金相場:2009年の回顧と2010年の展望池水 雄一 氏
早くも今年もほぼ終わりとなりました。光陰矢のごとし。皆さんにはどのような年だったでしょうか。今回は今年の締めくくりとして、2009年の回顧と2010年の展望を書いてみたいと思います。
2009年はゴールドにとって新しい時代の到来だったと行ってもよい「エポックメーキング」的な年だったと言えるでしょう。具体的に何がどのように起きたのか、まずは2009年年初からの動き、そして金相場の両輪ともいえる「投資」と「実需」の観点から、金相場がどのような要因において動いたのかを考えてみましょう。
1. 2009年の金相場の動き年初880ドルで始まったゴールドは1/15日に802ドルの年間安値をつけたあと2/20に1006ドルまで上昇しましたが、この時点では1000ドル越えは実需の需要減退、スクラップの売りなど実需筋からの売り圧力が強く、1000ドル台は維持できず。その後4/07日および4/17日に865ドルまで下落、6/3日に990ドルをつけたあと7/8日に905ドル、その後は9/8日に1000ドルを突破、一瞬1000ドルを割り込むも、その後は一貫して1000ドル超の相場が続き、11/6日に1100ドルを超え、ほぼ一直線に歴史的高値を更新し続け、12/3日に1226.70ドルの高値をつけその後ドルの買い戻しを材料に12/11には1110ドルまで大きく売られて、その後は1110ドルから1140ドルの間で上下動を繰り返し、年末を迎えつつある12/21日現在、1115ドル近辺にあります。2. 投資Gold ETF今年のこの激しい相場上昇の最大の直接的要因は一重に金相場への投資資金の流入のためです。年前半にその口火を切ったのは、Gold ETFの急激な残高増でした。年初1000トンだったのものが、3月31日には1371トンと400トン近くの急増となりました。おそらくは年金を中心とした主に機関投資家、それも長い視野を持った投資家の金に対する資金分配- asset allocationが相当な勢いであったものと思われます。この買いは3月まででほぼ確定されて、その後はGod ETFの残高は大きな動きが見られなくなりました。年初三カ月の800ドルから1000ドルまでの動きはまさにこのETFの買いによる上昇といえます。しかしながらその後の残高の目立った伸びは見られていません。ほぼ同じレベルで年後半は推移しています。
2009年11月30日
Comexの投資家ロング残高の動き一方、世界最大のコメックスの投機家ポジションは、年末現在、史上最大のロング残(non-commercialとnon-reportabeを合計したもの)1000トンを超えた水準に落ち着いています。このポジションは年初は522トンから始まり、順調に増え続けて、特に8月初旬から10月後半にかけては700トンから1055トンまで急増しました。その後は1000トンから1040トンの間で動きになっており、さすがにここからは増えず、またこれまでのパターンのように大きく急落もありません。9月以降のゴールドの1000ドル台定着への決め手になったのが、このコメックスでの投資家の買いであったといえるでしょう。
欧米の投資家の現物投資1-3月のETFの買い、7-10月のComexでのファンドの買いに加えてもうひとつ注目に値するのは、ヨーロッパやアメリカ、いわゆる欧米の先進諸国での金の現物投資の盛り上がりです。実需のところで触れますが、従来、金の現物の買い手は、インド、東南アジア、中東、中国といった宝飾の金需要があるところが中心でした。今でも当然これらの地域が金の需要地域の中心ではありますが、2009年の特色として、それ以前は金の現物投資としてほとんど見るべきものがなかった欧米の先進国において、ゴールドのスモールバーやコインが品薄になるほど売れました。 アメリカの造幣局はあまりの売れ行きで製品の生産が間に合わず、一時、金貨の販売を差し止めたほどです。これは価格に敏感な旧来の需要国に動向とまったく違ったもので、今、欧米で現物を買っている人々は、過去の価格などは関係なく、とにかく金を持ちたいという人が多いのではないでしょうか。やはりドルに対する不安、ひいては今の世界経済に対する不安が彼らを金買いに走らせているのではと考えます。
DVDのご購入はこちら
| ||||||