『裁量トレーダーの心得 初心者編』 も好評発売中! |
2012年5月発売/A5判 横組み上製本 286頁
ISBN 978-4-7759-7161-1 C2033
定価 本体4,800円+税
著者 デーブ・ランドリー
監修者 長尾慎太郎
訳者 山口雅裕
デーブ・ランドリー |
監修者まえがき 序文 謝辞 はじめに
第1部 スイングトレードの基本第1章 ドローダウン――トレーダー最大の敵第2章 スイングトレーダーのためのランドリーのルールと資金管理 第3章 トレンド判定に必要な条件 第4章 銘柄の選択 第5章 押しや戻りでのトレーディング
第2部 さらなるスイングトレードのパターン第6章 さまざまなダマシトレンドノックアウト ダブル・トップ・ノックアウト トレンドピボット(ダマシの上昇)を伴う押し 第7章 ボウタイ 第8章 ミニパターン 中段保ち合いのミニ・ダブルボトム 中段保ち合いのミニ・カップ・アンド・ハンドル
第3部 ボラティリティ第9章 急上昇や急落を見つける――スイングトレードの上級講座 |
第4部 マーケットタイミング第10章 スイングトレードのためのマーケットタイミング裁量による分析 オシレーター・スイング・システム TRINリバーサル 修正コナーズVIXリバーサル3
第5部 オプション第11章 スイングトレードでのオプション利用法
第6部 心理第12章 トレーダーの心理第13章 学んだ教訓
第7部 まとめ第14章 毎晩の準備第15章 さらなる例 資金管理の例 トレンドに必要な条件とセットアップの例 第16章 その他の質問と回答 第17章 位置について、用意、待て! 第18章 終わりに
付録計算式用語集 空売り――相場の両側でトレードする方法 ADXでトレンドをとらえる
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ところで、すべてのメカニカルな売買ルール(狭義のトレードシステム)は不完全である。より正確に言うと、あらゆるマーケットで通用するシステムなどないし、さらにどんな時期でも機能するルールも存在しない。実際、いかなるシステムであっても、さまざまな市場環境下でのバックテストを行ってみれば、すべての条件を完全にパスするものがないことが分かる。例え最終的には利益になるものでも、途中でドローダウンを喫しているものなのである。これは、マーケットが定常状態(平均回帰が効いている時期)と非定常状態(トレンドが発生している時期と、アウトライヤー的な不安定な時期)によって構成される以上、当然のことである。
しかし、だからといって、こうしたメカニカルな売買ルールにまったく価値がないかというと、けっしてそうではない。なぜなら、すべての優れた売買手法は条件付き確率の下で勝負するものだからである。私たちトレーダーは、必ずしもすべてのマーケットかつすべてに時期にトレードしていなければならないわけではない。出処進退は自分で任意に選べるのである。であるならば、私たちには全般的・普遍的に機能する売買手法が必要なのではなく、時期や場所を限れば強烈に機能する売買手法さえあれば良いことになる。
さらに、そうした背景を踏まえると、実務的なトレードシステムや売買手法というものは、2層構造を成していなければいけないと分かる。つまり、それがミーン・リバージョンであれトレンドフォローであれ、自分の売買手法に適した銘柄や時期を認識する層(段階)と、その条件下で最適なトレードを行うための層(段階)が必要なのだ。そして一般的には、前者についてはマーケットのファンダメンタルな知識と判別分析やクラスター分析の技術が、そして後者については確率統計の知識と重回帰分析の技術が非常に役に立つことになる。
もっとも、そうした厳密なリサーチや分析を経ずとも、先達の知見は著者が本書で簡潔にまとめてくれている。本書は一見、単純なトレード手法をくどくどと解説した従来のトレード本と大差ないように思われるかもしれないが、上記の実務的な売買手法の十分条件を満たした良書であり、スイングトレードにおいて集積されたこれまでの知識や技術をうまくまとめ、著者の経験に照らして分かりやすく解説してある。個人投資家がマーケットで行き抜くには本書に書かれている内容を順守すれば十分である。
翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山口雅裕氏は丁寧な翻訳を実現してくださった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2012年4月
長尾慎太郎
「人は時に孤独なゲームをする羽目にもなる。対戦相手が自分なので、勝てないゲームをだ」
――ドクター・スース著『きみの行く道』より
トレーディングでは、克服すべき心理的な壁が多い。あなたにとって第一に必要なことは、トレーディングの世界が「現実世界」とは大きく異なっていると気づくことだ。例えば「現実世界」では、期待されている程度の仕事をするかぎり、予定どおりに給料を受け取り続けられる。だが、トレーディングでは、懸命に頑張って「正しい」ことをすべて行っても、損をすることがときどきある。さらに悪いことに、不注意のせいでリスクをとりすぎるなどの「間違った行い」をしても利益になり、誤った安心感に浸れることもときどきある。
現実世界では、仕事で失敗してもごまかしが利く。皆のせいにすることも、場合によっては保険で損失をカバーすることもできる。だが、トレーディングではセーフティネットも隠れ場もない。あなたは自分の行動に対して責任を取らなければならない。口座の残高はごまかしようがないのだ。
現実世界では、忙しく立ち働くことを期待されている。つまるところ、会社はダラダラと過ごすあなたに給料を払うつもりはないのだ。しかし、トレーディングでは、最も良い行動がまさにそれ――何もしない――ということがときどきある。そういう状況で何かを変えようとすると、かえって損失を被ることもある。ここでは古い格言、「何かをしたからといって、何かを達成したと勘違いするな」が当てはまる。
トレーディングの世界という、現実世界と比べて統一性がない環境で行動するのは、明らかに困難を伴うことがある。あなたは自己管理をきっちりして、自分の感情をコントロールしなければならない。以降では、トレーディングで陥りやすい心理的な落とし穴を理解して、それを克服する方法を見ていく。
損失をゲームの一部と考える
損失を出しても、ムキになってはならない。考えてみれば、あなたのトレードの反対側には、あなたと正反対の意見を持つ人がいる。その2人ともが正しいということはあり得ない。そうである以上、どのトレードでも損をする可能性があるのだ。
一に資金管理、二に資金管理、三に資金管理
適切な資金管理があれば、トレーディングで心理的な落とし穴に陥っても、その多くから救われる。例えば、1トレードにつき1〜2%のリスクしかとらなければ、個々の損失はあまり重要でなくなるはずだ。
自信を持つ
自分の売買ルールを信頼しなければならない。ヒストリカルデータを調べ、リアルタイムで相場を観察したあとにトレーディングを行うことで、この信頼感が養われる。これは、どのトレードでも絶対に間違えないという自信が得られる、という意味ではない。一貫した手法を用いれば、長期的に利益を得られるということが分かっているということだ。
謙虚さを忘れない
これは自信を持て、というアドバイスと矛盾するように思うかもしれない。だが、良いトレーダーには謙虚さも必要だ。極めて優秀なトレーダーたちは自分の方法に自信を持っている。だが同時に、相場では自分の意見とは関係なく、どんな動きも起こり得る、ということを自覚しているので、謙虚な気持ちになるのだ。
相場をコントロールするなんてまったくできないと認識する
相場は動きたいように動く。相場はあなたがまったくコントロールできない何百万もの人から成り立っている。あなたが買った直後に、一部のヘッジファンドか大口トレーダーが何らかの理由でポジションを手仕舞うとしたら、たとえセットアップが世界最高のものでも、思惑どおりには動かないだろう。また、あなたは外部からの影響をまったくコントロールできない。これは戦争のように明白である必要はないし、世界的リーダーの思いつきの発言である必要もない。それは錯乱した人間の行為といった、単純なことでも構わないのだ。例えば、私はかつて完璧と言えるほど素晴らしく、利益を得られそうだったS&Pの先物トレードで損をしたことがある。それはある精神に錯乱をきたした者が連邦議会の議事堂で銃を乱射したせいだった。
正しいかどうかを気に掛けない
スイングトレードでは、約半分ものトレードが損失で終わる。それでも、それらの損失を一定限度に抑えられていれば、勝ちトレードで残り半分の損失を埋め合わせる以上の利益を得られるだろう。目標は正しくあることではない。目標は利益を上げるということに尽きる。
どんな方法も完璧ではないと悟る
相場から学ぼう。だが、いかなる「聖杯」――リスクなしに富を得られる絶対に確実なシステム――などないと悟ろう。本書であらましを説明したような、単純で考え方が正しい方法に従おう。これまでも、リチャード・ドンチャンが開発したような単純なシステムで、多くの人が何十億ドルも稼いでいる。彼は次のように語っている。「このテクニカル分析の分野では、虹を追い求めるようなマネはやめて、どんな方法も完璧ではないと悟ったときに賢明な行動が始まる、と言って差し支えない。長期にわたる検証で、トータルでは利益が得られると分かった比較的単純な方法を受け入れる気になったら、もっと優れた方法を見つけたと確信できるまで、その方法に従うことだ」
一貫性を持つ
トレード法には一貫性が必要だ。トレード法をあれこれと変えているかぎり、けっして成功しない。うまくいく方法を見つけたら、それに従い続けることだ。
感情をコントロールする
状況が良いと大喜びする人は、状況が悪くなるとひどく落ち込みがちだ。良いときも悪いときも、落ち着きを失わないように努めよう。
「戦時には平和に備え、平時には戦に備えよ」――孫子
良いときが続いたときには、もうじき損失が続くと気づいていなければならない。逆に、損失が続いたあとには、良いことがあるものだ。
ありのままの自分を受け入れる
私たちは皆、性格が違う。他人との違いに気づいて、それを受け入れ、トレーディングでは自分の有利になるようにそれを使おう。例えば、私は勤勉であれと言われながら育った。子供のときには、「タダ飯などない」といった言葉が家でよく使われていた。しかし、前に述べたように、トレーディングでは何もしないことが最善という場合もときどきある。これは私が受けた教育にまったく反する。こういう時期には、「働いていない」せいで怠けている気がして、後ろめたくなったものだ。それで、すべきではないと分かっているのに、ポジションを取って何かを変えようとしていた。私は相場つきが良くないときには、トレーディング以外のことに集中すべきだと、ようやく悟った。この時間をマーケットの調査に費やせば、不必要に資金を使わずに、実り多い時間を過ごしていると思えることに気づいたのだ。
利益を自分のお金とみなす
おそらく、成功したトレーダーなら、そこまでたどり着くために懸命に働いただろう。だから、トレーディングで利益を得たら、勤勉さに対して報酬を得ているのだ。それはあなたが稼いだお金なのだから、給料とまったく同じように扱うべきだ。「相場で儲けたお金」だからとか、「損失ゼロ」のポジションだからという理由で、軽率になって自分の決まりを破ってはならない。思いがけない利益を得て、時に羽目を外してもかまわない。ただ、利益の多くは残しておこう。
身も心も健全なときにだけトレードをする
人生の大きな出来事を経験しているとき、病気や気が散っているとき、あるいは単に準備不足のときにはトレードを行ってはならない。
有利なときにだけトレードをする
トレードをする最も良い時期は、市場全体と個々のセクターに明確な方向性が見えているときである。こういう時期には素晴らしいセットアップだらけで、選ぶのに苦労するだろう。それ以外の時期、つまり、市場全体やセクターの方向性を判断するのが極めて難しい時期に、適切なセットアップを見つけるのは不可能に近い。仮に見つけても、たいていはすぐに損切りのストップに引っかかるだろう。こういう時期には我慢をして、もっと望ましい時期が来るまで待つべきだ。
人生では前向きに、相場では懐疑的に
私たちは前向きに生きるように、と教えられる。私たちが繰り返し聞かされる言葉は、「明るい面を見なさい」「物事は普通うまくいくものだ」「信頼しなさい」といったものだ。だが、負けポジションを信頼して、それを当てにしても実りはない。一流トレーダーはトレードで何が得られるかに焦点を合わせるのではなく、どれだけの含み損なら耐えられるかや、そのリスクをどう管理するかに焦点を合わせる。成功したトレーダーは人生に対しては前向きで、彼らのトレード法が長期的にはうまくいくと確信している。しかし、特定のトレードでは疑ってかかるのが常である。
すぐに成功できると思うな
私が知っている最悪の初心者トレーダーのなかには、医者が何人かいる。なぜか? 彼らは自分の仕事で成功しているので、トレーディングでも同じように成功できると無意識のうちに思い込んでいるのだ。彼らは最初の患者にメスを入れることが許されるまでに、10年も熱心に勉強する必要があったことを忘れている。
私は医者だけが特別だと言いたいのではない。その道の大家になったからという理由で、トレーディングも素早く習得できると思っている人のなかには、途方もない成功を収めた弁護士やエンジニア、それにロケット工学の学者さえいるのだ。彼らが忘れていることは、現在の職業で成功するまで、2〜3週間ではとても済まなかったということだ。
自分の損失から学ぶ
何かを学ぶかぎりは、相場で損をしても、丸損ではない。例えば、損切りのストップに引っかかっては、トレンドが再開するたびに指をくわえて眺めているという経験を繰り返したあと、私はトレンドノックアウト(第6章を参照)を発見した。
懸命に努力し、自分がしていることを大好きになる
トレーディングには情熱を傾けるべきだ。それは不用意にすべきことではない。利益を上げることが根本的な動機である以上、あなたのトレード相手は人生の大半をトレーディングに捧げてきた人たちと考えて間違いない。そして、彼らは本気でトレードをしていない人から喜んでお金を奪うのだ。
日誌を付ける
自分にとって意味のあるトレード法を見つけ、資金管理の原則を厳しく当てはめることに加えて、トレーディングを上達させる最高の方法は、自分自身や自分のパフォーマンスを観察することだ。私はあなたにトレーディング日誌を付けるよう強く勧める。仕掛けるときにはいつでも、次のことを書き留めるべきだ。仕掛けた動機は何か? セットアップは何だったのか? 市場全体はどう動いているのか? 仕掛けた株が属するセクターはどう動いているのか? ふだんよりも大きい(あるいは、小さい)ポジションを取っているのなら、その理由は? 自分の判断を支持するチャートを印刷して、表題を付けておこう。機械的に書ける部分を書き終えたら、自分のことも少し書いておこう。今の気分は良いか? トレーディングにストレスを感じているか? 最近、人生で大きな変化があったか? 最近は利益を上げているか?
自分の純資産のチャートを作る
取引口座の評価額はウソをつかない。本書をここまで読んだのならば、もうトレンドがどういうものか知っているはずだ。あなたの純資産曲線が着実な上昇トレンドを描いていれば、あなたは正しいことをしているか、相場つきがあなたに有利なのか、その両方だ。逆に、あなたの純資産曲線が下降トレンドなら、あなたは間違ったことをしているか、相場つきがあなたに不利なのか、その両方だ。この場合はトレードをやめて、頭をすっきりさせたうえで、状況を再確認しよう。私たちの主な目的は長く生き残ることだ。マーケットは常にそこにある。
私の知り合いには、マーケットタイミングについてほとんど何も知らないのに、自分に不利な状況になると、決まって相場から降りているトレーダーが何人かいる。どうやってか? 彼らは続けて損失を出すとトレードをやめる。そして、状況が好転するまで待ってから、徐々にトレードを再開するのだ。
反省をする
1日の終わりに数分の時間を取り、静かにトレーディングについて反省しよう。頭の中で、1日の出来事を繰り返そう。適切にしたことは何か? 間違ってしたことは何か? もっとうまくできる可能性があったことは何か? 損失は一定範囲に抑えられたか? 損切りのストップ注文を守ったか? 含み益が出たときには利益の一部を確定したか?
まとめ
トレーディングの世界は現実世界とは大いに異なる。克服すべき心理的な壁は多い。しかし、成功しようと努力するならば、それはきっと報われるだろう。一心に努力すれば、達成できることに限界はない。考えてもみよう。職場であなたの成果が気づかれずに報われなかったことが何回あっただろうか? あなたの仕事を他人の手柄にされたことが何回あっただろうか? だが、トレーディングの世界でそんなことはけっして起きない。あなた自身の運命をコントロールするのはあなただけなのだ。
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