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ウィザードブックシリーズ Vol.234

3%シグナル投資法 だれでもできる「安値で買って高値で売る」バリューアベレージ法

3%シグナル投資法
だれでもできる「安値で買って高値で売る」バリューアベレージ法

2016年3月発売/A5判 382頁
ISBN978-4-7203-8 C2033
定価 本体1,800円+税

著 者 ジェイソン・ケリー
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山口雅裕

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目次 | 著者紹介

ドルコスト法に勝つ!
資産形成の新定番!
感情に左右されない安全で確実な運用法
個人でできる年金運用!

 2007〜2009年の金融危機で、株式市場の危険性が白日の下にさらされた。何百万人もの投資家たちは大損害をもたらしたリスクを避けつつ立ち直ろうと、今も苦闘している。彼らはどのマーケットでも通用する、明確で良識的な投資手法を待ち望んでいる。ジェイソン・ケリーがその手法を伝授する。ケリーの投資プランは楽に資産を増やせる点が最大の特徴だ。分かりやすくて、401kを含むあらゆるタイプの口座で使える。戦略の見直しは3カ月(1四半期)につき15分あれば十分だ。

 投資手法は単純であり、価格の変化に賢く対応して、機械的に安値で買って高値で売ることができる。そのため、感情に左右されて愚かな行為をしでかす心配もない。気楽に読める本書は投資業界に激変をもたらし、今後は3%シグナルが資産形成における定番となるだろう。


著者紹介

ジェイソン・ケリー(Jason Kelly)
『大化け株とレバレッジで勝つケリー流株式投資法』(東洋経済新報社)の著者。彼は毎週日曜日の朝にケリー・レターをメール配信して、多くの読者からその週で最も良い読み物だと評価されている。世界中のどこででも暮らせるようになるという夢を実現して、2002年に日本に移住し、東京から2時間ほどの地方都市に仕事場を構えている。2011年3月に起きた東日本大震災の際には、「日本に靴下を」というボランティア組織を立ち上げて、世界中から送られてきた16万足の靴下を被災者に手渡した。寄付の70%以上はアメリカからだった。被災者に寄付をしてきた差出人を見ると、教会、ガールスカウト、喫茶店、田舎町の電力部門、ウィルソン先生の4年生のクラス一同と、アメリカ文化を支える人々だと分かり、彼は自国を誇らしく思った。彼は新著やケリー・レターの執筆に力を入れている。コロラド州ロングモントでは、姉であり共同経営者でもあるエミリーと、レッド・フロッグ・コーヒー店を共同所有している。ケリーのウェブサイトは、http://jasonkelly.com/ である。

目次

監修者まえがき
謝辞
投資パフォーマンスの計算について
はじめに――投資でのとまどい

第1章 なぜマーケットでとまどうのか

予測が当てにならない環境
コイン投げによる予測
ベンチマークに勝てない根拠
ピーター・パーフェクトを呼び出す
私たちの考えと現実
この章の要点

第2章 相場の変動を利用する

3%シグナル
大きな値動きは好機
インデックスファンドへの切り替え
コイン投げのチャートラインを動かす
受動的なリバランス
この章の要点

第3章 投資パフォーマンスの目標を設定する

良いパフォーマンスとは?
変動する価格と目標との差を測る
この章の要点

第4章 何に投資すべきか

成長性なら小型株
安全資産には債券
パフォーマンスで有利なIJR
ヒーローの持ち株に勝つ
ドルコスト平均法に勝つ
30%下げたら、売りシグナルを無視
ほかのファンドを使った場合
この章の要点

第5章 このプランでの資金管理

現金残高が多いとき
一生、増減する債券ファンドの残高
「底値買い」用の口座を持つ
年を重ねるにつれて、債券残高を調整する
まとめると
この章の要点

第6章 プランの実際

四半期ごとの手続き
大切なのは経費をかけないこと
税金で考慮すべきこと
IRA(個人退職積立勘定)
典型的な証券取引口座
雇用主が提供する年金プラン
どこの職場でも役立つ3%シグナル
この章の要点

第7章 プランを実行する

セットアップ
1年目
2年目
3〜7年目
8〜9年目
10〜13年目
分析
この章の要点

第8章 幸せなシグナル

付録1――マークのプラン
付録2――ツール
付録3――権利と許可
付録4――ケリー・レター



監修者まえがき

 本書はジェイソン・ケリーの著した“The 3% Signal : The Investing Technique That Will Change Your Life”の邦訳である。ここで紹介されているのは、個別の有価証券(株式、債券)ではなく、投資信託を投資対象とした運用戦略で、自律的な成長が期待できる資産一般に幅広く応用が可能である。第3章にあるように、この戦略はもともとハーバード大学のマイケル・エデルソン教授が提案した「バリューアベレージ法」に基づいており、パフォーマンスターゲットを決めて定期的にアセットクラス別の資産配分を動かしていくものである。この方法は数学的には必ずしも最適解ではないが、単純で理解が容易であり、また意思決定の頻度が四半期に一度ときわめて実行しやすい。何より心理的にだれでも受け入れることができる満足解である。一般に意思決定の頻度が高ければ高いほど投資パフォーマンスは悪くなるので、投資判断が年に4回で済むというのは大きな長所である(個人的にはそれでも多すぎるくらいだと思う)。

 ところで、本書でもっとも興味深いのは第1章で、「市場予測はだれにもできない」という著者の主張はまったくもって真実である。実際、運用者の立場から言っても、利益を上げることと市場予測の巧拙は何の関係もないし、自身の体験を通して早い段階で市場予測の無意味を悟ることが投資家としての第一歩である。私も「予測は愚か者のやることだ、絶対にするな」と若いころに先達からきつく戒められたことを思いだす。大切なのは、市場見通しなどというあやふやなものに頼らなくとも、合理的に投資成果が上がる仕組みを作り上げることである。暇つぶしの余興としてなら別だが、市場予測はまともな投資家には無縁のものだ。いずれにせよ、どのみち投資家はマーケットの変動をコントロールできない。投資家がコントロールできるのは投資プロセスだけである。したがって、情報や手段が限定された環境下では、整合性のあるプロセスを堅持できるかどうかが成否を分ける。それは見かけ上面白くもなくワクワクドキドキ感もないが、確実性が高く数字が計算できるアプローチなのだ。つまり、私たち投資家に必要なのは、机上の空論の素晴らしい投資戦略ではなく、本書に紹介されているような一貫して実行可能な限定最適の投資戦略である。

 なお、本書は米国での運用を想定して書かれているが、日本から運用する場合にも考え方や銘柄がそのまま適用できる。ただ、投資対象の選択肢が限られる確定拠出年金(日本版401k)向けにアレンジするとすれば、はじめに、投資する債券ファンドとして、国内債券ファンドではなく信託報酬率の低いパッシブ運用のグローバル債券ファンドを選ぶこと、そして次に、株式ファンドとしてはパッシブ運用の国内株式ファンドとグローバル株式ファンドを適宜使い分けること、最後に、もし必要であれば為替ヘッジを自身のリスク嗜好に応じて適宜行うということである。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山口雅裕氏は正確な翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2016年2月

長尾慎太郎


■はじめに――投資でのとまどい

 昔の話になるが、母がある日、株式投資のアイデアを載せたリポートの山を前にして、途方に暮れて座っていた。彼女はそのひとつを私のほうに押しやって、言った。「これって、表か裏かの区別もつかない(訳が分からない)んだけど。どう思う?」と。表か裏か。あとになって、これはうまい表現だなと思った。株式市場についてのアドバイスは、半分が間違っているからだ。母は目の前にあるアイデアが理解できなかった。そして、それらを書いた人々も理解できていなかったはずだ。彼らはみんな、直感に頼っているだけだった。

 そこで、私は普通の人が株式市場を利用して利益を出すもっと良い方法がないかを調べ始めて、20年間探し続けた。私はマーケットの専門家たちの当てにならないアドバイスや、私生活にストレスをもたらす投資の誤りから彼らを解放して、成績が劣るアドバイスにお金を払いすぎない方法を教えたいと考えた。私は世評が高いプロのマネーマネジャーたちと話をし、投資に関するあらゆる本を読んで、ニュースレターも購読し、自分で本やニュースレターの執筆をして、テレビにも出演した。

 調査の結果、投資業界は巧妙なシステムでつながっていて、投資家の口座から少しずつお金が抜かれて証券会社や投資顧問業者の口座に移されていることが明らかになった。その手口はこんな具合だ。1人でやってもうまくいかないと知りつつ、銘柄選択や売買タイミングを計る危ない方法をお客に勧める。その後、1人でやるよりも高度な感じがする方法を紹介する。それらはプロが運用しているわけでもない単なる株価指数よりも実は運用成績が悪いのだが、高い報酬を要求される。

 専門家は真実を知られるのを好まないが、大切なのは価格だけである。本書を読めば、このことはけっして忘れないだろう。投資のアイデアには何の重要性もないし、専門家の相場観は気晴らしにしかならない。大切なのは投資対象の価格と、その価格が買いにふさわしいほどの安値水準にあるか、売りにふさわしいほどの高値水準にあるかだけだ。その水準は自分で分かるので、価格は1人で監視できるし、専門家の助けを借りなくても、価格と売買水準との差を見るだけで適切に対応できる。さらに都合が良いことに、その対応を自動化することもできる。計算だけで済むことだからだ。

 3%シグナルの核心は次のとおりだ。まず、四半期ごとにそこに戻すべき一定のパフォーマンスラインを設定する。そして、パフォーマンスが悪いときには、買ってその水準まで投資額を引き上げ、良いときには売ってその水準まで引き下げる。この単純なプランに一般的な株式指数を使えば、株式市場に勝つことができる。プロと呼ばれるほとんどの人が市場に負けているので、このプランは彼らよりもはるかにパフォーマンスが良いことにもなる。これは話がうますぎると思うかもしれない。また、プロもあなたにそう思ってもらいたいだろう。だが、そんなことはない。この本を読めばそれが分かる。3%シグナルを使うプランでは、年に4回、15分ほどの計算をするだけで優れたパフォーマンスを達成できる。何の利点もないマーケットのおしゃべりに一瞬たりとも自分の時間を無駄にする必要はない。

 また、ほとんどの自動化されたプランとは異なり、人には感情があり、ニュースを見て売買したくなるという側面も考慮に入れている。この衝動を抑えるために、プランでは完璧なペースで取るべき行動を示す。頻繁に売買を繰り返して混乱を生む必要はない。また、ほったらかしにしすぎて、そのファンドを見捨てた気分に陥る必要もない。自分の資産が順調に増えて、すべてうまくいっていると安心できるペースで動きさえすればよいのだ。プランでは、ポートフォリオの管理に必要なことだけでなく、感情面の欲求も満たせるように、マーケットを最大限に利用する。

 本書ではまず、株式市場で直感に従うとどうして判断を誤るのかや、いわゆる専門家たちもなぜこの弱点から逃れられないのかを説明する。そもそも、株式市場は予測をしても、妥当性がまったく得られない場であることを学ぶ。また、相場が今後どこに向かうかを予測する専門家たちを、「ゼロ・バリディティ(zero-validity。予測妥当性ゼロ)」を略して「ジーバル(z-vals)」と呼ぶことにする。

 次には、この本の優れた手法である3%シグナルを大まかに説明する。この手法で必要なのは株式ファンドと債券ファンドとシグナルラインだけだ。株式ファンドの利益成長が目標を上回っているのか、下回っているのか、あるいは目標どおりかを四半期ごとに確認すれば、株式ファンドと債券ファンドのどちらに資金を振り向けるべきかが分かる。このように、明快で感情に左右されない価格だけを利用すれば、どんなジーバルたちにもじゃまされずに、安値で買って高値で売るという、投資の神業を自動化できる。

 その後、プランの詳細に立ち入り、どんなファンドが理想的か、どうして四半期ごとに見直すのが最もうまくいくのか、プランに資金を追加するときや2本のファンド間のバランスがたまに崩れたときにどう管理するのか、そして、相場が暴落したあとの上昇時に十分な投資ができるように、特別な「売りシグナルを無視」というルールをいつ適用すべきかを学ぶ。このプランは401kも含めて、どんな退職積立勘定でもうまくいくことが分かるだろう。最後に実生活での運用を想定して、ここまで学んだすべてをまとめたプランをほかの投資手法と合わせて見ておく。

 準備はできただろうか? では、より良い投資法を探す旅に出かけよう。

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