2008年2月上旬発売
ISBN 978-4-7759-7101-7 C2033
定価本体2,800円+税
四六判 上製本 342頁
著 者 アンソニー・ヒューズ、ジェフ・ウィルソン、マシュー・キッドマン
監修者 長尾慎太郎
訳 者 井田京子
本書はジャック・シュワッガーの名著『マーケットの魔術師』シリーズにならって、そのオーストラリア版をウィザードたちを紹介できないかという熱い思いから執筆される運びになった。初版は刊行直後から、まだ知られざるオーストラリアのマネーマネジャーたちの素晴らしいサクセスストーリーを知ろうと一般投資家やトレーダーたちが殺到したため、ベストセラーになった。オーストラリア株式市場で投資家として成功するまでにたどった経験や戦略、そして失敗をも語ってくれたウィザードたちは、この第2版でも2人を除いて今も健在である。このなかには、ロバート・メープル・ブラウン、デビッド・パラダイス、そしてダイナミックな2人組のロン・ブライアリー卿とゲーリー・ワイスもいる。
今回、偉大な投資家の仲間にピーター・ガイ、フィル・マシューズ、アンドリュー・シッソンの3人が新たなウィザードとして加わった。彼らを選んだのは、投票に応じてくれた15人のウィザードたちで、株式投資の現在と長期の実績に基づいて新しいウィザードを選んでくれた。
ここで取り上げたウィザードたちはこの2年間のブル相場にも優れた投資結果を上げてきた――ブル相場におけるバリュー投資は難しいと言われているにもかかわらずである。ただ、市場平均を大きく上回ったウィザードもいれば、ポートフォリオの大きな割合を現金で保有してきたウィザードもいる。彼らの下した投資判断の理由や、世界の投資環境、有望な中国やインドの新興市場などについて、今回もウィザードたちは詳細に語ってくれた。 これらの箴言の数々は、明日からすぐ実行に移せるものもあれば、今後数年間を支配するマーケットの大局観として心にとめておくべきものもある。とにかく、一般投資家やトレーダーたちにとって、ウィザードたちの一言一言が聞き逃せない大変参考になるものばかりであることは確かにである。
ジェフ・ウィルソン(Geoff J. Wilson)
ウィザードのひとりであり、共著者のひとりでもある。自ら設立したファンド運用会社であるウィルソン・アセット・マネジメントのマネジングディレクターで、証券業界の経験は25年にわたる。
マシュー・キッドマン(Matthew J. Kidman)
シドニー・モーニング・ヘラルド紙にジャーナリストとして勤務後、ウィルソン・アセット・マネジメントに転職。
原書 Masters of the Market : Secrets of Australia's Leading Sharemarket Investors 2nd Edition by Anthony J. Hughes, Geoff J. Wilson & Matthew J. Kidman |
信頼の足る銘柄に集中投資をし、三年間で資金を四倍にした「独自スタイルの雄」
第2章 ピーター・ガイ
グレアムとバフェットの信奉者で成長段階の初期にある小型株投資専門の「一匹狼」
第3章 アンドリュー・シッソン
大型株の保有高を加減して一七年間で資金を二七〇〇倍にした「銘柄選択の達人」
第4章 ロバート・メープル・ブラウン
保守的な立場で年平均一一・八%を二〇年続ける「バリュー投資のチャンピオン」
第5章 ロン・ブライアリー卿とゲーリー・ワイス
法や定款の抜け穴を見つけだし、一二年間で資産を一〇倍にした「華麗なる乗っ取り屋」
第6章 ジム・ミルナーとロバート・ミルナー
伝統と歴史を経て確立された投資原則をかたくなに守り抜く「誇り高き時代遅れ一家」
第7章 アレックス・ウエスリッツ
会社組織と経営陣を精査し、長期支援に耐えうる企業のみに投資する「ザ・チーフ」
第8章 ティム・ヒューズ
マーケットに訪れる憂うつと幸福の間をきらびやかに舞う「逆張りのメディア王」
第9章 エリック・メタノムスキー
徹底した調査から割安企業を見いだし、年平均二五%を一二年続ける「厳格なバリュー投資家」
第10章 ブライアン・プライス
一日中、寝る時間も惜しんでグローバル市場をトレードする「孤高の闘士」
第11章 デビッド・パラダイス
枯れることのないマーケットへの熱意で、五年で八億豪ドルの利益を上げた「小型株の天才」
第12章 アントン・タリアフェロ
マーケットが割高のときは適正価格に戻るまでひたすら待つ「一貫性のマスター」
第13章 ピーター・ホール
投資スタイルの進化のためには努力を惜しまない「物言うバフェット信者」
第14章 ジェフ・ウィルソン
トレーディングからバリューやグロースの長期投資まで何でもこなす「オールラウンドプレーヤー」
第15章 グレッグ・ペリー
二年間の沈黙を破り、新たなスタートを切った「グロース株選択のヒーロー」
第16章 ピーター・モルガン
小規模ファンドを一二年間で一三〇倍にした「尊敬される気難しがり屋」は一時休止中
まとめ
本書に登場するウィザードたちはそのほとんどがオーストラリアの株式を運用対象とする人たちであり、したがって、著者による巻末のまとめにあるとおり、マーケットの魔術師に対するインタビューを行うに当たっては少し難しい時期であった。なぜなら、世界的な好景気とそれを反映した資源価格の上昇によって、この時期のオーストラリアの株式市場は未曾有のブルマーケットにあったからだ。
私たち日本人が1980年代後半に体験したように、あるいは多くの国の人が1999年にかけてのITバブルで体験したように、こういった実態価値を無視したブルマーケットにおいては、どんなボロ株でも理外の理でもって上がるために、真の技術や知識をもったウィザードとそうでない運用者との区別がつきにくい。さらには、パフォーマンスのみから評価すれば、この時期はより無謀でより浅慮なトレーダーほど、かえって良い結果が出せた時期でもあった。
しかし、本書の著者たちはきわめて賢明かつ落ち着いた編集方針を貫いた。マーケットのボラティリティ上昇とそれによる狂気に惑わされず、堅実で長期的な視野に立って運用を行うウィザードたちのみを本書のインタビュー対象に選んだのだ。
結果として、彼らのなかにはそのパフォーマンスがインデックスをアンダーパフォームしている場合もあるが、それでもなお自分のスタイルを貫き、じっと次のチャンスを待っている姿勢は、彼らがまぎれもなく本物であり、長期的には優れたパフォーマンスをあげるであろうと確信できる証左である。
運用とは突き詰めていけばスタイルにまつわる信念の問題であり、自己の運用者としてのアイデンティティを確立しそれに伴う結果を出すには、より強く自分の信じるところに従って行動することでしかそれを証明する手段はないのである。その意味では、巨額の資金を運用するファンドマネジャーであれ、個人投資家であれ、運用者個人に課せられた克服すべき問題には本質的な差はないと言えよう。読者におかれては、ここに記されたインタビューを読むことで運用における一貫性を学んでいただけるものと思う。
最後に、翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。井田京子氏には、正確な翻訳をしていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは社長である後藤康徳氏のおかげである。このインタビュー集が長く読み継がれ、版を重ねていけることを切に願う。
2008年1月 長尾慎太郎
アンソニー・ヒューズは、オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー紙の「ストリートトーク」というコラムの編集者で、それ以前はシドニー・モーニング・ヘラルド紙に八年間勤務し、投資部門の編集者を務めていたこともある。彼は、金融サービス、メディア、テレコミュニケーション、商業不動産、建設など、ほとんどのセクターを担当した経験があるだけでなく、オーストラリアの四大銀行すべてや、テルストラ(電話会社)、BHPビリオン(石炭採掘)、ニューズ・コープ(メディア)、レンド・リース(開発会社)、ウールワース(小売)、マッコリー銀行、ウエスファーマース(木材チップ)、AMP(保険会社)を含む数多くの大手企業を取材している。それ以前は、ビジネス・クイーンズランド紙とビジネス・シドニー紙で二年間勤務している。クイーンズ大学でジャーナリズムの学位を修得し、セキュリティース・インスティチュート・オブ・オーストラリアの客員研究員も務めている。
ジェフ・ウィルソンは、インタビューの対象でもあり、共著者でもある。自ら設立したファンド運用会社のマネジングディレクターを務めるウィルソンは、株式ブローカーやファンドマネジャーなど証券業界で二五年以上の経験がある。株式ブローカーとしては、イギリスのポッター・パートナーズ証券やニューヨークのマッキントッシュ・ホア・ゴベット証券などでも勤務している。一九九〇〜一九九七年には、プルデンシャル・ベーチェ証券のシドニー支店で機関投資家担当のエグゼキュティブ・ディレクターを務めた。このとき、彼は数多くのオーストラリアの上場企業に、株関連取引に関する助言を与えてきた。ラトローブ大学で理学士号を修得し、現在はセキュリティース・インスティチュート・オブ・オーストラリアの特別研究員も務めている。
第1章 フィル・マシューズ
用語解説
■監修者まえがき
本書は、オーストラリアのマーケットの魔術師を取材したインタビュー集の“Masters of the Market”第2版の邦訳である。「マーケットの魔術師」といえばジャック・シュワッガーによる『マーケットの魔術師』『新マーケットの魔術師』『マーケットの魔術師【株式編】』があまりにも有名だが、本書もそれらに劣らず秀逸なインタビュー集に仕上がっている。
■著者について
マシュー・キッドマンは、シドニー・モーニング・ヘラルド紙の元記者で、現在はウィルソン・アセットマネジメントでファンドマネジャーとして働いている。シドニー・モーニング・ヘラルド紙には四年間勤務し、メディアとテレコミュニケーションセクターの担当と、商業不動産部門の編集をしていた。一九九七年、彼はシドニー・モーニング・ヘラルド紙の投資部門の編集責任者に任命され、株式市場も担当するようになった。このとき、キッドマンはすでに同紙の看板記者のひとりになっていた。マッコリー大学では、経済学部と法学部という二つの学位を修得している。
マーケットの魔術師 |
新マーケットの魔術師 |
マーケットの魔術師【株式編】 |
マーケットの魔術師【システムトレーダー編】 |
新 魔術師たちの心理学 |
賢明なる投資家
新 賢明なる投資家
バフェットからの手紙
麗しのバフェット銘柄
証券分析
ゾーン
投資参謀マンガー
株の天才たち
狂気とバブル