『バリュー投資達人への道
――幸福を呼び込む複利のメンタルモデル』
著 者 ゴータム・ベイド
監修者 長岡半太郎
訳 者 井田京子
2021年11月発売/A5判 606頁
定価 本体 3,800円+税
ISBN978-4-7759-7291-5 C2033
ベイドは、時の試練に耐え、今なお有効な教えを残してくれた卓越した先人たちの戦略と知恵を統合し、投資や人生の教訓から導き出した包括的な指針を作り上げた。この指針には、ウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガー、ベンジャミン・グレアムといった偉大な投資家だけでなく、哲学者や学者や東洋の大人たちのエッセンスが凝縮されているので、この1冊で何百冊も本を読んだ知識が得られるだろう。また、ビジネスや投資や意思決定といった分野における偉人たちの実践的な手法を紹介するとともに、これらのアイデアをバリュー投資だけでなく人生に応用すれば、その成果や報酬は複利的に膨れ上がることも示している。
本書は、バリュー投資における規律を称賛するとともに、ベイドの個人的な経験を振り返りながら、最高の投資は自分自身への投資に尽きるという考えを実証してみせた。投資にかかわるすべての人たちや、人生や対人関係で実践的な知恵を求めている読者に、本書は大きな気づきとブレイクスルーをもたらしてくれるだろう。
原題 The Joys Of Compounding : The Passionate Pursuit Of Lifelong Learning by Gautam Baid |
本書に関する追加情報
http://www.TheJoysOfCompounding.com
https://twitter.com/gautam__baid
「これは傑作だ。本書は、投資家と自分の可能性を追求したいすべての人にとって、生涯学習の決定的な指針となる。ぜひ読むべし」――ジョン・ミハルジェビック(『バリュー投資アイデアマニュアル』[パンローリング]の著者)
「現世の知恵を楽しく情熱的に学んでいるベイドは、素晴らしいロールモデルである。彼は本書を通じて真剣に生涯学習を続けていくことが、いかに人を豊かにしてくれるかを強く思い出させてくれる」――ウィリアム・グリーン(『ザ・グレイト・マインド・オブ・インベスティング』の著者)
「私は長年をかけて、苦しみからではなく、先人をはじめとする多くの人の知恵から学ぶことの重要性に気づいた。私はよく素晴らしい本を贈り物にしているが、この本はぜひ贈りたい1冊だ」――アーノルド・バン・デン・バーグ(センチュリー・マネジメントの創設者)
「ベイドは、予想可能であっても投資家がよく陥るワナを避けるために本当に役立つ洞察を、伝説の投資家たちの例を用いて紹介している。投資の生涯学習を助ける最高の1冊となっている」――トーマス・A・ロッソ(ガードナー・ロッソ&ガードナーLLCの幹部)
「ベイドはすべての投資家が読んでおくべき本の基本的な枠組みを提供している。これまで読んだなかで最も包括的な投資本として本書を強く勧める」――ポール・ラウンティス(ラウンティス・アセット・マネジメント社長)
「本書には、素晴らしい洞察があふれている。本当に楽しい読み物であるとともに、堅実な投資には欠かせない教義のいくつかを思い出させてくれる」――サンジョイ・バッターチャーリヤ(フォーチュナ・キャピタルのマネジング・パートナー)
第1部 智恵を身に付ける
第2章 学習マシンになる
第3章 格子状のメンタルモデルを通じて智恵を身に付ける
第4章 意図をもった練習によって情熱と集中力を生かす
第2部 強い性格を育てる
第5章 人生で素晴らしいロールモデルや先生や仲間を選ぶことが重要
第6章 知恵を得るには謙虚さから
第7章 慈善活動とその報い
第8章 単純であることは究極の洗練
第9章 経済的に自立する
第10章 内なるスコアカードに従って人生を送る
第11章 人生で成功する秘訣は満足の先送り
第3部 株式投資
第12章 会社を所有しているつもりで収益力を構築していく
第13章 行間を読んで投資する
第14章 意思決定においてチェックリストが果たす大きな役割
第15章 日誌は反省するための強力なツール
第16章 インセンティブの力を侮るな
第17章 常に数字で考えつつ、過度な「物理学への羨望」も避ける
第18章 知的な投資で大切なことは本質的価値を理解すること
第19章 投資で最も重要な3語
第20章 商品と景気循環株への投資は資本サイクルへの投資
第21章 スペシャルシチュエーションのなかのスピンオフを注意深く調べる
第4部 ポートフォリオの管理
第22章 長期的なバリュー投資の聖杯
第23章 市場はほとんどは効率的だが、いつもではない
第24章 ポートフォリオのダイナミックな管理と個別のポジションサイズ
第25章 優勝するにはまず完走しなければならない
第5部 意思決定
第26章 もっと歴史を勉強し、予想は無視する
第27章 新しい証拠に基づいて考えを更新する
第28章 人生は機会費用の連続
第29章 パターン認識
第30章 運やチャンスや偶然の発見やランダム性の役割に気づく
第31章 バリュー投資家になるための教え
結論 複利の本質を理解する
付録A スロー・ダンス デビッド・L・ウェザーフォード
付録B もし ラドヤード・キプリング
謝辞
注
参考文献
ベイドやスピアを含む投資家の成長物語の数々は、投資における経典でもあり一種の神話でもある。ジョーゼフ・キャンベルは『神話の力』(早川書房)で、「苦しまなくても生きていけるという神話には、一度も出合ったことがありません。神話は私たちに、苦しみにどう立ち向かい、どう耐えるか、また苦しみをどのように考えるかを語ります」と述べているが、これら投資の神話も、彼らが心理的に未成熟な状態から主体的に行動するための自信と勇気を得るまでの、数多くの蹉跌や学び、そしてその結果たどり着いた境地を描いたものだ。
一般に、世に「こうすれば簡単に儲かる」ことを謳う書き物は多いが、成功するまでの艱難辛苦に触れた書籍は少ない。だが、投資や投機に真剣に向き合った体験がある人ならば、結果だけを誇張して取り上げる前者の主張が何の意味もないことを知っていることだろう。成功に至るまでの苦痛を伴った道程に対して、それを全面的に否定すること、そんなものはないほうが良いというのは、非現実的かつ無責任で幼稚な考え方である。
そして、投資があくまで各々の目的をかなえるための手段である以上、投資家としての人生に意味を見いだすならば、最終的な成功だけではなく、自己の弱さを克服し、上達していく経験そのものにも価値があるはずだ。であるならば、私たちは完璧な投資手段(青い鳥)を安易に追い求めることをやめて、著者のように世界の不完全性を受け入れ、投資を通じた自己の内部における精神的・知的な成長と、その成果としての経済的対価を等しく楽しむべきなのだろう。原書のタイトルにはそうしたメッセージが隠喩として含まれていると私は理解した。
著者(インド人)が投資における複合的な視野の重要性を書いた本書は、文化的に合理的かつユニークな解を最良とする欧米人が書いたものと異なり、東洋に生きる私たち日本人には理解しやすいだろう。単なる技法としてのバリュー投資ではなく、それを自己向上の道としてもとらえるきっかけとして強く推奨したい。多くの読者が著者と同じような高みにたどり着き、成功を手にすることを切に願う。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず井田京子氏には正確で読みやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2021年10月
長岡半太郎
20年以上前に、私はウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーやベンジャミン・グレアムと、知的な投資という技を発見した。そして、バークシャー・ハサウェイの年次総会に初めて出席する前に「改宗」し、バークシャーに到着したときにはついに「自分の仲間」を見つけたと感じた。当時、オマハに集まっていたのは1000〜2000人程度だったが、この仲間は拡大を続けている。今日、バークシャーの年次総会には何万人もの人が訪れ、さらにたくさんの人たちがオンラインで視聴している。
この仲間の規模が増え続けているように、その世界観や自己理解も常に変化している。初めのころ、私はバリュー投資についてうまく投資して金持ちになり、良い生活をするための方法くらいに思っていた。しかし、年月とともに、それよりもはるかに大きな意味があることに気づき始めた。バリュー投資は、可能なかぎり最高の生き方をするためのシステムだと考えるようになったのだ。バリュー投資家の人生の見方には、ミスターマーケットや安全域といった概念だけでなく、はるかに多くのことを含んでいる。これは、「知恵とは何か、どのようにして身に付けるのか」「格子状のメンタルモデルはどのようにして構築するのか」「ストア哲学は人生や投資においてどのような役割を担うことができるのか、あるいは担うべきか」「マハーバーラタの聖典ギーターをはじめとする東洋の知恵は、投資や人生について何を教えてくれているのか」といったことにまで及んでいるのである。
本書は、バリュー投資という仲間が、自分たちが住む世界に関する知識を広げるための最初の一歩なのである。本書では、偉大な人たちの教えを、近年の門弟による更新された形で学ぶことができる。また、バフェットやマンガーやグレアムに加えて、ベイドがモニッシュ・パブライやトム・ルッソ、マイケル・モーブッシン、ピーター・ベベリン、サラブ・マダーン、マルチェロ・リマ、ポール・ラウンティスなどたくさんの人たちから学んだことも紹介されている。さらには、ベイドが幅広い分野のさまざまな著者(ハーバート・サイモン、シェーン・パリッシュ、ナシーム・タレブ、ロルフ・ドベリ、リチャード・ザックハウザーほか)の作品から抽出して理解したことまで知ることができる。
本物のバリュー投資家がその道を歩み続けているように、本書自体も最近私のデスクに届くまでの長い道のりがあった。今回の、コロンビア・ビジネス・スクール出版社版は、テーマがより整理され、ベイドの意見と洞察がより明確になっている。本書は、著者の意見と洞察を明確に紹介するとともに、より良い投資家とより良い人間になるためのカギとなる教えを学んだり、学び直したりする新たなチャンスを提供してくれる。
スイスのチューリッヒにて
ガイ・スピア
「一番頭が良いわけではないのに、出世する人がよくいる。それどころか、その人たちは勤勉ですらない場合もある。ただ、そういう人び特徴は学び続けているということ。彼らは朝起きたときよりも寝るときのほうが少しだけ賢くなっており、特に若いころからそれを続けていると、年を取ってから、それが大きな違いを生みだすのだ」――チャーリー・マンガー
2007年に、チャーリー・マンガーは南カリフォルニア大学法科大学院の卒業式で行った講演で、生涯学習は短期的な成功で終わるのではなく、長きにわたって成功することにおいて最も大事なことだと語った。つまり、それをしなければ成功はできない。すでに持っている知識だけでできることはたかが知れているからだ。
バークシャー・ハサウェイは間違いなく世界で最も高い評価を受けている会社の1社で、長期投資のパフォーマンスは文明史上最も高いかもしれませんが、バークシャーを10年間経営してきたスキルで、次の10年間も同じような結果を出すことはできません。ウォーレン・バフェットが学習マシン、しかも継続的な学習マシンでなければ、このような結果を出すことはまったく不可能です。
ほとんどの人が今以上に賢くなることなく、人生を送っている。しかし、心から望めば知恵を身に付けることはできる。実際、簡単な方法でもそれをきちんと続けていれば、時間はかかってもほぼ間違いなく賢くなっていく。ただ、これは単純なことだけれども、簡単ではない。
そのためにはたくさんの努力と忍耐と規律と集中が必要だからだ。
そして、読むこと、しかも大量に。
ビジネスの世界で最も成功している1人であるウォーレン・バフェットは、典型的な1日の過ごし方について次のように言っている。「会社のデスクで1日中本を読んでいます」
座って、読んで、考えているのだ。
バフェットは、成功につながった判断の多くは驚くほど大量の本を読んでいたからできたことだとしている。彼が1日のなかで読むことと考えることに充てている時間は約80%に上ることもあるという。
バークシャーの2014年の株主への手紙のなかで、マンガーは会長に期待することとして、「最も優先すべきことは、静かに読んだり考えたりするための時間を十分確保すること。特に、それが彼の学ぶ決意を促進するのであれば、年齢は関係ない」と述べている。
あるとき、成功の秘訣を聞かれたバフェットは、紙の束を持ち上げて「毎日このくらい、約500ページ読むことです。知識というのは複利のように積み上がっていきます。だれでもできることですが、実際にやる人はあまりいません」と答えた。
だれでも知識を増やすことはできるが、ほとんどの人はその努力をしないていないのだ。
「勝つ意思よりも大事なのは備える意思だ」――チャーリー・マンガー
自己改善とは、自己投資の究極の形と言える。そのためには、将来(かなり先になることもある)得る報酬のために今、時間とお金と注意と精いっぱいの努力をする必要がある。しかし、多くの人がそのトレードオフをしないのは、満足や結果をすぐに得たいからだ。
このような短期的なコストを、長い期間、時間軸に沿って正しく使っていけば、指数関数的な結果を得ることができる(図1.1)。
アルバート・アインシュタインが「複利は宇宙で最も偉大な力」と言った。
それならば、この驚くべき力を知識の構築に応用したらどうなるだろうか。
あなたは学習マシンになる。
バフェットの助言に従ったトッド・コンブスは、今ではこの伝説の投資家の下で働いている。コンブスは、バフェットの講演を聞いたあと、読んだ本とページ数を記録し始めた。
そうしているうちに、生産的な資料を見つけて読むことが習慣になった。そして、投資を始めると、さらによく読むようになり、1日に600ページ、700ページ、時には1000ページも読むようになっていった。コンブスは、バフェットの公式が機能していることに気づいた。より多くの知識を獲得することが、彼の仕事である投資候補の本質を見極めることの助けになっていたのだ。
1日に500ページ読むことはできない人もいるかもしれない。しかし、もし昼や夜や週末に多少でも読む(またはオーディオブックを聴く)ことができれば、きっといくつもの恩恵があるだろう。
ジャーナル・オブ・アメリカン・アカデミー・オブ・ニューロロジー誌に発表された研究によると、知的な刺激を与える活動(例えば、読書)をしている人は、しない人と比べて記憶の衰えが遅い。また、読書はEQ(心の知能指数)を高め、ストレスを下げ、語彙を増やし、理解力を高めることにもつながる。
あなたの頭が図書館だと考えると、次の3つのことが気になるはずだ。
1.保存する情報の精度と妥当性
2.その情報を必要に応じて取り出せるかどうか
3.その情報を必要に応じて使えるかどうか(つまり応用力)
頭のなかに知識の収納庫を持っていても、その内容を見つけて応用できなければ意味がない。
そこで思い出すのが『ライギット・パズル』(パンローリング)のなかのシャーロック・ホームズのセリフだ。「捜査において最も大事なことは、いくつもの事実のなかでどれが偶発的なことで、どれが必然的なことかを認識することだよ。それができなければ、エネルギーと注意力が集中せずに分散してしまうからね」
そのため、何を保存するかは注意深く決めてほしい。
生涯を通じて学びを情熱的に追及する
「人生というゲームは永遠の学びというゲームだ」――チャーリー・マンガー
「正規教育を受ければ生計を立てることができるようになる。自分で学べば富を築くことができるようになる」――ジム・ローン
「金持ちは小さいテレビと大きな本棚を持っている。貧乏人は小さい本棚と大きなテレビを持っている」――ジグ・ジグラー
バフェットは、あれほどまで成功しているにもかかわらず、毎日5〜6時間を読むことに費やしている。そして、彼の成功はこの習慣のおかげだと繰り返し述べている。彼は読むことで、ほかの人たちが得た教訓を学んでいるのである。
300ページの本は、たいていがだれかの何十年、何千時間もの努力の積み重ねの成果なのである。人が一生をかけて研究したことをほんの2〜3時間で知ることができる方法がほかにあるだろうか。
どの分野でも、最も才能ある人たちは自分で学んでいる。ただ、誤解している人が多いが、これは先生に教わらないで1人で頑張ることではなく、たくさんの材料から知識を集めて、それを構築していくことである。正しい考え方ができるようになれば、本、経験、人など、人生で出合うすべてのことが先生になる。ほんのいくつかの学びのチャンスに気づくことができれば、知識は時間とともに複利のように増えていき、将来有望な可能性の扉を開いてくれるのである。
最高の学び方は実際にやってみることだが、次善の策として、すでにやった人から学ぶことができる。これが読んで人の経験から学ぶことの大事な意味なのである。
成功した人たちのしたことを理解し、学ぶことは、正しい姿勢で人生に向き合い、健全な労働倫理を育て、判断の質を継続的に改善していくための洞察を与えてくれる。
マイケル・アイズナーとアーロン・コーエンの『ワーキング・トゥギャザー』(Working Together : Why Great Partnership Succeed)のなかで、バフェットが彼自身とマンガーの生涯学習へのひたむきな取り組みについて語っている。
ビジネス界で、私たち以上に継続的に学んでいる2人組はいないと思います。……もし私たちが継続的に学んでいなければ、これほどの成果は上げられなかったでしょう。私たちのやり方は極端で、たくさん学ぶために1日の多くの時間を読書に費やしていますが、これは、ビジネスでは普通のパターンではありません。……私たちが読んでいるのは他人の意見ではありません。私たちが知りたいのは事実で、それを基にそのあとに考えます。
フォーチュン誌(2013年10月号)のインタビューで、バフェットとマンガーは、どのようにして同業者やライバルの先を行っているのかについて語っている。
マンガー 私たちは、自分たちよりも明らかに賢い人たちを出し抜く方法を学んでいます。
バフェット IQ(知能指数)よりも性格や気質のほうが重要です。
マンガー もう1つの秘訣は、私たちが生涯学習を得意としていることです。バフェットは、さまざまな意味で若いころよりも70代や80代のほうが優れています。常に学び続けていれば、素晴らしい強みを持つことができるようになります。
自己投資より勝る投資はあるだろうか。バフェットはこう言っている。
「最高の投資は自分自身に投資すること」
「学ぶほどに得るものも大きくなる」
「自分の間違いと他人の間違いから学ぶ」
毎日、少しでも自己改善をするのは、最高の時間の使い方の1つだ。そして、読書の時間は思ったよりも簡単に見つかる。例えば、毎日、自分自身のための時間を1時間作るという方法もある。やり方が分からなければ、マンガーが彼自身に最高の1時間を売っていたエピソードを参考にしてほしい。
バフェット公認の伝記『スノーボール』(日本経済新聞出版本部)のためのインタビューで、バフェットはマンガーについて次のように語っている。
マンガーが若かったころ、弁護士としての時給はせいぜい20ドルくらいでした。当時、彼は「自分にとって最も価値のある顧客はだれか」と考え、それは自分自身だという結論に至りました。そこで、彼は毎日1時間を自分自身に売ることにしました。具体的には、朝の1時間で、建設プロジェクトと不動産取引を行ったのです。みんなこれを見習い、まずは自分自身が顧客になり、次に人のために働くべきです。つまり、毎日、自分に自分の1時間を売るということです。
このとき大事なのは、この1時間の機会費用を考えることだ。この1時間は、eメールやソーシャルメディアに熱中してドーパミンを放出することもできるし、大事なことに集中して自己改善することもできる。毎日1時間を、大事な原則についての深い知識を獲得することに使うと、長い目で見れば大いに報われる。この投資は、生涯得られる結果の現在価値と比べればほんのわずかでしかない。これは、1ドルを1セントよりもはるかに安く買うようなことで、優れた本が資産クラスとして最も過小評価されていると言える理由はここにある。正しい考え方は、長期的に見れば、何百万ドル、何十億ドルもの価値があるのだ。
時間は、だれにとっても1秒ごとに加速度的に失われていく資源である。そこで、自分の時間の価値をしっかりと認識してほしい。バフェットが通勤時間が長くならないようにしているのはそのためだ。どれだけお金を持っていても、時間を買うことはできない。みんな1日は24時間しかないのだ。時間は、使えば使うほど価値が上がる人生における通貨なのである。通勤時間を最小限に抑え、大事ではないのに時間がかかるつまらない作業は外注して貴重な時間を確保し、その空いた時間を自己開発に使ってほしい。この小さな贅沢にかかるお金は、最初はきついかもしれないが、大いに価値があることはいずれ分かるだろう。長期的に見れば、毎日何か新しいことを学んで自分を改善することに投資することには大きな価値がある。時間の最高の投資先は自己開発なのである。あなたが本書を読むことに投資した時間が、残りの人生にプラスの結果をもたらすことを願っている。生涯学習を熱烈に追及して経済的自由を手に入れた私は、自分がより良い投資家になれたのは生涯学習者だからであり、より良い生涯学習者になれたのは投資家だからだ、と胸を張って言うことができる。
本章の最後は、偉大な学習者であり思想家である2人の金言がふさわしいと思う。
「最高の金利を支払ってくれるのは知識への投資だ」――ベンジャミン・フランクリン
「貪欲に読書をすることで生涯の自己学習者になりなさい。好奇心を育て、毎日少しでも賢くなるための努力をしなさい」――チャーリー・マンガー
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