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ウィザードブックシリーズ Vol.136



成長株投資の公理
――株で資産を築く8つの法則

『千年投資の公理』
も好評発売!

定価本体2,200円+税/四六判 上製本 246頁
ISBN 978-4-7759-7102-4 C2033/2008年3月発売

著 者 ルイス・ナベリア
訳 者 関本博英

トレーダーズショップから送料無料でお届け
本書への賛辞 | 目次 | 訳者まえがき | まえがき | はじめに | 第1章 | 関連書籍 | 読者のご意見

株式投資を難しく考えていませんか?
成長株投資界のカリスマが実証済みの奥義を公開します!
成長株投資で成功する秘訣!
利益を極大化する成長株投資の奥義!

ルイス・ナベリアは現在最も注目されている成長株投資家のひとりである。彼は27年間にわたって成長株投資で目を見張るような利益を手にしてきたほか、市場平均を25%も上回るリターンを投資家に上げさせてきた。本書ではその秘訣が公開されている。

成長株投資とはインカムゲインではなくキャピタルゲインを得ようという投資法で、これこそは株式投資で成功するベストの方法のひとつである。彼の実証済みで簡単な成長株投資法を実践すれば、あなたも大きなリスクをとらないで市場平均を上回るリターンを手にできるだろう。彼は本書のなかでその投資法がなぜ有効なのか、そしてどのようなマーケットの局面にあっても大きく値上がりする成長株の見つけ方を明らかにしている。

深い洞察と実践的なアドバイスが盛り込まれた本書には、市場平均に打ち勝つ成長株の見つけ方、すなわち8つのファンダメンタルズ指標とリスク・リワード・レシオによる定量分析的格付けに裏付けられた実証済みの公式が示されている。その公式を使えば有望株の買い時はもとより、売り時もたちどころに分かる。本書を読めば、勝ち成長株のポートフォリオを作ることによって、利益を極大化する方法がよく分かるだろう。さらに、それほど時間をかけないで最強のポートフォリオを維持する方法も注目に値する。

ルイス・ナベリアは健全な成長株に投資することによって生計を立ててきた。彼はこの投資法によって経済的な夢を現実のものとしたのである。分かりやすい言葉で書かれたこの本には、ウォール街の証券会社などにはだまされず、今のマーケットで真の富を築く具体的なアプローチが示されている。



原書『The Little Book That Makes You Rich : A Proven Market-beating Formula for Growth Investing』

著者/ルイス・ナベリア(Louis Navellier)
1980年から約30年間という、アメリカでは最も長いキャリアを持つ証券アナリスト兼投資ニュースレター編集長のひとり。
中立的なニュースレター格付け機関であるザ・ハルバート・フィナンシャル・ダイジェストによれば、彼のニュースレターのひとつである「エマージンググロース(Emerging Growth)」で買い推奨されたグロース株は過去22年間に4806%もの総リターンを上げた。
彼はそのほかにも、大型株投資家向けの「ブルーチップグロース(Blue Chip Growth)」、短期利益を目指す積極的な投資家向けの「クオンタムグロース(Quantum Growth)」、有望なグローバル成長株投資家向けの「グローバルグロース(Global Growth)」などのニュースレターも発行している。




本書への賛辞

「本書には株式投資の貴重な知恵と考え方が満載されており、成長株投資家の必読書である。ジョエル・グリーンブラットの『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」』(パンローリング)と同じく、ハイレベルの投資理論がとても分かりやすく述べられている」
――ネッド・デービス・リサーチ社のネッド・デービス社長

「ルイスは成長株投資家のアイドルである」――ニューヨーク・タイムズ紙

「数字人間のルイスがとても分かりやすい言葉で成功できる成長株投資法を語っている。投資のプロも『ちょっと参考にしてみよう』と言っているよ」
――ライアン・ベック社のジョー・バッティパーリアCIO(最高投資責任者)

「ルイス・ナベリアは20年かけて最もパワフルな投資ニュースレターを作った。これまでの感情を排した定量分析レターはいっそうおもしろくなった。そうした長いキャリアと深い洞察に裏付けられた本書では、有望な成長株を見つける体系的なアプローチがとても分かりやすく説明されている」
――マーケットウオッチのコラムニストであるピーター・ブリムロー氏

「ルイスはまたまたやってくれた。マネーマネジャー兼著述家兼投資アドバイザーとして、私は彼のアドバイスが何と適切なのか、そして彼の投資哲学は矛盾しているこの世界にあって何と一貫性があるのかと本当に驚いてしまう」
――ケン・スターン&アソシエイツ社のケン・スターン・マネージングディレクター

「ルイスが投資家に語りかけると、会場は一瞬にして彼のエネルギーと熱気に包まれてしまう。有望な成長株の見つけ方を示した本書を一読すれば、27年間にわたって市場平均を25%も打ち負かしてきた彼の投資法がよく理解できるだろう」
――インターショー(InterShow)の創設者であるキムとチャールズ・ギスラーの両氏




目次

訳者まえがき
まえがき
はじめに
謝辞

第1章 すべては最後の数字から始まる
第2章 信頼できるのは数字だけ
第3章 株式には惚れるな
第4章 予想利益を巡る思惑
第5章 アーニングサプライズ
第6章 売上高の伸びは成長株の第一条件
第7章 ごまかせない営業利益率
第8章 個人と企業をリッチにするフリーキャッシュフロー
第9章 残り3つのファンダメンタルズ指標
第10章 ベータとアルファ
第11章 株式格付けデータベースの仕組みとその使い方
第12章 株式投資のジグザグなアプローチ
第13章 有望な成長株の見つけ方
第14章 短期の大きなリターンを狙うクオンタム投資法
第15章 大切なのは経済とマーケットサイクルなんだよ
第16章 株式市場のグローバル化
第17章 鍋を見つめていると必ず煮立つ
第18章 企業やウォール街のだましには要注意
第19章 成長株投資家は楽観主義者


訳者まえがき

 本書はルイス・ナベリア著『ザ・リトル・ブック・ザット・メイクス・ユー・リッチ(The Little Book That Makes You Rich)』の邦訳で、約5000銘柄をカバーする彼の株式格付けデータベースのいわば手引書ともいえるものである。このデータベースの大きな特長はその膨大なカバー銘柄数もさることながら、有望な成長株発掘に特化した投資ツールになっていることである。彼によれば、カリフォルニア州立大学の学生だった1970年代に、ファイナンス教授からS&P500並みのリターンを上げられる投資モデルを開発しなさいと指示されたことがこのデータベース誕生のきっかけになったという。

 彼は本書のなかでそのときの経験や成長株投資で経済的な夢を実現した経緯などを詳しく述べており、それからほぼ30年にわたる磨きをかけて今のようなパワフルな株式格付けデータベースができあがった。このデータベースの仕組みや使い方については本書のなかで述べられているが、ここでは「ポートフォリオグレーダー・プロ(PortfolioGrader Pro)」について補足的な説明を付記しておこう。この膨大なデータベースを初めて利用するには、まず「http://www.getrichwithgrowth.com/」のメインページを開き、「Welcome Book Readers」でパスワードを取得してから「ポートフォリオグレーダー・プロ」にログインする。

 そこでは「総合株式格付け」「数量的格付け」「ファンダメンタルズ格付け」「売り上げ伸び率」「営業利益成長率」「利益成長率」「利益モメンタム」「アーニングサプライズ」「アナリストの予想利益の上方修正」「キャッシュフロー」「ROE」の下にA〜Fの格付けが記されている。企業名の下の「ストック・リポート(Stock Report)」をクリックすると、「業種(Sector)」「産業(Industry)」「リスク(Risk)」「推奨(Recommendation)」に続き、直近の月次・週次の格付け推移、株価・財務データとチャート、最近のニュース、企業プロフィルと至れり尽くせりの内容となっている。

 このなかで特に注目すべきなのは「総合株式格付け(Total Stock Grade)(A〜F)」と「リスク(コンサーバティブ〜アグレッシブ)」、「推奨(買い〜売り)」の3つであろう。それらが意味するものとそのシグナルによる持ち株の対処法については本書で詳しく説明されており、筆者によれば、あれこれ考えずにそのシグナルに従って売買するだけで成長株投資で成功できるという。このデータベースはファンダメンタルズ分析をベースとしているが、テクニカル分析を併用すればさらに強力な投資ツールとなるだろう。

 それにしても、5000銘柄をカバーするこの膨大なデータベースが毎週アップデートされ、しかもだれでも自由に利用できるというのは驚きでもあり、また日本の投資家としてうらやましくもある。こうしたサービスが日本にも存在すれば、わが国の株式市場はいっそう厚みを増し、投資家の増大とレベルアップも大きく促進されるだろう。米投資界の懐の深さを改めて思い知った次第である。

 素晴らしいデータベースに目を向けるきっかけとなる本書の邦訳を決定された後藤康徳(パンローリング)、編集・校正の阿部達郎(FGI)の両氏には心よりお礼を申し上げたい。

 2008年1月

関本博英


まえがき

 本書があなたにとってなぜ役に立つのかについてちょっと述べてみよう。ほとんどの個人投資家は長期投資に徹し、また規律ある投資決定をしようと心に誓うが、実際にはそれとまったく反対のことをしている。例えば、持ち株に少し利益が出ると「早く利益を確定しないと……」と焦り、個別銘柄についてはいろいろな材料(テレビのニュース、パーティーでの話、新聞や雑誌の記事、ニュースレターの情報など)に目移りする。その結果、マーケットを支配するどころか、高きを買い・安きを売るというまさにマーケットに完全に翻弄されている。こうした状況を「希望の坂を下り、悩みの壁を上る」と言うのである。

 多くの一般投資家は大きな上昇相場のあとで株価が下がると「これはおかしい」と思い、株価が反転上昇すると何か悪材料が出てまた下げるのではないかと疑心暗鬼になる。こうしたいわゆるダマシの上昇のあとに再び下落すると、ついに「何とかトントンまで戻してくれ。そうじゃないと株なんかもう二度とやるもんか」とやけっぱちになってしまう。そして一般にはこうしたときが大底となる。一方、上昇局面にあっても一般投資家は悪材料にたえず神経をとがらせ、株価がまた大きく下げるんじゃないだろうかといつもビクビクしている。その結果、ぐずぐずと出動を引き延ばし、上昇相場の後半になってやっと安心して株式を購入する。

 このようなちゃぶついた投資、感情的な投資決定、規律のないアプローチ、上昇相場への乗り遅れなどにあなたは嫌気がさしていないだろうか。もしもそうであるならば、この本があなたを救ってくれると私は断言する。

 ルイス・ナベリアは輝かしい長期投資のキャリアを持っている。ときに投資を休んだり、銘柄選択でたまにドジを踏むことはあるが、彼の規律ある投資アプローチを実行すれば、(彼だけでなく)あなたも平均リターンを大きく上回る利益を手にすることができるだろう。  ルイスは8つのファンダメンタルズ指標に照らして有望な成長株を見つけだす。彼は株式投資キャリアの初期に、ひとつのファンダメンタルズ指標だけで銘柄を選んではダメだと痛感した。ウォール街は人間の感情が渦巻いているところであるからだ。

 彼は本書のなかで「株式市場というところはひどい精神分裂病の症状を呈している」「成長株投資の成功を妨げる最大のリスクは恐怖心や貪欲さといった人間の心理であり、そうした感情がまさに最悪のときに最悪のことをわれわれにさせる」と語っている。株式市場はハリウッドやファッション業界よりも流行に敏感であるが、どうか皆さんはそうした一時の流行に惑わされないでほしい。

 あるひとつの投資指標(流行)でもしばらくは儲けられるかもしれないが、それがみんなに広く知れ渡るとそこですべては終わりである。ルイスは状況に応じて8つのファンダメンタルズ指標の重みづけを調整し、そのときにはやった1〜2つの指標だけで投資するようなことはけっしてない。

 本書では高いリターンを上げる投資法を紹介しているが、それと同時にリスクのマネジメント法についても詳しく述べている。それは広く知られているが、かなり誤解されてもいる「ベータ」と「アルファ」のコンセプトである。ルイスの投資アプローチはどのような相場局面でも利益を上げられるものであるが、思いもよらぬ事態が起こるともかぎらないので、30〜40銘柄に分散投資することを勧めている。  このような本書をよく考えながらじっくりと読んでほしい。そうすれば多くの有益なことが得られると思うが、とりわけ大切なことは投資とは簡単なことではなく、忍耐強い一貫したアプローチが求められるという現実を学ぶことである。ルイスは本書のなかで、株式投資による利益を積み上げるには、集中力と規律が求められることを強調している。

                  スティーブ・フォーブス


はじめに

 このような薄い本を読んで本当にリッチになれるのだろうか。疑り深い読者であれば、当然そう考えるだろう。もしもあなたがそうした人であるならば、私は自信を持って「なれます」と答えたい。ウォール街から流れてくる情報をすべてうのみにするならば、株式投資で成功することはできない。私は本書のなかでときどきたとえ話や寓話などを引用しているが、ここで述べられている株式投資でリッチになる話はすべて実話である。

 私はルイス・ナベリアという数字人間で、単刀直入な性格である。株式投資のキャリアは27年以上、その間にほぼ二五%もマーケットに打ち勝つリターンを投資家に上げさせてきた。健全で活力ある成長(グロース)企業に投資することによってである。過小評価されている企業を見つけるウォーレン・バフェット流のバリュー投資、マーケットと同じリターンを上げようとするインデックス投資などいろいろな投資アプローチがあるが、私のリッチになる株式投資法とはアメリカ経済を引っ張っていくような真のパワーエンジンを持つ企業に投資するという成長株投資である。

 私はこの投資法によって今のようなリッチな生活を手に入れた。私の父は勤勉なレンガ職人で、家庭はけっして裕福ではなかった。しかし、私が今のような大きな資産を築くことができたのは父の職業観を受け継いだからであり、私は父の勤勉さには本当に感謝している。こうした勤勉さが成長株投資法を開発できた原動力であり、それによって私の人生は一変した。今はフロリダ州南東部の避寒地パームビーチ近くの海の見えるきれいな家に美しい妻と子供たちと住み、数台の高級車も持っている(私は数字のほかに、車も大好きだ)。ウォール街の顧客や仕事の関係者と会うときはスタッフと一緒に自家用機で行くことも珍しくない。

 私の家系で大学に行ったのは私が初めてであり、母校はカリフォルニア州立大学ヘイワード校(現在のイーストベイ校)である。そのときに人生が一変した経験は今でも忘れることができない(もっとも、それによってどの程度人生が変わったのかはよく覚えていない)。当時のファイナンス教授のひとりは大手銀行であるウエルズ・ファーゴの出身者で、私は彼からリサーチプロジェクトの一環として、S&P500並みのリターンを上げられる投資モデルを開発しなさいと指示された。それは「数字オタク(Numbers Geek)」の私にとってまさに夢のような研究課題であり、それまで行ってきた数量的リサーチをすべて中断してこのプロジェクトに取り組んだ。市場平均並みのリターンを上げるという投資モデルの開発は一見すると簡単そうに見えるが、実際には想像していた以上のものだった。しかし、私はついにS&P500のリターンを上回る(それもかなり上回る)投資モデルを開発することができた。これはすごいことだった。その当時、私は長い間マーケットを打ち負かすことはできないと教えられてきたからだ。そうした私がついにやったのだ。

 しかし、私の心はうれしさ半分、腹立たしさ半分だった。うれしさとは大きなリスクを取らないで常に市場平均以上のリターンを上げられる株式投資モデルを開発できたこと、腹立たしさとはそれまで尊敬していたウォール街のプロたちにだまされていたと感じたことだった。こう思った私は、この投資法をウォール街の証券会社のような投資ツールを持たない個人投資家たちに役立てることが自分の使命だと考えた。現在の私のスケジュールは殺人的であるが、毎日はかなり充実している。四本の投資ニュースレターを書き、全米各地で定期的に講演し、ネバダ州リノで資金運用会社を経営している。こうした活動はすべて個人投資家の経済的な夢をかなえてやりたいという思いからである。本書の目的も皆さんをリッチにする方法とそのためのツールを紹介することにある。

 以下ではまず、市場平均に打ち勝つ実証済みの成長株投資法を紹介するが、それはキーとなるファンダメンタルズ指標(売り上げ伸び率やフリーキャッシュフローなど)と数量的格付けをベースとしたものである。私が開設した個人投資家向けのウエブサイト(http://www.getrichwithgrowth.com/)では、約5000銘柄がこの実証済みの投資基準に基づいてランク別に格付けされているので、個人投資家の皆さんはどうか自由にこの株式格付けデータベースにアクセスしてください。本書を読み終えたあなたは、ここで学んだことを即座に実際の株式投資に役立てることができるだろう。

 あなたが本書に書かれたことを実行すれば、必ずリッチになると私は信じている。私はあなたが子供を大学に行かせ、経済的に何不自由なくリタイアし、休暇を思う存分楽しむという夢を実現し、さらに経済的な目標をすべてかなえてほしいと思う。そのためには成長株投資家として成功することである。本書が私と同じくあなたも株式投資でリッチになるための第一歩となることを祈っている。


第1章 すべては最後の数字から始まる

 世界的なヒットとなったミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の主人公である修道女のマリア(ジュリー・アンドリュースが演じた)は、「スタートするのに最高のとき」という理由から、私たちは最初から物事を始めるべきだと語っていた。しかし、成長株投資によって利益を積み上げるにはマリアとは反対のこと、すなわち企業の最後のところ(期末の数字)のリサーチから始めなければならない。企業のこの「ファンダメンタルズ」こそが、投資資金を五倍、10倍、さらには20倍にも増やしてくれる素晴らしい成長株を見つけるこつである。その企業の製品やサービスはずっと売れ続け、また利益も伸び続けているか。市場環境の変化にうまく適用し、業界トップの地位を維持できるほどの技術革新を進めているか。素晴らしい成長株となるには、その企業が高い収益力を持つ製品やサービスをずっと売り続ける能力を持たなければならない。

 長年にわたる観察によって分かったことは、ウォール街というところは常に変化しているということである。ウォール街のプロたちは勝ち銘柄を見つけるひとつの特効薬として、あるときはPER(株価収益率)、別のときはPCFR(株価キャッシュフロー倍率)などを持ち出してきた。しかし、一時的に流行したこうしたファンダメンタルズ指標も急速にその効用を失っていく。長期のリサーチを通して明らかになったことは、こうした多くのファンダメンタルズ指標にも(せいぜい2〜3年という)寿命があり、それを過ぎるとそのエッジは急速に失われていく。それは1980年代の名門フットボールチームであるサンフランシスコ49ersを率いた名コーチのビル・ウォルシュの状況に似ている。彼が作り上げた(ショートパスを基本とした)ウエストコーストオフェンスはほかのチームを圧倒し、49ersを三度スーパーボウルに導いたが、やがてこの攻撃戦術も広く知られるようになると次第にその威力を失っていった。確かにこの戦術によって49ersは一時代を画したが、ウォール街でもてはやされるいろいろな投資指標(収益力、営業キャッシュフロー、EBITDA=利払い・税引き・償却前の利益など)と同じように、いったんそのエッジが失われるとやがては消え去る運命となる。それはちょうどダンスカードが一杯になるほどみんなが同じことをやり始めると、まもなくバンドは演奏をやめ、ダンスパーティーは終わりになることに似ている。

 このように株式投資というマネーゲームは常に変化しているので、私は複数のファンダメンタルズ指標に基づいて株式を格付けし、状況に応じてそれらの指標の重みづけを調整すべきだと痛感した。私とリサーチスタッフが勝率の高い成長株投資プログラムを開発したとき、最終的にどのファンダメンタルズ指標がその株式のパフォーマンスに最も大きな影響を及ぼすかについて、数百の指標について詳細に検証した。さらにこれまでウォール街でもてはやされ、株価を上昇・下落させてきた指標についても詳しくリサーチした。われわれはこうして開発されたパワフルなファンダメンタルズ指標モデルによって数千銘柄の上場株のパフォーマンスを検証し、最も大化けしそうな成長株を見つけようとした。断トツのパフォーマンスをもたらし、また長期にわたる時の試練にも耐えることが実証された八つのファンダメンタルズ指標とは次のようなものである。

  1. 予想利益の上方修正 ウォール街のアナリストたちによる予想利益の上方修正。

  2. アーニングサプライズ(Earning Surprise) アナリストたちのコンセンサス予想を大きく上回る予想外の利益の上方修正。

  3. 売り上げ伸び率 その企業の製品やサービスの売り上げが大きく伸び続けていること。

  4. 営業利益成長率 その企業の営業利益率が伸び続けていること。

  5. フリーキャッシュフロー いろいろな経費を差し引いたフリーキャッシュフローを生み出す能力。

  6. 利益成長率 四半期ベースの純利益が伸び続けていること。

  7. 利益モメンタム 毎年加速する増益率の大きさとその持続性。

  8. ROE(株主資本利益率) その企業の株主資本に対する利益率が高いこと。

 これらの八つのファンダメンタルズ指標を見ると、その企業の財務健全度、製品の販売力、収益力の大小が一目で分かる。この8つのファンダメンタルズ指標の総合点の最も高い企業がピーター・リンチの言うテンバッガー(10倍大化け株)となる資格を持ち、われわれのポートフォリオに直ちに組み入れられる。以下ではこれら八つのファンダメンタルズ指標について簡単に説明していこう。

 最初の指標である「予想利益の上方修正」とは、その企業をリサーチしているウォール街のアナリストたちが予想利益を上方修正することである。エリオット・スピッツァー・ニューヨーク州司法長官の激しい追及により明らかになったエンロン、ワールドコム、タイコ・インターナショナルなどによる不正会計の結果、この問題は一躍クローズアップされた。それ以降、アナリストたちは企業の予想利益の上方修正に慎重になっているが、こうした状況にあってもアップルコンピュータの予想利益が2006年の90日間に何回も上方修正されたのは注目に値する。

 二番目のアーニングサプライズとは、その企業の実際の公表利益がアナリストのコンセンサス予想をどれほど上回った・下回ったのかというもので、われわれが注目するのはポジティブサプライズの銘柄である。そうした株式のひとつが石油・ガスなどのエネルギー株である。大手エネルギー会社の不正会計が明るみになった結果、アナリストたちの予想利益が保守的になったなかで、これらは数少ないポジティブサプライズのセクター株だった。数年前に40ドル程度だった原油価格が60ドル以上に上昇したことから、エネルギー各社の公表利益はそれまでの予想を大きく上回り、これらの株式は急騰した。

 三番目の売り上げ伸び率とは今四半期の売上高を前年同期と比較したもので、その伸び率がかなり大きい企業は有望な成長株の買い候補となる。売上高が長期にわたって伸び続けている企業とは需要の大きい製品やサービスを提供している企業であり、われわれの投資基準をクリアするのは毎年の売り上げ伸び率が20%を超す企業である。そのひとつがエネルギードリンクというヒット商品を持つハンセン・ナチュラルであり、その売上高は2003年の1億ドルから2006年には5億ドル強となり、年間の売り上げ伸び率は65%以上に達している。

 四番目のファンダメンタルズ指標である営業利益成長率とは、売上高から売上原価や販売費・一般管理費などを差し引いた営業利益が毎年どれほど伸びているかを表すもので、大きな需要のある製品やサービスを持つ企業は、コスト上昇を伴わずに製品の値上げができるので営業利益率は上昇していく。(石油・ガスの採掘・生産に使用される地理的分析機器を製造・販売している)ボルト・テクノロジーなどはそうした企業のひとつであり、同社の営業利益率は2004年の8%から2006年には40%以上に上昇した。その結果、(株式分割後の)株価も8ドルから40ドル以上に大きく値上がりした。

 成長株の五番目の条件であるフリーキャッシュフローとは、いろいろな経費を差し引いたあとの現金収入で、これを見ればその企業の財務健全度が一目で分かる。損益計算書の支出が収入よりも多い企業とは、期末の現金が期初よりも少なくなっている企業である。投資に値する企業とは、各四半期の株式時価総額と比較したフリーキャッシュフローが一貫して増加している企業である。  六番目の利益成長率とは毎年利益が増えていることで、純利益÷発行済み株式数で表されるEPS(一株当たり利益)を見るとそれがすぐに分かる。成長株投資の買い候補となるのは、毎年一貫して利益成長率が向上している企業である。例えば、デジタル放送大手のディレクTVは2004年のEPSが21セントの赤字だったが、2006年には1ドルを超えた。その利益額も3億7500万ドルの赤字から10億ドル以上に急増、こうした企業こそがまさに成長株である。

 七番目の利益モメンタムとは、前年と比較した増益率の大きさやその継続性を表すもので、これが大きい企業ほど有望な成長株となる。例えば、(若い女性向け靴メーカーの)スティーブン・マッデンの年間利益成長率は2004〜2005年に61%、その翌年には117%に達した。その結果、株価もこの2年間に約10ドルから40ドル以上に急騰している。

 最後のファンダメンタルズ指標であるROE(株主資本利益率)とは純利益を株主資本で割ったもので、その企業の総合的な収益力を表している。この数字が高いほど収益力が大きく、株主が手にするリターンも大きくなる。そうした企業とは各業界のリーディングカンパニーであり、具体的にはインターナショナル・ゲーム・テクノロジー(世界的なゲーム機メーカー)、AES(国際的な電力会社)、ローズ(生命・損害保険、タバコ)、ファースト・マーブルヘッド(学資ローン大手)などである。

 これら八つのファンダメンタルズ指標の威力を確認するため、われわれは過去数年間にわたり、各指標の優劣と株価のパフォーマンスの相関関係について検証した。その結果、各指標のトップ格付けの株式は市場平均よりも高いパフォーマンスを上げていることが分かった。次の表はトップ格付けの各ファンダメンタルズ指標とその株式の市場平均に対するアウトパフォーム率を示したものである。

 この表を見ると、かなり大きい株価のアウトパフォーム率をもたらすファンダメンタルズ指標とそうでない指標があるが、それではなぜわれわれは最も高いアウトパフォーム率の指標だけに基づいた投資をしないのだろうか。その理由は既述したあのサンフランシスコ49ersのウエストコーストオフェンスと同じように、一部のファンダメンタルズ指標だけに頼っているとすぐにその威力がなくなり、状況が変化すれば有望な成長株の投資指標ではなくなるからである。これら八つのファンダメンタルズ指標に基づく総合的な格付けを使うという理由はまさにここにあり、こうすればどのように状況が変化しても各指標の重みづけを調整するだけであらゆる局面に対処できるのである。過去3年間に株価が四倍となったアメリカ・モビル(通信・携帯電話大手)、2年間に3倍以上も株価が上昇したアップルコンピュータ、3年間の株価上昇率が10倍に達したハンセン・ナチュラルなどの大化け株を発見できたのは、これら8つの総合的なファンダメンタルズ指標のおかげである。  一方、これらのファンダメンタルズ指標の総合格付けに照らせば、業績不振企業はもとより、それまでは有望株だったが、それ以降にファンダメンタルズが悪化した企業も簡単に見分けられる。こうした数字(まさに数字だけ)を見ることによってのみ、勝ち銘柄を見つけられるのである。MP3プレーヤーメーカー、テニスシューズメーカー、ナノテクノロジーのベンチャー企業など何でもかまわないが、将来の大化け株を発掘できるのはこれらの数字だけである。

 以下ではこれらのファンダメンタルズ指標をどのように利用し、またリスクとポートフォリオをマネジメントすることによってリッチになる方法を具体的に述べていく。これらのファンダメンタルズ指標がどれほど大きな威力を発揮するのかは、私とリサーチスタッフによる多くの検証を通してすでに実証済みである。もっとも、こうした優れたファンダメンタルズを持つ企業が多くの買いを集め、それによる株価上昇のリターンを手にするには、リスク・リワード・レシオというものも無視してはならない。つまり、どのような銘柄をいつ買うのかといったことだけでなく、それ以上買いが集まらなくなったリスキーな銘柄をいつ売却するのかも知らなければならない。

 本書では持ち株の日々のリスクを計測するポートフォリオマネジメントの方法についても詳述する。リスクをうまくコントロールして成長株投資を成功させるには、恐怖心や貪欲さといった人間の心理もよく理解しておくべきだ。それらは最も悪いときに最悪のことをわれわれにさせるからである。パニック状態のなかで有望株を買い、熱狂状態のなかで持ち株を売却するのはかなり難しいが、本書で紹介する私の投資法に従えばそれも可能となる。市場平均に打ち勝ち、ポートフォリオを適切にマネジメントする私の強力なツールとは、ネバダ州リノのオフィスにある膨大な株式格付けデータベースである。これは約5000銘柄の主要なファンダメンタルズと毎日の株価データであり、本書の読者は私のウエブサイトにアクセスして自由にこれを利用することができる。既述した8つのファンダメンタルズ指標に基づいて各銘柄を格付けしたこのデータベースにアクセスすると、トップ格付けの銘柄がどれほど多くの買いを集めるのかも実感できるだろう。本書を通じてこの成長株発掘ツールの威力を知ったあなたは、それを駆使してトップパフォーマンス株を見つけ、着実に利益を積み上げていくだろう。


本書で取り上げられた書籍


配当成長株投資のすすめ

オニールの成長株発掘法

オニールの
相場師養成講座

千年投資の公理

株デビューする前に
知っておくべき「魔法の公式」

利益を上げている企業
への投資が失敗するのか

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