定価 本体 1,400円+税/四六判 432頁
ISBN 4-7759-7065-8 2033
著者 マイケル・スタインハルト
訳者 奥脇省三
もし20世紀におけるウォール街の歴史が正式に書かれるならば、その2〜3
ページがマイケル・スタインハルトに割かれるのは間違いない。この「街」の歴
史のなかで、もっとも成功したファンドマネジャーのひとりであるスタインハル
トは、マーケットのいかなるベンチマークよりはるかに高い平均年間利益率3
0%を達成し、同業の仲間たちよりも優秀な成績を収めた。ヘッジファンド運用
者として30年に近いその在職中に、彼は顧客である投資家と自分自身のために
巨万の富を築き上げた。彼の主要ファンドであるスタインハルト・パートナーズ
LPが設立された1967年に、そのファンドに1ドル投資していれば、彼が資
産運用活動から引退した1995年には481ドルになっているという。
この本のなかで、マイケル・スタインハルトは自身を歴史に残るヘッジファン
ド運用者に仕立て上げた投資戦略のいくつかを解説している。そのなかには、産
業アナリストとして、また究極の銘柄発見者としての技術の核心も入っている。
マーケットの一般的なトレンドに逆らって投資を行うのはいつであるべきか、こ
れを察知する彼の超人的な能力――古いタイプの優良顧客からは必ずしも高い評
価は得られなかった能力だったが――によって、最高の成功例がいかにして数多
くもたらされたかについても、彼は書中で明らかにしている。また、彼はもっと
もセンセーショナルな成功例をいくつか詳しく述べている。そのなかには、全投
資を債券に賭けた1981年の重大な決断も含まれている。また本書では、良い
ことばかりを述べていない。数は少ないが、苦痛に満ちた失敗例も詳しく述べて
いる。その例として、1990年代半ばに行った、世界的なマクロマーケット進
出の大失敗が述べられている。
この本はまた、ベンソンハースト出身の一少年が無一文の状態から大富豪に出
世した物語であり、その少年がブルックリンの街頭からウォール街へのし上がっ
た物語でもある。スタインハルトの人生観や成功観を作り上げるのに影響した事
柄を物語調で語っている。また、株式投資をどうしてこんなに愛するようになっ
たかについても述べている。さらに彼は、富を得た後に人生の目的を持つ必要性
を考え始める過程を記録し、その目的がいかにして彼に引退の決意を固めさせ、
彼のエネルギーを別の方向に向けていったかについて書き記している。読者はこ
の本から、10年近い民主党指導者会議の議長としての経験やユダヤ人社会を強
化するために彼が行った革新的な考え方、野心的な計画を知ることになる。
ウォール街の天才かつ世界的な慈善家が書いた人の心を鼓舞する実話として、
この本は金融のプロにとってもまた人間の本質を学ぶ人たちにとっても忘れがた
い読み物である。
訳者/奥脇省三(おくわき・しょうぞう)
1937年生まれ。1961年に横浜市立大学商学部を卒業して山一証券に入社。山一国際有 限公司(香港)、国際金融部次長、山一ミドル・イースト社長などをつとめた後、1985年より太平洋証券に転籍。国際引受部長。国際営業部長などを経て、1998年に退職。
キリスト教関係の翻訳や通訳をしているが、証券関係の文献、小説などの翻訳をして行きたいと考えている。主な訳書に『グリーンブラット投資法』などがある。