくだろう。そんな私の目標の1つは、私が情熱を注ぐテーマ、つまりトレードに関する本を書くことだった。

 それから最後に、本がベストセラーになることで得られるお金と名声も魅力の1つであることを私は否定するつもりはない。

本書から何を学べるか

 市場分析はロケットサイエンスではない。シンプルな概念と経験を持って次々と展開していく価格データを解明することこそが市場分析である。トレード戦略のなかには、市場の振る舞いを理解するのを手助けしてくれるものもあるだろうし、今の市場の動きを見て、次に何が起こるのかを高い信頼度で予測することを可能にしてくれるものもあるだろう。本書は、金持ちになるための本でもなければ、ノーリスクをうたう本でもない。本書を読むためには勉強と集中力が必要で、真剣に努力する必要があることを覚悟しておいてもらいたい。「知識は人に伝えることができるが、英知は自分で学ぶ以外にない」という古いことわざにもあるように、本書が、トレード戦略をいくつか学び、あなたがあなたにとってうまくいく新たなトレードシステムを構築するのに必要なツールを提供するものになればそれほどうれしいことはない。

本書に含まれていないもの

本書の使い方

 本書はトレードに熱心に取り組んでいる人にとってはすぐに効果が現れるだろう。本書を読みながら、そして本書を読んだあとでも毎日市場を観察していれば、本書に出てくるトレードパターンの新たな例を、今現在進行中の市場のなかに見つけることができるはずだ。本書から最高の結果を得るためには、これらのパターンを実際にトレードして、練習を重ねることである。これらの新しい概念を実験して、それをあなたのトレード戦略に徐々に追加していく。そうすれば新しい戦術への扉が開かれ、自信をもってトレードできるようになるだろう。練習を重ねれば、別のパターンを見つけられるようにもなるはずだ。パターンは発見されるのを待ちながら、そこに存在しているのである。

 これらのセットアップを最大限に活用するための重要なポイントは以下のとおりである。

 市場を利用できるのは、そこに非効率が存在するときだけである。しかし、そういった非効率を見つけようとする賢明な人々はたくさんいる。そして彼らが非効率を見つけたら、非効率は瞬く間に消える。利用できる非効率は、年々歳々、あるいは何十年にもわたって、投資家やギャンブラーたちを世界中の市場へと駆り立てる恐怖と貪欲に深く根差した非効率だけだ。この事実を念頭に置くことで、トレードに使えるあなた自身のトレードアイデアを着想することができるようになるはずだ。

本書に図がないわけ

 チャートや図に何らかの予測的価値があるとするならば、そのチャートを生みだす数字にはその情報が含まれていると私は思っている。価格には偶然とは考えにくい予測的な意味があり、チャートがなくても日々の価格の高値、安値、始値、終値、出来高を見れば値動きはおのずと分かると私は思っている。

「お前の目はお前を欺くかもしれない。目に見えるものは信用するんじゃない」とオビ・ワン・ケノービは言った。

自分の口座でトレードする代わりに本書を書いたわけ

 投資本を読んでいていつも疑問に思うのは、「もしこれらのシステムが本当に良いものなら、なぜ著者はそれを使って自分で稼がないのだろうか。なぜそれらのシステムを教えるような本を書くのだろうか」ということだ。

 これに対しては、私には私なりの答えがいつくかある。1つは、本書を書くためのリサーチをしている間に私は多くのことを学んだということだ。もちろん、私はこれらのシステムの多くを長年にわたっていろいろな市場で使ってきたが、どのシステムにも必ず新たなニュアンスの違いや修正点が現れる。私はシステマティックトレーダーではあるが、現在の栄光に満足し、お金を永遠に生みだすブラックボックスを使い続けることは不可能だと思っている。どのシステムも常にリサーチが必要で、進化させ続ける必要がある。古い道は捨てて、新たな道を切り開くことが重要だと私は思っている。

「アイデアを盗むような人のことは気にするな。それがあなたのオリジナルなら、それをやつらの口の奥深くに詰め込めばいいだけさ」――ハワード・H・エイケン

 システム開発とトレードは常に進化するプロセスだ。その継続的なプロセスこそが、人をシステムそのものではなくて、成功するシステマティックトレーダーにするのである。

 市場は多くの非効率を隠したポケットを持つ大きな場所だ。しかし、それらのポケットは常に変化している。本書はさらなる非効率を探すうえでの出発点として最高の場所だと私は思っている。その非効率を自ら見つけたとき、成功をかみしめることができるのだ。

 また、私はほかのシステム開発者、トレーダー、リサーチャーたちからなるコミュニティーともつながりを持ちたいと思っている。ほかの人とは違って、私は、システムを共有することでシステムの価値が低下するとは思っていない。毎年、何兆ドルというお金が市場に投じられる。市場にはトレンドフォロワー、カウンタートレンドフォロワー、バイ・アンド・ホールドの投資信託、直感でトレードするデイトレーダーをはじめ、ほかにもたくさんのタイプのトレーダーやシステムフォロワーたちがいる。

 あなたがどんなシステムを持っていようと、どんなアプローチを使おうと、そういったシステムやアプローチをあなたよりもうまく使える人が必ずいるものだ。興味を持ったコミュニティーとアイデアを共有することで、彼らからもアイデアを学ぶことができる。「与えよ、さらば与えられん」ということわざもあるではないか。

 最終的に私は本を書くことにした。私が書いたものを読者が楽しんで読んでくれることを願ってやまない。


第6章 $SPYの高確率トレードパターン

%プレー

 本章ではさまざまな変化率とそのほかの基準に基づく堅牢な$SPY短期トレード戦略を紹介する。

 1.$SPYの4%のクラッシュ

 まずはだれもが頭に思い浮かべるシンプルな疑問から。$SPYが4%暴落したらどうなるだろうか。まずはこの戦略から始めることにしよう。

トレード戦略のルール

●今日、$SPYが4%を超える下落
●大引けで買う

 トレード例

 2018年2月5日、$SPYは4.18%下落した。2018年2月5日の大引けに買って、次の5日間のうちで初めて上げて引けた日の終値で手仕舞う。このトレードでは翌日に上げたので手仕舞い、197bpsの利益を得る。

 次の表は$SPYの4%のクラッシュ時のトレード統計量を示したものだ。

 それほど高勝率のトレードではないが、平均期待値が213bpsなので、買うのはそれほど悪くないと思わせてくれる戦略だ。

 以下に示すのは、2000年以降の$SPYが4%下落したときのトレード例で、仕掛けてから1〜5日間の間で手仕舞ったときのリターンを示したものだ。

 トレード例をすべて示すのは、本書のページ数を増やすことだけが目的ではなく、読者がトレード戦略を、すべてのパフォーマンス統計量の小数点以下2桁まで再現することができるようにするためでもある。

 2.$SPYが2日続けて2%下落

トレード戦略のルール

●$SPYが2日連続して2%以上の下落
●大引けで買う

 トレード例

 2018年12月21日、$SPYは2.05%下落し、その翌日の2018年12月24日も2.64%下落した。2018年12月24日の大引けで買って、次の5日間のうちで初めて上げて引けた日の終値で手仕舞う。このトレードでは翌日に手仕舞って、505bpsの利益を得る。  次の表は$SPYが2日連続して2%以上の下落を示したときに買った場合のトレード統計量を示したものだ。

 2000年以降、32回のうち32回、$SPYは次の5日間のうちの少なくとも1日は今日の終値を上回って引けた。平均利益は317bps、利益のメジアンは181bps。

 トレード例


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