『ゾーン 最終章
トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスの最後のアドバイス』
2017年8月発売/四六判 558頁
ISBN978-4-7759-7216-8 C2033
定価 本体2,800円+税
マーク・ダグラス著書 | |||
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マーク・ダグラス |
シカゴのトレーダー育成機関であるトレーディング・ビヘイビアー・ダイナミクス社の社長であり、日米でロングセラーになっている『ゾーン』 と『規律とトレーダー』(いずれもパンローリング)の著者。また、講演DVDに『「ゾーン」 プロトレーダー思考養成講座』がある。
自らの苦いトレード経験と多くのトレーダーの話や経験から、トレードで成功できない原因とその克服策を提案している相場心理学のパイオニア。
ダグラスの著書は投資業界の古典として、またウォートン・ビジネス・スクールはじめアメリカの多くの大学院で使われている。
2015年に多くのトレード関係者に惜しまれながら、亡くなった(享年67歳)。
ポーラ・T・ウエッブ(Paula T. Webb)
マーク・ダグラスの配偶者であり、行動ファイナンスのコーチでもある。ダグラスと二人三脚で多くのトレーダーに相場の啓蒙や心理的面でのサポートを行ってきた。
彼女はマーク・ダグラスの意思を継いで、https://www.paulatwebb.com/ を運営している。
第1部
第1章 着実な成果を上げるためにはプロのように考える必要がある
第2章 トレードに影響する複雑な心理
第3章 相場分析は着実な成果を上げるカギではない
第4章 値動きの仕組み――結局は注文の流れ次第
第2部
第5章 トレードの仕組み
第6章 売買注文の片寄りを生むさまざまな市場参加者
第7章 売買注文の流れからテクニカル分析を見る
第8章 テクニカル分析に固有の限界
第9章 「分析に対する幻想」を理解する
第10章 確実に損失を避けて勝つために分析に頼っても行き詰まる理由
第3部
第11章 トレードの世界では考え方が主要なスキル
第12章 着実に成果を上げるための精神的な基礎
第13章 スロットマシンプレーヤーの視点
第14章 分析に基づいて値動きに賭けるトレーダーはギャンブルをしているのか
第15章 復習
第4部
第16章 確率に基づく考え方を身につける
第17章 メカニカルトレード
第18章 裁量トレード
第19章 直感的トレード
第20章 トレード日誌を付けることの重要性 ポーラ・T・ウエッブ
ところで、東洋の文化のなかで生きる私たち日本人には、もともと世の不完全さを受け入れる精神的な土壌がすでにある。したがって、アメリカ人とは違ってトレードにおいても必ずしも「勝つことがすべて」なのではない。このため本書の読み方も、自己効力感や全能感が強い国の読者とは当然違ってくることになる。実際、私がこれまでに会った日本人の機関投資家の運用者のすべてと個人投資家の過半の人は、運用結果は市場が決めることであり、自分の意志でそれをコントロールすることはできないと正しく理解していた。こうした現実的な考え方は、多少のトレード経験と観察力があれば、日本人ならだれでも自然に習得済みのことである。
一方で、逆に多くの日本人は著者の説く確率・統計に基づいた戦略に対する理解が希薄である。これは曖昧さをよしとする文化の裏返しでもあるが、「何が客観的に正しいのか?」を限界まで突き詰めて考えるという習慣がないため、ともするといとも簡単に疑似科学にだまされることになる。この欠点は投資においては致命的な結果をもたらす。本書では、テクニカル分析を取り上げてその誤謬を解説しているが、その構造的な欠陥については名著『テクニカル分析の迷信――行動ファイナンスと統計学を活用した科学的アプローチ』(パンローリング)を本書と合わせてお読みいただければより理解が深まると思う。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山口雅裕氏には丁寧な翻訳を、そして阿部達郎氏は緻密な編集・校正を行っていただいた。トレードにおけるメンタルマネジメントの先駆者であるダグラスの遺稿を日本で発行できたことは関係者一同の誇りであり、本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2017年7月
読者のほとんどは私について何もご存じないと思うので、簡単に経歴を紹介しておきます。マークと私は三〇年以上の間、ビジネスパートナーであり、夫婦であり、親友でした。共に人生を過ごしてきたこの期間、私たちは仕事をしている日は毎日、お互いの仕事のあらゆる面を伝え合ってきました。私の著書やコーチングにとって彼は欠かせない存在でしたし、逆も同じでした。トレード業界の多くの人にとって、これは驚きかもしれません。おそらくマークの妻として以外に私の名前を聞いたことがある人はほとんどいないからです。これは二人が意図的に行ってきたことです。二人とも内気なほうだからですが、もっと重要なことがあります。二人の仕事は多くの点で関連しているとはいえ、お互いに独自の考え方があり、トレーダーに対するコーチングの手法も異なるからです。
そういうわけで、この偉人の経歴と本書についてここで簡単に振り返っておきます。マークは確かに昔も今も偉大です。相手のことを考えるだけでなく、心の底から相手を思いやるというこの業界では数少ない人でした。彼はどんなトレーダーの困難にも常に耳を傾けていました。しかも、相手が事務所に電話をかけてきたり、直接尋ねてきて、かなりの時間を取られても、相談料を請求しないときがたびたびありました。マークはだれであれ、本性は善良だと信じていました。時には行きすぎと思われるほどでしたが、彼はそういう人だったのです。人生でも仕事でも極めて誠実でした。能力の及ぶかぎり自分が信じる道を進み、その生き方は彼や彼の著書を知る者すべての手本になっていました。
マークは自分の能力を自慢するような人ではありませんでした。彼の自慢をするのは昔も今も私であり、私たちが一緒に働き始めてからずっと変わっていません。
二人が初めて出会ったのは一九八四年の秋で、私がパートタイムのタイピストとして彼のところで働き始めたときでした。マークは数日後に迫った会議での講演用に、手書きのメモをタイプしてもらう必要があったのですが、いつも彼の秘書をしていた人は休暇を取り、当時、「ファットファーム」と呼ばれていた減量施設に出かけていたのです。私が彼のトレーダー仲間でビジネスパートナーだった人に頼まれて、彼のオフィスに午後三時半ごろに着くと、そこで彼を紹介されました。そして、まさしくその午後からタイプをし始めたのです。
私はマークの独創性や思考過程、アイデアや概念をいともたやすく組み立てているかのような様子にとても感動しました(実際には、トレーダーが簡単に理解できるようにまとめるのはとても大変で、著書を完成させるのに何年もかかっていました)。
そして、ここで読者に正直に言っておくと、その最初の夜に私は彼に恋をしたのだと思います。私は彼の素晴らしい頭脳に惚れ込んだのです。でも、かなりハンサムだったことも言っておくべきでしょう!
彼はまた、多くのことに関心を持っていました。私も大好きなアイスホッケーをしていました(私の父はアマチュアのスピードスケート選手だったので、共通点があったのです)。また、どんな天気でもシカゴの中心部の湖畔をほぼ毎日、五マイル走っていました。また、私を笑わせる才能もありました。
私が非常に興味を持ったのは彼のトレードに対する考え方でした。私たちは違う世界で働いていました。二人が出会ったころ、私はCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のフロアでシャトキン・コモディティーズ社の電話係として働きながら、取引所でのトレード法を学んでいました。一方、彼は個人投資家を対象とする先物ブローカーでした。二つの異なる考え方が一九八四年の秋のその日に出合って、共同制作が始まり、それが今日まで続いているのです(二人で完成させた共同プロジェクトがいくつかあり、今後数カ月のうちに公開予定です。彼は本書とそれらの共同作品を最初に出すことを望んでいました)。
繰り返しになりますが、私を知らない人のために、また私がだれなのかや、なぜマークの仕事の一部にかかわっているのか、どういう経歴なのかについて混乱もあるようなので、説明をさせてください。電子メール、アマゾン・ドット・コム、その他のソーシャルメディアでのこれ以上の質問や個人攻撃や中傷がないようにしておきたいのです。
私は一九八〇年に大学を中退すると、就職先を探しにシカゴに行きました。そして、何社かの優良企業や銀行、団体、例えばオッペンハイマー証券、アメリカ歯科医師協会、アップタウン銀行、大規模小売店のマーシャルフィールズ百貨店の面接を受けたあと、ミッドアメリカ商品取引所の副社長だったドナルド・ナッシュの重役補佐の職に就きました。そこはミッドアムの愛称で知られていて、中小投資家に通常の五分の一のミニ先物を提供する最初の独立系の先物取引所でした。当時の私は先物がどういうものなのか、全然知りませんでした。子供のころ、父と夕方にときどき、新聞の証券欄から銘柄を選ぶゲームをして遊んでいたぐらいです。ミッドアムで上司だったナッシュ氏は全フロアの運営責任者で、私は取引所の仕組みを徹底的にたたき込まれました。「買い気配値と売り気配値」の意味や、「出来高」や「取組高」が何なのかを学び、その間にミッドアムでトレード法を学んでいた多数のトレーダーに会いました。彼らは市場について知っていることを喜んで教えてくれました。タートルズというトレーダー集団を作ったことで評判が悪かったリチャード・デニスは、私がミッドアムで働いていたころにそこでトレーダーとしての経歴を始めていました。もっとも、彼との面識はありませんでしたが。
もちろん、私の友人になったトレーダーで、当時は無名だった人もたくさんいました。彼らはその後、CBOT(シカゴ商品取引所)、CBOE(シカゴ・オプション取引所)、そして当然ながらCMEでトレーダーとして成功を収めました。そこで働いていたときは刺激的な時間を過ごしたし、仕事は本当に素晴らしかったです。
当時、私が知っていたこれらのトレーダーのほとんどは若くて情熱にあふれていました。彼らはトレードが大好きで、これからお話ししますが、彼らの情熱にはとても引き付けられました。そして、ミッドアムで働いている間に、私もいつかトレーダーになる気がしていました。彼らは何日、いや何週間か損を出し続けても、トレーダーを辞めて、ほかの仕事で生計を立てようとはけっして思っていませんでした。私はそのことに感心しました。考えてもみてください。お金を損する仕事をだれがやり続けるでしょうか。市場について学ぼうとする彼らの熱意や、トレードで成功した姿を人に見てもらいたいという意気込みはとても魅力的で、これこそが私の進む道だと思いました。
それで、私は知り合いのトレーダーのなかでチャートの提供業務を行っている人や、何らかのシステムを持っている人、勘のいい人、さらには相場がどこに向かっているのか全然つかめないのに、とにかく毎日、ピットに出ているトレーダーの話にすら耳を傾け始めました! もちろん、このころはまだパソコンも電子トレードも普及し始める前のことで、多くのチャートは手書きでした(私は今でも目をつぶって五〜一五分足のチャートを作れるほど、当時はミニTボンド先物のチャートをたくさん作っていました)。そのころでもコンピューターによるチャート提供サービスはありましたが、非常に高価で、利用していたのはほとんど証券会社だけでした。そして、私が調べたトレードシステムは、もちろんどれも普通の英語で書かれていました。
私が当時、検討したシステムの多くはとても複雑で(特に、いわゆるバタフライスプレッドやオプション用のシステム)、私にはほとんど理解不能でした。どうしてそこまでシステムを複雑にする必要があるのか、私には理解できませんでしたが、それを作った先物トレーダーにとって役に立っているものは、自分でも試してみました(幸運にも、システムを作っていたトレーダーのほとんどは友人だったので、私が検討したシステムについてお金を払う必要はありませんでした)。そして、さまざまなシステムを調べ始めて数カ月もしないうちに、私には単純なシステムほど自分の考え方に合うという結論に達しました。
ミッドアムで四年働いて、学べることはすべて学んだと思ったので、私はCMEでシャトキン社の電話係として働きながら、当時はビッグボードと呼ばれていた価格表示板を見ながらトレードを学ぶことにしました。トレーダー仲間たちの教えを受けながら、通常サイズの先物のトレード法を学び始めたのです。
分かったのは、ミニ先物と通常サイズの先物では必要資金は違っていても、大した差はなく、トレードのやり方は同じということでした。私がミッドアムでミニTボンドのトレードをするために考え出したシステムは、CMEで通常サイズのTビル一枚をトレードしてもうまくいき、ミニ先物を五枚トレードするのと変わりありませんでした。どうしてかって? 私は副業でトレードをしていて、まだ生活費を稼ぐための仕事は維持していたので、学ぶこと以外にプレッシャーを感じることが何もなかったからです。そのため、先物のサイズ自体は気にならなかったのです。
私は確かに学び、その期間はとても楽しみました!
前にも述べたように、私がマークに出会ったのはCMEのフロアで働いていた一九八四年の秋でした。その最初の日の夜遅くまでタイピングをしたあと、年末までフロアで働き続けたところで、マークにフルタイムで秘書をしてほしいと頼まれました。公演日が迫っている投資カンファランスが何件かあったのですが、彼の秘書はすでに七〇代で、引退を決めていたのです。さらに、彼は『規律とトレーダー』(パンローリング)の執筆を始めていました。私は一九八五年一月からフルタイムで働き始めました。
その後の数年間に、マークのコンサルティング業と最初の著書、『規律とトレーダー』の執筆は次第に具体化し始めていましたが、私をフルタイムで必要としないときもありました。そういうときには、私は世界最大の法律事務所であるベーカー&マッケンジーの第三シニアパートナーだったトーマス・ネルソンなどの重役たちの個人秘書をしたり、上院のための全米資金調達委員会という団体(政治的な意図はなく、単純に収入が良かった)で働いたりしましたが、いつもマークの仕事に戻っていました。この行ったり来たりが終わったのは、一九九一年に彼と結婚したときです。それ以来、今日まで彼のためにフルタイムで働いてきました。
私が豊かになるためのスキルを学んで意識改革に努めていた時期に、マークやほかの重役たちから学んだのは単純なことでした。それはどんな仕事に就いていても、豊かになってそれを維持するためには自信を持たないといけない、ということです。そして、断定できますが、私が会って共に働いた上院議員たちも、若いころに会った重役たちも、デートをしたか、知人か、出会ったことがある成功したトレーダーたちも皆、稼いだお金はすべて残らず正当な対価だと信じていました。
上院議員については、非難する意図はまったくありません。ただ事実として一般の人は同意すると思いますが、彼らはほとんどの人よりもたくさんの休暇を取っています。ほかの多くのアメリカ人は生活費を稼ぐだけのために職場で週に四〇時間から六〇時間は働いています。ですが、議員たちの多くはそこまでは働いていません。繰り返しになりますが、私が若いころに出会った重役やトレーダーだけでなく、それらの上院議員たちから学んだことは、得たいと望んでいるお金がいくらであっても、自分がそれを得るに値すると信じていないかぎり、その目標はけっして達成できないということです。何時間働いたかや、毎日、毎週、毎年どれだけ努力したかは重要ではないのです。
この話について良い例があります。
私が一九八九〜一九九一年に上院のための全米資金調達委員会で働いたときのことです。一年間の給与審査の日になって、その年にこなした仕事量を考えると、昇給額はまだ十分ではないと思いました。 私はこの不満を上司(プライバシー保護のために名前は出しません)に伝えました。私は効率的に行った仕事をすべて詳しく述べたので、その分は増額してもらえると思っていました。ですが、彼は言いました。「君が年収六万五〇〇〇ドルを受け取るに値すると本当に思っているのなら出そう。だが、君は今、自分にそれだけの価値があるとは思っていない。価値があると私に信じさせようとしているだけだ。それではうまくいかないと思うね」と。認めざるを得ないのですが、彼は正しかったのです。
私の当時の年収はかなり良く、五万ドルでした。一九八〇年代後半の若い独身女性にとって、それは大金でした。それでも、当時知り合いだったほかの個人秘書のうち、似たポジションで働いていた人たちの多くに比べると、まだ安いほうだったのです。それで、私自身が昇給に値するとは思っていないと、上司が考えたのはなぜなのかを振り返り、マークとこの点について詳しく話し合いました。結局、私は自分の考えをもっと広げて、ある信念を絶えず心に抱いている必要があると分かりました。それは自分の値打ちについて、他人がどう判断しようと気にしないという信念です。つまり、他人の判断で自分を評価しないということです。また、これまでに出会ったことがある社長や上院議員、成功したトレーダーすべてと同様に、私も自分が望む金額に値するだけの仕事をしているという信念です。
その日から、豊かであることや、望む金額に「値する」ということが、自分にとって何を意味するのかを探り始めました。長年にわたる知り合いで、市場で得たお金はすべて正当な対価だと信じていたトレーダーたちから学んだことを私は受け入れて、豊かさに関する私の信念のすべてについてマークと話し合いました。そして、自分で信じていれば大成功できると悟りました。 私の内なる旅について簡単に述べておくと、私がこの旅に乗り出すために初めて使った(そして最も良い)著作は。バリー・コニコフによる『ポテンシャルズ・アンリミテッド(Potentials Unlimited)』の一連のテープ、シャクティ・ガワイン著『理想の自分になれる法』(廣済堂出版)、繁栄を実現する訓練の優れた先駆者であるキャサリン・ポンダー著、『「宇宙の力」を使いこなす方法』(サンマーク出版)、モンロー研究所のロバート・モンローによる素晴らしい『ヘミシンク』の一連のテープ(マークが数年間、ここの専門家チームの一員だったので、これは彼が勧めたもの)でした。そして、もちろん、マークとの哲学的で難解な対話も長時間にわたって何度も行いました!
マークと私は長年にわたって、豊かさの探求に加えて、投資業界のほかの革新者たちと仕事をして、生涯の友になりました。少し例を挙げると、アレキサンダー・エルダー(彼も私もときどき高級葉巻を楽しんでいます)、ラリー・ペサベント(彼は私の料理がお気に入りです)、バン・タープ博士(彼とマークはトレード業界でトレード心理学という考え方が知られていなかった一九八〇年代に、同時にそれを教え始めました)などです。そして、マークと私は昔も今もトレード心理学という分野の最前線にいると言っても言いすぎではありません。
私が今日でも利用している著作はキャサリン・T・ポンダー牧師のCDプログラム『「宇宙の力」を使いこなす方法』と、モンロー研究所のロバート・モンローによる『ヘミシンク』の一連のテープです。ところで、私が自分は豊かであると信じているのなら、どうして豊かさを探求する著作を利用し続けるのか、とコーチングをしている顧客に尋ねられます。また、今これを読んでいるあなたもそう思うかもしれません。これに答えるのは簡単です。豊かさについての私の信念は長年の間に心にしみ込んでいます。ですが、その豊かさの使い方については目標が変わってきたのです。私の新しい目標――私たちの慈善団体のために信託基金に資金提供をすることや、「マーク・ダグラスのトレーディング図書館」の建設、恵まれない人々に対する奨学金の支給、必要に応じて行う寄付など――を達成するためには、私の豊かさの信念や行動は新しい目標を受け入れられるように絶えず拡大しなければならないのです。これらの目標はすべて、マークと私が何年も前に一緒に作ったものです。最近は私一人でですが、この資金提供を今後も続けていくつもりです。それで、より大きな財政目標を達成するための資金を作るために、マークやポンダー牧師、ロバート・モンローなどの豊かさを説く、なじみのある師の話を聞くのです。彼らの話を聞くと自分を見失わないでいることができて、トレードや執筆、コーチングで自分が達成したいことに集中できるのです。
ここはもちろん、私の経歴をすべて述べる場ではありません。その点については、私の著作で知ることができます。あるいは、私の事務所に気楽に連絡してください(アマゾン・ドット・コムで私の著書を見るか、詳しくは私に連絡をしてください)。ですが、次の点は述べておきます。
私がここで言いたいのは次のことです。自分にどれだけの「値打ちがあるか」分かっていなければ、どんなシステムを持っていて、どんなプラットフォームを使い、どれほど優れた分析ができても、大した意味はないということです。自分がどういう人間で、どういう考え方をし、トレードで具体的に何を達成したいかが分かっていなければ、それを表明しようがないのです。一体、自分が何を達成したいのかを学ぶ一歩として非常に良いのは、本書を読み、値動きが自分の考え方やトレードにどのように影響を及ぼすかを理解することです。それがトレードをするたびに右肩上がりの資産曲線を作り、維持するためのカギなのです。
また、ここで覚えておいてほしいことは、あなたがトレードをするたびに、反対側にも生身の人間がいるという点です。トレードはコンピューターゲームではありません! 要するに、トレードとは注文がコンピューター経由で取引所に送られて突き合わされているだけだ、という話をあなたは聞かされているかもしれません。ですが、だれがそう言おうと関係ありません。あなたが売買注文を出すたびに、反対側にも生身の人間がいるのです。もちろん、トレードの相手がだれなのか、どんな会社なのかはけっして分からないでしょう。しかし、それが一個人であれ、集団であれ、ヘッジファンドや証券会社のマネジャーであれ、現実に生きている人間なのです。そして、相場の方向性について、彼らもあなたと同じようなことを考えている可能性も大いにあります。ですが、相手はあなたと異なる見通しや信念を持っている可能性のほうが高いでしょう。そうだからこそ、相場は動くのです。純粋に感情に基づくエネルギーが相場を動かしているのです。
そして、生身の人間が作り出す値動き、感情に基づくエネルギーが生み出す値動きがどういうもので、その値動きが相場とどう関係するかを理解すれば、トレードは「ライブの」ゲーム――動くエネルギー場――だということを理解する助けになるでしょう。
つまり、だれもが自分の分析やトレードシステムを自分なりに解釈して考えや信念を作り上げているので、トレードをするたびに独自の意見や相場観を表明することになり、市場は絶えず動き続けるのであり、市場は「生きている」ということが分かるでしょう。
本書はマークと私にとって書くのが楽しみな本でした。彼は自分の専門知識を、というよりも、有名な仕事をしている期間に学んだことをすべて、特にトレードを初めて日が浅い人や、取引所のフロアを見たことやそこで働いた経験がない人に分け与えたがっていました。彼は本書によってトレードに関する多くの神話が一掃されるだけでなく、読者が自意識を高めて、トレードでの成果が上がるのに役立つことを望んでいました。
マークと私が本書の執筆を楽しんだのと同様に、読者が本書を楽しんでいただけたら幸いです。また、何か質問があれば、遠慮なく私に連絡してください! マークと私はパートナーであり続けます。また、彼は二人の著作を私が完成させることを望んでいました。私が本書に参加しているのはそのためです。あなたがトレードで成功しますように。
ポーラ・T・ウエッブ(https://www.paulatwebb.com/)
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