2023年5月発売/A5判 上製本 336頁
定価 本体 5,800円+税
ISBN978-4-7759-7313-4 C2033
オプション売買は、ポーカーやブラックジャックのカードゲームに非常によく似ている。トレーダーもカードプレーヤーも、忍耐や規律と売買戦略を組み合わせなければダメである。とりわけ、この両者は相手に対して「優位性」を持たなければならない。
カプランは本書『カプランのオプション売買戦略』で、そのとらえどころのない優位性を、どのようにとらえるかについて正確に説明している。氏はまた、いろいろなオプションポジションの成功率をいかに分析し、最高のリスクと報酬の関係を生むポジションをいかに選択するかについて示している。本書に書かれた知識で武装すれば、トレーダーは圧倒的な勝算があるときにのみ積極的な勝負に出るゲームのやり方をよく知っているポーカープレーヤーのように相場と闘うことができるだろう。
実践的で分かりやすい本書の第1版は、個人投資家だけでなくプロのトレーダーにも人気があった。完全に刷新されたこの第2版は、個人の売買スタイル、マネーマネジメントやボラティリティをさらに追求した新しい資料が数多く盛り込まれている。
本書の中核をなすのは、具体的なある状況下で、トレーダーに「優位性」をもたらすのはどの売買戦略で、それをいつ用いるかについて書いた点である。本書で紹介されている売買戦略は以下のとおりである。
●ニュートラル・オプション・ポジション――レンジ相場やプレミアムの高い市場で用いるのに理想的な戦略
●フリートレード――ボラティリティの不均衡を利用して、トレンド形成中の市場で大きなポジションを建てるのに用いる戦略
●レシオ・オプション・スプレッド――アット・ザ・マネーに近いオプションを買い、割高なアウト・オブ・ザ・マネーのオプションを売る戦略
●カレンダー・オプション・スプレッド――同じオプションの異なる限月間にボラティリティの不均衡がある場合に理想的な戦略
●イン・ザ・マネー・デビット・スプレッド――変動の激しい市場で、リスク限定のオプションの買いと、オプションの売り玉によるタイムディケイから利益を得る戦略
●ノーコストオプション――チャート上の強い支持水準と抵抗水準を用いてアウト・オブ・ザ・マネーの高いボラティリティを利用する画期的な戦略
オプションの値付けにおいて頻繁に発生する不均衡やオプションの組み合わせに内包する優位性の両方から利益を得る、実践において証明済みの幅広いテクニックが、これらの売買戦略に盛り込まれている。これらをうまく活用すれば、トレーダーは圧倒的な「優位性」を手にすることができるだろう。
本書には相場に関する数多くの知恵が盛りこまれている。オプション市場で成功するための実践的な売買手法を求めているトレーダーにとって、本書は必読書である!
「本書には勝率を上げたいオプショントレーダーにとって多くの素晴らしいガイダンスが含まれている」――レン・イェーツ(オプション・バリュー・システムズ・インタナショナル社社長)
「非常によく調査して書かれており、オプション市場がどのように機能するかを示している。オプションがどのようにリスク管理を助けてくれるかを理解したい先物トレーダーにとって本書は必読である」――ジェフリー・フォックス(ローゼンタール・コリンズ社フォックス・インベストメント部門責任者)
「本書は多くのトレーダーにとってオプションを身近なものにしてくれる。そして、数多くの実践的なアプローチについて述べられている。そこに掲げられている売買戦略は、象牙の塔の環境のなかにいる学術研究者がけっして経験することのできない、著者が長年にわたって実際に実践してきた売買の利点を含んでいる。本書はそれを1つの情報源のなかに総括しており、どのレベルであろうとトレーダーならみんな本書を自分の蔵書に加えるべきだ」――ドン・サルノ(レナウン先物の教官、トレーダー)
「分かりやすい。プロも初心者も先物オプションについて本書から得るものがある。『ザ・プロフェッショナル・オプションズ・マニュアル』同様、本書も机の上に置かれるべきだ」――マイク・コナー(マーケット・ウオッチ社社長)
訳者 増田丞美
1985年米国コロンビア大学大学院(MIA/MBA)を卒業後、野村證券(東京・ロンドン)、モルガン・スタンレー投資銀行(ロンドン)を経て、海外ヘッジファンド・グループにてデリバティブポートフォリオの運用に携わる。現在、アストマックス(国内投資顧問)チーフアナリスト兼アストマックスUSA(米国投資顧問)エグゼクティブ・バイスプレジデントとして資産運用業務に従事。また、『オプション倶楽部』アドバイザーとしてオプション取引戦略等を寄稿中。
著著および訳書に『オプション売買の実践 <日経225編>』『オプション売買学習ノート』『資産運用としてのオプション取引入門』『最新版 オプション売買入門』『最新版 オプション売買の実践』『カプランのオプション売買戦略』『マンガ オプション売買入門の入門』等がある。パンローリング主催セミナーの講師を務める。
第1章 「売買の優位性」という考え
「限定されたリスク」「安価」「レバレッジ」の向こう側
オプションに関する一般的な誤解
オプションを取引することについての私の基本的な考え
「売買の優位性」とは何か?
オプション売買の技術的側面と科学的側面
「優位性」のある売買戦略は先物やOEXや株式オプションで活用できる
第2章 基本的なオプション売買の概念
オプションとは何か?
オプションはどのように機能するか
オプション価値の決定要因
オプションの売買
オプションの注文とスプレッド注文の執行
第3章 ボラティリティ
オプションボラティリティをいかに活用するか
市場が相当な動きを見せる前にオプションボラティリティはどのようにシグナルを送るか
オプション・ボラティリティ・ハイライト
オプションだけでなく原資産市場のボラティリティも考慮せよ
トレンドを味方につける
オプションボラティリティによってどのように売買戦略を決めるのか
オプション売買におけるボラティリティの上手な活用の例
第4章 オプション売買戦略
売買の優位性を得るための戦略
買うべきオプションの選択
オプション売買における利益目標
相場観の分析に基づいて買うべき最良のオプション
トレンド形成中の市場で売買すべき最良のオプション
最も見落とされているオプションの買い戦略
最も見落とされているオプションの売り戦略
フリートレード
穀物市場での「フリートレード」の例
低いオプションプレミアムを利用した「フリートレード」の例
合成先物ポジション
ニュートラル・オプション・ポジション
相場の予測をしないで「賭博場の胴元」のように売買するためのニュートラル・オプション・ポジションの活用
ニュートラル・オプション・ポジションを用いて時間を味方につける方法
ニュートラル・オプション・ポジションの仕掛けと調整
継続的オプションポジションの包囲手法
トレンドのある期間とトレンドのない期間の研究
レシオスプレッド
いかにしてレシオスプレッドの最高の仕掛け時を探し、用いるべき最高のオプションを選択するか
リバース・レシオ・スプレッド
イン・ザ・マネー・デビッド・スプレッド
カレンダースプレッド
その他のオプション売買戦略
オプションを用いたヘッジ
第6章 重要なオプション売買の原則
強気相場で仮に相場が下がっても(思惑に反しても)、損失リスクのない売買
レンジ相場からやや強気な相場観
相場がどの水準に行くか分からないが、どの水準には行かないかを知っているという感触があるときにオプションポジションから利益を得る
プットやコール価格、それらの比率、オプションの売買高は相場の方向性を予測するか
プットとコールの比率およびそれらの売買高
売買損失を引き起こす隠された要因を克服する助けとなるオプション売買戦略
意義ある経済指標の発表やイベントの前にオプションを利用する
重要な経済リポート発表後の価格変動
市場間の関係
オプションに関する数字の変化を1週間ベースで吟味する
先物売買プランにオプションを組み入れる
市場の特性は絶えず変化している――売買手法はこれを反映させたものでなければならない
トレーディングで成功するために必要なこと
第7章 オプション売買のためのコンピューター
オプションプレミアムの評価
オフラインオプション分析
オプション評価のためのオンラインシステム
用語集
訳者あとがき
著者のカプラン氏について私が知っていることをごく簡単に述べよう。彼にとって、トレーディングとトランプのポーカーゲームやブラックジャックは同じである。そして、彼のトレーディングとそれらのトランプゲームの経験は実に40年以上に及ぶ。高校・大学時代は数学が得意で、数学講師が出したどんな難解な問題にも答えられたという。大学で工学を学ぶことを両親に期待され、アメリカの名門大学への入学が認められたものの、彼が実際に入学した学校はペンシルベニア州立大学の工学部であった。その理由は、その学校では毎週末ポーカーゲームが行われており、彼は自分の数学的な才能をそのゲームで試してみたかったからだった。彼は、キャンパス内で最も成功したポーカープレーヤーの1人に数えられていた。その後、彼は徴兵制を逃れるために法律学校(法科大学院)に進学し、卒業後、弁護士として法律の仕事に携わった。しかし、後に『マーケットの魔術師』(パンローリング)のインタビューに登場したあるトップトレーダーとの出会いが、それまで眠っていた彼の血を騒ぎ出させることになった。その時点ではトレーディングの経験がまったくなかったが、トレーディングのプロセスはポーカーゲームのそれとまったく同じであることに気づいたのだ。こうして、カプラン氏は氏にもともと備わっていた才能をオプショントレーディングに応用することになったのである。
この翻訳書が世に出るまでには多くの方々が絡んでいる、ということを忘れてはならない。パンローリングの後藤康徳氏、FGI社の阿部達郎氏は改めて述べる必要もあるまい。個人投資家の世界では、すでに言わずと知れた存在である。後藤氏の「オプションの翻訳に興味ありませんか」という語りかけがなければ、私が本書の翻訳という大それた仕事を担うことはなかった。この場を借りて感謝いたします。阿部氏には頭をさらに深く下げて感謝せざるを得ない。氏には、校正・編集という一番面倒な役目を担っていただいた。そして、本書をいち早く世に出したいという思いから、幾度か、校正した原稿を持って私のところにわざわざ足を運んでくれた。
今回、本書の装丁を担当していただいたキュー・グラフィック・スタジオの江畑雅子さんにも一言述べさせていただきたい。彼女の本のデザインにはいつも感服させられる。本書のデザインは私が最も気に入っているものの1つである。最後に、パンローリングのスタッフの方々、お疲れさまでした。
本書を手にした読者自身が、今後のオプション売買において成果が上がることを祈ってやまない。
2000年2月
これらの説はどれが正しいのだろうか?
それとも、すべてが正解、それともすべてが間違っているのだろうか?
著者カプランは、オプション取引では世界的第一人者である。そのカプランは、上のどの戦略も否定している。どんな投資でも同じように、その戦略には「売買の優位性」がなくては、けっして儲けることはできないのだ。オプションには株や先物の売買と比べ、実にさまざまな戦略プランを立てることができ、リスクヘッジの仕方も多様を極めている。
しかし、オプションの理論を説明したり、机上の論理を振り回した本では、実際の売買には何も役に立たない。著者のカプランもそのことに悩まされていた結果、実践に役立つ本を、自らの売買経験を基に書いたのが、本書である。
本書を実際に読めば分かるが、本書の中で一貫して述べられている、いわゆる「カプランのオプション売買論」とは「“売買の優位性”があるときにのみ売買せよ」ということである。この“売買の優位性”についてごく簡単に触れておこう。“売買の優位性”とは、例えば、100メートル競走で、あなたのスタートラインが80メートルも前に位置しているような状態のことをいう。つまり、もしあなたがその“優位性”を持っているなら、あなたはわずか20メートルを走りさえすればよいのだ。一方、“優位性”を持っていない競争相手は100メートルを走らなければならない。しかも、勝つためには、20メートルしか走らなくてよいあなたを追い抜かなければならない。勝負の行方は初めから分かっている。
トレーディングで勝つのは実に簡単なことである。初めから勝負の行方が分かっているときだけ売買すればよいのだ。オプション売買についてより具体的にいえば、市場に対する“売買の優位性”を見いだし、それに合った売買戦略を組み立てればよいのである。あなたの相場予測が間違っていたって構いやしないのだ!
こんな愉快な売買ができるのは、オプションをおいてほかにない。 私自身のことに簡単に触れよう。私が本書(原題:The New Options Advantage)に出合ったのは1991年、ロンドンシティー(金融街)のある書店であった。当時、ロンドンに勤務していた私は、自己の口座でもオプションを取引していたが、自己口座では、「儲けはまぐれ、損は必然」という状態であった。しかし、本書との出合いが、私を「その辺の街を歩く下手なトレーダー」から「恒常的に利益を上げられるトレーダー」へと変身させてくれたのである。
それまでの私は、“売買の優位性”などお構いなしに、自分の相場観でチャンスとあれば、いつでも売買していた。相場の将来の変動を予測することにいつも神経を尖らせていた。今の自分は当時の自分とはまったく異なる。相場に対する姿勢そのものが変わったのだ。相場をゲームとしてとらえられるようになった。チャンスが来るまで待てるようになった。相場の上げ下げを気にしないようになった……。実際に儲けられるようになったのだ! そして、「相場で儲けるのは実に簡単なことである」と、平然と他人に言えるまでになった。
最後に、一言だけ言っておきたいことがある。翻訳は私の生計を支える仕事ではない。つまり、私はプロの翻訳者ではない。『新マーケットの魔術師』(パンローリング)の訳者、清水昭男氏はその本の「訳者まえがき」の冒頭で「杉田玄白の昔から、翻訳という作業は使命感を原動力としている」と語っているが、残念ながら私はその使命感を担えるほど翻訳術にたけているわけではない、ということを認めざるを得ない。
しかし、である。私は本書の著者カプラン氏のオプション売買論を忠実に実行して、しかも成果を上げたという事実から、本書を翻訳するのに最も適した者の1人であるという自負の念を持っている。同時に、正直なところ、本書を翻訳書の形で投資家に紹介することによって、自らの手で投資の世界における競争相手を作り出すことになりはしないか、といった懸念も持っている。それでも、本書を紹介することの意義のほうが大きいと感じたのである。日本の投資分野で、最も立ち遅れているものの1つが「オプション」市場である。しかし、それは近い将来、最も発展する可能性を秘めたマーケットであるとも言える。本書は、売買の優位性を知るための究極の本であり、どんなマーケットにも対応できる戦略を説明・解説した日本で初めての本である。本書を紹介することの意義は大きいと言わざるを得ない。
本書がこの世に出たのは1991年である。これまで本書が日本語に翻訳されなかったのが不思議であるが、それほど日本のオプション市場は立ち遅れているということなのだろう。本書の中で用いられている例はやや古いと思われるかもしれない。なにせ、S&P500の価格が450台であった時代なのだから。私の著書『オプション売買入門』(パンローリング)では新しい例を用いて解説している。宣伝するわけではないが、どうか私の著書も読んでいただきたい。カプラン氏の売買論を実践して成果を上げた例がいくつか載っている。カプラン氏と私のオプション売買についての考え――例えば、カプラン氏が30以上にも及ぶ多くの市場を観察し売買せよ、といっているのに対して、私は自分の専門とする数少ない市場に専念せよと言っているなど――は、細かい点では相違があるものの、基本的にはまったく同じであるといってよい。そして、まったく一致する事実は、共に、“オプション売買の実践家”が本を書いた点である!
読者のみなさんがこの本から多くのことを学びとれるように願ってやまない。
増田丞美