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カッコーの巣の上で

カッコーの巣の上で

2021年6月発売/四六判 504頁
ISBN978-4-7759-4252-9 C0097
定 価 本体2,400円+税

著 者 ケン・キージー
訳 者 岩元巌


目次著者紹介読者の声掲載されました

■システム=体制に抵抗する者たちの鮮烈な冒険譚

精神病院にやってきた本書の主人公ランドル・パトリック・マックマーフィ。彼の性格は騒々しく、乱暴で、陽気で愛情のあふれる、反逆者である。そして、女好きで人生に前向きな戦士でもある。

看護師長ラチェッドの独裁にうんざりしていたマックマーフィは、ラチェッドに反旗を翻した。周りの患者たちも同意し結集していった。

病院の規律を破り、病棟でのギャンブルを盛り上げ、ひそかに女性たちを連れ込みワインを調達するなど、あらゆる場面で自由に振舞った。

最初は戯れとして始まったこの反抗は、すぐに厳しい闘争へと発展する。絶対的権威を背景とする師長ラチェッドと、自身の不屈の意志に従って行動するマックマーフィ。

ラチェッド師長がマックマーフィに対して究極の攻撃を行ったとき、何が起きたか。物語は衝撃的なクライマックスを迎える。

[原題]ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST


■映画『カッコーの巣の上で』について

ミロス・フォアマン監督により映像化された同名の映画は、アメリカン・ニューシネマの代表作。1976年の第48回アカデミー賞で、作品賞ソウル・ゼインツ、マイケル・ダグラス、監督賞ミロス・フォアマン、主演男優賞ジャック・ニコルソン、主演女優賞ルイーズ・フレッチャー、脚色賞ボー・ゴールドマン他、の主要5部門を受賞。また、ラチェッド師長を主人公とするドラマ『ラチェッド』が2020年に配信されるなど、本作への関心は薄れることがない。

著訳者紹介

ケン・キージー(Ken Kesey)
波乱万丈の人生を送り、カルト・ヒーローとさえ言われたアメリカの作家。1935年、コロラド州生まれ。1962年に刊行した『カッコーの巣の上で』がたちまちベストセラーとなる。その後、カリフォルニア州に、ヒッピーの若者たちのためのコミューンを開設。1964年には、ヒッピーコミューン「メリー・プランクスターズ」とともに、サイケデリック塗装のバス「FURTHUR号」に乗り込み、全米に「トリップ」体験を広めるツアーをはじめる。1967年のビートルズの映画『マジカル・ミステリー・ツアー』はこのツアーをモチーフとしたとされる。こうした出来事を通じ、キージーは反体制のヒーローとしてもてはやされた。その後、薬物使用などで逮捕・起訴を繰り返し、次第に脚光を浴びる存在でなくなったキージーは、後半生は農場を経営しながら、エッセイや短編を書いて自由に暮らし た。2001年死去。

岩元巌(いわもと・いわお)
1930年、大分県生まれ。東京教育大学卒業。筑波大学名誉教授、麗澤大学名誉教授。主な著書に、『バーナード・マラマッド』(冬樹社)、『変容するアメリカン・フィクション』(南雲堂)、『シオドア・ドライサーの世界』(成美堂)、『現代アメリカ文学講義』(彩流社)など。訳書に、イーハブ・ハッサン『根源的な無垢』、ジョン・アップダイク『結婚しよう』『メイプル夫妻の物語』(以上、新潮社)、『ゴルフ・ドリーム』(集英社)、ジョン・バース『フローティング・オペラ』(講談社)、『レターズ』(共訳、図書刊行会)などがある。


掲載されました

産経ニュース 2021年8月14付の産経新聞紙面および産経ニュースに、産経新聞編集長・蔭山実様の書評をご掲載いただきました。

【ロングセラーを読む】いまなお社会を映す鏡 ケン・キージー『カッコーの巣の上で』

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読者の声

未見、未読の方はぜひこの作品を経験してほしい

表紙に若きジャック・ニコルソンの写真が載せられていますが、この本はアカデミー賞も取った同名の傑作映画作品の原作です。 映画の方は今からもう40年以上前になりますが、若い頃に映画館で見ました。その時の衝撃は今も忘れません。 それ以後、DVDなどで何度か見直していますが、そのたびに新しい発見があったりする作品でした。

今回、この原作本はその頃のことを思い出しながら読みました。ほぼ映画は原作を忠実に映像化している印象がありました。

舞台は閉鎖された精神病院。そこに新患として登場する主人公。「自由」をめざし病院内で奔放にふるまう主人公と、それを抑え秩序を保とうとする師長。そして、個性的な入院患者の面々。衝撃的かつ悲劇的なラスト。

若い時はジャック・ニコルソンが演じた主人公に肩入れし、それを抑圧する病院側をいわば「悪」のようにとらえていたところがあります。ところが年をとって作品を見直してみると、さて、その単純な見方でいいのかどうかという疑問がわいてきました。

病院側の自由の抑圧者の代表ように見える師長は、実は職務に忠実で誠実に秩序を保とうとした患者思いの優れた看護師だったのかもしれないと思うようになりました。 今回、このあたりのことを意識して本作を読んでみましたが、やはり単純に師長を「悪」「敵役」として描いたような記述はほとんどなかったように思いました。

この精神病院のような閉鎖された社会というのは現在も多く存在します。現代日本の多くの精神病院もでしょうし、ひどい事件もあった障害のある人が暮らす施設などもそのような場合があるでしょう。かつででいえばハンセン病の療養施設。

また、現在の様々な療養型の病院というのも該当する場合があるかと思います。 そうした場では社会一般と異なる独自の規範や「常識」がいわば当たり前になってしまい、そこにいる人たちはそのおかしさに麻痺してしまうようなことが現代の社会の中でも多くあるように思います。

さて、そこに切り込み、状況を「改善」するためにはどうすればよいのか・・・。

本でも、映画でも、この作品は現代社会にそのままあてはまる様々な問題を考えさせてくれるきっかけとなる素晴らしい「切り口」が今でも十分にあると思います。映画から本でも、本から映画でも、どちらでもよいと思いますが、未見、未読の方はぜひこの作品を経験してほしいと思います。 本を復刊してくれたパンローリンクさんに感謝します。

ふしみん様 個人投資家 投資歴25年
鳳凰堂のランダム・ウォーカー


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