著 者 ロバート・R・プレクター・ジュニア、A・J・フロスト
監 訳 長尾慎太郎
訳 者 関本博英
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エリオット波動とは、ラルフ・N・エリオット氏による「市場の価格変動には一定の秩序が存在する」という考え方。
それは、フィボナッチ数列のもと、5つの局面(5波動の推進波)とそれに続く3つの局面(3波動の修正波)という8つの基本リズムを1つの周期として反復して繰り返されていくという...つづき→
「本書はエリオット波動原理に関する決定的で素晴らしい本だ。波動原理に興味のあるすべての人々に推薦したい」(ダウ・セオリー・レターのリチャード・ラッセル氏)「われわれは心より本書を推薦する。人類の経験に関する科学的な波動理論として決定的な書物だ。テクニカル分析や波動分析に興味のある人にとっては必読書である」(ゴールド&シルバー・トゥデー)
「素晴らしい本だ。簡潔明瞭であるうえ、大胆な内容だ。投資の初心者ばかりでなく、ベテラン投資家にとっても、断トツで役に立つ波動原理の包括的な書物である」(大手投資顧問会社であるウエリントン・マネジメントのウィリアム・ディイアニー氏)
「やってくれた。エリオット波動理論の基本的な手引書としてこれ以上のものはない」(ビジネス&インベストメント・アナリシスのドナルド・J・ホップ氏)
「真摯なテクニカル分析家にとって最高の参考書だ。自らの波動理論の構築するときに必要なすべてのポイントが網羅されている」(フューチャーズ)
「これまで読んだフィボナッチ級数の内容としては、本書の第3章が最も優れている。ここを読むだけでも本代を支払う価値はある」(株式投資ニュースレター「ザ・ダインズ・レター」のジェームズ・ダインズ氏)
「生涯の3分の1をこのビジネスに捧げてきたが、エリオット波動原理を本当に理解できたのはこの本が最初だ。エリオット波動原理といえば、真っ先に本書を推薦したい。プレクター氏が使って成功してきたすべての投資手法が、本書に盛り込まれている」(ザ・プロフェッショナル・インベスター)
「本書はとても重要で魅力的であるうえ、ときにドキッとさせられる。株式、債券や商品のファンダメンタリストやテクニカルアナリストを問わず、すべての真摯なマーケットの生徒はぜひとも本書を読むべきだとわれわれは確信する」(マーケット・ディシジョンズ社)
「1978年の本書の予想には多少の外れもあるが、それでも株式相場の長期予想としてはこれまで最も正確なものとして、後世に残されるべきだ」(モニター・マネー・レビューのジェームズ・W・コーワン氏)
トレードを始めたい人には、私がトレーディングのバイブルだと考える4冊の本を勧めている。 まずはエドウィン・ルフェーブルによるジェシー・リアモアの自伝風小説である『欲望と幻想の市場』(東洋経済新報社)。 次はマギーとエドワーズの共著である『マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』(パンローリング)で、20世紀前半に書かれたこの本の教えは今でも有効だ。 3冊目のロバート・プレクターとA・J・フロスト著『エリオット波動入門』(パンローリング)は古典と言える1冊である。 最後のジャック・シュワッガー著『マーケットの魔術師』(パンローリング)は優れたトレーダーのインタビュー集となっている。 『欲望と幻想の市場』はトレーディングと株価テープを読むときの感情の起伏を描き出した非常に面白い読み物になっている。『マーケットのテクニカル百科』と『エリオット波動入門』は優れたリスク・リワード比率のトレードを仕掛けるための具体的かつ体系的な方法を紹介した本で、すべてのトレードを適切で思慮深く執行するための指針となってくれる。 最後に『マーケットの魔術師』は素晴らしい読み物で、この本に登場するほぼすべてのトレーダーが述べているとおり、大金を儲けるためにはまず間違ったときに失う金額を少なくするべきだという教えを学んでほしい。 |
エリオット波動を研究することも大事だと思います。 その場合、肝心なのは、一番単純なやり方に従うことです。エリオットの細かい点にこだわってはいけません。何よりも、A-B-C(エリオット波動の基本波と訂正波)に従うことで最も大きな利益が得られるのです。A-B-Cで売って、A-B-Cで買うわけです。それが基本的なエリオット波動の真髄なんです。 例のエクステンションだの、エクステンションのエクステンションだのに深入りしようとすると、訳が分からなくなってしまいます。 『マーケットの魔術師 システムトレーダー編』(234ページ)より引用
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彗星の尾は、太陽から対数らせんを書きながら遠ざかっていく。クモは、対数らせん状にクモの巣を作る。バクテリアは、対数らせん状に点を結ぶような速度で増殖していく。隕石が地球の表面に衝突するときは、対数らせんに相応したようなくぼみを作り出す。電子顕微鏡に準結晶をを映すと、対数らせん状になっているのがわかる。松ぼっくり、タツノオトシゴ、カタツムリの殻、軟体動物の殻、海洋波、シダ、動物の角、ヒマワリやヒナギクのなどの種の曲線状の配列など、ありとあらゆるものが対数らせんの形をしている。
また、ハリケーンの雲、渦巻き、宇宙の銀河系なども対数らせん状に旋回している。互いに黄金分割の比率にある3本の骨で構成される人間の指でさえも、枯れていくポインセチア(観葉植物)と同じらせん状になっている。
宇宙のいろいろなものに対数らせんが影響を及ぼしている一例が示されている。宇宙の10億年の時間と光年は松ぼっくりと渦巻く銀河系を分離したが、その形はまったく同じである。おそらく基本的な法則である1.618という比率が、自然のダイナミックな現象を支配しているのであろう。このように、黄金らせんは自然界の壮大な形のひとつとして、終わりのない拡大と縮小の力として、そしてダイナミックなプロセスを支配する不変の法則として、象徴的な形をとってわれわれの目の前に広がっている。それらすべての根底にあるのは、中庸としての1.618の比率である。
ボブ・プレクターは、相場の世界ではその名を知らない者がいないほど有名なテクニカル・アナリストである。彼は非常に優れたアナリストで、その才能には誰もが一目置く存在である。彼の学歴を見ると、奨学金をもらいエール大学で心理学を専攻した。1971年、同大学を卒業後、テクニカル分析を徹底的に検証して、相場のトレンドの見極め方を研究した。メリルリンチでアナリストとして活躍をしている間に、ラルフ・ネルソン・エリオットの波動理論と運命的な出合いをする。
(中略)
1977年にプレクターはメリルリンチを退職して、ジョージア州の州都アトランタから北に一時間ぐらい離れたゲインスビルという町に移り住み、そこから波動理論を基に市場分析した結果をレポートにまとめていた。このニュースレターには『エリオット・ウエーブ・セオリスト』というタイトルがつけられ、投資家からかなり高い人気を集めていた。1978年にはフォレストと一緒に、『エリオット波動原理』をプレクターは刊行して、その名が広く一般大衆まで知れわたるようになった。この理論を基に、80年代にアメリカで株式相場の動きを見事に的中させて、その名は全国にしられるようになった。
Q:あなたが注目しているアナリストはいますか?
A:マーティー・ツバイクとネッド・デービスはすごい。ボブ・プレッシャーはチャンピオンだ。彼は究極の日和見主義だから最高だ。
Q:日和見主義とはとういう意味ですか?
A:エリオット波動理論が驚くほど有利なリスク/リターンの機会を提供してくれる、というのが彼の成功の理由だ。同様の理由で私も自分の成功の多くはエリオット・ウェーブ・アプローチのおかげだと思っている。
◇A・J・フロスト(A.J.Frost)
公認証券アナリスト(CFA)。カナダ・オンタリオ州のクイーンズ大学を卒業後、公認会計士としてそのキャリアをスタートした。1934年にオンタリオ公認会計士協会に公認された。1960年にはエリオット波動原理を彼に紹介してくれた故ハミルトン・ボストンのパートナーになった。1977年には全米テクニカルアナリスト協会で、エリオット波動原理について講演し、そこでプレクター氏と出会い、2人の考え方が極めて似ていることを知った。フィナンシャル・ニュース・ネットワークに毎週マーケットコメントを寄稿しているほか、カナダ・テクニカルアナリスト協会の会合では最も人気の高い講演者のひとりである。
付録
用語解説
出版者の後記
ところで、ほとんどのテクニカル分析は価格の定常性を前提として理屈が組み立てられているために、現実には非定常的なデータである株式や商品にそれを当てはめようとすると大変な困難を伴うことになる。このためにいにしえのテクニカル分析の権威たちは、さまざまな例外規定を設けることや階層を多くし細分化することによって体系を複雑化し、どんなケースにもいずれかのルールが当てはまるようにして問題を解決しようとしてきた。
しかし、学問体系の発達した現代においては、そんな滑稽なことをしなくても問題は簡単に解決できることが分かっている。実務的には、価格データにテクニカルな分析を試みようとする場合には、単位根検定などを行ったうえで、基データを微分したりほかの類似データとの差分を取ったりして時系列データの定常性を確保したうえで適用をしており、基データをそのまま目的変数に用いるケースは極めてまれである。過去の値動きについて御都合主義の解説をすることが仕事の評論家には縁のないことであるが、あくまで投資・トレードの実践のために解析を行う私たち投資家にとっては、そういった処理を行うことで始めてテクニカルな分析は普遍的な価値を持つのである。
だがそうは言うものの、例外がまったくないわけではない。先日私は米国のボストンに本社を置く超一流の資産運用会社のファンドマネジャーに話を聞く機会があった。彼は20年の経験を持つ運用者で、もっぱら旧来のテクニカル分析を用いて資産残高が数千億円の株式ファンドを運用しており、これまでに大変良好なトラックレコードを残している。今のところ彼が運用するプログラムに投資する国内ファンドが設定されていないのは、日本人にとって非常に残念なことだ。
さて、機関投資家としての運用の世界で、テクニカル分析によって運用されているファンドはほかに聞いたことがないので、私は大変な興味を持ってそのプログラムの資料を読み、インタビューを行った。その結果分かったことは、くだんの運用者はテクニカル分析を非常に大雑把な形で使っており、ルールの細分化などまったく意味のないことだとしているのである。また、ほとんどのテクニカルアナリストが行うようなトップダウン・アプローチではなく、彼はボトムアップ・アプローチの形でテクニカル分析を使っているのである。テクニカル分析を標榜するほとんどの人が現実には言行の一貫性を著しく欠くなかにあって、彼は自分の理論と実践、そして残してきた結果が見事に一致している素晴らしい運用者であったが、それを可能ならしめたのはこういった特異な利用法にあったのだと私は理解した。読者におかれても、よく工夫することで本書に解説されているような伝統的なテクニカル分析を個々の投資活動に役立てることができると、私は確信している。
最後に、本書の刊行に携わった多くの方々に心から感謝の意を表したい。
2009年7月
長尾慎太郎
しかも本書は版を重ねるごとに、ますますその内容を充実させている。ロバート・プレクターが年数をかけてその内容を綿密に洗練・向上・拡充させたことから、新版が出版されるたびに、ますます多くの大学が本書をテキストとして使用するという目標も現実になっている。こうした努力はすでに実を結んでいる。A・J・フロストは1970年代に、「ダウ理論を知っている100人の人たちのうち、エリオットのことも知っているのはたったひとりだよ」というハミルトン・ボルトンの1960年代の嘆きをよく口にしていたものだ。そして1986年の夏にフロストはプレクターに電話をかけて、「ようやくこの2人の立場が逆になってきたよ」と叫んだ。
ほんの数年前までは、相場の動きは自己相似的なパターンになるという考えに対して多くの反論が出ていたが、最近の科学的な調査結果によれば、自己相似的なパターンというフォーメーションは、株式相場を含む複雑なマーケットの基本的な特徴のひとつであることが明らかになっている。そうしたマーケットのなかには、いわゆる成長期のあとに非成長または後退の段階が交互に到来して、さらに規模の大きい類似のパターンを形成するという「断続的な成長」を遂げるものもある。自然界にはこうした「フラクタル(次元分裂形)」がたくさんあり、われわれが今から20年前に本書の旧版で、そしてR・N・エリオットも約60年前に明らかにしたように、株式相場もその例外ではない(ロバート・プレクターは1990年に、このテーマに関する「社会的進歩のフラクタルな形[The Fractal Design of Social Progress]」と題するリポートを公表している。その内容は、1986年5月に全米テクニカルアナリスト協会[MTA]で行った彼のスピーチがベースとなっている。ニュークラシックス・ライブラリー社では、まもなく出版される彼の著書のなかにこのリポートを収録する予定である)。
われわれが株式の大強気相場の到来を予想したフロストとプレクターによる本書の初版本を世に出してから、早くも20年がたったとは信じられない思いである。その強気相場は当初の予想をはるかに超えるほど大規模なものになったが、著者たちはこの上昇相場を「サイクル第V波(Cycle Wave V)」と位置づけるスタンスを今でも堅持している。現在の株式相場はプレクターが15年前に表現した状況とかなり類似している。すなわち、「サイクル第V波の末期になると、投資家の群集心理は1929年と1968年、それに1973年の上昇相場をすべて合わせたような躁の状態になり、最終的には陽極のピークまで行ってしまう」。1998年現在の株式相場を見ると、株式市場のあらゆるデータやそこに群がる投資家の心理はまさにこうした状況を反映している。
この新版でも初版本と同じように将来の株価予想に関するすべての内容をそのまま盛り込んでいるので、新たに本書を手にする読者でもフロストとプレクターが数十年も前に行った株式相場の長期予想に関する正しさと誤りを確認できるだろう。もっとも、著者たちのこうした予想について、投資アナリストのジェームズ・W・コーワン氏は、「1978年の本書の予想には多少の外れもあるが、それでも株式相場の長期予想としてはこれまで最も正確なものとして、後世に残されるべきだ」と述べている。
現在の大強気相場のあとに史上最大の大弱気相場が到来し、本書の後半の予想が的中するのかどうかはまだ分からない。しかし、著者たちは断固としてそうしたシナリオを今も崩していない。
本書を出版したニュークラシックス・ライブラリー社
図解の背景チャートは、以下の方々のご好意により提供された(敬称略)。カナダ・モントリオールのバンク・クレジット・アナリスト誌(図2.11、図5.5、図8.3)、ニュージャージー州ジャージーシティーに在住のR・W・マンスフィールド(図1.18)、メリルリンチ社(図3.12、図6.8、図6.9、図6.10、図6.12、図7.5)、マサチューセッツ州ボストンのセキュリティーズ・リサーチ社(図1.13、図6.1〜図6.7)、ニューヨークのスタンダード・アンド・プアーズ社のトレンドライン部門(図1.14、図1.17、図1.27、図1.37、図4.14)。
図3.9の出所は次のとおりである。トゥルーディ・H・ガーランド著『Fascinating Fibonaccis』(絵)、デビッド・バーガミニ著『Mathematics』とライフ誌編集部(らせん状の花とパルティノン神殿)、1988年3月号のオムニ(Omni)誌(ハリケーン、渦巻き、貝殻)、1969年3月号のサイエンティフィック・アメリカン誌(ヒマワリ)、1986年5月号のサイエンス86誌(松ぼっくり)、1987年6月号のブレイン・マインド・ブレティン誌(DNA)、1979年12月号のフィボナッチ・クオータリー(人間の身体)、『Nova:Adventures in Science』(原子核粒子)、イスラエル・ハイファのテクニオン工科大学のダニエル・シェクトマン博士(準結晶)、カリフォルニア州パサデナのヘール天文台(銀河系)。
付録の一部のチャートは、ネッド・デービス・リサーチ社(フロリダ州ノコミス)、Foundation for the Study of Cycles(ペンシルベニア州ウエーン)、メディア・ゼネラル・フィナンシャル・ウイークリー誌(バージニア州リッチモンド)から提供していただいた。
特に注釈がないかぎり、すべての図はボブ・プレクター(本文)とデイブ・オールマン(付録)によって作られた。文字の配列と張り込みという大変な仕事は、ロビン・マチシンスキーによって忍耐強く行われた。表紙のデザインは著者たちが考案し、ルイジアナ州ニューオリンズ在住のグラフィックアーティストであるアイリーン・ゴールドバーグによって作成された。なお、本書の旧版はジェーン・エステス、スーザン・ウィロビー、ポーラ・ロバーソン、カレン・ラトバラ、デビー・イゼラー、ピート・ケンドール、ステファニー・ホワイト、リー・ティプトン、アンジー・バリンガー、サリー・ウエブ、パム・キモンズによって作成された。
われわれ著者は本書で使用されたすべての資料の出所先に対し、謝辞を述べたいと思います。漏れがあればそれは偶然であり、ご指摘いただければ、将来の版において訂正いたします。
「ひとつの世代が去り、次の世代がやってくるが、地球は永遠にとどまっている。太陽はまた昇り、沈み、そして昇ってきたところへ戻っていく。風は南に吹き、回って北にも吹く。風はぐるぐると回り続け、そして再びその巡回路に沿って戻ってくる。すべての川は海に流れ込むが、海があふれることはない。川はやってきた流れに再び戻る。……存在してきたものは、これからも存在する。なされるものは、将来にもまたなされる。太陽の下では新しいものは何もない」
この深遠な言葉から引き出すことができる結論は、人間性というものは変わることがなく、そのパターンもまた変わらないということである。われわれと同世代の4人の人物がこの真理において、経済学の分野で名声を築いた。この4人とはアーサー・ピグー、チャールズ・ダウ、バーナード・バルーク、ラルフ・ネルソン・エリオットである。
景気の変動、つまり景気の循環について何百という理論が提起されてきた。それらの論拠とは、通貨供給量の変動、過剰・過少在庫、政治的な施策に起因する世界貿易の変化、消費者の態度、資本支出などであり、さらには太陽黒点や惑星の位置でさえもそうした論拠に含められた。そして、イギリスの経済学者ピグーが景気の循環を人間の方程式に引き直した。ピグーによれば、好況・不況という景気の変動は、人間の過剰な楽観論に過剰な悲観論が続くことによって引き起こされる。振り子がある方向に行きすぎると供給過剰となり、別の方向に行きすぎると供給不足となる。ある方向への過剰は別の方向への不足と生み出すといったように、拡張と収縮はけっして終わることがない。
株式相場の変動について、アメリカでは最も造詣の深い研究者のひとりであるチャールズ・ダウは、株価の継続するらせん的な動きのなかに一定の反復性があることに気づいた。ダウは、株価は目的もなしに風に吹かれてあちらこちらへと揺れ動く風船のようなものではなく、一見すると混乱しているように見える株価の動きのなかに、秩序立った連続した動きを読み取った。ダウは時の試練に耐えてきた2つの原理を発表した。最初の原理は、メジャートレンドが上向きの株式相場は3つの上昇スイングによって特徴づけられるというものである。
最初の上昇スイングとは、それに先立つプライマリーな下降スイングによる超悲観的な見方に対するリバウンドの動きである。二番目の上昇スイングとは、景気と企業収益が回復するという見通しに基づくものである。最後の三番目の上昇スイングは、株価が企業価値を無視しすぎたという状況によって引き起こされるものである。ダウの二番目の原理は、株価が上昇または下降しても、どのようなスイングのどの時点においても、そうした動きの3分の8以上を帳消しにする逆の動きが存在するというものである。ダウは意図的にこうした法則を人間的な要因の影響に結び付けなかったのかもしれないが、株式相場は人間によって作られるものであり、ダウが注目した株価の継続性または反復性は、必然的に人間的な要因によって引き起こされるのである。
一方、バルークは株の売買と米企業の社長たちへの投資顧問業によって大富豪となったが、これについてはほんの数語で次のようにずばりと言っている。「しかし、現実の株式相場の変動について記録されるものは出来事そのものではなく、そうした出来事に対するわれわれ人間の反応である。つまり、何百万人という男女がそうした出来事は自分の将来にどのような影響を与えるのだろうかと感じることである」。バルークはさらに続けてこう述べている。「換言すると、とりわけ株式相場は人間そのものである。株価とは将来を読もうとする人間だ。そして、株式相場はそれをかなりドラマチックな舞台にする激しい人間的な特質である。その舞台の上で男と女は互いに相反する判断、希望と恐怖、強さと弱さ、貪欲さと理想を戦わせている」。
ところでラルフ・N・エリオットであるが、彼が自分の理論を発展させていたときには、おそらくピグーのことは聞いていなかったと思われる。エリオットはメキシコで何とか働いていたが、身体的な病気のために――彼は貧血症だと言っていたと思うが――カリフォルニアにある家のフロントポーチの揺りイスに世話になることになった。彼はこのときの有り余るほどの時間を利用して、この困難を克服しようと努力し、ダウ平均の歴史と値動きに反映された株式相場の研究に取りかかった。
このときの長期にわたる研究から、エリオットはこの序文の初めで引用した伝導の書の伝道者によって雄弁に語られた言葉と同じ反復的な現象を発見した。彼は観測・研究・思索を通じて自らの理論を発展させるなかで、それをダウが発見したものと結合させたが、包括性と正確さという点ではダウの理論をはるかに超えていた。両者はともに相場の動きを支配している人間の公式の複雑さを感じ取っていたが、ダウは筆で幅広く色を塗り、エリオットはさらに大きな幅広い筆で詳細に色を塗ったのである。
私は文通を通じてエリオットと出会った。私はエリオットが自分の労作を発表したいと思っていた国内株式週報を発行していた。彼との手紙のやりとりが続いたが、1935年の第1四半期の状況が事の発端となった。そのときの株式相場は1933年の高値から1934年の安値に下落したあと、再び上昇を始めたが、1935年第1四半期にダウ鉄道株平均は1934年の安値水準を下抜いた。投資家、エコノミスト、株式アナリストたちは、1929〜1932年の苦しい状況からまだ立ち直っておらず、1935年の早い時期の最安値更新は最も当惑させる出来事であった。アメリカはさらなる苦難の時期に突入するのだろうか。
鉄道株が値下がりしていた最後の日に、私はエリオットから今回の下落はこれで終わり、今の下降局面は株価が一段高になる強気相場の最後のつまずきにすぎないと強調する電報を受け取った。それ以降の数カ月でエリオットの予想の正しさが証明されたので、私は週末をミシガンにある私の家で過ごすようにエリオットを招待した。彼はこの招待を受け入れ、彼の理論を詳しく私に説明してくれた。
しかし、私はエリオットを私の会社に参画させることはできなかった。彼がすべての決定は自分の理論に基づくべきだと主張したからである。そこで私はウォール街に彼の職を世話した。そして彼の研究結果をすべて私に明らかにしてくれたことに対する感謝の気持ちとして、私は彼の名前で『波動原理(The Wave Principle)』と題する小冊子に彼の理論を書き記した。
その後、私は私が寄稿していたフィナンシャル・ワールド誌にエリオットを紹介し、彼は一連の論文を通じて、自らの理論の要点を同誌に展開していった。のちにエリオットは『波動原理』を『自然の法則(Nature's Law)』と題するさらに大きな著作にまとめた。そのなかで彼は、フィボナッチの魔術や彼が自らの理論を確認してくれたと信じる深遠な原理の一部を紹介した。
本書の著者であるA・J・フロストとロバート・R・プレクターは、エリオットの熱心な研究者である。エリオットを発見し、彼の理論を応用することによって株式投資で成功したいと望んでいる人々にとって、本書はその望みを必ずかなえてくれるだろう。
1978年 ミシガン州グロースポイント
チャールズ・J・コリンズ
拝啓
私はしばらく本状の内容をうまくまとめようとしましたが、私が望む気持ちをお伝えできる適当な表現が見つからず、今でもできそうにありません。私はあなた様の知己はまだ得ておりませんが、私がとても評価しておりますサービスレターを通じて、あなた様をよく存じ上げているように感じております。私の勧めで友人たちにもそれを購読してもらっています。私はレア氏の著書とサービスの最初の購読者のひとりでありました。
私は約6カ月前に、株式相場の値動きのなかに3つの特徴を発見しました。私の知るかぎり、それについては今までだれも指摘したことはありません。株式相場のこの3つの特徴がダウ理論を補足するかなり重要なものだと主張することが、自分勝手な言い分であるとは思っておりません。
当然のことながら、私はこれらの発見から利益を得たいと思っています。あなた様にはかなりの支持者がおり、したがってあなた様と私はお互いに満足できる合意に達することができるだろうと思った次第です。あなた様のお手紙のなかにときどき「ほかの情報源」という引用部分を見かけますが、それによって私はあなた様が私の発見に興味を持たれるのではないかと思ったのです。さらに、あなた様のサービスレターの内容を見るかぎり、あなた様は私の発見をまだよくご存じではないと判断いたしました。
私が発見した株式相場の値動きに関する3つの特徴を採用されても、サービスレターのなかでそれについて言及される必要はまったくありません。例えば、ダウ平均が去る4月に107ドルの高値を付けたとき、私はそれ以降の底は85ドルであり、そこに到達する日をだいたい予想しておりました。しかし、あなた様のお手紙では、買いポジションを手仕舞う根拠としてダウ理論が使われておりましたが、私はこうしたことがいつでも可能であるとは思いません。言うまでもないことですが、あなた様のサービスはダウ理論から大きな恩恵を受けられたと思います。ついでに言わせてもらうならば、現在のメジャーな強気相場のあとには、メジャーな弱気相場の暴落局面が到来すると私は予測しております。これは私の個人的な意見ではなく、株式相場のルールを単純に当てはめただけの結論です。
私が発見した株式相場に関する3つの特徴はダウ理論ほどメカニカルではありませんが、ダウ理論に欠けている重要な予測価値を付け加えるものです。そのひとつは、マイナー、インターミーディエット、メジャーな波動の終了時点で、ほぼ必ず反転のシグナルを出します。二番目の特徴は、株価のすべての動きを6つの波に分類するものです。残りのもうひとつの特徴は、株価が1932年に底を打ったときから83%正しかった時間の要因を扱ったものです。もっとも、ダイバージェンスが起きたときは、この時間の要因は一時的に逸脱することがあります。
あなた様が近い将来に西海岸へのご訪問をお考えでなければ、デトロイトまでの往復の旅費をご負担願えないでしょうか。あなた様のエージェントであるオズボーン様がここにおいでになることは存じておりますし、彼は私を「推奨」してくれるものと信じております。ただし、彼もそのほかのだれも私のこの発見については何も知らないことを申し添えておきます。
敬具
R・N・エリオット
差出人 R.N.Elliott
833 Beacon Avenue
Los Angeles,California
Federal 2667
受取人 Mr. C.J.Collins
Investment Counsel,
Detroit,Mich.
明確に提示されるならば、波動原理の基本的な原則を学び、それを応用することはそれほど難しいことではない。しかし残念なことに、このテーマに関するこれまでの出版物はほとんど絶版になっており、それらの書物でも波動原理のテーマのポイントをばらばらに扱っているなど、とにかくいろいろと問題が多かった。つまり、波動原理のテーマについて研究しようとするとき、決定的な参考書が何もなかったのである。本書がベテランの分析家と波動原理に興味を抱いている一般投資家の両方に、エリオットの魅力的な分野を紹介することができれば、われわれとしてはとてもうれしく思う。こうした意図の下に、われわれはこのテーマについて完璧に論じているような書物を作ろうと努力してきた。
われわれは読者の皆さんがダウ平均の時間足チャートを付けることによって、独自の研究を進めたいと思うようになり、そしてついには「なんだ、そういうことだったのか」と熱く叫ぶようになれると信じている。皆さんがいったん波動原理を理解してしまえば、マーケットの分析に向けた新しく、かつ魅力的なアプローチだけにとどまらず、さらには人生のほかの分野にも適用できる数学的な哲学を自由自在に駆使できるだろう。本書は皆さんが直面しているすべての問題に解答を与えることはできないが、本書を精読すれば、相場の見通しと同時に人間の行動に潜む不思議な心理、いわゆるマーケットの行動を読み取ることができるようになるだろう。エリオットのコンセプトは皆さんが簡単に理解できる原理を反映し、また常に新しい視点で株式相場を見ることができるものなのである。
1978年
A・J・フロストとロバート・R・プレクター