『ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード
世界一シンプルな売買戦略』
2016年1月発売/A5判 142頁
ISBN978-4-7759-7201-4 C2033
定価 本体2,800円+税
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著 者 マルクス・ヘイトコッター
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子
シンプル戦略の特長とは、以下のとおりである。
監修者まえがき 第1章 「シンプル戦略」はあなたのトレードでどのように役立つか 第2章 あなたのトレードの半分が負けトレードの場合、あなたはお金を儲けることができるだろうか? 第3章 「シンプル戦略」がパワフルなわけ
第4章 「シンプル戦略」を行うためのチャートの設定
第5章 シンプル戦略のルール
第6章 そのほかの市場におけるレンジバーの設定
第7章 時間足によるトレード 第8章 FXをシンプル戦略でトレードする方法 |
第9章 シンプル戦略による株式とETFのトレード 1.ギャップ ギャップが損切りよりも大きいときはトレードは見合わせる ギャップが埋まったあとで仕掛ける その取引時間の最初の足がリバーサルバーの場合、ギャップは無視する(アグレッシブな戦略) 2.株式の仕掛けルールの変更
第10章 シンプル戦略によるスイングトレード 第11章 シンプル戦略でトレードして期待できること
第12章 落とし穴とその回避方法 第13章 次のステップ
第14章 資料
第15章 作者紹介
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一般にトレード手法をロジカルに構築する際には、マーケットにおける因果関係や潜在的メカニズムの理解を避けては通れない。すなわち、値動きやボラティリティの増減という結果に対する原因を探し、原因と結果における因果関係(≠相関関係)を客観的に明らかにし、それに基づいてモデル化を行うことでのみ問題は解決される。したがって、「このようにトレードしたら、こんなに儲かりました」と書いてあるだけ、つまり、トレードルールと損益との相関関係を間接的かつ主観的に主張しているだけの相場書は、何百冊読んでも単に時間の無駄である(逆に言えば、トレードルールは本書にあるような簡単なもので十分だ)。
さて、本書で一番興味深いのは著者自身のことを紹介した第15章である。ヘイトコッターはトレードの知識や経験がなく、わずか1年分の生活費の蓄えしかなかったにもかかわらず、無謀にもIBMでの仕事を辞め、専業トレーダーになった。そして、通信講座、投資セミナー、情報商材、ソフトウェアに大金をつぎ込み、多くの時間と情熱をトレードに費やした。しかし、トレード口座の資金はどんどん減り続けた。これを読んでいる私たちは、それがあまりに典型的な間違いなので思わず笑ってしまうが、本人はいたって真剣そのものだったのだ。この話の続きは本文を読んでいただきたいが、彼をその窮状から救ったのがここで紹介されているトレード手法である。
ところで、私が個人的に知る専業トレーダーたちは皆、高いトレード技術を身につけ、長い経験を積んでからフルタイムの仕事を辞めたか、あるいは一生分の生活費を貯めるなどして、トレードで一銭も稼げなくても困らない状態を確保してから専業生活に入っている。著者が裏付けを何も持たずにトレードを始めたのはあまりにも軽率な行動であり、失敗は必至であった。もし読者のなかで専業トレーダーを志向する方がおられたら、彼の轍を踏まぬよう本書を読んでからでも遅くはない。著者が本当に言いたい“The Simple Strategy”とは、具体的なトレード手法のことではなく、「トレードをするならしっかりと事前に準備してからにせよ」という教訓のことなのではないか。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山下恵美子氏は分かりやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2015年12月
長尾慎太郎
●明確な仕掛けルール 「シンプル戦略」でトレードするとき、予測の入る余地は一切ない。仕掛けルールはインディケーターに基づいているため、黒白はっきりしている。仕掛けは、MACD(移動平均収束拡散法。通称、マックディー)がゼロラインを上回っているか否かと、RSI(相対力指数)が70を上回っているか否かによって決まる。これによって仕掛けと執行が簡単になる。これが「シンプル戦略」 と呼ばれるのはこのゆえんである。
●明確な手仕舞いルール 「シンプル戦略」でトレードするとき、仕掛ける前でもいつ手仕舞いすればよいのかが分かる。つまり、そのトレードに対するリスクが分かるということである。リスクを知ることは正確なポジションサイジングとマネーマネジメントにとって重要だ。さらに、いったん注文が執行されればトレードは自動モードにすることができるため、トレード管理は最低限でよい。管理をしすぎて失敗するトレードが多いことを考えるとこれは大変重要だ。しかし、「シンプル戦略」の手仕舞いについてはこの問題はない。これは「ロンコ ロティサリー・バーベキューオーブン」のようなもの――セッティングしたら、放っておけばよい。
●小さな日中トレンドを利用する トレーディングの手数料の低下とコンピューター化されたトレードによって、いまや長時間にわたる素晴らしい日中でのトレンドは消えた。午前中に仕掛けて午後に手仕舞うといった時代は終わったのだ。最近のトレンドは短時間で終わり、市場は一瞬のうちに反転する。しかし、「シンプル戦略」では、小さな日中に現れるトレンドを利用することができる。私たちがとらえようとするのは、1日の平均値幅のたった15%だけだからだ。これについてはのちほど説明する。
●高度なトレードソフトウエアは不要 あなたが必要なのは「基本的な」チャート作成機能を持つチャートソフトのみ。ただし、チャートソフトには、レンジバー、ボリンジャーバンド、MACD、RSIを描ける機能が備わっている必要がある。今日入手可能なチャートソフトの90%以上はこれらの機能が備わっているため、特殊なインディケーターが表示できるソフトウェアや高価なチャートソフトを新たに買う必要はない。
つまり、「シンプル戦略」はあなたのトレードをシンプルにしてくれるのである。
この戦略は、私のトレードに大いに貢献してくれた。「シンプル戦略」を使う前、私はインディケーターオタクだった。チャートにいろいろなインディケーターを表示させて、値動きそのものを見ようともしなかった。しかも、これらのインディケーターが役立ったことは一度もない。
これらのインディケーターは私を分析まひに陥らせただけだ。
分析まひはトレーダーがよくかかる病気だ。それは、あまりにも多くのことを分析しすぎて混乱してしまうという病気だ。私もこの病気にかかった。ディスプレイ上のインディケーターを見ると、その半分は買いを示し、残りの半分は売りを示していた。
しかし、やがて私は3つのインディケーターの有効な組み合わせに気づいた。こうして「シンプル戦略」は生まれた。
もう分析まひとはおさらばだ。明確な仕掛けルールと手仕舞いルールさえあればよい。
それでは始めよう。
私はずっとトレードにあこがれていた。私が最初にトレードをやったのは高校生のときだ。私は自分の「リスク資産」をすべて投じて、ドイツメーカーのフォルクスワーゲン(VW)の株を1株買った。それは50マルクだったと思う。これはおよそ50ドルに相当する。こうして私は最初の株式の栄誉あるオーナーになった。
それは1989年のことだった。まだ携帯電話は持っていなかった。携帯電話が存在することすら知らなかった。それにリアルタイムデータを備えたコンピューターもなかった。当時の私のコンピューターはCommodore64で、チャート作成機能もなかった。それで私は1日に最低2回はブローカーに電話して、「儲けはいくらになった?」と聞かなければならなかった。
3日目、ブローカーは、「マーカス、このトレードでいくら稼ぎたいんだい?」と聞いてきた。しばらく考えて、「10ドル稼ぎたい。そうすれば初期投資の20%の稼ぎになるから」と私は言った。するとブローカーは、「よーし分かった。明日私のオフィスに来なさい。そしたら10ドルあげよう。その代わり、もう電話してくるのはやめてくれないか」。
これが私の最初のトレードだった。私はこのトレードで10ドルを手にした。
しかし、デイトレードで生計を立てるには資金が不足していることに私は気づいた。それで、大学に入り、ビジネスとコンピューターサイエンスの学士号を修得し、仕事に就いた。私はトントン拍子に出世し、33歳でドイツのIBMの最年少の副社長になった。人生はうまく回っていた。IBMのヨーロッパ、中東、アフリカのグローバスサービスの担当になり、ヨーロッパや中東にビジネスクラスで出張に行き、豪華な車をレンタルし、大手航空会社、レンタカー、ホテルのプラチナ会員になり、人生を謳歌していた。
2001年、すべてが変わった!
しかし、出世街道も楽ではなかった。週6日働き、家には週末に数時間帰るだけだった。土曜日に家に帰って、日曜日にはまた出勤ということもしばしばだった。友人や家族といった人生で本当に大切なものに費やす時間などなかった。激しい出世競争で私は心身ともに疲れ果てていた。
2000年4月、インターネットバブルが崩壊した。IBMグローバルサービスでの仕事も次第に厳しいものになっていった。そして、2002年7月、IBMはプライスウォーターハウスクーパース・コンサルティング(PWC)の買収を発表し、IBMグローバルサービスとPWCは統合された。私たちはみんな「統合」が意味するものを知っていた。
IBMの在職中に貯めた貯金があったため、1年間は何もしなくても食べていける。
しかし、仕事を辞めると何もかもが劇的に変わることになるだろう。
ライフスタイルを変えなければならない。アパートに移り、上等なドイツ車を売って中古車に買い替え、素敵なレストランでの食事もやめて、家で食事しなければならなくなるだろう。それにもう旅行にも行けない。クーポンを切り抜く生活が待っている。でも、私は決心した。出世競争からは降りて、トレーダーになることを。
2002年9月、私はIBMを辞め、いろんな持ち物を売り、箱数個とベッド、テーブル、椅子4つを持ってドイツからアメリカに移った。
心身ともに消耗した。しかし、全然うまくいかなかった。私は挑戦し続けたが、努力に見合う結果は得られなかった。
通信講座、セミナー、本に大金をつぎ込み、懸命に努力して多くの時間をトレーディングアドベンチャーに注いだ。私はけっして怠け者ではないし、バカだとも思わない。しかし、何をすればよいのか、何を信じればよいのかもう分からなかった。
私のトレード口座は横ばいが続いた。少し儲かっては、損をするの連続だった。やがて口座は減少し始め、ほとんど瀕死の状態だった。そこへもってきて妻が妊娠した。
2003年4月、息子のジュリアスが6週間早く生まれた。最初の数週間は問題続きだった。医療費はかさみ、資金が底をついてきた。
私たち親子3人はほとんど家具のないアパートで暮らしていた。天国から地獄にまっさかさまとはこのことか。数年前までは出世街道まっしぐらの生活を送っていたが、フルタイムトレーダーになるという私の決断がいまや私たち家族の生活を苦しめていた。これほどひどいことになるなんて思ってもみなかった。欲しい物が買えないのは言うに及ばず、必要な物さえ買えない状態だった。私は1日の大半をコンピューターの前で過ごし、何とかうまくいくように努力し続けた。
しかし、現実は甘くはなかった。私のデイトレードは収入をもたらしてはくれなかった。
私のトレーダーとしてのキャリアもこれまでか。またIBMに戻ろうか。IBMに戻っても、立場はこれまでとは違うだろうし、収入もはるかに低くなる。そのころ、IBMはPWCとの統合によってすでに従業員のレイオフを始めていた。
1カ月に1万ドル稼ごうとするのではなくて、次のトレードに集中することにした。すると100ドル儲かり、また100ドルと儲かっていった。私は棚ぼた利益ではなくて、一貫性を重視し始めた。一貫性を重視すれば、トレードする枚数や株数を増やすことができ、1トレードにつき100ドルではなくて、200ドル、300ドル、500ドル、1000ドル儲けることができる。小さく初めて、そのあとマネーマネジメントを使って大きく増やすのだ。
そして、トレーダーとして3つのスキルが必要であることも分かってきた。
ついにやった!
市場が上昇しているのか、下落しているのか、横ばいなのかを知る簡単な方法を発見し、損切りと利益目標を使い始めた。私の目標は勝率50%を達成することだった。つまり、1トレードおきに正しければよいということだ。これで気が楽になった。
私はリラックスしてトレードできるようになった。今ではマネーマネジメントの秘訣を知っているので、小さいけれども一貫した利益を得ることに集中した。
私のトレードが好転し始めたのはそれからだ。そして、私の人生も好転し始めた。
アパートを出て、4つの寝室付きの家を買った。新車も買った。これは現金で支払った。ストレスは減り、家族と過ごす時間も増えた。
私たちのウェブサイトへのアクセスは何千にものぼり、eメールが山のように送られてきた。これほどの需要があるとは私たちは想像もしていなかった。そこで私は私を補佐してくれるチームを早急に結成する必要に迫られた。しかし、重要なのはチームが私のやっていることを忠実に再現することだった。つまり、トレーダーたちがシステマティックな方法で目標を達成するのを助け、彼らのライフスタイルを変えるということである。私たちのところにやってくるすべてのトレーダーが、隣人や友だちが私の自宅のオフィスで私の隣に座って受けるのと同じデイトレード教育が受けられなければならないわけである。
チームに加わる人は、私の目標を知り、それを達成するために全力を尽くす必要がある。
そこで私は長い時間を費やしてシステマティックなステップバイステップのアプローチを開発した。このアプローチは、今のあなたから、なりたい自分になるのを手助けしてくれるはずだ。私があなたがたに提供するのは、立証済みのデイトレード戦略、しっかりとしたリスクマネジメントやマネーマネジメントテクニック、感情をコントロールして自信をもって一貫性のあるトレードをするためのツールとテクニックだ。
私のウェブサイト(http://www.rockwelltrading.com/)ではトレーダーのためのツールをたくさん用意している。ぜひ一度立ち寄ってもらいたい。
あなたと話ができるのを楽しみにしている。
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