著者 ロバート・R・プレクター・ジュニア, A・J・フロスト
監訳 長尾慎太郎
訳者 関本博英
◇波動の13のパターン
ラルフ・エリオットは波動のパターンを推進波で3パターン、修正波で10パターンの計13パターンを定義した。
推進波
・衝撃波
1)衝撃波
・ダイアゴナル・トライアングル
2)エンディング・ダイアゴナル・トライアングル
3)リーディング・ダイアゴナル・トライアングル
修正波
・ジグザグ
4)シングルジグザグ
5)ダブルジグザグ
6)トリプルジグザグ
・フラット
7)レギュラーなフラット
8)拡大型フラット
9)ランニングフラット
・トライアングル
10)対称型トライアングル
11)上昇型トライアングル
12)下降型トライアングル
13)逆対称型トライアングル
●推進波
5つの波で形成される推進波は、「いつもひと回り大きな波の段階のトレンドと同じ方向に進む」。波は単純な形をしており、比較的簡単に識別・解説できる。・推進波の第2波のリトレイスメント(押し)率は常に第1波の値幅よりも小さく、
・第4波のリトレイスメント率も第3波の値幅よりも小さい。
・しかし、第3波は常に第1波の値幅よりも大きく動く。推進波の目的は「相場を進行させる」ことであり、そのフォーメーションのルールもそれを裏付けている。
エリオットはさらに価格という点で、「第3波がしばしば“最長の波”となり、推進波の3つのアクション波(第1波・第3波・第5波)のなかでは、けっして“最短の波にはならない”ことを発見した。第3波が第1波や第5波よりも変動率という点で大きいかぎり、このルールは有効である。
こうしたルールはほぼいつでも数学的な基準にのっとっている。推進波には、衝撃波とダイアゴナルトライアングル(斜行三角形)という2つの種類がある。<(1)衝撃波>
最も一般的な推進波は「衝撃波」である。衝撃波において、
・第4波が、第1波の価格帯に割り込む(重複する)ことはない。このルールは、レバレッジをかけないすべての現物市場に当てはまる。一方、大きなレバレッジをかけられる先物市場では、現物市場には見られない価格の一時的な行きすぎが起こる。
それゆえに、日足や日中の動きでは第1波と第4波の価格帯が重複することもあるが、それでもこうしたことはあまり起こらない。さらに、衝撃波のアクション波(第1波・第3波・第5波)自身が推進波であり、なかでも第3波は特別な衝撃波である。
以下で述べるように、衝撃波を正しく解釈するためのルールは、わずか2〜3の単純なものだけである。それを「ルール」と呼ぶのは、それが適用されるすべての波を支配しているからである。
・エクステンション(波の延長)
エクステンション(延長波)とは、“さらに小さい波を持つ延長した衝撃波”である。ほとんどの衝撃波にはエクステンション(延長波)が含まれるが、その波は3つのアクション波のなかにはひとつしかない。この事実は、それ以降の波の長さを予想するときに有効な手掛かりを与えてくれる。
例えば、第1波と第3波がほぼ同じ長さであれば、第5波が延長する可能性が高い。その反対に、第3波が延長したときは、第5波は第1波と類似した単純な形になるだろう。
株式相場では、「一般に最も延長する波は第3波」である。この事実は衝撃波の2つのルール(すなわち、第3波はけっして最短のアクション波とはならない、第4波は第1波と重複しない)に照らして考えると、リアルタイムの波の解釈にとってとりわけ重要である。
・トランケーション(切頭)
第5波が第3波の終点を超えられない状況を「トランケーション=切頭」または「切頭された第5波」という 。図1.11と図1.12にも示されているように、一般にトランケーションは予想される第5波に5つの必要な副次波が含まれることに気づけば確認できるだろう。こうしたトランケーションはときに、とりわけ強力な第3波のあとに出現する。
トランケーションは「Rプラクター」による呼び名で、エリオットは「フェイラー」と命名していた。
<ダイアゴナル・トライアングル>
ダイアゴナル・トライアングルは推進波のパターンだが、そのなかに1つか2つの修正波の特徴を持つという点で衝撃波とは言えない。もっとも、波の構成における特定の位置では、ダイアゴナルトライアングルが衝撃波に取って代わることもある。衝撃波であれば、副次的なリアクション波がそれに先立つアクション波のすべての値幅をリトレイスすることはなく、三番目の副次波が最も短くなることもない。しかし、ダイアゴナルトライアングルはメジャートレンドの方向を向いているただひとつの5波構成のパターンであり、ここではほぼいつでも第4波が第1波の価格帯に割り込んでいる(2つの波の価格帯が重複している)。
(2)エンディング・ダイアゴナルトライアングル
エンディング・ダイアゴナルトライアングルは、第5波に先立つ波が「あまりにも速く、そして遠くに行きすぎた」ようなとき、主に第5波のところで起こる特殊なタイプの波のパターンである。
ときにA−B−CフォーメーションのC波のところで出現することもあるが、その確率はかなり小さい。ダブルスリーやトリプルスリーのパターンでは、エンディング・ダイアゴナルトライアングルは最後のC波でしか出現しない。いずれの場合でもこのトライアングルは「より大きなパターンの終了地点」に出現し、それはより大きな動きが出尽くしたことを示唆している。
エンディング・ダイアゴナルトライアングルは相場の天井や底となることが多く、パターン完成後には鋭い戻しが続くことが多い。(3)リーディング・ダイアゴナルトライアングル
エリオットは、ダイアゴナルトライアングルが第5波やC波のところに出現するときは、3−3−3−3−3の形になると述べている。しかし最近になって、このバリエーションはときに衝撃波の第1波やジグザグのA波のところにも出現することが分かってきた。エンディング・ダイアゴナルトライアングルは、T.第1波と第4波の価格帯が重複する、U.トレンドラインの上側と下側のラインが収束してくさび形になる―というその大きな特徴に変わりはない。しかし、その小さな区分ではそれとは違う5−3−5−3−5というパターンになる。エンディング・ダイアゴナルトライアングルのアクション波における3つの副次波はトレンドの「終了」を示唆しているのに対し、リーディング・ダイアゴナルトライアングルのアクション波の5つの副次波はトレンドの「継続」のシグナルを発しているという点で、このフォーメーションは波動原理の精神に合致している。
●修正波
推進波がメジャートレンドの方向にいつでも比較的簡単に進むことができるのに対して、修正波についてははっきりと識別するのが難しい。相反するトレンドをめぐる対立のもうひとつの結果として、修正波は推進波よりもかなり多様な波形をとる。修正波の終了を予測するのは推進波の場合よりも難しいので、株式相場が一貫して推進的なトレンドをたどっているときよりも、曲がりくねった修正局面にあるときは、いっそう忍耐強くフレキシブルなカウンティングのスタンスが求められる。
いろいろな修正パターンの研究結果から得られる最も重要なひとつのルールは、「修正波はけっして5つの波とはならない」ということである。推進波だけが5つの波となる。こうした理由から、メジャートレンドとは逆方向の最初の5つの波の動きは、修正局面の終わりではなく、その一部にすぎない。特徴的な修正のパターンは、主に次の4つのカテゴリーに分類される
・ジグザグ(5−3−5)
・フラット(3-3-5)
・トライアングル(3-3-3-3-3)
・複合型(ダブルスリーとトリプルスリー)
・ジグザク(シングル/ダブル/トリプル)
強気相場における「シングルジグザグ」は、A−B−Cと表示される単純な3つの波の下降パターンである。連続する副次波は5−3−5となり、B波の頂点はA波の始点よりもかなり低くなる。
弱気相場のジグザグ修正は、下降トレンドとは逆方向に向かう。こうした理由から、弱気相場のジグザグはときに逆ジグザグとも呼ばれる。
特に最初のジグザグが通常の目標値に達しないときは、ジグザグが連続して2回、多いときには3回ほど出現することもある。このようなときは、各ジグザグの間に「3つの波」をはさみ、「ダブルジグザグ」または「トリプルジグザグ」と呼ばれるものを形成する。こうしたフォーメーションは衝撃波の延長に似ているが、それほど頻繁には出現しない。
・フラット(レギュラー/拡大型/ランニング)
フラットの修正波形は、連続する副次波が3−3−5になるという点でジグザグとは異なる。最初のアクション波であるA波には、ジグザグのときのように完全な5つの波として展開するだけの十分な下落の勢いはなく、したがってリアクション波であるB波も当然のことに相場を逆方向に強く引っ張っていくだけの力を欠いているようであり、A波の始点近くで終了する。また、C波も一般にはジグザグ波としてA波の終点を大きく超えることはなく、その水準をわずかに超えたところで終了する。
弱気相場でもこうしたパターンは同じであるが、その形は強気相場とは逆になる。
一般にフラット修正では、それに先立つ衝撃波の値幅がジグザグのときほど大きく帳消しにされることはない。メジャートレンドの勢いが強く、フラット修正がほぼいつでも延長に先立つか、または延長のあとに出現するときほどそうである。その基本的なトレンドの勢いが強いほど、フラット修正は短くなる。衝撃波の第4波がしばしばフラットになるが、第2波がフラットになることはほとんどない。
「ダブルフラット」と呼ばれるパターンもよく見られる。しかし、エリオットはそうしたフォーメーションを「ダブルスリー」と分類している。
・水平トライアングル(三角形)
トライアングルは売りと買いの力の均衡状態を反映しているようであり、通常では出来高の減少とボラティリティの低下を伴う横ばいの動きとなる。トライアングルのパターンには、3−3−3−3−3に細分され、A−B−C−D−Eと表記される重複的な波が含まれる。トライアングルはA波とC波、B波とD波の終点を線で結んだような形をしている。E波はAとCを結ぶラインに達しないこともあるし、そこを突き抜けることもある。 トライアングルには収束型と拡大型という2つの種類がある。さらに収束型トライアングルには、対称、上昇、下落の3つのタイプがある。収束型よりもまれにしか出現しない拡大型トライアングルには、こうした種類はない。拡大型トライアングルは常に図1.42に示したようにしか出現しないことから、エリオットはこの形を「逆対称」のトライアングルと名付けた。収束型トライアングルは、いずれもこれまでの値動きの範囲内に完全に収まっていることから、「レギュラーなトライアングル(Regular Triangle)」と呼ぶことができる。しかし、収束型トライアングルのB波がA波の始点を超えることはそれほど珍しいことではなく、そうなったときは「ランニングトライアングル(Running Triangle)」と呼ばれる形になる。ランニングトライアングルを含むすべてのトライアングルは横ばいの動きに見えるが、E波の終点ではそれに先立つ波の値幅を実質的に帳消しにする。
株式相場でトライアングルが第4波のところに出現すると、第5波はしばしば動きが速く、そのトライアングルの最も広い部分の距離をほとんど動くことになる。エリオットは、トライアングルに続くこうした値動きの速い短い推進波を呼ぶときに、「スラスト(Thrust)」という言葉を使っている。一般にこうしたスラストは衝撃波であるが、エンディングダイアゴナルとなる。力強い相場ではスラストではなく、延長した第5波となる。したがって、もしもトライアングルに続く第5波が通常のスラストを超えるような動きになれば、それは延長波になる可能性が高いというシグナルである。商品相場ではインターミーディエット以上の段階でトライアングルのあとに衝撃波が進行するときは、一般にその波は連続する波のなかで最長の波となる。
・複合型(ダブルスリーとトリプルスリー)
エリオットは横ばいの複合型パターンのうち、2つから成る修正パターンを「ダブルスリー」、3つから成る修正パターンを「トリプルスリー」と呼んでいる。シングルのスリーはジグザグやフラットであるが、トライアングルはそうした複合型修正パターンの許容される最後の部分であり、こうしたコンテクストから「スリー」とも呼ばれる。複合型はジグザグ、フラットやトライアングルを含むより単純な修正のタイプで構成されている。それらが出現するのは、延長された横ばいの動きによるフラットな修正局面であるようだ。ダブルジグザグとトリプルジグザグについては、単純な修正パターンの部分はW、Y、Zと表記される。Xで表される各リアクション波は修正パターンの形をしているが、一般にはほとんどジグザグである。一般に前の波の値幅を十分にリトレイスするには、最初の形がダブル(二重)やトリプル(三重)と繰り返して現れる必要がある。しかし、複合型ではよく最初の単純なパターンが前の波の値幅を十分に修正する。ダブルやトリプルのパターンとなるのは、価格目標が十分に達成されたあとでも、主に修正プロセスの期間が延長していることによるようだ。ときにチャネルラインに届いたり、または衝撃波のほかの修正と結び付きを強めるために、余計な時間が必要になることもある。揉み合い局面が続くと、それに伴う投資家の心理とファンダメンタルズもそれに応じてそのトレンドを延長させる。