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ウィザードブックシリーズ Vol.209

プライスアクションとローソク足の法則
足1本の動きから隠れていたパターンが見えてくる

2013年8月発売/A5判 638頁
ISBN978-4-7759-7176-5 C2033
定価 本体5,800円+税

著 者 アル・ブルックス
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子

トレーダーズショップから送料無料でお届け

目次 | 著者紹介 | 監修者まえがき | 序文

長いヒゲ、坊主、大陽線、大陰線にはすべて意味がある!
《株価指数ミニ先物、株式、FXなどすべて利用できる》

プライスアクションを極めれば、隠れたパターンが見えてくる!

成功するトレーダーになるための鍵は、機能するシステムを見つけて、それに従う ことである。フューチャーズ誌にテクニカル分析についての記事を寄稿し、25年にわ たってトレーダーとして活躍してきたアル・ブルックスは、まさに機能するシステム を見つけて、それに従い続けた人である。彼はトレーダーとしてのキャリアのなか で、マーケットの方向性や経済情勢に左右されずに常に利益を上げる方法を見つけだ した。本書はプライスアクションの基本とトレンドに焦点を当て、そのプライスアク ションを利用してマーケットでトレードする具体的方法を示し、そのすべてのプロセ スについて段階を追って詳しく説明している。

プライスアクションを理解し、価格チャートを1本の足ごとに読むことで、隠れて いたパターンが見えてくる。パターンというものは機関投資家が動いて初めて形成さ れるものだ。そういったパターンを発見したら、機関投資家に倣って、きつめにスト ップを置いていち早く仕掛けて、利益を手にする。真剣なトレーダーにとってはたま らない刺激だ。 本書で議論する主なテーマは以下のとおりである。

本書を通じて、基本原理を説明するのにブルックスが特に重視したのがローソク足の5分足チャート(これらはすべてトレードステーションで作成)だが、日足チャートや週足チャートについても言及している。また、本書で紹介されるプライスアクションは、株価指数ミニ先物だけでなく、株式、FX、Tノート先物やオプションのトレードにも利用できる。なお、本書に掲載されているチャートはすべてウェブサイトで見ることができる。

トレードは多くの報酬が期待できる仕事だが、勤勉さと絶対的な規律が求められる厳しい世界である。成功を手にするためには、自分のルールに従い、感情を排除し、最高のトレードだけを待ち続ける忍耐力が必要だ。この目標を達成するための第1ステップが本書である。本書を読み終えるころには、健全なシステムに従う忍耐力と規律が身につき、莫大な富を手にすることも夢ではないだろう。


■本書への賛辞

「これはすべてのデイトレーダーが読むべき本だ。トレードをかくも簡単で分かりや すく、かつ親しみやすいものにした功績は大きい。彼はトレードにはルールはなく、 ただガイドラインがあるのみと説く。これによってマーケットへのアプローチは基本 的な常識が物を言う世界であることを改めて教えられた気がする。トレードでの成功 を手にしたいトレーダーにとっての必読書である」――ノーブル・ドラケルン (SpeculatorAcademy.com の創始者で、『トレード・ライク・ア・プロ』『ウィニン グ・ザ・トレーディング・ゲーム』の著者)

「成功は集中したエネルギーの関数である――これはある偉大なトレーダーがかつて 私に言った言葉だ。アル・ブルックスはまさにこれを体現した人物である。眼科医と して成功していたにもかかわらず、デイトレーダーに転身したブルックスがトレー ダーとして成功したのは、日々のプライスアクションに集中的に取り組んだからにほ かならない。生まれながらの教育者であるブルックスは、時間を惜しみなく使って、 日々のプライスアクションの読み方と、ほかのトレーダーも集中力と熱心ささえあれ ば彼のように成功できることを丁寧に説明している。ブルックスの本はさらっと読む べきものではない。本書では彼がボラティリティの高い今日のマーケットをどうト レードしているのかについて徹底的に掘り下げている。戦略の詳細な説明、実例、辛 口アドバイスも豊富だ」――ジンジャー・ザラ(フューチャーズ誌の発行人兼編集長)



原書

Trading Price Action Trends
by Al Brooks

著者紹介

アル・ブルックス(Al Brooks)
1950年生まれ。医学博士で、フルタイムの個人トレーダーとして約20数年の経験を持 つ。ニューイングランド地方の労働者階級出身で、トリニティ大学で数学の理学士号 を修得。卒業後、シカゴ大学プリッツカー医科大学院に進学、ロサンゼルスで約10年 間眼科医を開業していた。その後、独立したデイトレーダーとしても活躍し、ウェブ サイト(http://www.brookspriceaction.com/)では、ライブで市場の実況解説をする だけでなく、チャート分析も毎日更新している。足ごとに価格チャートを読むという 独特の手法を開発し、トレーダーのなかのトレーダーとして熱心なファンが多い。著 書に『プライスアクショントレード入門』(パンローリング)がある。

目次

目次

監修者まえがき
謝辞
本書で用いる用語
序文

第1部 プライスアクション

第1章 プライスアクションのスペクトル――極端なトレンドから極端なトレーディングレンジまで
第2章 トレンド足(陽線や陰線)、同時線、クライマックス
第3章 ブレイクアウト、トレーディングレンジ、試し、反転
第4章 ローソク足の基本――シグナル足、仕掛け足、セットアップ、ローソク足パターン
第5章 シグナル足――反転足
第6章 ほかのタイプのシグナル足
第7章 包み足
第8章 足の終値の重要性
第9章 ETFとそのインバース
第10章 2番目の仕掛け
第11章 遅い仕掛けと逃した仕掛け
第12章 パターンの進化

第2部 トレンドラインとチャネル

第13章 トレンドライン
第14章 トレンドチャネルライン
第15章 チャネル
第16章 ミクロチャネル
第17章 水平ライン――スイングポイントとそのほかの鍵となる価格水準

第3部 トレンド

第18章 トレンドのトレード例
第19章 トレンドにおける強さのサイン
第20章 ツーレッグ

第4部 一般的なトレンドパターン

第21章 スパイク・アンド・チャネル・トレンド
第22章 トレンドを伴うトレーディングレンジ日
第23章 寄り付きからのトレンドと小さなプルバックを伴うトレンド
第24章 反転日
第25章 トレンドが再び始まる日
第26章 ステア――幅広のチャネルトレンド



監修者まえがき

 本書は、元眼科医で個人投資家のアル・ブルックスの手による“Trading Price Action Trends : Technical Analysis of Price Charts Bar by Bar for the Serious Trader”の邦訳である。ブルックスの著書としては日本でもすでに『プライスアクショントレード入門』(パンローリング)が出版されており、多くの読者の方に好評をいただいているようだ。本書は『プライスアクショントレード入門』の原書の高い評価を踏まえて書かれた続編であるが、引き続き一貫して短期の時間枠でのトレードを扱っている。

 さて、ブルックスの見立てによれば、現在のマーケットを支配しているのは機関投資家が実行する高頻度売買のコンピュータープログラムであり、その他のトレーダーはそうした機関投資家の動向に注意を払う必要があるということになる。果たして実際の市場がブルックスの指摘するような極端な構造になっているかどうかについては、人によって異論があると思うが、米国でも日本でも、コンピュータープログラムを利用したトレードの興隆が、この10年ほどの間に価格変化の微視的な振る舞いをまったく変えてしまったことは、紛れもない事実である。

 このため、以前に流行したような、類型化されたセットアップやトリガーを利用した比較的ゆっくりした短期売買の手法に依存していた裁量トレーダーは、自分のトレードスタイルを変えていなければ徐々に淘汰される運命にあった。このように、市場とは常に変化していってしまうものであり、したがって、私たちは、そもそも市場の移り変わりの影響を受けない投資戦略を実行するか、あるいは過去の成功体験に拘泥することなく環境の遷移に適合していく柔軟性を持つしか生き残るすべはない。

 ところで、本当にマーケットがブルックスの指摘するようにコンピューターに支配されているならば、私たちがそれと同じフィールドで戦えばこちらに勝ち目はない。市場での弱者である私たちには、何らかの方法で強者であるプログラムトレードをアウトレンジする戦術が不可欠だ。ここで、情報が少なかった昔とは異なり、機械的な高頻度売買について知りたければパブリックになっている論文を読めばよい。これらはさまざまな研究機関のレポジトリや公的なデータベースにアクセスすれば大量に手に入る。これが情報の収集と分析である。そして次のステップとして、具体的な方法論を選ぶ必要がある。ブルックスの説くプライスアクションに依拠したトレード手法は、その方法論の選択肢の一つなのだ。そうした視点で本書を読んでいただければ、読者にとってより有益な多くの発見があるものと思われる。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山下恵美子氏は分かりやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

2013年7月
長尾慎太郎


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序文(一部抜粋)

 プライスアクションについてトレーダーが書いた包括的な本がないのには理由がある。多大な時間がかかるうえ、経済的な見返りはトレードに比べると少ないからだ。3人の娘も大学院に入り、私の心にはぽっかり穴が空いた。この心の隙間を埋めるために本書を書こうと思い立ったわけである。もちろんこれは素晴らしいプロジェクトでもある。最初は『プライスアクショントレード入門――足1本ごとのテクニカル分析とチャートの読み方』(パンローリング)の初版を改訂しようと思ったのだが、それを読み返しているうちに、改訂はやめにして、私が市場をどう見て、トレードしているかを詳しく書くことにした。私はいわばあなたにバイオリンの弾き方を教えているようなものである。トレードで生計を立てるために必要なことはすべてこれらの本のなかに書いてあるが、トレードを学ぶために無数の時間を費やすかどうかはあなた次第である。1年にわたってウェブサイト(
http://www.brookspriceaction.com/)で多くの質問に答えてきて、自分のアイデアをより明確に表現する方法があることに気づいた。それはプライスアクションについての本を書くことである。前著はプライスアクションの読み方に焦点を当てたが、本シリーズはプライスアクションを使ってトレードする方法に焦点を当てた。最初は1冊にまとめるはずだったが、前著の4倍もの文字数になったため、ジョン・ワイリー&サンズは3冊のシリーズにしようと提案してきた。シリーズ第1作目の本書はプライスアクションの基本とトレンドに焦点を当て、2冊目はトレーディングレンジと注文管理およびトレードの数学に、そして最後の3冊目はトレンドの反転、デイトレード、日足チャート、オプション、そしてすべての時間枠における最良のセットアップに焦点を当てた。チャートの多くは『プライスアクショントレード入門』(パンローリング)にも登場するが、そのほとんどはアップデートし、議論も大幅に手直しした。前著(12万文字)と本シリーズ(57万文字)でオーバーラップするのはわずか5%なので、読者は本シリーズをまったく新しいものに感じるはずだ。

 本シリーズを書いた目的は、慎重に選んだトレードがなぜ素晴らしいリスク・リワード・レシオを提供してくれるのかについて説明することと、セットアップから利益を生みだす方法を提示することである。本シリーズはプロのトレーダーやビジネススクールの生徒にとって興味深いものであると同時に、トレードを始めたばかりのトレーダーにとっても何らかの役立つアイデアが得られるものであってほしいと思っている。プライスチャートはだれでも見るが、大概はさっと目を通す程度で、何か特定のあるいは限定的な目的を持って見るのが普通だ。しかし、どのチャートも信じられないくらい多くの情報を含み、その情報を使って利益の出るトレードを行うことが可能だ。ただし、その情報を効果的に使うためには、トレーダーはチャート上の各足が機関投資家たちがやっていることについて何を語っているのかを時間をかけて理解する必要がある。

 大きな市場における90%以上のトレードは機関投資家によるものである。つまり、市場は機関投資家の集合体ということになる。機関投資家のほとんどは儲かっている。すぐに利益の出ない機関投資家は廃業するしかない。彼らは市場そのものだ。あなたが仕掛けるトレードには、あなたと反対側で利益を出しているトレーダー(機関投資家)が必ずいる。どのトレードも機関投資家がかかわっている。個人投資家による出来高の少ないトレードは、機関投資家が同じトレードを仕掛けないかぎり形成されない。あなたがある価格で買おうと思ったら、1つ以上の機関投資家が同じ価格で買おうとしないかぎり市場はその価格に達することはない。1つ以上の機関投資家が売る価格でなければあなたは売ることはできない。なぜなら、その価格で買う機関投資家と売る機関投資家がいて初めて市場はその価格に達するからである。例えば、Eミニの現在価格が1264で、あなたが売りのプロテクティブストップを1262に入れて買ったとすると、1262で売りたい機関投資家が存在しないかぎり、あなたのプロテクティブストップが執行されることはない。これはほぼすべてのトレードに対して言えることである。

 例えばEミニを200枚トレードしたとすると、それは機関投資家の取引量に当たり、あなたは事実上機関投資家と同じ立場にあるため、市場を1〜2ティック動かすことができるかもしれない。しかし、ほとんどの個人投資家はどんなに頑張ってトレードしたとしても、市場を動かすことはできない。市場はあなたのストップに達することはない。市場はあなたがプロテクティブストップを置いた価格を試してくるかもしれないが、それはあなたのストップとは無関係だ。1つ以上の機関投資家がそこで売ることが経済的に理にかなっていると信じ、別の機関投資家がそこで買うことが利益につながると信じるときのみ、市場はその価格を試してくるのである。どのティックでも機関投資家による買いと売りが存在し、どの機関投資家もそれらのトレードを仕掛ければ利益の出ることが分かっている実証されたシステムを持っている。市場の方向を支配するのは機関投資家だ。だから、あなたは機関投資家と同じ方向にトレードしなければならないのである。

 1日の終わりにその日のチャートを見て、機関投資家がその日何をしたかが分かるだろうか。答えは簡単だ。市場が上昇したのであれば、機関投資家の大半が買ったことを意味し、市場が下落したのであれば、機関投資家の大半が売ったことを意味する。市場が上昇または下落した部分を見て、すべての足を研究すれば、繰り返し形成されるパターンがあることに気づくはずだ。やがて、それらのパターンがリアルタイムで認識できるようになる。そうなれば自信をもってトレードを仕掛けられるようになる。プライスアクションは小さなものもあるため、どんな可能性にも常に心をオープンにしておくことが重要だ。例えば、ある足が前の足を下回るが、トレンドは上昇トレンドを続けているときがある。そんなときは、ビッグマネーがその前の足の安値かそれを下回る価格で買っていると思わなければならない。これは経験豊富なトレーダーの多くがやっていることである。彼らは弱小トレーダーたちがストップアウトして損失を出す価格で、あるいは市場が下落すると思って売っている価格で買うのである。強いトレンドは押すことが多く、そんなときビッグマネーは売るのではなく買うというアイデアに慣れてくれば、以前は間違ったことだと思っていたビッグトレードにありつけることになる。それほど深刻に考え込むことはない。市場が上昇しているのなら、機関投資家は買っているのだ。あなたがロングを損切りしたほうがよいと思うときでも買っているのだ。あなたの仕事は彼らの動きに従い、あなたの目の前で起こっていることを受け入れることである。直観に反するかどうかなど問題ではない。重要なのは、市場が上昇している、だから機関投資家たちの大部分は買っている、だからあなたも買う、ということなのである。

 機関投資家たちは一般にスマートマネーだ。つまり、彼らはトレードで生計を立てられるほど賢明で、毎日大きく売り買いしているということである。テレビは投資信託会社、銀行、ブローカー、保険会社、年金ファンド、ヘッジファンドなどの伝統的な機関投資家を機関投資家と呼んでいる。彼らは出来高の大部分を占め、ファンダメンタルズでトレードする。日足チャートや週足チャート、あるいは日中の大きなスイングの方向性を決めるものは彼らの売買である。10年かそこら前までは、トレードの意思決定や大部分のトレードは賢明なトレーダーによってなされていたが、今ではコンピューターがその役割を担うようになった。彼らは、人間を介することなく経済データを瞬時に分析し、その分析に基づいてすみやかにトレードを仕掛けるプログラムを持っている。プライスアクションの統計分析に基づいてトレードを仕掛けるコンピュータープログラムを使って大量に売買を行う会社もある。今ではコンピュータートレードは売買の70%を占めるようになった。

 コンピューターは意思決定が得意で、チェスもやる。ゲイリー・カスパロフは長年にわたりチェスの世界チャンピオンだったが、1997年にコンピューターとの対戦に負けた。また、『ジェパディ!』(アメリカのクイズ番組)で勝つことは株のトレードよりもはるかに難しいと言われているが、『ジェパディ!』で過去最高の勝ち抜き記録を持つケン・ジェニングスは2011年にコンピューターに打ち負かされた。コンピューターが機関投資家のトレードの最高の意思決定者となる日はそう遠くはないだろう。

 プログラムは客観的な数学的分析を使っているので、支持線や抵抗線はより明確に決定される。例えば、正確な数学的ロジックによる取引が増えれば、メジャードムーブの予測は以前よりも正確に行えるようになるはずだ。また、プログラムが日足チャート上の小さな押し目で買えば、狭いチャネルは長期化するだろう。しかし、多くのプログラムが同じキー水準でロングを手仕舞ったり、売ったりすれば、市場はより速くそして大きく下落するかもしれない。物事は劇的に変化するのだろうか。おそらくはそうはならないだろう。なぜなら、すべてが手動で行われているとき、従来と同じ一般的な力が働いているからだ。しかし、トレードから感情が排除されるにつれて数学的完全性へと近づいて行くことは確かだ。プライスアクションの統計分析に基づいてトレードを仕掛けるコンピュータープログラムを使って大量に売買を行う会社が市場の動きに対する関与をより増大させ、コンピューターを使って市場を分析しトレードを仕掛ける伝統的な機関投資家たちがますます増えている今、機関投資家という言葉はあいまいになってきている。個人トレーダーとしては、機関投資家は多くの売買を行いプライスアクションに重大な貢献をする別の実体ととらえたほうがよいだろう。

 こうした売り・買いのプログラムは出来高の大部分を占めるので、どのチャートもこれらによって作られているといっても過言ではなく、また個人投資家にトレード機会を提供してくれるのもこうしたプログラムだ。シスコシステム(CSCO)の決算発表が良かったため株価が上昇しているとする。もしあなたが株を長く保有したいと思う投資家なら、伝統的な機関投資家がやっていることをやる必要がある。つまり、シスコを買え、ということである。しかし、デイトレーダーなら、ニュースは無視して、チャートを見なければならない。なぜなら、プログラムは純粋に統計をベースとするファンダメンタルズとは無関係なパターンを作りだすが、大きなトレード機会を提供してくれるからだ。次の数カ月にわたる株価の方向性とおおよその目標水準を決めるのはファンダメンタルズをベースにトレードを仕掛ける伝統的な機関投資家だが、その目標価格までに達する道筋とその動きの高値・安値を決めるのは、統計分析をベースにデイトレードや短期トレードを仕掛ける会社である。マクロレベルでも、ファンダメンタルズは良くても概算値しか分からない。1987年と2009年の株価大暴落を振り返ると、どちらも株価の大幅な下落と急騰を招いた。しかし、ファンダメンタルズはその短期間のうちにそれほど大きく変わってはいない。どちらのケースも、月々のトレンドラインを若干下回る程度に落ち込み、そこから大きく反転した。市場が下落したのは認識されたファンダメンタルズによるところが大きいが、下落の程度を決めたのはチャートだったのである。

 どの時間枠でも、どの市場でも繰り返し現れる大きなパターンがある。例えば、トレンド、トレーディングレンジ、クライマックス、チャネルなどがそうだ。また、直近の2〜3本の足のみに基づく小さなトレード可能なパターンもたくさん存在する。本シリーズはトレーダーがチャート上に現れるあらゆることを理解するための包括的なガイドであり、利益の出るトレード機会を増やし、負けトレードを避けることを目的とするものだ。

 私からの最も重要なメッセージは、絶対的に優れたトレードに集中し、絶対的に最悪のセットアップを避け、少なくともプロテクティブストップ(リスク)と同じ大きさの目標値(リワード)を設定し、トレードする株数を徐々に増やしていくことである。各セットアップの背景にある理由は私の意見にすぎず、なぜそのトレードがうまくいくのかについての理由は完全に間違っているかもしれないが、そんなことは関係ない。重要なのは、プライスアクションを読むことはトレードの非常に効果的な方法であるということである。物事がなぜそうなるのかについてこれまでいろいろと考えてきたが、私は自分の説明が正しいと思っているし、その説明によって自信をもってトレードを仕掛けることができる。しかし、そういった説明はトレードの仕掛けとは無関係で、正しいかどうかは私にとっては重要ではない。私は市場の方向性についての意見を瞬時に変えることができるし、もっとロジカルな理由が見つかれば、あるいは自分のロジックに欠点を発見すれば、なぜ特定のパターンがうまくいくのかについての意見を変えることもできる。私が意見を提供するのは、それが理にかなっているように思えるからであり、読者が特定のセットアップを自信をもってトレードする手助けになると思うからであり、それらが知的刺激を与えてくれるものだからである。しかし、プライスアクショントレーダーにとって私の意見など不要だ。

 本シリーズは非常に細かく書かれており、読むのは若干難しいため、価格チャートの読み方をできるだけ多く学びたいと思っている真剣なトレーダー向きだ。しかし、本シリーズで提供する概念そのものはどういったレベルのトレーダーにも役立つものである。本シリーズにはロバート・D・エドワーズ、ジョン・マギーの『マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』(パンローリング)などによる標準的なテクニックがたくさん含まれているが、より重点を置いたのはそれぞれの足である。それぞれの足に注目し、それらが提供する情報がリスク・リワード・レシオを大幅に向上させることができることを示していく。1つのチャートにつき3つか4つのトレードに注目する本が多いが、それはチャート上のほかのことは理解し難く、無意味でリスキーであることを意味する。その日に形成されるどのティックからも何かを学べるはずであり、各チャートには明らかに良いトレードだと分かる2〜3のトレード以外にも偉大なるトレードがいくつも隠されているはずだ。ただし、これを発見するにはプライスアクションを理解する必要があり、どの足も無視できないほど重要である。顕微鏡が教えてくれるものは、最も重要なことのなかには非常に小さなこともあるということである。だから、私は何千という売買を実際に行うことでトレードを学んできた。

 私はチャートを足ごとに読み、それぞれの足が私に語りかけてくるいかなる情報にも耳を傾ける。なぜならすべてが重要な情報だからだ。足が引けるたびに、トレーダーは「今何が起こったのか」と自らに問いかける。ほとんどの足についてはトレードするに値するものは今のところは何もないので、理解する必要はないと結論づける。そして、もっと明確で大きなパターンが現れるのを待つ。彼らはまるで足が存在しないと思っているかのようだ。あるいはそれは機関投資家のプログラムなので、個人トレーダーにはトレード不可能なものとして無視してしまう。このとき、彼らは自分たちが市場の一部であることを忘れている。しかし、1日を構成するのはこの瞬間瞬間なのである。ところが出来高を見てみると、彼らが無視している足は、彼らがトレードに用いる足と同じだけの出来高を示している。それらの足では明らかに多くの売買がなされているが、それがあたかも存在しないかのような振りをしている可能性があることに彼らは気づかないのである。これは現実を否定することにほかならない。売買は常に形成されているのである。トレーダーとしては、それがなぜ形成されるのかを理解し、そこからお金を稼ぎだす方法を見つけだすことが重要だ。市場が語りかけてくることを学ぶのは時間がかかるうえ難しいことではあるが、それこそが成功するトレーダーになるための基礎を与えてくれるのである。

 ローソク足について書かれた本はパターンを暗記させようとするものが大部分だが、本シリーズでは、特定のパターンがなぜトレーダーにとって信頼のおけるセットアップになるのか、その理由を説明する。用いる用語のなかにはテクニカルアナリストとトレーダーとではまったく意味が異なる言葉もあるが、私は本シリーズはトレーダーの視点に立って書いている。多くのトレーダーは本シリーズに書かれていることはほぼすべて理解していると思うが、プライスアクションを私のようにうまく説明できる人はいないのではないかと思っている。成功するトレーダーになるための秘訣などない。それぞれに名前の付いた一般的なセットアップを知ることだけである。彼らはほぼ同じときに売り買いし、同じスイングをとらえ、一つひとつのトレードには彼らなりの仕掛ける理由がある。彼らの多くは特定のセットアップがなぜ機能するのかを知る必要すら感じることなくプライスアクションを直観的にトレードする。彼らにはプライスアクションに対する私の理解と考え方を楽しみながら読んでもらいたい。そして、それがすでに成功しているトレードをさらに向上させる洞察を与えるものになればと願っている。

 トレーダーの目標は、それぞれの性格にあったスタイルでトレードの利益を最大化することである。性格に合ったスタイルでなければ、トレードで長期的に利益を出すのはほとんど不可能だと思う。トレーダーの多くは成功するまでにはどれくらいかかるのだろうと思い、たとえ数年であれ、しばらくの間は損をしても致し方ないと思っている。しかし私の場合、成功するまでに10年以上かかった。われわれには考えなければならないこともあれば、気を散らす誘惑も多い。したがって、人によって成功するまでにかかる時間は異なる。しかし、トレーダーは障害を乗り越えなければ、常に利益を出すトレーダーにはなれない。私にも解決しなければならない大きな問題がいくつかあった。その1つは3人の娘たちを育てあげることである。私の頭のなかは常に彼女らのことでいっぱいで、父親としてやらなければならないことを常に考える毎日だった。しかし、娘たちも成長し、独立したので悩みは1つ消えた。次の問題は、私のさまざまな人格的特徴を現実で不変のもの(少なくとも、変えないでおこうと決心した)として受け入れることだった。これには長い時間を要した。そして最後が自信の問題だ。私はあらゆることにおいて傲慢なほどの自信家だった。私を知る人はこの話を聞けば驚くだろう。実は私は心の底で、長年にわたって使える利益の出るアプローチなんて見つかりっこないと思っていたのだ。だから、私は多くのシステムを買い、無数のインディケーターやシステムを書いて検証し、多くの本や雑誌を読み、セミナーにも通い、家庭教師を雇い、チャットルームに参加したりした。成功したトレーダーだと言う人と話をしたこともあるが、彼らは口座報告書を見せてくれることはなかった。おそらく彼らは教えることはできても、自らトレードしたことはないのではないかと思っている。トレードの世界では、知る者は語らず、語る者は知らない、というのが一般的だ。

 これらは非常に役立った。なぜなら、これらは成功するためにやってはならないことを教えてくれたからだ。トレーダーでない人はチャートを見てトレードは簡単だと思うはずであり、これはトレードの魅力の1つでもある。1日の終わりにチャートを見れば、仕掛けポイントと手仕舞いポイントが手に取るようにはっきりと分かるが、これをリアルタイムでやるとなるとそれほど簡単ではない。安値で買いたいと思うのは自然な傾向だが、安値で買ってもそれっきり上昇しないこともある。そんなとき、初心者は大きな損失を避けるために損切りするが、それは次から次へと負けトレードを誘発し、口座を破産へと導く。損切りの幅を広げることでこれはある程度解決できるが、すぐに大きな損失を被ることになり、口座は破産し、そのアプローチは怖くて使えなくなってしまう。


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