《オルガルヒ(Oligarch)》
ロシアの「新興企業家」「政商」「寡頭資本家」「成金」は“オリガルヒ(Oligarch)”と呼ばれます。その語源は、「支配する選ばれし者」を意味するギリシャ語です。
20世紀末、ロシアは市場経済化を敢行しました。この経済改革によって一部の国営企業とそれらが保有する国家資産(石油・ガスなど)をそのまま受け継ぎ、新興財閥・寡頭資本家「オリガルヒ」とよばれる者たちが誕生したのです。
その一方で、急速な改革はロシア経済を混乱に陥れました。国内の経済格差は広がりつづけ、納税の回避と政財癒着によってついには金融危機が引き起こります。
オリガルヒに対する批判が強まるなか、より強大な力をもとめた彼らは、やがて政府とも敵対していきます。特にプーチン政権に交代してからはより圧力も強まり、ユコス社のミハイル・ホドルコフスキーなど、投獄された者もいます。
しかし、プーチン大統領は、政治的脅威となる新興財閥に対しては容赦なく抑圧する一方、政権に忠誠を誓った財閥とは関係を深めています。これらのオリガルヒは、依然として政治的影響力を持っているのです。
市場経済は“絶対”ではない!
経済格差、財政破綻、金融危機
“国家の宝”をめぐる大統領と新興起業家たちの攻防
オリガルヒを知らずしてロシア経済を語るな
20世紀末、ロシアは市場経済化を敢行した。
この「経済革命」によって一部の成功者が誕生する。それが“オリガルヒ(Oligarch)”と呼ばれる者たちである。
しかしその一方で、ロシア経済は混乱を極めていた。
国内の経済格差は広がりつづけ、納税回避・政財癒着によって国家財政すら傾き、ついには金融危機が引き起こされたのだ。
自らの利益のために政府に干渉するまでになったオリガルヒたち。
彼らの行く手を阻むものなどないかのように思われたが・・・。
あらすじ
高成長を続けるロシア経済の基盤は、エネルギー産業である。
それは、政府管理のもとにいまや世界有数の産出・輸出国となった“ロシアの宝”石油が支えていると言っても過言ではない。
しかしただ一度、その宝を個人のものとして所有し、栄華を極めたものがいた。――“オリガルヒ(Oligarch)”の一人、ミハイル・ホドルコフスキーである。
20世紀末、市場経済化を敢行するため旧ソ連の国営企業が次々と民営化された。
しかし、この「経済革命」の恩恵を受けることができたのは、民営化した企業を手中に収めることのできた一部の人間だけであった。
それがオリガルヒ(新興起業家)と呼ばれる者たちである。
「銀行王」「メディア王」「クレムリンのゴッドファーザー」
そう呼ばれるほど力をつけた彼らは、政権に癒着し、税金を逃れ、自らの利益のために政府に干渉していくようになる。
一方、国民のあいだには、急速な改革に対する疲弊感と拡大する経済格差への不満が生じていた。そして改革の矛盾は国家財政の破綻、世界中を巻き込む金融危機を引き起こした。
人々が安定と秩序を待ち望むなか、プーチンは政権の座に着き、宝を取り戻さんと動きはじめるのだった――
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