2013年6月発売/四六判 438頁
ISBN978-4-7759-7175-8 C2033
定価 本体2,800円+税
著 者 ジャック・D・シュワッガー
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山口雅裕
市場の働きに関する投資モデルや理論では、たいてい現実に合っているかどうかよりも便利さが最優先される。だが、多くの定評ある投資理論や市場モデルが現実世界でも機能すると主張するなら、それはとんでもない間違いだ。証拠に基づかない仮定や誤った理論、非現実的なモデル、認知的バイアス、感情的な弱みや無根拠な信念が相まって、投資家たちは初心者もプロも方向性を見失いがちだ。
この魅力的な新著で、『マーケットの魔術師』(パンローリング)シリーズというベストセラーの著者ジャック・シュワッガーは、最も広く信じられている市場の格言や資金管理の誤解、投資家の不合理な行動に照準を合わせている。効率的市場仮説から、上げ相場で買って下げ相場で売れという説まで、シュワッガーは見当外れの考えをひとつずつ覆していく。彼は過去のデータや健全な常識で十分に裏付けをしながら、定評ある投資理論やモデルの中核を成す仮定や誤った考えの真実を暴き、一般投資家が犯す間違いの多くを探究している。本書で、あなたは以下の主張の根拠を見つけるだろう。
●専門家の意見はダーツを投げる有名なチンパンジー以上に信頼できるものではない。
●市場は効率的ではない。
●ボラティリティが低いからといって、リスクが低いことにはならないし、それが高いからといって、リスクが高いことにもならない。
●市場価格は正規分布をしていない。
●市場が好調なときに株式投資をしても、市場平均を上回るリターンを得る助けにはならない。
●リターンが最も良いファンドへの集中投資は、健全な戦略ではない。
●過去のリターンは将来のパフォーマンスの信頼できる指標にはならない。
●ヘッジファンドのポートフォリオ戦略が、伝統的なポートフォリオの手法よりもリスクが高いということはない。
●バリュー・アット・リスクは最大リスクを測る良い指標ではない。
●パフォーマンスが優れているからといって、必ずしもマネジャーの手腕が優れていることにはならない。
シュワッガーは単に幻想を打ち砕くだけでなく、非常に多くの仕事をしている。伝統的投資から代替投資まで、現実の投資における洞察や手引きについて、彼は再考を迫る。また、投資顧問やトレーダーとしての長年の経験を生かして、ポートフォリオ管理、リスク評価、投資対象の選択、ヘッジファンドへの投資、投資タイミングなどを含めて、基本から上級レベルに至る多くの話題について、極めて貴重な教訓を提供してくれている。本書はあらゆるレベルの投資家やトレーダーにとって、現実の市場で欠かせない知 恵や投資手法の貴重な情報源となるであろう。
「非常に野心的な本で、すべての点で成功している。ひとつの考えだけを、さまざまな逸話で繰り返し説明する本とは違う。リスクと投資について、理論と現実の両面から極めて幅広い分野を取り上げている。この本は今日の投資の専門家が直面する難しい問題の多くを扱っているが、投資や金融の予備知識がない人でも理解できるように書かれている」――コルム・オシア(コーマック・キャピタルの共同創立者兼最高投資責任者)
「私が金融市場で働き始めたときに、この本が入手できていたら、その後50年間の学習期間の多くを節約できたに違いない。投資や市場の実際を理解するための優れた案内書だ」――エドワード・O・ソープ(『ディーラーをやっつけろ』[パンローリング]、『ビート・ザ・マーケット』の著者)
「ジャック・シュワッガーの新著は、投資の管理についてめったに明かされない事実や神話の多くを、手際よくまとめている」――ジャフリー・ウッドリフ(クォンティタティブ・インベストメント・マネジメント共同創設者兼会長兼CEO)
「投資する前には調査をして、何がうまくいって何がうまくいかないかを知っておくことが大事だと考えるなら、シュワッガーの本を読むと役に立つだろう」――エド・スィコータ(『マーケットの魔術師』にも登場した伝説的なトレーダー)
原書 Market Sense and Nonsense: How the Markets Really Work (and How They Don't) by Jack D. Schwager |
まえがき ジョエル・グリーンブラット はじめに
第1部 市場とリターンとリスク第1章 専門家のアドバイスコメディ・セントラルかCNBCか エルブス指数 有料アドバイス 投資の知恵
第2章 非効率的市場仮説
第3章 過去のリターンの圧力
第4章 間違ったリスク評価
第5章 リスク以外にも関係するボラティリティ、
レバレッジ型ETFの場合
第6章 運用実績の落とし穴
第7章 試算(プロフォルマ)による運用成績の意味と無意味
第8章 過去のパフォーマンスの評価法
第9章 相関係数―事実と誤解 |
第2部 投資対象としてのヘッジファンド第10章 ヘッジファンドの起源
第11章 ヘッジファンド入門
第12章 ヘッジファンドへの投資―外見と実際
第13章 ヘッジファンドに対する警戒―人間であるが故の誤謬
第14章 ファンド・オブ・ヘッジファンズのパフォーマンスが単一のヘッジファンドに劣るという矛盾
第15章 レバレッジの誤った考え
第16章 マネージドアカウント―投資家が利用しやすい代替手段 第2部に対するあとがき―ヘッジファンドのリターンは幻想か?
第3部 重要なのはポートフォリオ第17章 分散投資―銘柄では不十分な理由分散投資の利点 分散投資―どれだけ増やせば十分か? 偶然性のリスク 銘柄固有のリスク 分散投資の条件 投資の知恵
第18章 分散投資―増やすほど劣るとき
第19章 ロビン・フッド流の投資
第20章 ボラティリティが高いことは常に悪いのか?
第21章 ポートフォリオ構築の原則 終わりに
付録A オプション―基本を理解する |
一般に、トレードシステムのリビューにおいても、投資先ファンドの選定においても、対象となる検証結果やトラックレコードを、相対的にあるいは絶対的に評価する必要がある。だが、それを客観的に判断する方法については、ファンド・オブ・ヘッジファンズに関連する業務に従事する関係者を除き、これまでは明確な指針が一般には知られていなかったのである。私の知るかぎり、個人投資家向けの書籍でこうした問いに正面から答えたのはシュワッガーが初めてである。
さらに、彼の解答は同時に「どうすればこの不確実性の高いマーケットで手堅く利益を上げることができるのか?」という、投資家にとっての最大の悩みについてもひとつの見事な解決法を示している。本書13ページの「まえがき」で、『グリーンブラット投資法』や『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」』(パンローリング)の著者であるジョエル・グリーンブラットが「彼がもっと早くこの本を書いてくれたら……」と述べているが、私もまったく同感である。
ここで、シュワッガーが本書で示した、優れた投資戦略やファンドをロジカルに選択する方法が画期的なのは、それが使い手の努力や経験を一切必要としないところにある。通常、自分自身の裁量でトレードする場合には、マーケットに打ち勝つために相当の努力や期間を要する。現に私たちはそのためにこれまで多くの犠牲を払ってきた。しかし、他者が運用するファンドに投資したり、良いトレードシステムを選択するだけなら、ただ単に本書を読むだけで良いのである。こんな楽な話はないではないか。今日では、良いトレーダーになるための方法論や理論モデルはすでに存在するものの、それでも必ずしもだれもがマーケットの魔術師になれるわけではない。しかし、少なくとも合理的で堅実な投資家となって資産を増やすことは、シュワッガーの教えによってだれでも可能になったのだ。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山口雅裕氏は分かりやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2013年6月
長尾慎太郎
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