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第8回 ご愛顧特別感謝祭!! 投資戦略フェア2010 1・23(土)in TOKYO

金相場:2009年の回顧と2010年の展望

池水 雄一 氏

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3. 実需

ここでいう実需とは先ほど触れた従来の需要国、インド、東南アジア、中東、中国といった国々での宝飾需要をさします。年初から9月までマーケットは1000ドルを頭として、850ドルとの間を下値を切り上げながら上下動を繰り返します。そのレンジの上値を抑え、下値を支えたのは実需の動きでした。1000ドルに近づく場面では実需筋からの利食いの売り、いわゆるスクラップの売りが相場の頭を押さえ込み、900ドルを下回る場面では積極的な現物買いが見られて、それ以上の大きな相場の下落は抑えられました。投資マネーによる極端な価格の揺れが実需の力によって、ある程度抑えられていたと言えます。

実際、上記のような伝統的な金の需要地域では今年の900ドル越えのレベルではほとんど目立った買いは見られず、逆に高値での売りのほうが目立ちました。世界最大の金需要国であるインドの今年の輸入量の激減はその端的な例であると言えます。この実需の買い控え、スクラップの売り圧力が相場を抑えていました。ところが9月以降のマーケットでは、その実需の売りを吸収してまだまだあまりある資金がマーケットに流入し、一気に値を飛ばしました。ここまでは働いていた投資と実需のバランスが大きく投資側に傾いてしまったのです。

そして12月上旬に1226ドルの歴史的高値をつけたあと、相場は100ドル以上下がり1100ドル割れまで下落しています。ここでようやく本当に久しぶりに東南アジア、特にタイからの現物の買いがまとまった量で入ってきました。

4. 鉱山会社と中央銀行の動向

鉱山会社のヘッジ買戻し

2009年の金価格上昇でもうひとつ重要な役割を果たしたのが鉱山会社による売りヘッジの買戻しです。

世界一の金鉱山会社であるカナダのバリック社は2001年には620トン以上あった先売りヘッジポジションを今年ようやくすべてを買い戻しました。2001年の年末は276ドル。そして彼らが620トン以上を買戻し終わった今年の年末12月の後半は1115ドルです。なんと839ドルもの上昇です。ほぼ3倍になったことになります。

彼らの例は世界一の金鉱山として圧倒的な例ですが、ほかの鉱山会社も同じように一斉にヘッジポジションの買戻しに走りました。2001年からの金価格の棒上げの要因は、単純にいうと中央銀行の売り絞り(CBGA)鉱山会社のヘッジの買戻し、そしてそれに2004年からのGold ETFの買いに集約できます。

しかしその鉱山会社も最大のバリック社の買戻しが終わったということで、ほぼすべての鉱山会社の買戻しが終わったと推測されます。これは逆にいうと彼らは純粋な「ロング」状態に戻ったことになります。つまりまったくロングに対するヘッジをしていない状態で、相場が上がればその分利益を取ることができますが、下がったらその分損をこうむります。この状態は尋常ではないと私は思います。しかしどうも彼らの辞書からは金相場下落という項目は削除されてしまったようです。これはいったん金が下がりだすと大変なことになる可能性があると思うのですが…。

中央銀行

2001年からの上昇相場の一番最初のきっかけとなったのが、ワシントン合意 (Washington Agreement) と当時は呼ばれた(現在は Central Bank Gold Agreement : CBGAと呼ばれています)ヨーロッパの中央銀行間での金売却の数量を限定する(当時は年間合計400トン、その後500トン)という合意でした。

その前の20年間の右肩下がりのマーケットは鉱山会社の売りヘッジと中央銀行の金売りがその背景にあったのです。そして今年2009年にはこの売却枠は150トン前後しか利用されませんでした。つまり中央銀行の金売りは劇的に減少し、逆にインドや中国、そしてロシアのように、金を積極的に買う中央銀行も増えてきました。特に中国やロシアはその外貨準備高に占める金の割合が非常に低いので今後も、積極的に金準備を増やしていくことが予想されます。

各国外貨準備高に占める金の割合

5. 2010年金相場展望

さて以上が2009年にゴールドを取り巻いた状況でした。2010年はどうなるのでしょうか。

今一番相場に影響が与える力を持っているのは投資マネーです。そしてその投資マネーのゴールド買いの最大要因は「米ドル」に対する不信です。今後米ドルがどうなるのか。ドルに対する不安が消えていくのか、もしくは一時的に買戻されてもやはりドルは下落の道をたどるのか、今後のアメリカの経済政策、ひいては世界経済の行方というマクロな視点が大切になると思います。

私個人は、アメリカの消費によって引っ張られてきた過去30年以上にわたるパックスアメリカーナとも言える経済体制は、その圧倒的なリーディングパワーであったアメリカのサブプライム問題による経済瓦解のために、根底より揺らいでいると感じています。我々日本も、韓国も、中国も、インドも過去30年有余、アメリカの消費のおかげでとてもよい思いをしてきました。しかしながら、その前提であった強力なアメリカの消費市場はもはや、その姿を一変させたと思います。

もはや世界を引っ張っていく消費をつくり出すだけの経済力はアメリカにはないでしょう。そうするとこれまでの米ドル絶対の世界ではなくなっていくのではないでしょうか。米ドルが基軸通貨でなくなることは近い将来はないでしょう。しかしその相対的な力はやはり減退していくに違いありません。この点だけからも、金が買われるには十分な材料だといえると思います。

またこの歴史的高値圏においても、実需の買いが見られ始めたことも、今後も金価格は堅調に推移すると思わせます。ドルの短期的動きによって、ゴールドの短期筋からの売りで下がる場面は当然あるでしょう。しかし、中長期的にはとにかく金を買いたいという向きが圧倒的に増えていることを感じます。おそらく2010年も金マーケットは強含みの推移となるでしょう。どこまで行くのか。それは神とドルのみが知る、でしょうか。

皆さんのよい年末年始を!そしてまた元気で来年お会いしましょう。


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