『バナナ王サミュエル・ザムライ伝
ロシア系ユダヤ人がニューオーリンズでグローバルビジネスを生み出した』
著 者 リッチ・コーエン
訳 者 岡久悦子
2020年9月発売/四六判 400頁
定価 本体 1,800円+税
ISBN 978-4-7759-7271-7 C2033
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1891年に14歳でアメリカにたどり着いたとき、サミュエル・ザムライ、通称サムは、のっぽでひょろりとした一文なしの少年だった。それから69年後、ニューオーリンズ一番の豪邸で亡くなったときには、世界で最も裕福な、最強の権力を握る男のひとりになっていた。
サムは、果物師、バナナの運び屋、やり手の商売人、中央アメリカ地峡のプランテーションのオーナーと、さまざまな仕事をしてきた。絶頂期には、世界初のグローバル企業ユナイテッド・フルーツに立ち向かい、打ち勝って社長となり、電話一本で歴史の流れを変えられる重要人物となった。
サムの生涯は、アメリカが機会に満ちた国であると示す証拠でもあるが、醜いアメリカ人の古典的な例でもある。自分たちの冒険のために他国を手荒く扱う海賊企業――ラテンアメリカの人々が「ヤンキーは、家へ帰れ!」と声高に叫ぶとき、頭にあるのはサムのような人間だった。
リッチ・コーエンによる魅力あふれる歴史評伝である本書を読めば、サムが不屈の精神を持つ起業家であり、政界の隠れた実力者であり、資本主義の革命家であることがわかる。「エル・アミーゴ」「グリンゴ」、あるいは、たんに「Z」として知られるこのバナナマンの生涯は、この100年間語られることのなかった偉大な物語のひとつだ。
斑点だらけの腐ったバナナ以外何もないところから、サムは広大な帝国を築きあげた。それは、バナナ・カウボーイや傭兵部隊、ホンジュラスの小作農やCIAの諜報部員、アメリカの政治家たちの世界にまたがる大帝国だ。
サムはグローバルビジネスの先駆者であり、英雄だ。ニューオーリンズの埠頭で奮闘したかと思えば、中央アメリカの政府を転覆させ、稀代のポピュリズム政治家ヒューイ・ロングと反目したかと思えば、合衆国政府の重鎮ダレス兄弟と手を結ぶ。そして、ついにはイスラエル建国の影の立役者となった。
サムの生涯は、アメリカンドリームを体現している。本書をとおして、アメリカがアメリカたるゆえん、「アメリカの世紀」を象徴する物語をぜひ堪能してほしい。
“バナナマン”サム・ザムライは伝説的人物で、リッチ・コーエンは稀代のストーリーテラーだ。このふたりがひとつになったとき、『アメリカ帝国』の忘れられた英雄(悪漢)の物語が、目を見張るような、愉快な調子で浮かびあがる。
――ゼブ・チャフェッツ
何たる物語、そして、何たるストーリーテラー! これを読んだら、二度とバナナを――そして、ことこれに関してはアメリカも――同じ目で見ることはできなくなるだろう。
――アレクサンダル・へモン("The Lazarus Project"著者)
リッチ・コーエン(Rich Cohen) 1968年、アメリカ・イリノイ州生まれのノンフィクション作家。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入りした『Tough Jews』『Monsters』『Sweet and Low』『The Sun & the Moon & the Rolling Stones』『The Chicago Cubs: Story of a Curse』など多数の著書があり、『ヴァニティ・フェア』『ローリング・ストーン』両誌の寄稿編集者を務める。その著作は、権威ある文芸誌『ザ・ニューヨーカー』『ジ・アトランティック』『ハーパーズ・マガジン』のほか、毎年アメリカのベスト・エッセイを選んで収録する『ザ・ベスト・アメリカン・エッセイズ』にも掲載されている。また、ミック・ジャガー、マーティン・スコセッシらとともに、HBOのドラマシリーズ『Vinyl』(2016)の制作に携わった。4人の息子とともにコネチカット州で暮らす。 | 原題: The Fish That Ate the Whale: The Life and Times of America's Banana King |
訳者紹介岡久悦子(おかひさ・えつこ)英国在住。ロンドン大学バークベック・カレッジで応用言語学修士号取得。言語教育、教員養成に携わる。共著書に『Gamba're! : The Japanese Way of the Rugby Fan』(G-chan Press)がある。 |
緑 Green
第1章 セルマ Selma
第2章 完熟バナナ Ripes
第3章 果物師 The Fruit Jobber
第4章 茶から緑へ Brown to Green
第5章 バナナは木にならない Bananas Don’t Grow on Trees
第6章 タコ The Octopus
第7章 ニューオーリンズ New Orleans
黄 Yellow
第8章 地峡 The Isthmus
第9章 コリンズまで To the Collins
第10章 革命しよう! Revolutin’!
第11章 地峡往来 To the Isthmus and Back
第12章 バナナ戦争 The Banana War
熟 Ripe
第13章 キングフィッシュ King Fish
第14章 クジラを食べた魚 The Fish That Ate the Whale
第15章 ロス・ペリコス Los Pericos
第16章 バナナ、戦争へゆく Bananas Go to War
第17章 イスラエルをコシラエル Israel Is Real
第18章 サクセス作戦 Operation Success
第19章 反動 Backlash
茶 Brown
第20章 残されたもの What Remains
第21章 ピッグス湾 Bay of Pigs
第22章 クジラを食べた魚を地球が呑み込む The Earth Eats the Fish That Ate the Whale
第23章 通りまで最速の道 Fastest Way to the Street
エピローグ Epilogue
情報源に関する注釈ならびに謝辞
原注
参考文献
トリュフの真相 |
ミルク進化論 |
資本主義は最高! |
ポール・ゲティの大富豪になる方法 |
フライング・ハイ |