本書は、臨太郎さんの「これからの投資家への遺言として作りたい」という願いを形にしたものです。その“遺言”の内容は大きく2つに分かれます。それは、「資産を作るための株式投資」と「資産を遺すための株式投資(※資産運用)」です。それぞれ、簡単に解説します。
株式投資というと、資産を作ること、資産を増やすことだけに意識が行きがちですが、遺すことを考えながら投資をしていくことも、やはり必要です。
例えば、人気の短期投資をやりながら、その裏で中長期目線のバリュー投資や遺す投資(保有し続ける投資)を行って、じっくり資産を作るなどは、ひとつのアイデアです。
まえがき
2018年末、私にとって予期せぬことが起こりました。
すい臓がんによる余命宣告。
今まで、お金を作ることに専念してきた私です。「さぁ、これからお金を使おう」と思った矢先の、本当に思いも寄らぬ出来事がいかに衝撃的だったか、想像に難くないと思います。
詳しくは本文(第2部)に譲りますが、いやな予感はしていました。実際に余命宣告を受けたときにはショックではありましたが、同時に、“その日”が来るまでにやっておきたいことが強烈に思い浮かびました。
それが本書の作成です。今まで、有料メルマガ『生涯パートナー銘柄の研究』で書きためていた原稿や、過去の拙著などの情報を組み合わせて再構成し、もう一度、私の遺言として、これから株式投資を始める、もしくはすでに始めている人たちに遺したいと考えたのです。
お釈迦様は『すべては縁によって生じ、縁によって滅す』と教えてくださっています。私も2003年ごろ、NPO法人イノベーターズ・フォーラムや山本潤さんとの良いご縁をいただきました。
私が末期がんで入院した後、NPO法人イノベーターズ・フォーラムの松田さんと山本潤さんが、遠い松江市の病院まで、忙しいのに、すぐに駆け付けてくださいました。
私には子どもがいませんから、過去に出版した文章やNPO法人イノベーターズ・フォーラムで10年間書き続けてきた有料メルマガや『億の近道』の原稿の著作権については、すべてもらっていただくことになりました。
今まで書いてきた文章が命を吹き返し、世の中の投資家のお役に立つことがあればうれしいです。何よりも、そうすることで、自分の文章が世の中で生き続けることに幸せを感じました。これは私の執着でもありました。
NPO法人イノベーターズ・フォーラムの松田さんやパンローリングの編集者で、私のすべての本の編集をやってくださった磯崎さんのご努力で、私の新しい本が出版されることになりました。
すべては縁によって生じ、縁によって滅す。本当にお釈迦様の教えの通りだと感じます。
この教えは「華厳経」というお経の中にあります。華厳経の教えをもう少しご紹介します。
この世の中には3つの間違った考え方がある。
一つは、すべては運命なのだという考え方。
二つは、すべては神や仏の御業だという考え方。
三つは、すべては偶然であるという考え方。
そして、これらをまとめるように、お釈迦様は『すべては縁によって生じ、縁によって滅す』と教えてくださっているのです。
人と人とのご縁、人とものとのご縁というように、「自分と自分のまわりにいる人やものたちは、縁あって必然的に結ばれてきた」ということだと思っています。
このご縁を大切に、できるだけ長く、大切な一日一日を充実して生きながらえたいと思っています。
石川臨太郎
あとがきによせて
僭越ながら書かせていただきます。
石川臨太郎さんとは、2002年ごろ、億の近道を発行する中で知り合いました。
当時、読者のオンライン交流の場がありました。石川臨太郎さんは個人投資家としてしっかりとした目的と目標、そして哲学を持っていらっしゃったので、オンライン交流の場での部門責任者をお願いしたり、勉強会に登壇していただいたりしていました。
2004年に億の近道出版としてパンローリングから石川臨太郎さんの本『潜在意識を活用した最強の投資術入門』を上梓しました。その後、何冊もの書籍を執筆されました。マンガ化され、世に出ているものもあります。
2009年に開始した有料メルマガ「生涯パートナー銘柄の研究」では、約10年間、509号にわたって毎週毎週、石川臨太郎さんから原稿を受け取り、時には議論しながら配信号を作り上げました。研究銘柄として原稿が完成していながら、配信までのわずかな日数で株価が急騰してしまい、銘柄を差し替えたことが何度もあります。
臨太郎さんは「有料メルマガを執筆するようになってから、書くことによる自分自身への反省をはじめ、分析力や戦略構築、新たな切り口での調査目線など、自分の投資総合力がぐんぐん上昇するのがわかった」とおっしゃっていました。
その経験を反映した本書は、サラリーマン時代から資産運用を推進し、専業投資家になってからも順調に資産形成をした“彼の人生そのもの”です。
この本の企画は、がん宣告されてから、臨太郎さん本人より提案がありました。
末期がんが分かって病室に彼を見舞ったとき、「普通の人ではできない、多くのコンテンツを世に残すことができる。それらはきっと、さまざまな方へ今後も影響を与えられるかもしれない。子どもがいない私にとって、こんな幸せなことはない。私が生きた証しそのものです」とおっしゃっていたのが印象的です。
「私が今まで実践してきた投資のエッセンスを集約すると同時に、家族へ資産を遺すために私がやったこと、そのノウハウを人生最後にまとめたい」
そんな話を私が受け、同時に臨太郎さん自身も動き、過去何度も出版でお世話になっている磯崎氏にも最大限のご協力をいただき、かなりの速度で作業が進んでいきました。
臨太郎さんも精力的に書き下ろし原稿を重ねました。およそ2カ月の間、原稿と修正のメールだけで80通以上。自身の運命を悟った彼の行動は濃密で、迅速でした。我々もそれに応えるべく、懸命に本の構成作りや校正作業などを行いました。
残念なのは、本書の上梓を待たずして、臨太郎さんが旅立たれてしまったことです。それだけが心残りです。
しかし、「生きた証し」を世の中に残し、投資家に読んでいただけること、そして、この仕事をお手伝いできたことは光栄なことと感じています。この本を、多くの方に手に取っていただきたいと思います。
この本を出版するにあたって、エコノミストの村田雅志氏には多大のご協力をいただきました。原稿の校正や検証のみならず、石川臨太郎応援企画として、有料メルマガの分析「石川臨太郎生涯パートナー銘柄の研究の研究」を書き下ろしてくださいました。この収益は、石川臨太郎応援のために利用させていただきました。誠にありがとうございました。
そして、臨太郎さんががんに冒されたと伝えたとき、開口一番、「すぐお見舞いに行こう!」と、私との松江行きを即断してご一緒していただいたリンクスリサーチの山本潤氏にも感謝申し上げます。
山本氏は、億の近道黎明期から一緒に、個人投資家の金融リテラシー向上を目標に頑張ってきた同志でもあります。彼にはカリスマ的な魅力があります。それに惹きつけられた個人投資家の中に臨太郎さんがいました。いわば、臨太郎さんの本格運用のきっかけともなった人で、私たちと縁を紡いでくれた恩人でもあります。ありがとうございます。
また、この本の企画当初から精力的に動いてくださり、編集作業のすべてを請け負っていただいた磯崎氏に大きな感謝を捧げます。売れっ子編集者で、進行中の大きな出版企画をいくつも抱えながら、可能な限り前倒しで作業を進めていただき、異例の早さで上梓できたと感謝しております。
最後になりますが、「この本が出版されたら、石川臨太郎さんの終の住処だった松江まで赴き、墓前にお供えさせていただく」と残されたご家族に約束しております。
臨太郎さんが天より見守ってくださっていると確信していることに加え、この本を手に取った方へ少しでもエッセンスが伝わり、資産運用のお役に立つことができれば幸福だと感じながら、筆を置きます。
臨太郎さんのご冥福を衷心よりお祈りいたします。
NPO法人イノベーターズ・フォーラム 松田憲明
無料投資情報メールマガジン「億の近道」 okuchika.net
石川臨太郎特設サイト iforum.jp/rintatou/
村田雅志 Twitter @MurataMasashi
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