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マーケットのテクニカル百科 入門編 マーケットのテクニカル百科 実践編

マーケットのテクニカル百科
入門編実践編

著 者 ロバート・D・エドワーズ、ジョン・マギー、W・H・C・バセッティ
監修者 長尾慎太郎
訳 者 関本博英

2021年8月発売
定価各 本体 2,800円+税
入門編 ISBN978-4-7759-7287-8 C2033 A5判 488頁
実践編 ISBN978-4-7759-7288-5 C2033 A5判 468頁

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著者紹介目次

「知られざるマーケットの魔術師」で話題のテクニカル本の新装版

アメリカで70年支持され続けているテクニカル分析の最高峰が大幅刷新
チャート分析家必携の名著が読みやすくなって完全復刊
数量分析(クオンツ)のバイブル

初版刊行から50年以上たってもまだ版を重ねている本書は、チャートによる株式市場のテクニカル分析に関する書物の最高峰という輝きを依然として失っていない。本書の初版以降に出版されたテクニカル分析に関するほぼすべての書物は、本書から派生したものといっても過言ではない。長い時の試練にさらされてもまったく色あせない本書の愛読者は数百万人を超える。大幅に刷新されたこの第8版は、マーケットがどのような局面にあろうとも、株式のチャートパターンから利益を上げる方法をしっかりと教えてくれる。これはまさに株式投資のタイミングを見極める「バイブル」の最新版とも言えるだろう。

本書のなかに詳述されているエドワーズによるダウ理論の実践的なアプローチをはじめ、反転・保ち合いパターン、トレンドラインおよび支持・抵抗圏の利用法は、個人投資家にとって非常に価値ある売買ツールである。一方、マギーが自らの実践をもって立証した株式売買の戦略と戦術は、真の売買シグナルを決定する最も有効な基礎となるものである。

本書の特長

第8版に盛り込まれた新しい内容

 オプション・商品先物・先物オプションの活用法、長期投資の手法、保有ポジションのヘッジと節税法、ポートフォリオリスク・マネジメント、リズミカルな投資、新しい投資テクノロジーとマーケットの解説、投機的な人気株(インターネット関連株など)の売買法、新しい投資商品であるDIAMONDSとSPDRsの上手な利用法、現代ファイナンス理論や実践的なポートフォリオ理論とそれに基づく投資の実践、103年間に及ぶダウ理論に基づく売買記録、株式投資に役立つインターネット上のウエブサイト、プロが実践しているリスク・利益分析法、ギャンブラーの破滅に関する分析、ボラティリティの分析・測定法、シャープレシオ、投資関連ソフトやデータの入手先――など。


マーケットの魔術師もオススメ!

マーケットの魔術師』に登場する
ポール・チューダー・ジョーンズ

トレードを始めたい人には、私がトレーディングのバイブルだと考える4冊の本を勧めている。
まずはエドウィン・ルフェーブルによるジェシー・リアモアの自伝風小説である『欲望と幻想の市場』(東洋経済新報社)。
次はマギーとエドワーズの共著である『マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』(パンローリング)で、20世紀前半に書かれたこの本の教えは今でも有効だ。
3冊目のロバート・プレクターとA・J・フロスト著『エリオット波動入門』(パンローリング)は古典と言える1冊である。
最後のジャック・シュワッガー著『マーケットの魔術師』(パンローリング)は優れたトレーダーのインタビュー集となっている。

『欲望と幻想の市場』はトレーディングと株価テープを読むときの感情の起伏を描き出した非常に面白い読み物になっている。『マーケットのテクニカル百科』と『エリオット波動入門』は優れたリスク・リワード比率のトレードを仕掛けるための具体的かつ体系的な方法を紹介した本で、すべてのトレードを適切で思慮深く執行するための指針となってくれる。

――『ロジカルトレーダー』序文より
27年間で年平均58%のリターンをあげる裁量トレーダー
ピーター・ブラント

(資金を失ってトレードをやめた後、同じプロセスを繰り返すサイクルを終わらせた要因を尋ねられ)
『マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』を隅から隅までひたすら読んだだけです。 私にはぴったりで、価格を理解する枠組みを与えてくれました。どこで仕掛けるべきか、どこで損切りすべきかや、相場がどこに向かうのかについての考え方も得られました。 その本で私はチャート分析するようになったのです。トンネルの出口に明かりが見えました。
――『知られざるマーケットの魔術師』第1章より

本書への賛辞

「初版刊行から53年たっても、まだ改訂版が出版されているという事実がすべてを物語っている。つまり、本書に述べられた投資理論と売買手法は現代のマーケットにおいても完全に通用するということだ。マーケットで取引される企業名が変わっても、マーケットのパターンはまったく変わっていない。この第8版には平均株価の売買法をはじめ、オプション、リスクマネジメント、テクニカル分析に対する新しいテクノロジーの影響、新しい投資分野の拡大などの内容が新しく盛り込まれた。チャート分析の研究者と実践者にとって、本書はさらに充実した内容となった」
――『マーケットの魔術師』3部作、『シュワッガーのテクニカル分析』(いずれもパンローリング刊)などの著者、ジャック・シュワッガー氏

「エドワーズとマギーの不朽の名著は、この第8版によって生まれ変わった。チャールズ・バセッティ新編集長が、現代のマーケットと投資理論に関する新しい内容を個人投資家にもよく分かるように盛り込んでくれたからである。これによって株式市場のテクニカル分析に関する古典的な名著はさらに輝きを増した」
――パラダイム・トレーディング・システムズ社のマーク・ウェィンライト社長

「本書は株式チャート分析の必読書である。大幅に内容が刷新された第8版は、すべてのテクニカル分析研究者とトレーダーにとって不可欠のバイブルである」
――ヘンリー・プルーデン・ゴールデンゲート大学教授

「マーケットの動きを知りたかったら、まずはこの本を開いてみることだ。マーケットのテクニカル分析に関するこの先駆的な書物は、長い時の流れに耐えて今でも読み継がれている。マーケットのパターンとそこにおける人間の心理と行動が変わらないかぎり、本書はこれからも投資家の間で読み続けられるだろう」
――『エリオット波動入門』エリオット・ウエーブ・インターナショナル社のロバート・プレクター社長

「本書は株式市場のテクニカル分析の原点である」
――プルデンシャル証券チーフ・テクニカルアナリストのラルフ・アカンポーラ氏

「これまでに著されたチャートパターンに関する書物の最高峰に位置する不朽の名著だ」
――トレーダーズ・プレス社のエドワード・ドブソン氏

「私が一番多くを学んだ本は、エドワードとマギーのこの本だ。」
――ブライアン・ゲルバー 『マーケットの魔術師』より

「伝統的なチャート手法が完全に網羅されている。私はこの書物こそあらゆるトレーダーの教育の初期段階に活用すべきであると思う。」
――ラリー・ウィリアムズ 『相場で儲ける法』より

「分析の原則を理解し、それを賢明に株式投資に応用すれば、平均的な投資家にとっては既存の売買手法よりもはるかに大きな利益が得られるし、またかなり安全なアプローチでもある。」
――ロバート・D・エドワーズ 本書前書きより

「フロイトが人間心理を深く探っていたように、エドワーズとマギーは株式市場に反映された人間の心と心理を深く深く分析し ている。」
――W・H・C・バセッティ 第8版序文より


原題
Technical Analysis of Stock Trends, 8th Edition

Technical Analysis of Stock Trends, 8th Edition

本書は、初版から70年経った現在まで版を重ねています。
(初版1948年、第2版1951年、第4版1957年、第7版1997年、第8版2001年)

著者紹介

ロバート・D・エドワーズ(Robert D. Edwards)
チャールズ・ダウが開発し、ハミルトンやシャバッカーがさらに研究・発展させたダウ理論に基づくテクニカル分析の原則を集大成した。そのベースになっているのは、個別株式のチャートパターン、トレンド、支持圏・抵抗圏などを体系化したシャバッカーのテクニカル分析の理論である。

ジョン・マギー(John Magee)
マサチューセッツ工科大学を卒業し、同名の著名な投資アドバイザリー会社を設立。科学的な観点から株式市場を分析した先駆者であり、「テクニカル分析の父」と呼ばれている。マーケットに対するその実践的でテクニカルなアプローチは、すべてのテクニカルアナリストに大きな影響を与えている。マギーはすでに没していたが、全米テクニカルアナリスト協会は1978年にマギーを「マン・オブ・ザ・イヤー」に選んだ。

W・H・C・バセッティ(W. H. C. Bassetti)
ハーバード大学の優等卒業生で第8版の編集者兼共著者であるバセッティは、1960年代にジョン・マギーの生徒としてテクニカル分析の研究を始め、今では電子マーケットを含む最新のマーケット研究の第一人者のひとりである。カリフォルニア州では最初の公認商品取引アドバイザー、ブレア・ハルのオプションズ・リサーチ社のCEO、マーケットメーカーのマネジングパートナー、オプションによるサヤ取りトレーディング会社社長などのキャリアを経たあと、現在ではカリフォルニア州サンフランシスコのゴールデンゲート大学非常勤教授(ファイナンス・経済学)として株式市場のテクニカル分析の講義を行っている。


目次

入門編

監修者まえがき

第1部 テクニカル分析の理論
第1章 株式の売買と投資に対するテクニカルなアプローチ
第2章 チャート
第3章 ダウ理論
第4章 ダウ理論の実践
第5章 ダウ理論の欠点
第5.1章 20〜21世紀におけるダウ理論
第6章 重要な反転パターン
第7章 重要な反転パターン(続き)
第8章 重要な反転パターン――三角形
第9章 重要な反転パターン(続き)
第10章 その他の反転パターン
第10.1章 潜在的な重要性を持つ短期パターン
第11章 保ち合いパターン
第12章 ギャップ
第13章 支持線と抵抗線
第14章 トレンドラインとチャネル
第15章 メジャートレンドライン
第15.1章 21世紀における平均株価の売買
第16章 商品先物チャートのテクニカル分析
第17章 第1部の要約と結論としての解説
第17.1章 21世紀のテクニカル分析とテクノロジー
第17.2章 投資分野の拡大

実践編

第2部 トレード戦術
第18章 トレード戦術の問題
第18.1章 長期投資家のための戦略と戦術
第19章 極めて重要な細かいこと
第20章 われわれが求める株式――投機家の見方
第20.1章 われわれが求める株式――長期投資家の見方
第21章 チャートをつける株式の選択
第22章 チャートをつける株式の選択(続き)
第23章 ハイリスク株の選択と売買
第24章 株式の予想される動き
第25章 2つの厄介な質問
第26章 単元株と端株の取引(各トレードの規模)
第27章 ストップオーダー
第28章 底とは何か――天井とは何か
第29章 トレンドラインの実践
第30章 支持と抵抗圏の使い方
第31章 ひとつの籠にすべての卵を盛るな
第32章 テクニカルなパターンによる値幅の測定
第33章 戦術的な観点からのチャートパターンの再検討
第34章 トレード戦術の要約
第35章 テクニカルな売買が株価の動きに及ぼす影響
第36章 自動化されたトレンドライン――移動平均
第37章 「よくあるパターン」
第38章 バランスと分散化
第39章 試行錯誤
第40章 投資資金
第41章 投資の実践
第42章 ポートフォリオリスク・マネジメント

訳者あとがき


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監修者まえがき

 本書はアメリカで長年にわたって多くの投資家に読み継がれてきた古典的名著”Technical Analysis of Stock Trends”の邦訳である。原書の旧版は『アメリカの株価分析――チャートによる理論と実際』として、1981年に東洋経済新報社から刊行されていたが、内容をアップデートした第8版が本国で出版されたのに伴い、日本でも新たに翻訳書が刊行されることになった。

 さて、本書で述べられているテクニカル分析は主にダウ理論を主としたシンプルなもので、すでに伝説的な手法と言ってもいいかもしれない。しかし、ここに述べられている内容が現在でも数十年前と変わらず依然として価値あるものであることは、本書が数十年に長きにわたって、マーケットに参加する多くの人々に支持され、実際のトレードでダウ理論が堅実な成果を上げ続けてきたことで証明されていると言ってよいだろう。いやそれよりもむしろ、だれにでも理解でき、実践可能な単純な理論だからこそ、時の試練を経て今もなお有効性を保ち続けていられるのであろう。

 さらに、マーケット全体の動向を把握するために、すでに数十年前の段階でダウ平均株価に注目したことはきわめて優れた着眼であったと言えるが、スタイル別に多くの指数が開発された現在においては、その価値はさらに高まっているといえる。つまり、ここから分かることは、市場とそれに参加する人々のメンタリティに基本的な変化がない以上、必ずしも新しい分析手法のほうが優れているというわけではないということなのである。少なくとも、泡のように生まれては消えていく新奇をてらった「テクニカル分析」よりは、本書に示されているような伝統的な手法のほうがはるかに信頼性が高く、長期的な成功を約束してくれるのである。

 この古典的名著を日本で刊行できることは、関係者一同にとっても大変な喜びであり、私たちの努力の成果が読者の成功の一助になることができればまた望外の幸せである。本書はテクニカル分析に関して多くの範囲を網羅しており、したがって原書は非常に大部なものである。このため翻訳書の刊行に当たっては読みやすさを考慮し、「入門編」と「実践編」の上下2分冊で刊行されることになった。また、版を重ねてきた本書の特徴として、歴史的に初期のころの図表においては、一部に少し見にくいものも掲載されているが、なによりそれは本書で述べられている分析手法が時を超えて普遍的なものであることの証明でもある。なお、図表の番号は継続性を持たせるために、原書どおり上下で通番とし、巻末の付録と用語解説は「実践編」にまとめられている。

 最後になったが、本書の翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。関本博英氏は本書にふさわしい、読みやすい翻訳を実現してくださった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が出版される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏の慧眼によるところが大きい。

 2004年7月

長尾慎太郎


訳者あとがき

 1948年の初版刊行から今回で8版を重ね、50年以上にわたって世界中の投資家の間で読み継がれてきた本書は、すでに株式市場のテクニカル分析の「バイブル」となっている。グレアムとドッドの『証券分析』(パンローリング)がファンダメンタルズ分析の原点であるとすれば、エドワーズとマギーのこの『Technical Analysis of Stock Trends』はテクニカル分析の原点である。

 『証券分析』は1930年代半ばからほぼ50年間に、その時代の証券問題を分析した独立したシリーズ本として5冊が出版されたが、本書はこの50年間にその時代に応じた改訂を加えただけで現在に至っている。これは実に驚くべきことである。しかし、読者の皆さまが本書を手にとってここに書かれていることを熟読されるならば、そうした事実は何ら驚くべきことではなく、むしろ当然のことだと納得されるだろう。

 アメリカにおける株式市場のテクニカル分析の歴史はかなり長い。ウォール・ストリート・ジャーナルの設立者であり、また1884年にダウ平均株価を開発したチャールズ・ダウのダウ理論に始まり、ダウの同僚だったウィリアム・P・ハミルトンなどがダウ理論に基づくテクニカル分析をさらに発展させた。そして1930年代にはフォーブス誌の編集長だったリチャード・シャバッカーが、平均株価の重要なパターン(各種チャートパターン、トレンド、反転・保ち合いパターンなど)は個別株式にも出現することを突き止め、それらをテクニカル分析の理論として体系化した。シャバッカーの義弟だったロバート・エドワーズは、こうしたテクニカル分析の研究の流れをさらに広く深いものにした。経済・統計学者であり、また農業・気象・鳥類学の造詣も深かったエドワーズは、人間性の深い研究者でもあった。ジョン・マギーの同僚であり、また生涯の友であったエドワーズは1965年に亡くなったが、それまでアメリカに蓄積されたテクニカル分析のアプローチを科学的に集大成したのが本書である(このあたりの経緯については本書の序文に詳述されている)。

 本書では「歴史は繰り返す」ということが大きな前提になっている。それならば、歴史に精通すればするほど、将来に起こりうる結果を正確に予想できるのだろうか。その答えはある程度までは「イエス」であるが、完全にとなれば「ノー」である。それは歴史がまったく正確にまたは同じく繰り返されることはないからである。しかし、ある時期のある株式と別の株式の動き、まったく異なる時期のいくつかの株式には多くの類似点が見られる。すなわち、昨年、5年前さらには50年前の株価のパターン、トレンド、支持・抵抗圏などがかなり似ていることも少なくない。そうであれば、それらを形成する株価のパターンに何らかの原則やルールを探すことができるのではないか。

 こうした視点を念頭に置きながら、本書の読み方についてマギーの次のような言葉を引用しておこう。

 「この本はちょっと目を通すといった性質のものではないし、また簡単に金儲けできるような内容が書いてあるわけではない。読者の皆さんはこの本を何度も熟読し、株式投資の参考書として利用すべきである。最も重要なことは皆さん自身が成功と失敗の両方を実際に経験することである。そうすれば自分のしていることは、さまざまな状況の下で自分ができる唯一のロジカルな行為であることが分かるだろう。このような心構えを持てば、皆さんはそれに見合った程度に成功するだろう。そして失敗も株式投資というビジネスの一環としてうまく切り抜けられるようになれば、投資資金も投資意欲もなくなることはないだろう。本書を通じて詳述・分析されているのは、株式投資の手法というよりはむしろ株式投資の哲学なのである」

 テクニカル分析のバイブルとも言える本書の邦訳を決定された後藤康徳氏(パンローリング)、膨大なチャートや本文の編集・校正でお世話になった阿部達郎氏(FGI)、素敵な装丁の新田和子氏、皆さまのご尽力に感謝いたします。

 2004年6月

関本博英


第10.1章 潜在的な重要性を持つ短期パターン

 1日または数日間の極めて短期のパターンは、ときにその後の短期のトレンドばかりでなく、長期の方向も示唆することがある。ギャップ(第12章で検討する)や1日の反転(第10章で検討)などはこのパターンに分類される。注目すべきその他の短期パターンには、スパイク、キーリバーサルデイ(単に「リバーサルデイ」とも呼ばれる)、ランナウエーデイ(「ワイドレンジングデイ」とも呼ばれる)などがある。

スパイク(Spike)

 天井圏に現れるスパイクとは前後する日の高値よりも突出して高い日、底値圏のスパイクは前後する安値よりも突出して安い日であると定義されるため、スパイクが起こった日にそれであると判断することはできない。スパイクの日をランナウエーデイと区別するには、異常なレンジで変動した日に続く数日間の推移を見なければならない。この2つのパターンはいずれも強気筋と弱気筋の全面戦争を表しており、その日の終値が最終的な勝者を暗示している。スパイクのポイントは次のようなものである。

スパイクに先立つ一定期間の相場の基調はかなり強い(または弱い)。
株価はその日の値幅の上限または下限の近辺で引ける。
前後する数日間よりも突出して高い(または安い)。

 長期の強気相場の最終局面で極めて大きな値幅で変動した日に、突出高したあとにその日に安値近くで引けたときは1日の反転シグナルと解釈できる。このパターンをトレードできるかどうかは、その投資家のトレーディングスタイル(長期保有、サヤ取りなど)や好みなどによって決まる。事実、スパイクは1日の反転にもなり(ギャップを付けて寄り付いたあと、大量の買いが入って急騰するが、その後に株価は崩れて始値より安く、またはその日の最安値近くで引ける)、このような値動きは撤退するかに見せかけた敵軍の反撃に遭って逆に敗走する軍隊の動きに似ている。このような状況を想起すれば、スパイクの特徴がよく分かるだろう。スパイクのあとに株価はそれまでとは反対方向に大きく逆行するのが普通である。図104.1は最近のスパイクの好例であり、また図1や図35にもスパイクのパターンが見られる。

ランナウエーデイ

 ランナウエーデイとはその日の安値で寄り付き、その日の高値で引ける(またはその逆)など、異常な値幅で変動した日である。このパターンも敗走するかに見せた敵軍がこちらの軍隊を罠に陥れようとする動きに似ている。売り方は買い方からの買い注文を吸収しきれず、株価は2〜3回もその日の高安値を行ったり来たりする。抜け目のない投機家はこの動いている電車に飛び乗って利ザヤを稼ごうとするが、最終的な損益が確定するのは数日後である。大きな揉み合いと高水準の出来高が続けばランナウエーデイの確認となるが、取引が細って値動きも小さくなればその有効性は疑わしい。この数日間に一時的に買いシグナルが出ても、株価がランナウエーデイの最安値に反落したときはダマシのシグナルと見られるのでドデンをすべきである。図39はギャップを伴ったランナウエーデイの一例。2000年のマイクロソフト株の値動きを示した図104.2も、強気の落とし穴のあとに株価が50%も急落したランナウエーデイの好例である。

キーリバーサルデイ

 このパターンは上昇局面で新高値を付けたあと、前日の終値を下回って引けた日である。短期のトレーディングシグナルとして利用できるが、その他のテクニカルパターンと同様に、そこから利益を上げるには判断力とベストのタイミングが必要である。強気相場ではこのパターンの一時的な高値をうまく利用すれば、いくらかの利益は上げられるだろう。大天井のキーリバーサルデイではこの日の高値近辺に空売りのストップを入れ、終値で買い戻せば効果的である。このようなリバーサルデイでは反対側に利益目標値を設けて素早く手仕舞う。もっとリスクを取れるならば、まず最初にその後の反落を見越したポジションを建て、予想どおりのパターンが現れたときに、そして株価が支持線を下抜いたときに増し玉してもよい。

 このパターンは2000年以降のインターネット関連株のように保ち合い相場でも有効であり、キーリバーサルデイをうまく利用したトレーダーは2000年初めのナスダックのミニクラッシュを無傷で乗り切ることができた(図104.3〜104.4を参照)。忘れてならないのは、これ以外のすべての短期パターン(ギャップ、1日の反転、スパイク、ランナウエーデイ)のシグナルについても、その後の株価がパターン形成の最初の水準に戻ればそれはダマシのシグナルであり、そのようなときはドデンして利益を狙うべきである。こうした手法は利ザヤ稼ぎのトレーダーや投機家のトレード戦術であるが、長期投資家がこのような方法を知っておいてもけっして損はないだろう。


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