2008年9月12日発売
ISBN 978-4-7759-7110-9 C2033
定価本体2,800円+税
四六判 上製本 462頁
著 者 フレデリック・R・コブリック
訳 者 岡村桂
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10バッカー(10倍株)はもう古い!
100倍、200倍になる銘柄を見つけよう
ピーター・リンチも激賞!
「コブリックは、私が出会ったなかで最高の銘柄選択者(ストックピッカー)だ。本
書は投資家の新天地を開き、投資技術の向上につながるだろう」
一握りの大化け銘柄を見つける簡単な方法とは……
ビッグマネーを手にするには、一握りの偉大な銘柄さえあればよい。真面目に取り組めば、投資家はだれでも勝利の銘柄を見つけるスキルを身につけられる――と、ベテラン銘柄選択者であり伝説の投資信託のマネジャーであるフレッド・コブリックは説く。本書でコブリックは、自らの投資経験から投資家に大きなリターンをもたらす会社を見つける4つの要素を紹介している。
勝ち組となる会社には4つの要素BASM、「B(Business Model―ビジネスモデル)、A(Assumption―前提)、S(Strategy―戦略)、M(Management―経営力)」があり、これらを見極められるかどうかは優秀な投資家の試金石となる。偉大な会社には再現・反復性があり、成功を何度も繰り返す。特に設立間もない会社にはBASMは欠かせない。
大きな可能性を秘めた会社を見つけたら、7つのステップ(知識、忍耐、規律、感情、時間枠、マーケットタイミング、ベンチマーク)を利用してポートフォリオを管理する、とコブリックは続ける。コブリックの洞察力と興味深い逸話からこれらの原則を学ぶことができる。
本書は、投資家必携の書である。
「マーケットの師、フレッド・コブリックが伝授する人生の教訓」――ヘンリー・スキャメル(エクイティーズ誌)「本書に見られるフレデリック・コブリックの自信と洞察力は、投資信託のマネジャーとしての30年以上の経験に裏付けられたものだ。彼の成績がすべてを物語っている」――ケリー・ハノン(USAトゥデー紙)
原書
"The Big Money : Seven Steps to Picking Great Stocks and Finding Financial
Security"
by Frederick R. Kobrick
麗しのバフェット銘柄 |
バフェットからの手紙 |
最高経営責任者バフェット |
新 賢明なる投資家 |
証券分析 |
株の天才たち |
成長株投資の公理 |
オニールの成長株発掘法 |
第2章 自分の保有銘柄を知る――知識
知識の重要性/知識は力なり/常識に基づく投資/偵察と「琥珀の間」/魔法の杖 /優れたシステムの存在/既存のマーケットに参入する――フェデックスのケース/ 偉大な会社には忍耐力と持続力がある/「金のガチョウ」BASMの重要性
第3章 長期保有して富を得る――忍耐
シンプルな指標を利用する/長期保有に値する会社を見つける/利益を得る投資家 とは?/リスク/富への道と大罪/七つのステップの効果――ナイキのケース/プラ スの行動とマイナスの行動/不安材料を考慮する/ホームデポの株価/ミスを正す/ 忍耐――そのリスクと報酬/ベンチマーク/じっと座っている
第4章 売買の規律に従う――規律
危機での投資家の精神状態/夢、感情、現実、そして富/偉大なを見極める売買の 規律/定規はいらない/不安と欲のバランス――一九八七年のケース/規律で窮地を 脱する/暴落後のディジタル・イクイップメント/株を保有するしか道はなかった/ 会社が描くストーリーを知る/ミスから学ぶ/暴落したときの半導体二社のその後/ 評価を理解する/収益とは何か?/会計と「真の」収益とは何か?/株式の評価方法 /オラクルはオラクル(神の言葉)ではなかった
第5章 銘柄の選択――すべてのステップを実行する
話題の銘柄を買う/航空株の手荒な運転/自分の足で調べる/一〇〇%の確信がな くてもうまくいく/このケースから学ぶ最大の教訓/種子会社の「実のある」分析/ おいしかった種子会社株/大逆転――サン・マイクロシステムズのケース/「ぼくの かわいい子供」/勝利とは/アポロ・コンピューター対サン・マイクロシステムズ (リムジン対ゴリラの着ぐるみ)/顧客の好みを再現・反復する/知識のある者が勝 つ/かみそりを裏返す/偉大なアナリストたち/私の質問を覚えていますか?/運命 をコントロールする/常識的な判断――アップジョンとラジオシャックのケース/将 来を予測する――ジョー・ディマジオとの遭遇/シンプル・イズ・ベスト/ユニフ ォーム(一貫性)によって成功したユニフォーム会社
第6章 マネジメント――最高のマネジメントは最高の銘柄
良い会社、良くない会社、厄介な会社/証券アナリストに対応するための問答集/ 不変のルール/会社を評価する基準/偉大な会社を早期に見つける/IPO銘柄を購 入するには/マラソンマン走者のようなマネジメント――ステープルズのケース/伸 び悩んだ偉大な会社――ヒューレット・パッカードのケース/勝者を見極める/会社 を救ったマネジメント/製品を創造し、顧客を獲得したマネジメント――クライス ラーのケース/偉大なアイデアを実現させる偉大なマネジメント――MCIのケース/一日一五分の調査/自分の保有銘柄に自信を持つ/偉大な製品と決断力のないマネジメント――アップルのケース/コーン・チップとコンピューター・チップの違い/アップルの結末/アップルの対極――IBMのケース/ギャップのケース
第7章 弱気相場、バブル、そしてマーケットタイミング――さまざまな環境で投資する方法
気象の変数と市場の変数/収益とファンダメンタルズが株価に及ぼす影響/マーケットタイミングを避けるには/強気相場と弱気相場/一九九七年――バーツの影響/「蝶」か、それとも「カバ」か/一九九八年――世界金融危機と手に汗握る状況/LTCMのケース/トリプルパンチが投資家を襲う/三つ目のパンチ/九月の噂/話の顛末/蝶と七つのステップ/チャートとお茶の葉――街角で物乞いするのはだれか? /バブルの真相/歴史から学ぶ/コンピューター、バイオテクノロジー、インターネット/最適な投資方法/裸の王様――誤報と大嘘/二〇〇〇年のバブルから学ぶ教訓
第8章 テクノロジーへの投資――マイクロソフト、デル、イーベイ、グーグルでの経験
「非マイクロソフト」会社の宿命/イーベイの成功/グーグルが切り開いた新しい世界/デルの上場と急展開/利益への直接ルートは「直接販売」/ワンツー・パンチ/銘柄の好き嫌い/マーケットシェアの拡大/「だれもかまってくれない」/真剣勝負の業界/一九九三年のデルの試練/方向転換、勝利、そして巨額の利益/デルから学ぶ教訓
第9章 ガマの油売り(嘘や偽者)からお金を守る――詐欺と虚偽、それにだまされる人
「ビジョン」は何か?/キツネとハリネズミ/重要なガイドライン/強靭、健全、安全なシステム/サンボズとエンロン/七つのステップの重要部分/救いの手差し伸べられた/このケースから学ぶ大切な教訓/不安を感じたら手を引く/数字は役に立たない
結び――ビッグマネーへの道
謝辞
ブラックマンデー、アジア経済危機、ハイテクバブルとその崩壊、同時多発テロ、近年ではサブプライムローンの焦げ付きなど、経済環境は大きく変化している。しかしどのような状況でも、本書で紹介するBASM(ビジネスモデル、前提、戦略、経営力)の優れた会社は成功し、七つのステップに従ってそれを見抜くことができればだれでも富者になれる。私が住むシカゴに、一九世紀後半にネイティブアメリカンを相手に商売をして財を成したジョン・キンジーの碑がある。キンジーはネイティブアメリカンから暴利をむさぼるのではなく、彼らのの言語を学び、彼らの好きなオーナメントを作り、彼らの懐へ入っていった。彼の商売にはBASMがあった。これは普遍の成功要素だ。
著者のフレデリック・コブリック氏はみずから会社に足を運び、自分の目と耳でBASMを確かめる。一見地味だが確実な方法である。自分が気に入った会社の株式しか買わない。これはウォーレン・バフェット氏に通じるものがある。バフェット氏に通じる特徴がもうひとつ。それはコブリック氏がウイットに富んでいるという点だ。経営に疑問を持った会社について皮肉をこめて表現する個所などは、クスリと笑わせてくれる。このニュアンスが邦訳でうまくお伝えできていればよいのだが。
本書の翻訳・出版に当たっては、数々の方にご協力をいただいた。このような興味深い本の翻訳機会を与えてくださった出版社、また面倒な編集・校正作業につきあっていただいた編集者の方に、紙面を借りてお礼申し上げたい。
二〇〇八年八月
岡村 桂
これに対して植民地軍は、自由に移動し、木の陰に隠れ、奇襲攻撃を仕掛けた。コメディアンのビル・コスビーのレパートリーのなかに、イギリス軍と植民地軍の司令官を演じたものがある。植民地軍の司令官がコイントスで勝つと、コスビーは、何か望みはあるかと植民地軍の司令官に尋ねる。
司令官はこう答える。
観客は笑い、学校で教わったことが正しかったと再確認する。厳しい連隊編成のイギリス軍は戦闘能力を発揮することができず、一方、柔軟性のある新しい形で臨んだ植民地軍は、十分な装備を誇る大規模軍隊に勝利することができた。
そしてアメリカは自由を勝ちとった。
投資家が「赤い外套戦術」で投資したら、きっと富を手にするチャンスを逃すことになるだろう。
柔軟性を欠く投資から独立して、自由を勝ちとる方法がある。非常に簡単だが手堅く、私だけでなく、成功を収めている多くの投資家たちが長年使ってきたテクニックだ。特別な魔法などではなく、また、寝ている間に身につくものでもない。投資家は、偉大な会社や勝者となる見込みのある会社を見極めるテクニックを学び、富を生むまで保有する方法を知る必要がある。
まず、古い考えを絶ち切ること。次に、「コンパス」を使い、重要だがシンプルな事柄に目を向けること。偉大な銘柄を見つけてそれを買い、利益が一〇〇倍になるまで保有したいとだれもが望むだろう。
本書は、あなたが道に迷わないようにコンパスとなり、シンプルだけれども非常に役立つ七つのステップについて紹介する。けっして難しいマニュアルの類ではなく、銘柄選択者(ストックピッカー)としての長年の私の経験を話すだけなので、楽しく読んでほしい。実体験を楽しく学ぶこと、これが最も早く最も効果的な学習方法ではないだろうか。
投資の経験を積むうちに、あなたは、失敗も少なくなり自信を持って取り組むことができ、ビッグマネーを得るチャンスにも恵まれるだろう。利益は三〜四倍にはなるだろうが、私が考える「ビッグマネー」とは、偉大な会社を見つけて忍耐強く保有し、一〇倍、二五倍、いや一〇〇倍、二〇〇倍の利益を上げることである。そしてあなたは第二の自由を勝ちとることができる。金銭的自由、つまり働かずに裕福に生活する自由だ。
一九八〇年代初めから半ばにかけてコンピューターが普及しはじめても投資の技術は向上せず、その後、情報の時代になっても特に向上した様子はない。それどころか、情報過多によって銘柄の選択はますます難しくなった。集中力が分散してしまい、本質から目がそらされてしまう。本書では、偉大な銘柄に集中する秘密を紹介する。「シンプル」と「フォーカス」が巨額の富を手に入れるカギとなる。
学生時代、英文学の先生から「文学には七つのテーマしかなく、どの本、映画、演劇にもそのテーマ(あるいはそこから派生したテーマ)が織り込まれている」と教わった。投資のテーマ(原則)は七つよりは多いが、けっしてたくさんあるわけではない。成長銘柄に投資するときは、通常、その会社がどのように収益を上げ、どのように成長を遂げ、どのようにして株主に富をもたらすかを考える。
過去に起こったことが分かれば、投資はもっと簡単になる。偉大な企業はどこも、成長して収益を伸ばし、競争上の優位性を守る方法について、単刀直入な言葉で表現できるビジネスモデルがある。これらのことが分かれば、本当に大切なことだけに集中でき、情報の波にのまれずに済む。その会社が考えるビジネスモデル、戦略、主な前提、そしてマネジメントの状態にフォーカスすればよいのだ。本書ではこの四つの要素を「B(Business Model=ビジネスモデル)、A(Assumptions=前提)、S(Strategy=戦略)、M(Management=マネジメント)」と呼び、BASMを見つける方法を紹介する。BASMにフォーカスすることを学べば、最大の利益をもたらす会社に投資できるようになる。
会社が生み出す収益は、長期的には投資利益に結びつくが、短期的に考えると混乱や雑音が交錯する。「数のゲーム」における報告・会計のテクニック(なかには詐欺や虚偽もある)は、英国庭園の迷路みたいなものだ。そのため、投資家はシンプルに物事をとらえなければならない。株主に利益をもたらす企業収益は「金の卵」であるが、実際にその卵を産む(富を生む)のは「金のガチョウ」つまりBASMである。
それでもやはり、人間の本能や性質、そして自然な反応は投資に大きく影響する。人間には欲があり、うまくコントロールできればプラスに働くが、感情に走るとマイナスの影響を及ぼしかねない。また人間には、忍耐力に欠け、短期的な視野に立ち、ベンチマークを軽視するという欠点もある。もうひとつの大きな過ちは、短期的な市場の動きを予測して高いリスクを負って投資する、という破壊的な戦略を立ててしまうことだ。投資を成功させるには、感情に左右されずに知識に基づいて行動し、ビッグマネーを手に入れるための正しい知識を身につけることが大切だ。
BASMや、投資を成功させるためのツールやコンセプトを活用するには、自滅に結びつく行動――これが人間の典型的な行動なのだが――を抑制し、次の七つのステップに従う必要がある。
あなたは一九九八年のアジア危機を予測できただろうか? あるいは二〇〇〇年三月にアメリカの強気相場がピークを迎えると予測できただろうか? 今年のスーパーボールはどのチームが出場するか、今年のワールドシリーズはどの球団が戦うか、明日の天気はどうなるか、さらには自分の人生に何が起こるか……。だれも正確に予測することはできない。予測した気になっているだけで、「正確に」は予測できていない。
しかしある会社のCEO(最高経営責任者)のことを詳しく知れば、市場の変化に対するその人の反応を予測できる。実際にCEOと面識がなくても、業績報告や声明、あるいはその会社に対する記事などを読むことで、必要な情報を入手できる。そして本書で紹介するテクニックを学べば、どのような情報が必要かが分かる。
現代は、インターネットをはじめさまざまな情報源があり、CEOの真の人柄を知ることも可能だ。かつてはリサーチのために実際に会いに行ったり電話をしたりしなければならなかったが、現在は机上でリサーチできてしまう。
家族や親しい友人がある状況に置かれたときに、どのような行動をとるかを予測するのは簡単だろう。CEOの行動を正確に予測するのは無理だとしても、人柄について詳しい知識があれば、偉大なCEOとそうでないCEOを見分けることはできる。それさえできれば十分だ。
偉大なCEOを見つけ、最高のビジネスモデルを理解することは、巨額の富を得ることに結びつく。こういった投資要因を見極める方法については、本書でも繰り返し述べることになるが、過去の偉大な投資家たちは経験からそれを見つけてきた。これが巨額の富を得るベストの方法であり、私は長い年月をかけて偉大な会社と偉大な銘柄を選別する四つの要素を明らかにしてきた。この四つの要素つまりBASMを活用すれば、投資家は、ビッグマネーを生み出す銘柄を選別し、予測することができる。
私は、一〇年以上前のある暖かい春の日の出来事を忘れることはないだろう。私が運営する投資信託の投資家たちにシカゴでプレゼンテーションを行ったとき、人込みのなかからある男性が私に近づいてきた。彼は、投資信託のほかに株式にも投資したいと考えていた。私のプレゼンテーションのなかで、ファンドについての説明よりも銘柄選択に関する部分が印象に残った、と言う。それ以来、投資家たちと話をするたびに、真剣に投資を考えている人はプロの投資家がランチの席で話すような株式の話を知りたがっていることが分かった。
個人投資家は、ルールや書物、文献から学ぶ内容よりも、成功を収めた投資家の経験談のほうが得るものが多いと感じていた。私は自らを振り返り、自分の経験やほかの偉大な投資家から学ぶことができるのはもちろんのこと、就職活動をしていたときに面接してくれた人からも多くのことを学んでいたことに気づいた。あとで紹介するが、このストーリーひとつでも十分な価値がある。
投資家と話をしたりプレゼンテーションをしたりした経験から、私は、彼らが抱える問題に触れることができた。そのたびに、少数の銘柄に集中して保有すべきだ(いや、ひとつの銘柄でもかまわない)と伝えてきた。もちろん、投資信託でお客様の資金をどのように運用してきたかについても話した(そのために講演していたのだから)。投資家は私の銘柄選択の方法について質問し、いろいろな話を根掘り葉掘り聞き出そうとした。銘柄選択者というのはほかの人の話も聞きたがり、お互いに情報を交換している。情報交換は単に面白いだけでなく、マネーマネジャーや個人投資家にとって学習と実践の機会にもなる。こうした訳で、本を書いていろいろな話を紹介しようと考えた。投資家のコンパスとなり、金銭的自由を得るための道筋を紹介し、学習したことを実行に移す方法を教え、実際に資金を動かす自信を与えるような本を書こう。そう思ったのだ。
もちろん、学習するだけでそれを行動に移さなければ何も得られない。投資家ならだれもが分かっていることなのだが、感情にまかせ、学習へと導いてくれるコンパスも持たずにいれば、行動が阻害されることはままある。
私の友人であり、ベテランブローカーのベン・ブルームストーンは、スターバックスが上場するずっと前、シアトルにあるスターバックスの店の前に並んだことがあったらしい。店のサービスは素晴らしく、彼もほかの客もそれに感銘を受けた。しかしブルームストーンは、多数のライバル社との違いを評価する方法が分からず、カギとなる要素(BASMのことだ)に注目しなかったため、スターバックスの株を買わなかった。今になって彼は、なぜ上場したときに買わなかったのかと後悔しているが、彼がBASMを知っていたらスターバックスの株を買い、それを保有し、今ごろひと財産築いていたはずだ。別の友人ビク・リネルは、市場が混乱したり、株価が急落しそうな気配を見せるたびに、なぜマイクロソフト(MSFT)の株を売ってしまったのかと後悔している。そんなときでもマイクロソフトは一時的に下げはするものの再び急上昇し、ほかの人が利益を上げているのを指をくわえて眺めているしかないはめになっている。
二人とも国内有数のブローカーに勤めており、そのリサーチを投資のプロに提供していた。しかし仕事があまりに忙しすぎて、リサーチアナリストが利用する銘柄選択のシステムしか考慮しなかった。リサーチアナリストの調査は素晴らしい。しかしマネーマネジャーとは考え方が違うため、銘柄選択はあまり得意ではない(もちろん優秀なアナリストはBASMの重要性を理解しているが、七つのステップには従わない。これが大きな違いとなる)。
なぜこんな風に断定的な言い方をするのかというと、実は、私は元アナリストで、その後銘柄選択の世界に移ったからだ。本書で私のキャリアについて詳しく述べるつもりはないが、BASMと七つのステップを利用して成功した理由を説明し、いくつかの銘柄のストーリーを紹介していこうと思う。これらのストーリーは、きっとあなたの資産形成にも役立つだろう。
というわけで、本書は証券分析の本ではなく、銘柄選択に関する本である。
二〇〇五年八月、グーグルはIPO(株式公開)一周年を迎えた。株価はIPO時のほぼ四倍になっていた。しかし強気筋も弱気筋もその株価の根拠が分からなかった。
IPOが近づくにつれ、このサーチエンジン・デベロッパーは世間の注目を集めた。国内の事件やスポーツと同じくらい頻繁に、グーグルの株価は人々の間で話題にのぼった。その多くは証券アナリストが得意とするファンダメンタルズに基づいており、BASMに注目する人はほとんどいなかった。グーグルは単なる話題の銘柄か、それとも長期保有する価値のある偉大な銘柄だろうか?
将来有望な企業が必ず直面する問題、つまり競争(グーグルのライバルはヤフーやマイクロソフト)にグーグルも直面するだろう。グーグルの経営状態を追跡して偉大な会社の仲間入りを果たすかどうかを判断するには、BASMに注目する必要がある。
私が初めて株式のことを知ったのは、一九七一年、ウォール街で昼食をとっていたときのことだった。その話に強烈な印象を受け、聞いたことを何度も繰り返し実行した。それが私のキャリア形成に大きな影響を及ぼした。ほかの投資家にとっても非常に役立つ話だと思う。
当時私はハーバード・ビジネススクールの卒業を控え、ウォール街の大手証券会社のアナリストたちとの面接を繰り返していた。あるとき、アナリストの上司にあたるリサーチマネジャーと昼食をとっていた。面接は順調に進み、アナリストに対して良い印象を持った。そして途切れることなく会話が続くように思えた。
すでにアナリストたちの話に感動を覚えていたのだが、とにかくデーブの印象は強烈だった。彼はこれまでに会ったどのリサーチマネジャーとも違うタイプで、管理職というよりは、指導者・教育者という印象を受けた。
「銘柄選択者を育成して、自分の部署に真の投資家を置きたい。それさえできればこのビジネスはうまくいく」と彼は言った。
彼と私の共通の理解は、多くのアナリストが徹底した調査を行って素晴らしいレポートを作成しているが、クライアントに多額の利益をもたらす、適切なタイミングで適切な銘柄を選択する方法を知らない、ということだった。
楽しい昼食も終わりに近づいたころ、彼は請求書を見て、ポケットから札束を取り出した。私は自分の目を疑った。彼はいつでもこんなにたくさんの現金を持ち歩いているのだろうか?
彼はさりげなく答えた。
人にはそれぞれ「決定的」と呼べる瞬間、つまり人生の転機となる重要な出来事に遭遇する瞬間があるだろう。私にとってデーブとの出会いは決定的瞬間であり、一生忘れることはないだろう。彼が話してくれた株式のストーリーをきっかけに、私は別の道を歩みはじめることになった。
何よりもその日、専門書を読んで投資に関する情報を得るよりも、投資について詳しい知識を持っている人のもとで働くべきだと悟った。投資の「名人」と呼ばれる人について書かれた本を何冊か読んでおり、名人から何かを学ぶべきだ、と考えていた。しかしこういった人はあまりに有名だと勝手に思い描き、実際にはそれほど輝かしい存在ではないということに気づいていなかった。
銘柄選択で巨額の富を得た人とじっくり話をしたのは、デーブが初めてだった。彼の話をもっと聞きたいと思った。
彼は、小規模の急成長企業をいくつか見つけて投資していた。今後の成長が見込まれ、自分が納得できる銘柄のポートフォリオを作成すべきであり、巨額の富を得られる可能性のある銘柄をいくつか持っておくのが賢明だ、と考えていた。
ある日デーブはゼロックス(旧ハロイド)の株式を買った。ハロイドは一九五九年に画期的なテクノロジーを開発し、それを発売した。同社はその年にIPOを行い、店頭で取引されたため、デーブはその株式を買った。世界初の事務用普通紙複写機を開発したハロイドは、一九六一年にゼロックスと社名変更し、ニューヨーク証券取引所に上場した。株価は高く評価されたため、さらに知られるようになり、利益も増大した。彼は新技術についてあらゆる本を読み、市場での評判はどうか、競合製品はないか、この会社は今後成長する可能性があるかを徹底的に調べた。それまでゼロックスはあまり名の知られた企業ではなかった。新技術の開発以前は、カーボン紙をタイプライターのシートに挟んでコピーを作成していたが、この新技術によって、印刷された紙からコピーを作成することが可能になった。
ゼロックスの事業内容について調べ、それを理解しても、デーブはまだ満足できなかった。というのも、この新技術は元のとれる技術なのか、それよりも普及するのか確証が持てなかったからだ。そこで実際にコピー機を購入した購買担当者や、ウォール街のオフィスで実際に使用している人たちから話を聞いた。また事務員や秘書とも雑談した。彼の質問は的確であり、この機械が好きか嫌いか、そしてどんな要素があったらコピー機を追加で買うか、と聞いて回った。その結果、彼はマーケットの状況を理解し、概算するのに十分な情報を得ることができた。
技術改良が進み、価格が下がり、マーケティングと流通が整い、認知度が高まれば、どのくらいのコピー機が売れるか、とデーブは常識的に計算した。悪いシナリオ、良いシナリオ、そしてその中間のシナリオを考えた。この計算からだけでも、成長の可能性は計り知れないほど大きいことは明白だった。彼は自分に必要なもの、自分が欲しいものを明確かつ常識的に判断することができたが、さらに具体的な数字を描くこともできた。簡潔明瞭で論理的なその考え方に感動し、今でも私は簡潔で単刀直入で論理的な「将来収益モデル」を好んで利用している。
投資を始めたころの「トレーニング」が私にとって大きな財産となっている。航空機のパイロット、トラックの運転手、ベースボールカードのディーラーなどさまざまな人たちと話をしながら、この常識的で実践的なアプローチに自分なりに磨きをかけていった。
話を戻すと、ゼロックスの株価はますます上昇し、デーブは知識を深め、そして自信を持って買い増しをした。もちろん市場全体の変動は個々の株価に影響するが、彼は下降局面でも買った。なぜならば、この会社は生き残ると確信していたからだ。知識を深めれば深めるほど多くの利益を上げることができ、そして利益を上げれば上げるほどもっと知りたくなる、とデーブは語った。
この話を聞いて、多くの投資家や実業家が新製品に対して懐疑的な考えを持つ理由が分かった。コピー機を使うのはカーボン紙よりも高くつくはずだから、この新しいおもちゃを買う人は単に面白がって試してみたいだけなのだろうと考える。ゼロックスの好況期は、コンピューターどころかワープロが普及する以前のことであった。新しい製品やサービス、不確かなマーケットに警戒心を抱くのは当然である。懐疑はリスクに対する健全な反応である。人は懐疑的になると、不安なものや知らないものには手を出さないか、疑いや不確実性を取り除くような知識を得ようとするかだ。
疑いを持つ人――偉大なアイデアがあるところには、弱気の見方をする人がたいてい存在する――は、コピー機が大量に普及するにはコストがかかりすぎるため、コストを重視するビジネスの世界では成功しないと考えた。さらにコピー機はインクまみれになり、音もうるさく、処理も遅かった。発売当初は、はっきりしたことは何も分からなかった。ところがゼロックスは、開発初期段階のこの製品を未成熟な市場に売り込んだ。一九九〇年代のインターネット企業と違うところは、ゼロックスは堅調な収益を上げ、健全な経営体制を整え、強固なビジネスモデルを構築していた。
すでにこのとき、デーブはさまざまな企業に投資して十分な利益を得ていた。しかしほとんどの投資家は、ゼロックス、マイクロソフト、メドトロニック(世界初の電池式体外型心臓ペースメーカーを開発した医療機器企業)、ホームデポ、トイザらスなどを初期のころに購入したにもかかわらず利益を確定して早々に手放し、一握りの銘柄で巨額の富を手に入れるチャンスをみすみす逃してしまっていた。市場の低迷を招くような出来事が起こると多数の投資家が偉大な銘柄を手放し、一目散に撤退してしまったのだ。
彼らがデーブと違う点は、保有企業について深い知識を持っていないことだった。その会社のことをよく知っていれば、市場が変動しても株式を保有し、さらに買い増しして、長期保有することができる。
ゼロックスのチャートをさかのぼって見てみると、株式分割の調整後、デーブが初めて同社株式を買ったころには四ドル近辺で売られていたことが分かる。数十年後には一六〇ドルを付けているため、デーブは四〇倍以上もの利益を出し、それだけでひと財産を手に入れたことになる。
デーブがひと財産築いていたころは、まさにゼロックスの黄金時代だった。その後は良いときもあれば悪いときもあった。厳しい時期は本業に力を入れるしかなかった。現在もこれからも、ゼロックスは私たちに素晴らしい教訓を与えてくれるだろう。私は友人から貴重な事柄を学んだ。それがあったからこそ私は探求の旅に出ることになった。今もその旅は続いている。
本書ではデーブの教訓をもとに、さまざまなケースを面白く、ときには教育的に伝えながら、銘柄選択を簡素化して失敗を回避する最適な方法を紹介する。一九二〇年代の偉大な投資家リバモアのコメント(第3章で紹介する)から、投資家がどんな風に自滅するのかを知るだろう。残念なことに、このことは今でも多くの人に当てはまる。人間は感情的な生き物であり、たくさんの情報やデータに圧倒されているにもかかわらず、「航海図」を持たない人があまりに多い。
それぞれの話から学ぶ教訓は普遍的なものであり、多くの銘柄、業種に当てはまる。「シンプルに投資する」という主なテーマに沿って、本書はだれでも利用できる数字やコンセプトをもとに話を進めていく。二、三の重要な要素に注目してそれを週に数時間調べ、一握りの銘柄からビッグマネーを築く方法を伝えるのが本書の目的だ。
マイクロソフト、ホームデポ、デル、ナイキ(NKE)、マクドナルド(MCD)についてきちんと理解せずに、どうやって次のマイクロソフト、ホームデポ、デル、ナイキ、マクドナルドを見つけることができるだろうか?
マクドナルドはハンバーガーやファストフードを発明したわけではないし、ナイキもジョギングシューズを発明してはいない。しかし両社ともそれぞれの業界のリーダーとなっている。マイクロソフトは、オペレーティング・システム、ワープロのソフトウエア、表作成のソフトウエアを発明したのではないが、やはり業界のリーダーとなっている。ホームデポは、家具や備品を小売店で販売する方法を創案したわけではないし(草分け的存在ではあるが)、デルはコンピューターを発明したのではない(もちろん草分け的存在である)。それだけでなく、これらの会社は業界初期のころに設立されたものの、けっして業界初の会社ではなく、二番手、三番手であった。本書で紹介する興味深いストーリーは、巨額の富をもたらす会社を見つけるヒントとなるだろう。
これらの会社をはじめ、あなたが名前を聞いたことのある会社も聞いたことのない会社にも、共通の要素がいくつかある。成功している会社は、偉大なアイデアを戦略、事業計画、行動というかたちで実現している。
シスコ(CSCO)、デル、マイクロソフト、ホームデポ、ウォルマートといった会社は、投資家の資金を何百倍にも増やしてきた(ウォルマートにいたっては数千倍だろう)。ほかにも投資に値する銘柄がたくさんあった。まずまずの利益を生み出した銘柄、巨額の利益を生み出した銘柄もあれば、辛抱強く保有した投資家に人生を優雅に過ごせるほどの利益を提供した銘柄もあった。
多くの人は、退職金を投資信託やフィナンシャルアドバイザーに任せるべきだ、と私は思う。そうすれば資産の運用に頭を痛めなくてすむ。しかし一方で、だれでも、巨額の富を手に入れるという目的を持ち、私が開発した手法を利用し、いくつかの銘柄を保有し、それらの銘柄にのみ集中することができる、とも考えている。
富に結びつくのは有名な会社だけではない。本書では、モレックスのような小さな会社のことも取り上げる(第2章)。私がこの会社に投資した理由、そしてその経験をもとにしてシスコで利益を得たストーリーを紹介する。また、一九八〇年代にワークステーション・コンピューターの先駆けとなっていたアポロ・コンピューターと、その後アポロ・コンピューターの座を奪い、投資家に二〇〇倍以上の利益をもたらしたサン・マイクロシステムズ(JAVA)の戦いの内情を紹介したい。
戦いに終わりはない。シアーズ・ローバックがアメリカ小売業界に君臨し、一九七三年にシカゴに一一〇階建てのシアーズタワーを建てたとき、いったい何が起こっただろうか? 当時シアーズタワーは世界で最も高いビルであり(一九九七年に世界一の座を譲った)、アメリカで最も成功を収めていたカタログ販売企業の本社が置かれていた。アナリストは七〇年代後半、シアーズはナンバーワンの座をずっと維持するだろうと予測した。しかしその予測は大間違いだった。シアーズが後退してウォルマートが頭角を現した理由は、そのビジネスモデルとマネジメントにある。経験から推測した収益とアナリストの予測を鵜呑みにするのではなく、会社が明らかにした戦略、マネジメントの行動、ビジネスモデルのポイントに注目していれば、その理由は明白だった。
投資家のなかには、サパタやシュルンベルジェ(SLB)といったエネルギー企業の株式が多額の利益をもたらしたことを覚えている人もいるかもしれない。クエーカー・オーツやラルストン・ピュリナなどの食品メーカーがほんの数年間で七〇〇〜八〇〇%の利益をもたらしたこと、あるいはドラッグストアチェーンのライトエイドが、二四カ月間で一株四・七五ドルから五五ドルに跳ね上がったことを知っている投資家もいるかもしれない。ディズニー(DIS)が六年間(一九六六〜七二年)に四・五〇ドルから一二〇ドルに上昇し、マクドナルドが投資家に五〇倍の利益をもたらした話も有名だ。しかし住宅ローン保険会社のMGICが一・七〇ドルから九六ドルに上がったことを知っている投資家は少ないだろう。
ある期間にどの業種が伸びるかを予測することは難しい。テクノロジー部門が伸びることもあれば、小売りやメディアかもしれない。また同じ業種内でも、うまくいく会社もあれば不振な会社もあるだろう。ドラッグストアチェーンだろうとソフトウエアの会社だろうとかまわない。重要なのは、無限の市場機会があるかどうか、そしてそれを生かす偉大なBASMを持っているかどうかということだ。
本書は歴史書ではない。富を築くきっかけを伝えようとしているだけである。しかし歴史をひもとくと、どの会社が株主に多額の利益をもたらしたか、その理由は何であったかが分かる。将来の投資に役立てるには、過去のことを知る必要がある。グーグルが好調な理由を知りたければ、アルタビスタ、ウエブクローラー、ライコスなどのサーチエンジン会社のことを調べ、その成長と収益の要因、つまりビジネスモデルに注目すると大いに役立つだろう。
また、戦争やチェスを見ても分かるように、雌雄を決する一手というものは何度も繰り返されてきた。製品やサービスの種類は違っても、優れたビジネスモデルも何度も繰り返される。私はモレックスで学んだことを生かしてシスコで巨額の富を得ることができた。どちらの会社も、優れたBASMを持っていた。
グーグルに関する最近の熱狂ぶりに関しても、私は注意深く耳を傾けている。グーグルは株でひと儲けを狙っている人たちのシンボルのような存在だ。アップルとiPod、ネットフリックス(オンラインDVDのレンタル)、ティーボ(ハードディスクにテレビ放送を録画する技術を開発)、あるいはナノテクノロジー企業もそうだ。グーグルに関しては、PER(株価収益率)に基づく評価について多くの人が意見を繰り広げている。しかしいくら投資家が「表面上」高い銘柄を売ったと思っていても、実際には、保有して富を築けるはずだった銘柄を売ってしまったというケースが多い。というのも、「型どおりの評価法」以外に基準がなく、何に注目したらよいのか分かっていなかったからだ。
残念ながら、学生や投資家の多くが、マイクロソフトやデルが成功した背景を理解していない。今後どの企業が大成功を収めるかを知るには、過去に成功した企業のことを知る必要がある。勝利をもたらす銘柄を選択するのは、二流の将軍が過去の戦いと同じ作戦で攻めようとするのとは訳が違う。何度も繰り返し生じるテーマを理解し、次の戦いに勝利するための戦略を立てることなのだ。偉大な会社のマネジメントは、過去に勝利をもたらしたビジネスモデルを理解しているだろうか? 優秀な投資家は皆こういったことを確認している。
グーグルやナノテクノロジー、そして将来の値動きに注目するには、イギリス軍の「赤い外套戦術」ではなくBASMと七つのステップを利用する。
成功を収めている経営者と戦略家には先見性があり、過去の出来事から学び、厳しい時期でも信念を曲げない。ナイキの共同創立者フィル・ナイトはリーボックとの戦いに勝ち、ナイキをナンバーワンに導いた。マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツとロータス(表計算のマーケットシェア七〇%を占めていた)との戦い、デルとコンパックとの戦い(コンパックのあとにデルが登場し)を見ても同じことが分かる。
こういったストーリーは、主役が変わるだけで何度も繰り返される。インターネット業界のバトルの勝敗は、BASMの要素が決定的となった。インターネットによって私たちの生活やビジネスの方法は大きく変わっている。投資で成功を収めるとは、つまり、イーベイやアマゾンやヤフーとほかの会社との違いを理解することを意味する。新たなインターネット企業はグーグルだけにとどまらず、今後も続々と登場するだろう。インターネットの時代は始まったばかりである。また科学の進歩や発見とともに、新たなテクノロジーも生まれるだろう。ナノテクノロジーは、人間の髪の毛よりも微小なものを研究する分野であり、すでにさまざまな目的に利用されている。このように変化の速い時代には、熱狂的な銘柄が登場して投資の機会も広がるため、それを見極める方法を知る必要がある。
クリスピー・クリーム・ドーナツ(KKD)(理性の範囲を超えて熱狂的な銘柄となっている)とグーグル(すでに信頼できる企業として確立している)の違いは何か、とよく聞かれる。本書ではその答えを解説する。これらの教訓は現在だけでなくいつの時代にも当てはまるため、ぜひ今後の投資に大いに役立ててほしい。
初期のころのアップルとティーボを比較するのは非常に興味深い。ワング・ラボラトリーズ、デジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)、ロータス・デベロップメント、コンパック・コンピューターなど、業界ナンバーワンのポジションの企業に何が起こったのか、戦いの結果はどうだったのか、勝敗の原因は何だったのかをきちんと理解すれば、こういったテクノロジー企業への投資に強くなるだろう。
最後の章で取り上げるが、詐欺的行為や財務報告の問題の可能性を見つけるにはいくつかの簡単な方法がある。それにはもちろん、BASMと七つのステップが関係している。
サンボズというレストランのことをご存知だろうか? モレックスから学んだことを生かしてシスコ上場時にこの会社の価値を評価することができたのと同じように、一九七〇年代のサンボズの教訓から一九九〇年代のエンロン問題を避けることができた。
すべてのことは繰り返す。この秘密を知っていることは、株式で富を築くうえで大きなプラスになる。どんなことが繰り返し起こっているのかを知っているだけで、ほかの投資家よりずっと先を歩いていることになる。本来、勝者にも敗者にも等しくチャンスはある。本書では、チャンスと銘柄を見極める方法を伝えたい。ここでももちろん、BASMと七つのステップが関係している。
個人投資家には、プロの投資家にはないさまざまな利点がある。なかでも注目すべきは、売買の根拠を示す詳細な報告書を委員会に提出する必要がないことだ。もちろんプロにも利点はあるが、個人投資家の利点のほうがはるかに多い。必要な知識だけにフォーカスすることができたら、膨大な機会を得られるだろう。この知識は自信につながり、これに秩序が加われば、ビッグマネーに結びつく。
これは、投資信託や株式投資に明確かつ簡単な方法をプラスして富を手に入れたいと考えている人のための本ある。惰性や古い投資から抜け出すストーリー、コンセプト、教訓を知りたいと思っている多くの人たちにとってのガイドとなれば幸いである。
もちろん収益に注目するのは大切なことであり、その方法についても説明するが、簡単に偉大な銘柄を見つけるには、富を生み出す「金のガチョウ」に注目しなければならない。BASMは私の銘柄選択に大いに役立ち、そのおかげで一五年間も国内ベスト五の記録を残してきた。私だけでなく、国内の多くの銘柄選択者にもBASMは貢献してきた。
本書で紹介するストーリーから多くの教訓を学んでほしい。そしてどんどん実践してほしい。フィル・ナイトも「ジャスト・ドゥ・イット(やるしかない)」と言っているのだから。
第1章 あなたも富を手にできる――偉大な銘柄、BASM、七つのステップ
独立戦争に勝利し、アメリカ合衆国はイギリスから独立した。勝利の要因はひとつではなく、戦略、忍耐力、豊富な蓄えなどが考えられるが、私たちは学校で、イギリス軍の戦術が時代遅れだったと教わった。きちんと隊列を組み、一列に並び、真っ赤な外套を着て頭を高く上げて狙撃したのがイギリス軍だった。
「敵軍は赤い外套を着用し、一列に並び、命令に従って狙撃しなければならない。自軍は岩や木の陰に隠れていつでも銃撃できるようにしてほしい」
七つのステップとBASMをうまく組み合わせると、ビッグマネーを得ることができる。その方法はたいして難しいものではなく、本書ではいくつかの例を挙げながら説明していく。ケーススタディを見ながら学ぶというのは、ハーバード・ビジネススクールをはじめとする一流のビジネススクールやロースクールでは一般的な学習方法だ(もちろん、机上で学ぶよりも経験を積むほうがずっと効果的な学習方法だが)。ケーススタディで学び、経験を積むことで、投資家は成長する――つまり富を手に入れる――ことができる。なぜ株式の世界に入ったのか
多くの投資家と同様、私も経験から学び、その経験を足掛かりにして、偉大な投資家たちがどのようにしてビジネスモデルを見極めて偉大な銘柄を選ぶのかを理解した。
「そうだよ。引き出しにたくさん入れていて、必要なときに取り出しているだけさ。正直なところ、お金のことはほとんど考えていないんだ。無一文から始めて投資に成功して、本当はもう働く必要がないんだけどね。仕事をしているのは単に楽しいから。銘柄を選択するのが好きなんだ」人生の決定的瞬間
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