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ザFX

通貨トレーディングで儲ける基礎と応用




好評発売中!!
FXの小鬼たち

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FXトレーディング

2011年9月発売/A5判 246頁
ISBN 978-4-7759-7153-6 C2033
定価 本体2,800円+税

著者 キャシー・リーエン
監修者 長尾慎太郎
訳 者 井田京子



著者紹介 | 目次 | 関連書籍  ◆立ち読みコーナー 監修者まえがき ・ まえがき ・ 第1章(雷に打たれたとき) (本テキストは再校時のものです)
著者

キャシー・リーエン

原書

『The Little
Book of
Currency Trading』

通貨トレードの教科書!

初心者と再挑戦組のバイブル!

 かつては大銀行とヘッジファンドと多国籍企業に支配されていた外国為替市場だが、現在では世界中のトレーダーや投資家が簡単に参加できるようになった。ただ、この市場から多くの利益を生むためには、その仕組みをしっかりと理解していなければならない。

 FXの専門家である著者は、今日、世界最大のマーケットである通貨市場で効率的にトレーディングと投資をする方法を初心者にも分かりやすく説明している。本書には、短期の価格スイングから長期トレンド、またFX市場で成功の助けになる実践的な金融商品など、FXトレーディングには欠かせない重要で多くの手法・事柄についても紹介されている。  また、通貨を動かす原動力とそれを利用して利益を上げる戦略や、通貨を使い分けてリスクを減らす方法、世界的なトレンドを利用する方法、毎日マーケットを監視しながらストレスなしに利益を上げるための方法なども非常に分かりやすく説明してある。また、次のような内容も含まれている。

●FXトレーディングの始め方と自分に合ったやり方を見つける方法
●FXでよくある間違い
●ゆっくりと着実に利益を目指す投資方法と素早く利益を上げるトレード方法
●よくあるFX詐欺を引っかからない方法

 通貨市場というダイナミックな舞台に興味がある人ならば、深い洞察と実践的なアドバイスが満載の本書を読むことで、通貨トレーディングと投資の世界が広がるだろう。また、FXトレーディングで思いどおりに利益を上げられないという人が本書を読めば、初心のころの新鮮な気持ちがよみがえり、新たに一からやろうとする気を起こさせてくれるだろう。

■本書への賛辞

「リーエンは、FXトレーディングの分野で最も優秀なひとりである。本書が、新人のFXトレーダーにとって必須の書であることは間違いない。ここには、FXトレーディングを始めるための方法が分かりやすく実践的に説明されている」
――アンドリュー・B・ブッシュ(『イベントトレーディング入門』[パンローリング])

「日本には、『海のことは漁師に問え』ということわざがある。私の友人でもあるリーエンは、明らかにFXについて熟知している。この素晴らしい本には、彼女が実際のマーケットで積んできたトレーディングの経験と、彼女の分かりやすく、しかも楽しく説明する能力が融合されている。本書は、経験の長さに関係なくすべてのトレーダーの本棚に備えておくべき1冊である」
――スティーブ・ナイソン(『ジャパニーズ・キャンドルスティック・チャーチング・テクニック』の著者)

「リーエンは、FX市場に最も精通したアナリストのひとりである。本書は通貨の基本以上のことを教えてくれる」
――アレクシス・グリック(フォックス・ビジネス・ネットワークの「マネー・フォー・ビジネス」と「ザ・オープニング・ベル」の元キャスター)



■著者 キャシー・リーエン(Kathy Lien)

グローバル・フューチャーズ&フォレックス・リミテッドの一部門であるグローバル・フォレックス・トレーディング(GFT)、カレンシー・リサーチ部門のディレクター。また、ボリス・シュロスバーグと共同経営しているBKフォレックス・アドバイザーでFXシグナルも提供している。GFT入社前はデイリーFX・ドット・コムのチーフストラテジストを務め、JPモルガン・チェース時代にはクロスマーケットとFXトレーディングを担当していた。世界的に名高い通貨ストラテジストで、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を合わせて使う手法に精通している。通貨トレーディングに10年以上の経験があり、CNBCアジアやスカイ・ビジネス・ニュース、CNBC、ブルームバーグ、フォックス・ビジネス、ロイターなどに出演している。また、アクティブ・トレーダー誌、フューチャーズ誌、SFO誌などに定期的に寄稿している。著作に、『FXトレーディング』『FXの小鬼たち』(いずれもパンローリング)、『デイ・トレーディング・アンド・スイング・トレーディング・ザ・カレンシー・マーケット』などがある。


■目次

第1章 雷に打たれたとき――金融危機と急増するFXトレーディング
第2章 ルーブルとバーツとユーロ、何てことだ――FXは思ったより身近だった
第3章 FXのすべて――知っておくべき基本知識
第4章 さあ始めよう――初めてのFXトレード
第5章 金利を動かし、揺るがすもの――何が通貨価値を上昇させたり、下落させたりするのか
第6章 投資家とトレーダーの違い――自分に合ったトレード方法を探す
第7章 勝者のみんながやっていること――FX市場における絶対ルール
第8章 あなたは投資家?――ゆっくりと着実な方法で勝つ
第9章 あなたはトレーダー?――素早く利益を上げたいワイルドタイプ
第10章 危険なビジネス――見通しが不透明なときでも資金を守る
第11章 間違いトップ10――だから避けてほしい
第12章 ナイジェリアからの手紙――FX詐欺を察知し、避ける
第13章 さあトレード開始だ――良いトレード計画の重要性
第14章 失敗、落胆、そして学習――より良いトレーダーになるために
第15章 賢くスタート――FXへの冒険の旅を始めよう

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■監修者まえがき

 本書はキャシー・リーエンによる“The Little Book of Currency Trading”の邦訳である。ところで、外国為替市場(以下、“FX”)は、以前は特定の限られた人々、例えば輸出入を行う企業の財務担当者や外国為替銀行のディーラー以外には、一般に縁のない世界であった。しかし、近年は外国債券や外国株式に投資する人が増えてきたことにより、個人投資家の間でもFXのリスクに関する意識が高くなってきた。FXの証拠金取引はそうした時代に登場したのである。

 もっとも、本来FXは株式や債券といったアセットクラスとは異なり、積極的に投資を行う対象ではないことから、それの最も正しい利用法は自分が持っているイクスポージャーのヘッジである。しかし高レバレッジが掛けられるという特徴ゆえに、それを言わばギャンブルの対象としてみる大勢の人々がFXに引き寄せられ、その結果、FXの証拠金取引においてごくわずかの成功者と非常に多くの敗者が生まれたのである。

 さて、FXは基本的にはゼロサムゲームである。そして大多数の期間におけるリバーサルと、ごく少数の期間におけるトレンドという、ほかのアセットクラスとはかなり異なるリターン特性を持っている。そしてそれは往々にして、「少しずつ稼げて勝率は高いが、あるとき一気に大きな損失を被る」という損益推移を投資家に強いることになる。つまり、FXは精神的な油断が失敗につながりやすいマーケットであるとも言える。

 だが、それでも攻略の方法はある。FXのトレードにおける収益ファクターは一般に、.肇譽鵐鼻↓▲ャリー、イベント――の3つである。前の二者はヘッジファンドなどの機関投資家に好まれるファクターであり、最後のイベントは著者のリーエンが得意としているように、小口の投資家に好まれるファクターである。本書にはイベントトレーディングを中心として、FX取引のイロハが解説してある。もし読者がFXをアクティブにトレードしたいと考えているならば、本書は恰好の手引書の一つとなるだろう。

 翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の井田京子氏は丁寧な翻訳を実現してくださった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2011年8月

長尾慎太郎




■まえがき

 私は、これまでずっと幸運に恵まれてきた。私が10歳のとき、母が好きだった香港のアーチストがアトランティックシティーで引退コンサートを開催した。1000人以上の観客が詰めかけたそのコンサートで、アーチストがこれまでの活動にちなんだ記念の品をプレゼントするというサプライズがあった。そして抽選で豪華なアンティックの腕時計を引き当てたのが私だった。もちろん歓喜のあまり大声で叫んでしまった。それから何年かたって、私はハワイ旅行の抽選にも当たった。弱冠18歳で大学を卒業すると初めて受けた会社に合格し、ITバブルが崩壊する前に株式市場から撤退し、23歳で理想の男性に巡り合い、世界的な金融危機の最中でさえ失業しそうになったことは一度もなかった。

 幸運の女神は今でも私にほほ笑みかけている。ただ、私はこれに甘えているわけではないし、運だけで現在の地位を手に入れたわけでもない。普通ならば高校を卒業する年齢だった私にニューヨーク大学スターン経営大学院が卒業を許可したのは、運が良かったからだけではない。賢くて勤労意欲があり、チャンスを見逃さずにそれをつかみ取る方法を知っていることも、幸運であることと同じくらい重要なのだ。言い換えれば、運と能力の両方が必要なのである。

 この2〜3年間、私たちは金融危機に直面した。多くの人が資産を失い、その多くはまだ回復できないでいる。大きな損失を被らずにすんだ人たちは幸運と言っていいだろう。ただ、彼らは本当に運だけで生き延びたのだろうか。実際には、金融危機の間に生き延びたどころか、成功を収めた人もいるのである。危機に見舞われたときに、自分のお金が消えて行くのをただぼうぜんと眺めるだけの人もいれば、目の前のチャンスを積極的に利用しようとする人もいる。カギとなるのは、これらのチャンスを見つけ、それをつかみ取る方法を知っているかどうかなのである。

 金融市場の上昇や下落を利用して資産を増やす方法として、通貨投資の人気が高まっている。2004年から2010年の間に、FX市場の1日の取引高は1兆9000億ドルから4兆ドルへと2倍以上に増えた。ITバブル以前では、FXトレーダーといえば、機関投資家やヘッジファンドや一部のお金持ちに限られていた。しかし、FXのブローカーがオンラインのプラットフォームを構築したことで、個人のトレーダーもFX市場に容易に参加できるようになった。それ以降、FXトレーダーの数は増加の一途をたどり、今後もそれは続くと思われている。すでに多くの人がFXトレーディングを始めている。この機会にその人気の理由を知っておいても損はないだろう。

 FXの動きは私たちみんなの生活に何らかの形でかかわっている。FXトレーディングの経験がある人でも経験がない人でも、通貨を売買したことはあるはずだ。外国旅行をしたり、イーベイで外国から商品を買ったりすれば、それは通貨を売買したことになる。もし中小企業を経営していれば、外国から輸入した製品を売買するときにはFXをトレードしていることになる。

 なかには、投資先がアメリカ株だけなので、FXトレードについて知る必要はないと思っている人もいるかもしれない。しかし、今日ではそうも言ってはいられない。例えば、もし投資先の企業が海外に事業展開していたり、外貨の売掛金や買掛金があったりすれば、株主のあなたも為替リスクにさらされているのである。つまり、トレーダーや投資家は通貨レートを常に把握し、その通貨の価値を知っておくことが重要なのである。

 もちろん、FXトレーディングが急増した理由は、通貨を追いかけている人たちばかりにあるわけではない。投資家やトレーダーは、投機、ヘッジ、投資、それ以外の取引などさまざまな理由でマーケットに参加している。

 FXトレードにはさまざまな方法がある。トレーディング初心者に勧める方法のひとつに、よく知っている通貨を選ぶということがある。株価に影響を及ぼす金融市場の大きな出来事やニュースは、為替相場にも影響を与えることが多い。もしある国の経済に悪影響を及ぼしたり、外国人投資家が神経質になったりするようなニュースを耳にしたら、投資家がパニックを起こしてその通貨を投げ売りする可能性がある。人はパニックに陥ると、真相を調べる前にまず売ってしまう。また、大きなニュースであれば、通貨に与える影響は長期間に及ぶかもしれない。本書の目的は、このようにニュースからトレード機会を探す方法を紹介することにある。

 通貨は、一方向にかなり長い期間動くことがある。本書では、私が考案したツールを使って通貨がトレンドを形成しているのか横ばいなのかをはっきりと示し、それによってトレンドに乗るチャンスを探す方法や、天井や底を判断するタイミングを紹介していく。経験豊富なトレーダーは、トレードをうまく管理することが最適な仕掛けポイントを探すのと同じくらい重要だということを知っている。本書でも、トレードを管理して勝ちをつかむ方法について述べていく。

 FX市場には、ほかの市場にはない特徴があり、それだけリスクも高い。本書では、このリスクを管理しながら最善のトレードを探す方法も紹介していく。トレーディングを運だけに頼るのは危険なことで、できるだけ多くの変数を用いて選ぶべきだと私は考えている。通貨トレードでも人生でも成功を収めるための秘訣は真剣に取り組むことである。トレーディングも、娯楽としてではなく、仕事と同じように取り組んでほしい。通貨トレードが本当にうまくできるようになるためには練習が必要だが、労働意欲が高いことも助けになってくれる。

 通貨市場に関する知識と、優れた戦略と、堅実な資金管理と少しばかりの運があれば、FX市場で成功する道は開けてくるだろう。



■第1章 雷に打たれたとき――金融危機と急増するFXトレーディング

 あなたの知り合いに、雷に打たれた人はいるだろうか。しかも、二度打たれた人といったらどうだろうか。国立測候所によると、ある人が1年間に雷に打たれる確率は75万分の1だという。そういうことならば、雷に打たれるのは極めてまれなことであり、二度となればなおさらだ。

 ただ、雷が周辺で最も高い場所に落ちることを考えれば、同じ場所に何度も落ちることもそう珍しくないのかもしれない。そこで、高層ビルの最先端には、雷を誘導して、その衝撃を吸収するために避雷針が設置されている。

 避雷針が雷を引き寄せるように、金融市場は欲望を引き寄せ、それがいずれ災難を呼ぶ。金融市場では、条件がそろっていれば、雷が落ちるような災難に見舞われることが人生で一度以上はあり、投資家はそれに備えておかなければならない。

 ナシーム・ニコラス・タレブは2007年、のちに話題になった『ブラック・スワン――不確実性とリスクの本質』(ダイヤモンド社)を執筆した。タレブによれば、黒鳥の出現は極めてまれな出来事で、人々を驚かせ、大きな影響を与えたが、しばらくすると、それはすでに予想されていたことだとして正当化されたという。残念ながら、黒鳥の出現のような出来事が最近多発しているのは周知のとおりである。投資家にとって大事なことは、経済バブルが限界点に達したとき、危機に瀕した資産を守るためにリスクを回避することであり、できればその出来事をも利用したい。実際、世界的に有名な投資家のなかにも、みんながパニックを起こして市場から逃げ出そうとしているときに莫大な資産を築いた人物が2人いる。

 そのひとりはジョージ・ソロスで、彼は62歳のとき、イギリスが進めていた高金利政策には無理があると考え、ポンド安になることに賭けた。当時のイギリスは、ERM(欧州為替相場メカニズム)を維持するためにポンドの相場を特定の水準にとどめる必要があった。しかしソロスは、イギリスが不景気と高い失業率によってERMを脱退せざるを得なくなり、金利は下がると確信していた。そこで彼はその考えを実行に移した。100億ポンドという莫大な資金を使ってあらゆる手段でポンドを空売りしたのである。もちろん、このときポンドを売っていたのはソロスだけではなかった。そして、投機売りの増加でイギリスがERM脱退を余儀なくされると、ポンドを保有しようという人はいなくなった。ただ、ソロスはほかの投資家とは違った。みんなが防御的な姿勢で必死にポンドを売ってエクスポージャーを減らそうとしていたのに対して、ソロスはイングランド銀行が敗北を認めるまで攻撃的にポンドを売り続けたのである。そして1カ月後、ソロスが率いるクオンタムファンドは約20億ドルの利益を手に入れた。

 金融界における伝説の人物の2人目は、ジョン・テンプルトン卿である。ただ、彼の手法はソロスとはまったく違っていた。世界最大の株式ファンドであるテンプルトン・グロース・ファンドを創設したテンプルトン卿は、信仰心が厚く、根っからの逆張り派だった。彼は暴落のときに買うのが好きで、参入するのはいつもマーケットが「最も悲観的なとき」だった。例えば、1978年には米自動車メーカーが倒産の危機に瀕していたときにはフォードを買い、1980年代には共産主義ゲリラが台頭してきていたペルーに資金をつぎ込んだ。ただ、彼は買ってばかりいたわけではない。2000年にみんながハイテク株を買っているときに、彼は何十社ものハイテク企業を空売りしていた。テンプルトン卿は、ファンダメンタルズが通常から大きく外れていることが実感できるとき、好んでマーケットに参入する。もちろん、このような機会は毎日のようにあるわけではないが、それが訪れたときには莫大な利益を上げる可能性を秘めているのを知っていたのだ。

史上最悪の10年間
 タイム誌は、21世紀最初の10年を「史上最悪の10年間」と命名した。この期間には、戦争や環境問題以外に、マーケットが二度も暴落した――前半のITバブルと、後半のサブプライムローン問題から始まった世界的な金融危機である。金融危機は世界中の人々の蓄えを消し去り、何百万人もの人の職を奪い、ウォール街の由緒ある金融機関を破綻に追い込んだ。破綻したなかには、リーマン・ブラザーズ、メリルリンチ、ベアー・スターンズなどが含まれている。1850年の創業以来、二度の大戦と世界大恐慌を乗り越えたリーマン・ブラザーズのような会社が、私が生きている間に倒産に追い込まれるなどと、だれが想像しただろうか。個人投資家が退職金の50〜90%を失ったという話ならば、数え切れないほどある。暴落は、すべてのアメリカ人に何らかの影響を及ぼした。しかし驚くのは、無一文になった人も多いこの時期に、一部の抜け目のない投資家は大きな利益を上げていたことである。

 2007年にサブプライムローン危機が起こり、それが世界的な金融危機へと拡大した。危機の発端は、ITバブルだった。当時、FRB(連邦準備制度理事会)議長だったアラン・グリーンスパンは、景気刺激策として積極的に金利引き下げを行った。残念ながら、金利は下がりすぎて、それが長く続きすぎたため、住宅バブルと信用バブルが起こってしまった。蛇口から水を注ぐようにアメリカ経済に資金が流れ込み、2003年に8000ドル台だったダウ・ジョーンズ工業株平均は2007年には1万4000ドルまで上昇した。借り入れコストが安くなったため、多くのアメリカ人は住宅ローンを借り換えてより大きな家を買ったり、投資用の物件を買ったりした。

 読者の多くもこのときの興奮状態を経験したか、少なくとも目撃したと思う。A&Eテレビの「フリップ・ジス・ハウス」やディスカバリー・チャンネルの「フリップ・ザット・ハウス」といった住宅関連番組を見ていた人もいるはずだ。当時は理髪店からタクシー運転手に至るまで、みんなが不動産投資を始め、長期的に見れば絶対に損はしないと信じていた。しかし、それは間違いだった。不動産収入は2005年までに家庭の資産増加分の70%を占めるようになり、この年の前半におけるアメリカの経済成長率の何と50%を担っていた。また、2001〜2005年に民間部門で創出された新規雇用の半分以上は住宅関連セクターのものだった。アリゾナ州フェニックスの住宅が1四半期だけで45%上昇したからといって、だれが平均的なアメリカ人を責めることができただろうか。

 しかし、流れが変わると、状況は一気に悪化した。住宅バブルの崩壊によって、州によっては住宅価格が2006年のピーク時から50%近くも下落した。また、2007年半ばから2009年初めにかけては、アメリカの株価も50%近く下落した。そして、2009年3月までに、アメリカ人は15兆ドル以上の資産を失った。この住宅バブルは、まさにテンプルトン卿が「最も楽観的なとき」と呼ぶ時期だったのである。

 今にして思えば、なぜあのとき、だれも警告のサインが見えなかったのか不思議に思う。銀行はだれにでも貸し出し、平均的なアメリカ人が払いきれないほどの負債を抱えているような状態が永遠に続くわけがない。当時は、ITバブルの崩壊もまだ記憶に新しく、行き過ぎた結果に考えをめぐらすこともできたはずだ。サブプライムローンは史上最大の住宅バブルを生みだしたが、最近だけでも同様の危機は起こっている。

 この40年間だけを見ても、アメリカでは二度の住宅バブルが起こっている(そのピークは1979年と1989年)。1987〜1991年にかけては、日本でも住宅バブルが崩壊し、長期間にわたってゼロ成長に陥った。日本では、この時期のことを「失われた10年」と呼んでいる。1998年には、香港金融管理局がアジア通貨危機から香港ドルを守るために金利を8%から23%に引き上げた結果、住宅市場が崩壊した。これらのバブルはすべてアメリカの外で起こったことだが、世界中に影響を及ぼし、各国で報道された。しかし、残念ながらアメリカの住宅所有者や投資家のほとんどが、このあまりにも明らかな警告のサインを見逃してしまった。

 公正を期して言えば、バブルはいずれ崩壊すると警告を発した少数の専門家もいた(亡くなる直前のテンプルトン卿もそのひとり)。ただ、これらの反対意見に耳を傾ける人はいなかった。バブル崩壊で個人投資家や投資信託、ヘッジファンド、投資銀行は壊滅したが、バブルがいずれしぼむことを知っていて、崩壊を予想していた人たちは投機的なポジションを保有し、巨万の富を築いた。なかでも最大の利益を上げたと言われているのが、ポールソン・アンド・カンパニーのジョン・ポールソンだ。彼は、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を修得したヘッジファンドマネジャーで、語り口は柔らかいが、サブプライムローンは行き詰ると確信していたため、2006年から投資家に向けて住宅バブルはいずれ崩壊すると警告を発していた。彼のファンドはバブル崩壊に大きく賭け、2007年9月には平均で340%も上昇した。

 みんなが資産を失った時期に、ポールソンと彼の顧客は何十億ドルもの資産を手に入れたのである。ポールソンが運用する9つのファンドは、2006年9月〜2007年9月の成功報酬だけでも25億ドルを稼いでいる。この時期の勝ち組には、ほかにもハービンガー・キャピタル・パートナーズのフィリップ・ファルコンや、ルネッサンス・テクノロジーズのジム・シモンズなどがいる。どちらも成功報酬だけで10億ドル以上を稼ぎ、シモンズが運用する60億ドル規模のメダリオンファンドは50%以上のリターンを上げた。ちなみに、これら3つのファンドはバブル崩壊に賭けて成功したが、マーケットには別の方法でサブプライム危機を利用して利益を上げたプレーヤーもいた。

 世界最大級のヘッジファンドであるシタデル・インベストメント・グループは、だれも買わない不良債権に投資して、8億ドル以上のリターンを上げた。同社は、アマランス・アドバイザーズが保有していたエネルギー関連のトレードを買い取ったり、イートレードなどの企業に出資したりしている。

 サブプライムローン危機のさなかに利益を上げた最後のグループは、超短期の機会を狙って頻繁にトレーディングを繰り返した集団である。彼らは、超短期に特化しているため、マーケットの大きな動きにさらされることがない。サブプライムローン危機は一般には敗者だけを生んだと思われているが、そうではない。特に、事前に危機を予想し、破格の安値で買ったり、うまく超短期の機会を利用した人たちは大きな利益を手にしたのである。

成長の芽が見えないユーロ圏
 危機が危機を呼び、ヨーロッパでは新たな問題が発生した。世界的な金融危機に対応するため、世界の中央銀行が景気対策として財政支出を進めた結果、財政赤字は2桁に達してしまった。アメリカやイギリスなど多くの国では、すでに対GDP(国内総生産)比で大きな債務を抱えていたため、ギリシャの財政赤字がGDPの13%と想定の2倍以上だったことが報じられると衝撃を受けた。赤字の隠ぺいが明らかになり、財政の悪化が表面化したのだ。

 ギリシャの高い借り入れコストと債務の支払能力に対する投資家の懸念が広がり、格付け会社は相次いで警告と格下げを行った。EU(欧州連合)各国は、最初は投資家の批判に耳を貸さなかったが、やがてほぼ1兆ドル相当の支援策を打ち出した。しかし、この大規模な救済計画もマーケットを安定化することはできなかった。欧州中央銀行は規則を曲げてギリシャ国債を購入し、流動性を確保しようとしたが、それも効果はなかった。ユーロは低水準にとどまり(2010年1月から6月の間に20%下落)、ポルトガルやアイルランド、スペイン、ギリシャなどの国の信用スプレッドは史上最大に広がった。本書が出版されるころに、欧州ソブリン危機とその影響がどれほど大きくなっているのか見通しは立っていない。

 たとえマーケットが安定したとしても、各国は積極的な財政赤字削減策を余儀なくされており、支出削減と増税はユーロ圏の成長をますます締めつけていった。ギリシャ問題の勝ち組と負け組を探すのには時期尚早だが、ここでも流れを予想した者が優位に立った。ファンドのいくつかは、スペインやイタリアやアイルランドが債務不履行に陥った場合の保険としてクレジット・デフォルト・スワップを購入した。考えてみれば、2009年末にギリシャ問題が発覚したときにユーロを空売りしていれば、2010年6月には20%もの利益を手にすることがでたのである。

 サブプライムローン危機や欧州ソブリン危機は、自分の周辺で起こっていることを見ているだけではだめだということを教えてくれている。これまで見てきたように、アメリカのような大国の場合、たとえそれが一国の問題でも他国の経済に打撃を与えてしまう。アメリカが世界最大の貿易相手国であることを考えれば、他国への影響は当然のことかもしれない。しかし、近年ではそれ以外の国の問題でも世界に連鎖反応を引き起こしている。遠く離れたオーストラリアでさえ、ヨーロッパの債務危機が自国経済に与えた影響を訴えているのだ。あの強大な中国でさえ、ヨーロッパやギリシャの問題には神経を尖らせており、このことは世界各国の相互関係がいかに密接であるかを表している。

通貨の上昇
 最近の二度の危機によって、外国為替市場(FX市場)に注目が集まった。通貨は、さまざまな意味でその国の信用度を表す優れた指標のひとつになっている。外国人投資家がある国に対して楽観的な見通しを持っていれば、彼らはその国の通貨を買って株や債券に投資する。しかし、彼らがもしその国の経済や政治や社会情勢などを懸念していれば、保有資産を売却し、通貨を売って資金を引き揚げてしまう。このような動きが広がると、FXレートが大きく動き、政府も対策を余儀なくされる。

 通貨が弱くなりすぎると、例えば、欧州ソブリン危機でユーロが下落したようにインフレ圧力が懸念される。しかし、通貨が強くなりすぎると、輸出企業は競争力が弱まり、悲鳴を上げる。為替の変動が大きくなりすぎると、多国籍企業の収益にも影響が及ぶ。例えば、さまざまな通貨の買掛金がある企業の場合、自国の通貨が強くなれば買掛金の価値は下がるが、弱くなれば買掛金の価値は上がってしまう。とは言っても、輸出企業は通常、弱い通貨を好み、強い通貨を嫌う。

 通貨が与える影響は、人によって違う。これについては、第2章で詳しく述べることにする。アメリカで始まったサブプライムローン危機と欧州ソブリン危機は、通貨問題を経済ニュースからトップニュースに押し上げたが、通貨の重要性は昔から変わらない。過去10年間に、FX市場は大きく成長した。国際決済銀行が3年に一度発表している世界FX市場の1日の取引高は、2004年には約1兆9000億ドルだったのが、2010年には4兆ドルにまで増加した。そして、銀行と「その他の金融機関」(例えば個人向けのFXブローカー)間の取引が、初めて銀行間取引を上回ったのである。これはFX取引増加の大きな部分を、FXトレーディングというチャンスに気づいた個人投資家が占めているからだと考えられる。

ニュースの見出しをチャンスに変える
 もし歴史が何でも教えてくれるならば(そうであることは分かっている)、これから10年間に世界各地で大小さまざまな危機があるだろう。ただ、危機が起こったら、攻撃的になるか防御的なるかは自分で選ぶことができる。ジュディおばさんがいつも私に言っていたことだが、レモンをレモネードに変えることができるかどうか、ということなのである。あとから考えればだれでも分かることだが、収益がゼロやマイナスのIT企業の価値がものすごく高い理由なんてあるはずはない。また、天文学的な価格のする住宅はいずれ売れなくなる。市場に売れ残りがあふれ、消費者が抱えきれないほどの債務を負っていれば、住宅が売れなくなるのは当然である。大事なことは、混乱に巻き込まれないことと、資産の価格がリスクと価値に対して適正かどうかを合理的に判断することなのである。

 もちろん、これは口で言うほど簡単ではない。それでも、最近の危機を利用して利益を上げた小口投資家が用いたさまざまな手法を見れば、不可能なことではない。

 そこで、まずはサブプライムローン危機について考えてみよう。周知のとおり、この危機によって、いくつかの金融機関が破綻した。これらの金融機関は国有化されたり、救済されたり、競合企業に売却されたり、破産に追い込まれたりした。他人の不幸で儲けるのは道徳に反するという意見もあるが、ソロスやポールソンやテンプルトン卿の資産もほとんどがそうして得たものだ。図表1.1は、大手金融機関が破綻したあとのドル/円レートの動きを示している。矢印1は、ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)が国有化された時期を示している。また、矢印2はリーマン・ブラザーズの破産、矢印3はワシントン・ミューチュアルの経営破綻、矢印4はアメリカ政府によるシティグループの救済を示している。この図から分かるように、FXレートは危機のたびに下がっている。救済や合併の場合でさえ、さらなる問題を恐れてドルは上がらなかった。そのため、サブプライムローン危機のときにドルを売って円を買った投資家は、大きな利益を手に入れた。

 次は欧州ソブリン危機を見ていこう。ギリシャ問題が発覚し、財政難が明らかになると、格付け会社はギリシャ国債の格下げを行った。格付け会社というのは、発行体が債務不履行になる可能性を示す会社で、格付けは成績表のようにアルファベットで表される。国の格付けが下がると、理由が何であれその国は債務不履行になる可能性が高まる。2009年10月、大手格付け会社のフィッチ・レーティングスがギリシャ国債の格付けをA−に引き下げ、それがのちにユーロがドルに対して20%も下落するきっかけになった。ドル/円の場合と同様に、ギリシャをはじめとするユーロ圏の財政不安国の格付けが下がると、ユーロ/ドルも下がった。格付けの引き下げは、その国が債務不履行に近づくことを意味するため、投資家の間に懸念が広がったからだ。2010年4月までに、ギリシャの国債の格付けはジャンクボンド級にまで下がった。この危機を生かす方法はいくつかあるが、例えばこのニュースをトレードチャンスととらえてパニックの始まりで売ればよい。格付けは一度下がると、そのあとまた下がることが多いからである。

 もし事件をチャンスととらえるのには抵抗があり、チャートを見てトレードしたいという場合でも、重要なブレイクで売れば、どちらの通貨でもこの動きを生かすことができる。例えば、ドル/円相場ならば105円、100円、95円などはどれも心理的に重要な水準になっている。ユーロ/ドルの場合は、1.45ドル、1.40ドル、1.35ドル、1.30ドルなどがそれに当たる。

 通貨は本来トレンドを形成するもので、特にパニックが起こればそうなるため、その動きに乗ったほうが利益は大きくなる。もし長期間にわたってトレードを保有し続けるのに耐えられなければ、マーケットのセンチメントの方向に短期のトレードを仕掛けてもよい。例えば、格付けが下がれば、それがさらなる問題を生むという想定で、損切りの逆指値を置いてユーロ/ドルを売ればよい。

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 本章のまとめ

●金融危機は増えている。
●しかし、みんなが負け組になるわけではない。テンプルトン卿をはじめとする伝説の投資家たちは、危機のときには掘り出し物を探す絶好の機会だということを教えてくれた。
●ソロスやポールソンといったプロのマネーマネジャーは、最近のマーケットの崩壊を賢く予想し、そこで大きく儲けた。
●危機が起こったときには、通貨トレードでニュースをチャンスに変えることができる。

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