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マンガ 史上最強の投機家ソロス“イングランド銀行を潰した男”の哲学
原作・作画 黒谷薫(くろたに・かおる) 定価 本体648円+税 文庫判 約192頁 2008年8月8日発売 ISBN 978-4-7759-3059-5 C0133
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・George Soros official site and blog 『http://www.georgesoros.com/』 ・Open Society Institute and Soros Foundations Network 『http://www.soros.org//』
しかし「ソロス」の名が世界的に有名になったのは、1992年9月16日のポンド危機「ブラックウェンズデー」である。ポンドの大暴落を予見し、大きく空売りを仕掛けたのだ。このときソロスが得た利益は10〜20億ドルともいわれ、イングランド銀行は破綻にまで追い込まれた。「イングランド銀行を破産させた男」として、その名は一夜にして世界中にとどろくことになる。
伝説は今なお続く。2007年のサブプライム問題でも12億ドル超の利益を出したといわれ、彼の言動は世界中に多大な影響力を持ち続けているのだ。
一方、ソロスは慈善家としての一面もよく知られている。例えば、アフリカの黒人学生に奨学金を援助したほか、社会主義時代の東欧に大量の情報機器を送り、現地の民主化運動を支援した。1994年から2000年までに寄付した金額は25億ドルを超える。「ヨーロッパでもっとも影響力のある一市民」と呼ばれている。
この「史上最強の投機家」にして「史上最大の慈善家」は一体どのようにして生み出されたのか。
ハンガリーに生まれ、第二次大戦でナチスの迫害を受けながらも生き延びた少年時代から、カール・ポパーに多大な影響を受けた大学時代、挫折を味わった初めての就職、そして投機家として名をはせる現在に至るまで――。本書は、大投機家ソロスの波乱に満ちた人生を追い、その投資哲学と姿勢を描き出したものである。
※本書は『マンガ ジョージ・ソロス』を文庫化にあたり、加筆、再編集し、改題したものです。
はじめに 第1章 イングランド銀行 (立ち読みページ) 第2章 マネーゲーム 第3章 サバイバル 第4章 ロンドンのユダヤ人 第5章 ニューヨークのトレーダー 第6章 混沌 第7章 ゴールデンチーム 第8章 別離と再生 第9章 魔法使いと弟子 第10章 開かれた社会を求めて 第11章 ブラックウェンズデー 第12章 公聴会 第13章 トレンドとリスク
幸運にも私は、ソロスと話をしたことがある。「ヘッジファンド」という言葉も「ジョージ・ソロス」という名前も知られていなかった1971年秋のことだ。 当時、私は和光証券国際部の営業課長で外国人投資家に日本株を勧めていた。彼はそこに飛び込みでやってきたのである。約1時間ほど面談をしたのち、ソロスは私が勧めた2銘柄を注文してくれた。正直、驚いた。国際業務の分野で最後発の会社に外国人が訪問するのは珍しいうえに、注文をすぐに出すなど常識では考えられなかったからだ。しかしその後、彼とは接触できず、ソロスの名は私の記憶から消えていった。 次に「ソロス」の名に出会ったのは、70年代後半になってからである。当時、NY株は10年にわたる横ばい相場で、年金や投資信託の運用者は成績不振に苦しんでいた。しかし、ソロスの運用するクォンタムファンドだけは毎年驚異的な成果を出し続けた。73年の8・4%以外、17・5〜102・6%という二桁以上のリターンである。 なぜ、ほかの投資家が苦しんでいるときに、ソロスだけは相場の方向性に関係なく、すごい成果を上げることができたのか? それは「ヘッジファンド」という新時代の運用手法を取り入れた戦術にあったのだ。 ヘッジファンドについて、ソロスは次のような定義をしている。
1.顧客は高度な投資家を対象とする。 2.ミューチュアルファンド(投資信託)のような運用規制がない。 3.運用者は成績(パフォーマンス)に応じた報酬を得ることができる。
運用に対して厳しい規制がないことで、裁量の余地が大きくなる。それだけに、運用者自らが、リスク管理にきわめて厳しい規律を設定しなければならない。 ソロスはよく「私は人よりも銘柄の選択でずば抜けた才能を持っているわけではない。それでも好成績を残せたのは、自分の過ちを見つけたら、人よりも早く手を引いたからだ」と言う。 儲ける前に「生き残りを考える」――それが、ソロスのような本当のヘッジファンドマネジャーなのである。本書は、その投資哲学に強い影響をもたらした彼の生い立ちに焦点を当てたものである。
2008年8月 足立眞一