『ワイルダーのテクニカル分析入門
オシレーターの売買シグナルによるトレード実践法』
著 者 J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア
監修者 長尾慎太郎
訳 者 井田京子
2019年3月発売
定価 本体4,800円+税
A5判 上製 206頁
ISBN 978-4-7759-7246-5 C2033
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本書は、すでにアメリカの各市場で広く使われているRSI(相対力指数)に加え、6つの独創的かつ画期的なシステム(パラボリックタイム/プライスシステム、ボラティリティシステム、ディレクショナルムーブメント・システム、トレンド・バランス・ポイント・システム(TBPシステム)、リアクショントレンド・システム、スイングインデックス・システム)を紹介している。その他にも、CSI(商品選択指数)や資金管理にも言及している。
ワイルダーは「1つのシステムで方向性がある場合もない場合も、安定して利益を出すことのできるものは存在しない」ことを前提に、その打開策としてディレクショナルムーブメント(方向性指数)の活用を提唱している。この指数は、トレンドの大きさを0から100までの数値で表したもので、「これを基にしたシステムは、方向性の均衡点を利用してポジションがトレンドから外れないようにしている」。
ディレクショナルムーブメント、ボラティリティ、モメンタム、RSI、CSI(商品選択指数)の各章は、それぞれを定義し、説明したあと、その概念を基に開発したシステムを紹介している。これらのシステムは仕掛けや手仕舞いの明確なシグナルを出す画期的なもので、各システムの仕組みやシグナルの意味も合わせて解説してある。
また、図表やワークシート、チャートをふんだんに使って、初心者でもその指標を簡単に算出できるように配慮した本書は、すべてのトレーダーにとってかけがえのない1冊だ。
「テクニカルトレードの第一人者がその研究成果をまとめて出版した、従来のシステムに飽き足らないトレーダーがぜひ読むべき本」――フォーブス誌
原著:New Concepts In Technical Trading Systems
こうして多くのテクニカルツールの開発に多大なる業績を残していることから、ワイルダーは、テクニカルアナリストとしてとらえられている側面が非常に強い。しかしその一方で、彼が実はもともとシステムトレードを志向していることはあまり知られてはいない。一般的にはあまり意識して区別されないことではあるが、テクニカルアナリストとシステムトレーダーとは実際にはかなり異なった存在である。テクニカルな手法によってマーケットを分析することを生業とするテクニカルアナリストと、事前にルールを定め、客観的なデータに基づいてトレード(投資や投機)を行おうとするシステムトレーダーとは、現実には似て非なるものと言わざるを得ない。ワイルダーが目指したのはあくまで実践的なトレードの技術なのである。
本書の内容は、原題にあるとおり、テクニカル分析という範囲を大きく超えて、実質的にはさまざまなトレードシステムの概念、利用法を提示したものになっている。そこには単なるエントリー(建玉・仕掛け)の方法だけでなく、ロスカット(損切り)を含めたエグジット(手仕舞い)の方法や資金管理の方法、具体的な銘柄の選択法など、首尾一貫したトレードの手法が紹介されている。そして驚くべきことに、原書が著されたのは20年以上前であるにもかかわらず、ここで書かれている概念は現在においてもまったく色褪せていないばかりか、依然として高いレベルにある。それは、本書が単にマーケットに関する知的な考察を目的としたものではなく、あくまでも実践的なトレードを前提として、そのために普遍的に必要なことをすべて押さえてあることによるのであり、またワイルダーがマーケットを理解、分析することにおいて、「天才」であることの証明でもある。
最後になったが、翻訳をしてくださった井田京子氏をはじめ、関係各位に心から感謝の意を表したい。多くの関係者の努力によって、本書のような素晴らしい書籍が世に出ることになったこと、そして多くの方がそれを手にすることができるようになったことを大きな喜びとしたい。
2002年4月
長尾慎太郎
今回紹介するテクニックは、筆者のこれまでの著作とは重複しておらず、すべてオリジナルの内容になっている。また、取り上げた題材は、初心者からシステムに詳しい経験豊富なプロまで、すべてのトレーダーを対象にしている。この取り組みは筆者にとっても大きなチャレンジだった。初心者は内容を完全に理解するため何度も読み返すことになる半面、コンピューター世代の達人にとっては簡単すぎるということにもなりかねないからである。それでも、多くのトレーダーにとっては比較的理解しやすい構成になっていると自負している。
プログラム機能付き電卓は比較的安価で手に入るため、テクニカルトレーダーにとって必須のアイテムになりつつある。そこで、本書で取り上げたすべてのシステムや指数も、市販のほとんどのプログラム機能付き電卓で計算できるようになっている。もしうまくプログラムできないときは、電卓業者に問い合わせれば、たいていはプログラムを書けるスタッフが手助けしてくれるはずである。
プログラム機能付き電卓を使えば、これらのシステムは非常に簡単に利用することができる。なにしろ最新価格のデータを入力してボタンを押せば、1秒とたたずに答えがディスプレーに表示されたり、印刷されたりするのである。
また、これらの電卓の多くが、プログラムやデータを磁気カードに保存できるようになっており、カードを変えるだけで、数秒とかからずにシステム変更もできる。
本文中のシステムはHP−41CV、アップルII(および+、E)、IBMパソコン用にプログラムしてある。また、本書で取り上げたソフトウエア(ニュー・コンセプト・ソフトウエア・パッケージ)のパンフレットは下記から取り寄せることもできる。
Trend Research, Ltd.
P.O.Box 128
McLeansville, N.C. 27301
Tel(919)698-0500
全体の構成
本書は10章に分かれている。各章は前後の章と関係なく単独でも理解できるようになっているが、第1章だけは本書全体にかかわる基本的な考えや定義について述べているので、最初に読んでほしい。その あとは、例えばディレクショナルムーブメント(方向性指数)に興味がある読者なら、第2章、第3章を飛ばして、第4章に進むということもできるようになっている。
ただし、実際にこれらのシステムを使いトレードを行う前に、第9章と第10章は必ず読んでおいてほしい。これらの章もほかと同様、独立して読めるようになっている。 ワークシート
本書で取り上げたそれぞれの指数やシステムにつき、日々の作業を単純化するデイリーワークシートが添付してある。チャート分析法のひとつであるRSI(相対力指数)を除き、すべての指数とシステムはデイリーワークシートを使うだけでも理解できるようになっている。そのため、チャートをわざわざ作成する必要はないが、チャートで視覚的にとらえることが、トレーダーの理解を深める場合も実際には多い。
各章の終わりには、指数やシステムのデイリーワークシート使用例を載せてある。もし本文を読んでも内容が理解できないときは、この使用例をたどることでしっかりと把握できるようになるだろう。
また、巻末には、付録として白紙の各種ワークシートを載せてあり、コピーして引き続き日々のデータを記入できるようになっている。
チャートの購読
本書で取り上げたシステムを理解するために、チャートを作成する必要はないが、多くのテクニカルトレーダーは良質のチャートサービスを購読している。
筆者の場合はコモディティー・パースペクティブ社というチャートサービスを好んで利用している。同社のチャートは商品も通貨も13インチ×10インチ(約33センチ×25センチ)のシートにひとつずつ印刷されており、最後の価格バーのあとには翌週の値を更新するための十分なスペースも取っているからである。チャートは毎週月曜日の朝に、直前の金曜日までの最新データが届くようになっている。
コモディティー・パースペクティブ・チャートのサンプルは、第6章のRSI のなかに載せてある。この種のチャートは以下で取り扱っている(コモディティー・パースペクティブ社はナイトリッダーに買収、再編され、現在はCommodity Research Bureau のFutures Perspective の一部になっている)。
パラメータレンジ(無限にあるシステム)
複数のトレーダーに最高のテクニカルシステムを紹介すると、同じシステムを使用したトレーダーの出した注文がまったく同じポイントに集中して、予想外の結果につながる恐れがある。だが、この問題は、パラメータに可能なかぎりレンジ(幅)を持たせることで減らすことができる。トレーダーは一定のレンジのなかから独自のパラメータや定数を選択し、それをシステムに適用すれば、結果に差はほとんど生じない。
例えば、あるシステムでは、新高値からポイントPまでのうち30%押したら、買いトレードが終わることを示すとする。この場合の定数は0.30で、ポイントPから最高値までの距離を垂直に測り、その30%を最高値から引くと、ストッププライス(仕切りの逆指値)が決定する。
では、なぜこのシステムの考案者は30%が絶対に最適な距離だと決めたのだろう? もしこの定数を特定の商品、あるいは株式を使い、わずか8回のトレード結果で決定しようとすると、定数を若干変えて、トレードが1回不調だっただけでも全体の成績はかなり下がることになる。しかし、これがもし20種類の銘柄を使い、400回のトレードの末に決定されたのであれば、定数を29%や31%に変えても、結果にほとんど影響しないことは読者にも想像がつくだろう。変動幅は28.4%、あるいは31.6%に広げても違いはわずかだが、これが27%や33%になると全体の成績が少しずつ下がり始め、20%や40%までいくと、利益は大幅に減ることになる。そして、この結果をグラフにすると「釣鐘曲線(ベルカーブ)」と似た形になる。レンジの最低値である28%をポイントA、最高値である32%をポイントBとした場合、28〜32%の間で選んだ定数を使ってトレードを行えば、結果はほぼ同じになる。
「釣鐘曲線」との相似は、本書で取り上げたシステムのなかで定数のレンジが適用できるものすべてに共通している。
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