トレーダーズショップ主催「ご愛顧特別感謝祭 2004」にご登場いただく足立氏のコラムです。
いま一つ取り上げたいのは有力投資銀行のゴールドマン・ザックスが日本株に強気の見通しを出したことである。昨年の8月末に続いて2回目である。
そのレポートは「新しい年がスタートしたが、ストラテジストの間では、年後半は調整する、すなわち典型的なベアーマーケ;ツト・ラリーが繰り返されるというシナリオが、2004年の株式市場についてのコンセンサスになっているようである」としている。ベアーマーケット・ラリーとは相場のトレンドは下降だが、そんな環境下で見られる中間反騰のことである
昨年は大半のヘッジファンドがNY株についてこのような見方をとって失敗した。上昇相場は長続きしないと読んだ。ダウ平均が+25%上昇したのに、それを上回る成果を上げることが出来なかった。先のITバブル崩壊の後遺症が解決していないと見たからである。
さてゴールドマン・ザックスは日本株について「循環的、構造的理由からコンセンサスより強気のスタンスを維持」とする。世界経済は米国をリード役として上昇局面に入っている。景気循環をドライバーにした循環的な回復の局面である
それに日本は、過去13年間の資産バブル崩壊の問題点をほぼ解決した。他の国に見られない構造的な好環境がある。
構造的な改善とは「設備過剰とデフレの解消」、「不良債権問題の解決」、「リストラの進展による最高のROEの達成」、「コーポレート・ガバナンスの向上」、「魅力的なバリュエーション」をさす。
特に2004の予想収益ベースでみた主要国のPERを次のようにみる。
日本 14.6倍 米国 18.2倍 英国 13.3倍 ドイツ 14.8倍
1980年代以来、国際比較でみていつも割高といわれてきた日本のPERが、ようやく国際的にみても説明がつくようになってきた。今年の株価の目標値は東証株価でみて1400ポイントにしている。昨年末は1043ポイントであったので、実に+34%の上昇で強気だ。
世界の機関投資家に与える影響力の大きい証券会社の見方だけに注目される。
【1万4000円以上に上昇】
ゴールドマン・ザックスの見通しを借りるわけではないが、東証株価指数の上昇率の+34%を日経平均でみると1万4300円になる。
その根底には、企業業績の増益率が+25〜+30%になるという予想がある。2004年3月期の企業業績は銀行をはじめ、大手企業のリストラの終了などで大幅な増益率を達成する。日本経済新聞が昨年11月下旬に集計した金融機関を含む上場企業の経常利益は22兆円と+45%の増益であった。売上げはわずかに+1.1%であるのに、利益が大幅に伸びるのは、デフレ下でも利益が大きく伸びるビジネスモデルを築くことに成功したからである。外人投資家にいわせると「世界でも始めての成功体験」とする。2004年の世界経済の状況は、テロ事件やSARSのような不測の悪材料が出ない限り、2003年より良くなることは間違いない。そこでグリーンスパン・モデルによって、現在の日米の株価の水準を見てみよう。
グリーンスパン・モデルによる、株価の位置をみる計算式は次の通りである。
{(10年国債金利÷益利回り)−1}×100
この計算式に日米の数値をいれる。
日本・・・{(1.365%÷3.91%)―1}×100=―65.1%
米国・・・{(4.08%÷5.88%)−1}×100=−30.7%
米国は適正株価の水準に比べて30%割安だが、日本はなんと65%も割安ということになる。
1月3日、米国のサンジエゴで米国経済学会が開かれ、そこでグリーンスパン議長は「現在の株価はバブルの渦中にいるとは思わない。相場の先行きはグリーン・ライト(青信号)」と思い切った発言をした。当面は現在の低金利政策の変更のないことを強調した。ウオール街の一部にある5月以降の金融政策の転換を真っ向から否定した。
以上のような論拠から、日本株の今年の目標値を1万4000円とする。昨年末に1万3000円と見ていたのを上方に修正する。21世紀にはいって、初めてこんな強気の予測ができる。