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ウィザードブックシリーズ Vol.202

株式超短期売買法
ミクロトレンドを使ったスキャルピング法

2013年1月発売/A5判 254頁
ISBN978-4-7759-7169-7 C2033
定価 本体3,800円+税

著 者 トーマス・K・カー
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子

トレーダーズショップから送料無料でお届け

目次 | 著者紹介 | ミクロトレンドトレードとは?

「寄り付き」「大引け」「月末」でも好きなときに
パートタイムトレーダーでも、専業主婦でもできる!
ミクロトレンドを使ったスキャルピング売買法

ウォール街で「ドクター・ストック」と呼ばれる男が書いたこの実用的なトレード のマニュアルは、ボラティリティのパワーを利用して毎日、確実に少しずつの利益を 稼ぎだすための方法を示したものだ。ミクロトレンドトレードは通常のファンダメン タル分析やテクニカル分析の枠を超えて、毎日の寄り付きから大引けの間に発生する 「ミクロなトレンド」を見つけ、それを売買に利用するというものだ。カーの実績に 裏づけられた超短期で百パーセント、メカニカルなシステムは使い勝手がよく、1日 中コンピューターの前に座っている必要はない。昼休みのちょっとした時間を利用し てトレードしてもよいし、寄り付きのときだけ、あるいは午後のある時期にトレード してもよいし、さらには1カ月に1回だけトレードしてもよい。それだけで巨額の利 益を稼ぐことができるようになる。本書に登場するほとんどの戦略はクロージングベ ルがなるまでには手仕舞いされるため、1日の終わりにはあなたの口座に利益が転が り込み、純資産は上昇する。

本書の簡潔で適切な解説は、トレード技術の向上の学習時間を短縮させてくれるだ けではない。時の試練を経たカーの戦略の洞察力あふれた実例とケーススタディを学 習することで、素早く判断を下し、決断力をもって行動することができるようにな る。本書に書いてあることを百パーセント理解すれば、自信をもって大きなポジショ ンを取り、巨額の利益を毎日手にすることができるようになるだろう。そして数日後 には、リスクを徹底的に管理したうえで、巨額の富を築く第一歩を踏み出すことがで きるだろう。メカニカルで利益の出る短期トレードシステムを構築するためのツール と知識を与えてくれる書籍のなかでこれほど完璧な本はない。本書にしたがってシス テムを構築すれば、今日の気まぐれな市場でも一貫して利益を出すことができるだろ う! カーのこれらの簡潔で段階を追った教えに従うことで、初心者から平均的な投 資家・トレーダーならば年間40%を超すリターンを実現することができるだろう。プ ロの投資家ならそれ以上の利益も夢ではない。ベテラントレーダーであれ、退職後に 備えて貯蓄している虎の子を管理したい人であれ、この本を読めばサイドラインで傍 観してはいられなくなるに違いない。本書を熟読して、今すぐにゲームに参加すべきだ。



■著者紹介

原書

Micro-Trend Trading for Daily Income
トーマス・K・カー博士(Thomas K. Carr)
銘柄選択とトレーダー教育を提供するビーフレンド・ザ・トレンド・トレーディング(http://www.befriendthetrend.com/)のCEO。数年間テクニカル分析を学んだのち、1996年から積極的に市場にかかわってきた。プリンストン大学で神学の修士号を修得し、オックスフォード大学で修士号と博士号を修得。著書に『トレンド・トレーディング・フォア・ア・リビング(Trend Trading for a Living)』など。


■目次

監修者まえがき
謝辞
プロローグ―本書が類書と異なるわけ

序論 ミクロトレンドトレードとは?
今回は様子が違う
苦労して学ぶ
マナの原理
ミクロトレンドトレードの定義

第1部 準備編

第1章 ミクロトレンドトレードのワークステーション
必要なハードウエア
チャート作成パッケージ
ISPとOLB

第2章 ミクロトレンドトレードに打ってつけの市場
VIXの上昇
王のなかの王、ベータ
新たな市場―ETF
ミクロトレンドトレードの候補を選ぶためのスクリーニング
先物のミクロトレンドトレード
次のステップへ8

第3章 ミクロトレンドトレードを成功に導くための5つのステップ
10%の聡明な人
トレード計画の5つのステップ
10-10-80計画の設定

第4章 注文の種類、損切り、手仕舞い目標
システム開発について一言
バックテストについて
実際のお金を使ったリアルタイムトレード
トレード用語とポジション管理
買い注文と売り注文
損切りの4つの方法
利食いの設定
さあ、仕事に取り掛かろう

第2部 ワンデイ・ミクロトレンドシステム

第5章 ブレッドアンドバター・システム
ブレッドアンドバター・システムの概要
ブレッドアンドバター・システムのパラメーター
ブレッドアンドバター・システムの実例
第6章 5分トレンド・トレードシステム
5分トレンド・トレードシステムの概要
5分トレンド・トレードシステムのパラメーター
5分トレンド・トレードシステムの実例

第7章 VIXリバーサルシステム
VIXリバーサルシステムの概要
VIXリバーサルシステムのパラメーター
VIXリバーサルシステムの実例

第8章 ランチタイムスキャルピング・システム
ランチタイムスキャルピング・システムの概要
ランチタイムスキャルピング・システムのパラメーター
ランチタイムスキャルピング・システムの実例

第9章 アフタヌーンリバーサル・システム
アフタヌーンリバーサル・システムの概要
アフタヌーンリバーサル・システムのパラメーター
アフタヌーンリバーサル・システムの実例

第3部 マルチデイ・ミクロトレンドシステム

第10章 オーバーナイトトレード・システム
オーバーナイトトレード・システムの概要
オーバーナイトトレード・システムのパラメーター
オーバーナイトトレード・システムの実例

第11章 スナップバック・ボリンジャーバンド・システム
スナップバック・ボリンジャーバンド・システムの概要
スナップバック・ボリンジャーバンド・システムのパラメーター
スナップバック・ボリンジャーバンド・システムの実例

第12章 ターン・オブ・ザ・マンス・システム
ターン・オブ・ザ・マンス・システムの概要
ターン・オブ・ザ・マンス・システムのパラメーター
ターン・オブ・ザ・マンス・システムの実例

第4部 補遺

第13章 トレードとはギャンブルなのか
依存症の危険なサイン
依存症にかからないための方策

第14章 最後のことば
トレーダーへの祝福のことば




■監修者まえがき

 本書はトーマス・K・カーの著した“Micro-Trend Trading for Daily Income”の邦訳である。この本をほかの類書と比較した際の技術的な特徴は、著者がVIX指数を用いてマーケットの相転移を認識し、それぞれの内部状態に応じたトレードシステムを提案していることにある。VIX指数は米国の株式市場のものだが、日本でもVI指数があるし、ほかのアセットクラスでも自分で同種の指数を計算するか、プット・コール・レシオを代用にしてセンチメントを測ることで、著者のトレードシステムを利用することができるだろう。

 ところで、本書のなかで興味深いのは、カーがファンダメンタルズ指標による銘柄スクリーニング法を勉強して中長期的な投資戦略を作り、実際に運用した経験を書いてあるくだりである。その試みはリーマンショックに遭遇してあえなく頓挫するのだが、本人はすぐにそれを反省してテクニカルな短期トレードに戻ってきた。広く知られているように、静的な投資・トレード戦略を使用する場合は、長期投資よりも短期トレード、そしてファンダメンタルズ分析よりも定量分析を用いなければならない。だから、失敗したあとのカーの判断・選択はまったくもってまっとうだということになる。ただ、読み手からすると、付け焼刃のファンダメンタルズ投資などうまくいくはずはないのだから、最初からやめておけばよいのにと思うのだが、すでに知識として(ダメだと)知っていることでも、実際に体験してみないと本人は納得できなかったということだろう。

 ここでカーの名誉のために書いておくと、こうした失敗は別に珍しいことでもないし、ましてや実験がうまくいかなかったからといって彼の能力に疑いを持つのは筋違いというものである。結果として彼は自分の得意な場所に戻ってきたのだし、カーがその経緯を包み隠さず書いたことで、後進の者が同じ轍を踏むことなく正しいレールに乗れるのなら、それは読者にとってありがたいことだと言えるのではないか。

 さてもうひとつ、本書で一番重要な箇所は、私の見たところ第13章である。カーはこの章で、本来は手段であるはずのトレードがいつのまにか目的化してしまい、投資家がトレード依存症となることの危険性を指摘している。投資家が投資やトレードを行う目的は多様であり、一部の参加者は文字どおりギャンブルとしてトレードを行う。そして、そこでの刺激や興奮をより強力に充足するような環境を提供しようとする主体も存在する。もちろん、一般にギャンブルを楽しむことそのものは単なる趣味の問題であるし、他人からとやかく言われることでもない。しかし、本人がそれと知らずして依存症に陥ることは不幸以外のなにものでもない。本書に書かれた警告を過小評価されないことを切に望むものである。

 翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の山下恵美子氏は丁寧な翻訳を実現してくださった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

長尾慎太郎


■プロローグ――本書が類書と異なるわけ

 あなたがなぜこの本を買ったのか理由は分かっている。おそらくは私がトレードの本を買うのと同じ理由だろう。株やオプションや先物などををどのように買い、どのように売れば利益が出るかを知りたいからだ。しかも、どうのような市場状態でも、常に利益を出せる方法を知りたいと思っている。要するに、あなたは儲かるトレードシステムの詳細を教えてくれる本が欲しいのだ。そしてこれらのシステムはあらゆる市場状態を渡り歩けるほど高度なものであってはほしいけれど、トレードの仕方が分からないほど複雑なものであってほしくはない。さらにしっかりとした実績のあるシステムであってほしいと思っている。

 一方、あなたがこれまでに買ったトレードの本にイラついている理由も分かっている。おそらくは私が半分読んで投げ出したトレードの本と同じ理由だろう。要するに、一般的なことに関しては長々と説明しているが、特殊なことに関しては舌足らずで説明不足なのだ。トレードの成功話で気を引く一方で、その成功を再現する方法については書かれていない。最も困惑するのは、あなたがすでに知っていることを長々と説明していることではないだろうか。インディケーターやトレンドライン、ローソク足、価格パターンなどをくどいほど説明している。これらについてはあなたはすでに知っているか、知らなくても、こういう題材について学習できる無料のオンラインサイトはたくさんある。

 あなたがトレードの本に求めるものは、おそらく私が求めるものと同じだろう。著者がトレードで利益を上げるその方法を正確に迷うことなく再現する方法を、多くの実例とバックテストによる結果とともに提示してくれるステップバイステップのマニュアルなのだ。ハレルヤ! あなたの探求の旅はようやく終わった。今あなたが手にしているのがまさにその本なのだ。私が今直面しているボラティリティの高い市場で日々利益を得るための方法を探しているときに、だれかがこのような本を書いてくれたらどんなによかっただろう。

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■序論 ミクロトレンドトレードとは?

 この序論では現在の市場状態を踏まえて超短期トレードの重要性について述べたいと思う。今後5年、10年、いやおそらくは20年にわたって、一貫して利益を上げる唯一のトレード形式が超短期トレード――私がミクロトレンドトレードと呼ぶもの――であると、私は確信している。理由はこの序論を参照してもらいたい。

 その昔、超短期トレーダーはニューヨークやシカゴのピットの中でしか見ることができなかった。彼らは価格が上下するたびに大声で注文を入れた。一方、日中の市場データにアクセスできず、法外な手数料を要求される一般トレーダーはバイ・アンド・ホールド戦略に甘んじざるを得なかった。しかし、電子通信ネットワークの発展とオンライン専用のディスカウントブローカーの出現によってすべてが変わった。これによって新たな市場参加者が誕生した。一般投資家による「アクティブトレーダー」である。1990年代後半の上げ相場でこの動きは一気に加速した。理髪店主は髪を切る合間を縫ってトレードし、タクシードライバーも客を乗せる合間を縫ってトレードしたほどだ。しかし、現実は甘くはなかった。10人のアクティブトレーダーのうち9人が2001年の株価大暴落で破産したのだ。幾ばくかの資金が残っている者は重い体を引きずりながら「長期戦」に舵を切った。

 ところが、数カ月前、状況は一変した。この序論を執筆している時点では、米国経済は長きにわたる大不況からようやく脱しようとしているところで、何十年にもわたる操業の歴史を誇る巨大企業のいくつかは倒産し、FRB(連邦準備制度理事会)は金利をわずか25ベーシスポイントにまで切り下げ、政府の赤字は1兆ドルを超え、専門家はドルの崩壊を予言し、人々は生き残りをかけて金の現物買いに走っている。こうした壊滅的状況と軌を一にして、S&Pとダウ工業株平均は長期にわたる支持線を割り込み、過去12年の安値を更新したが、何とか回復した。2008年だけでも、S&Pブロードマーケット指数からは18兆ドルもの時価総額が失われた。つまり、最近の市場は急激に回復したものの、われわれは極めてボラティリティの高い市場環境にいるわけであり、これは終わる気配はない。「バイ・アンド・ホールド」体制は今まさに死すべき運命にあるようだ。

 最近の市場は歴史的に見て、2つの独特の特徴を持つ。第一に、動きが速い。世界大恐慌のときに市場は88%下落したが、それは3年以上の歳月を要した。1970年代初期の50%の下落は2年半かかった。1990年代の上げ相場の崩壊は2000年中盤に始まり、2003年初期にようやく終わった。今の場合、2007年の高値(S&Pの場合、1576ポイント)から53%下落するのにわずか8カ月しかかからず、その大部分は2008年の秋に6週間売られ続けたことによる。

 下落のスピードもさることながら、驚くのはボラティリティの高さだ。市場ボラティリティは通常、VIX指数(ボラティリティインデックス)によって測定される。VIX指数とはS&P500を対象とするオプション価格の値動きを元に算出される加重指数だ。投資家がS&Pの価格が大きく動くと予想すれば、期先オプションの価格、ひいてはVIX指数は上昇する。VIXの値が30を上回るとき、S&P市場は普通以上に大きく動くことが予想される。例えば、9.11同時多発テロのあと、VIXは44近くに迫り、2002年の下げ相場の底ではVIXは45を上回った。しかしこれは驚くに当たらない。2008年10月、S&Pが急下落すると、VIXは何と歴史的な高値である90近くまで上昇したのだ! 2009年の下げ相場で市場が一時的に上昇すると、VIXはおよそ1カ月にわたって20を下回ったが、そのあとは前代未聞の27週間にわたって40を上回った。

 2008年から2009年の株価暴落を牽引したのは、信用枠の縮小、住宅バブルの崩壊、原油と商品価格の高騰だ。これを受けて、世界最大級の金融機関が破綻した。ベア・スターンズ、ファニーメイとフレディマック、AIG、ワシントンミューチュアル、リーマンブラザーズ、GM(ゼネラル・モーターズ)などがそうだ。そして、シティーグループ、ゼネラル・エレクトリックと残る2つの自動車メーカーはあわや破綻という憂き目を見た。あまりよく知られていないのは、いかにして事態を好転させたかである。これは世界大恐慌以降見られなかった動きだが、連邦政府は水面下で破綻した企業のいくつかを買い取った。米国の納税者は米国一の保険会社と、米国一の貯蓄貸付組合と、自動車産業の所有者になったわけである。ビジネス上の資金の流れをスムーズにし、消費者信用を失墜させないという明確な意図をもって行った連邦政府の気前の良い処置は最後には勝利を収めるかもしれない。しかし、多すぎる負債によって引き起こされた危機が、さらなる負債を重ねることで果たして解決できるのかという疑問が残る。

 この序論を書いている最中の2010年中盤、再び下げ相場がやってきた。とりわけ、メキシコ湾の原油流出事故、ギリシャ経済の破綻、銀行改革法案によってVIX指数は再び上昇した。これを期に、ボラティリティは4年連続して上昇した。今後数年間は標準を上回るボラティリティに立ち往生することは間違いない。だからこそ、ミクロトレンドトレードを学んで着実な収入を手にすることが重要なのである。

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今回は様子が違う

 下げ相場は株価市場が上昇する過程で必然的に現れる現象だ。下げ相場は人々が予期しないときに現れ、長く居座って被害を与え、予期しないときに消える。歴史を理解し、莫大なリターンを切望する投資家は下げ相場が大好きだ。これまで大きく下げた相場は「売買」の機会を与えてきたからだ。もしあなたがこの本を2020年に読んでいるとすると、おそらくは2008年から2009年の株価大暴落を百万長者への布石と見るだろう。1932年、1942年、1949年、1953年、1962年、1974年、1987年、あるいは1991年の下げ相場のあと安全なブルーチップ銘柄に5万ドル投じていれば、7年以内に100万ドル稼ぐことができたはずだ。

 しかし、今回は様相が違うとすれば? 市場が5年、10年、あるいは20年以内に高値を更新しないとすれば? われわれの指導者が教えてくれたインデックスのバイ・アンド・ホールド戦略がもはや機能しないとすれば? FRB前議長のアラン・グリーンスパンが最近議会で言ったように、「自由市場の知的体系は2008年夏に崩壊した」(アラン・グリーンスパンは2008年10月23日、ワシントンDCで開かれた議会の委員会のヒアリングでこう述べた)とすれば?

 市場ボラティリティは、将来の市場価格に対するすべてのリスクは測定可能で、現在価格は当然ながらそのリスクを反映するように調整される、とする「効率的市場仮説」への改善案としてみなされてきた。市場ボラティリティは測定できないリスクのその部分を明らかにするものである。最近ある解説者はこれを「真の不確実性の残余部分」(ロバート・スキデルスキー「The Remedist」、『ニューヨーク・タイムズ』2008年12月14日付け、21ページ)と言った。名づけることのできない何かがまだ価格に織り込まれていないことをボラティリティは警告する。これは、ヘッジ戦略を使え、資金を安全な場所にシフトせよ、セクターを巡回せよというマネーマネジャーへのシグナルなのである。その一方で、高給取りのアナリストたちは要因究明のために多大な時間を割く。そして、彼らの究明した要因がCNBCで流される。

 しかし、現在の市場の混乱が修正不可能だとすれば? 2008年の株価大暴落が今や十分に立証されたイベントによって引き起こされたことは確かだ。カオスの裏には合理性が存在する。しかし、名づけることのできない何かが存在するのも確かだ。殺戮に固執するのは、日ごと長くなる不確実性と計り知れないリスクへの恐れの表れである。ファンダメンタルズをベースとする投資の伝統的なアルゴリズムが無力と化すのは、この「不確実性の残余部分」が存在するからである。

 2008年は多くの投資の格言が崩壊する年となるだろう。「分散化はリスクを軽減する」(資産クラスに安全なものはない)、「米国がダメなときは海外に目を向けよ」(国際市場はほぼ百パーセント米国市場と相関がある)、「価格は成長に従う傾向がある」(最もこっぴどくやられたのは成長株セクター)などはもやは通用しないのだ。

 ここで提唱したいのは、投資の情勢は変わった、ということである。おそらくは今後長きにわたって変わる。今回は様相が違う。古い法則はもはや通用しないのだ。
 次のことを考えてみてもらいたい。

 バフェットやナベリア、ロジャーズ、バーナンキ、そしてガイトナーといったベテランでもこの市場をとらえるのに手をこまねいているというのに、どうしてわれわれのような一般市民がとらえることができようか。古いルールにとらわれていてはダメだと私は思う。しかし、古い習慣はなかなか消えない。物事がうまくいかないとき、過去にうまくいったことに戻るのは人間の本質だ。その好例が、2009年にベストセラーになったベンジャミン・グレアムの古典『賢明なる投資家』(パンローリング)という投資の本だ。最初に出版されたのは60年も前で、配当を重視した長期バリュー投資のバイブルとなっている。素晴らしい本であり、深遠なる英知に満ちあふれている。しかし、これから5年、10年先にはこれはもはや通用しないだろう。応用ポートフォリオ理論は40年以上にわたって401kを最大化しようとする投資家にはまだ通用するが、今のような市場、経済、政治環境では何の役にも立たないだろう。

   2009年6月2日の論説に政治評論家で投資家でもあるベン・スタインは次のように書いている。

「今回は様子が違う」――これは資産管理の世界では最も危険な言葉だ。なぜなら「今回」はほとんどいつも同じだが、問題は、今回、つまりこの特殊な金融危機では、様子が本当に違うように思えるということだ。少なくとも私にとっては違う(ベン・スタイン「Why This Time Feels Different」、Yahoo! Finance、2009年6月2日)。
 私はベン・スタインと同意見だ。今回は様子が「違う」のだ。世界大恐慌を思わせる失業率にGDP(国内総生産)の縮小。でも、われわれは大恐慌から立ち直った。今、1970年代に見たようなスタグフレーションが差し迫っている。でも、われわれはスタグフレーションからも立ち直った。政府は政策と企業の支払い能力を維持するためにお札を大量に刷っている。でも、これは以前にもあったことであり、われわれは立ち直った。しかし、1兆円の赤字財政支出(最近議会を通過したヘルスケア法案を含む)、カリフォルニアと同じくらいの大きさの州が、ギリシャと同じくらいの大きさの国が破綻し、法人税と消費税は上昇、高齢者は退職基金も社会保障もなく人生を終えなければならず、中国のような外国が米国の不動産、企業、バスケットボールチームさえも買おうとしている(「Chinese Investors To Take Minority Stake in Cleveland Cavaliers」、『ウォール・ストリート・ジャーナル』2009年5月26日号)というような事態に同時に遭遇するというようなことが、これまでの歴史であっただろうか。  

苦労して学ぶ

 こうした新たな市場状態に立ち向かうのに必要なのは新しいアプローチである。私が必要に迫られてこの新しいアプローチを開発したいきさつを聞いてほしい。哲学と宗教を教えていた私がトレードの仕方を教えるようになったいきさつについては、前著『トレンド・トレーディング・フォア・ア・リビング(Trend Trading for a Living)』の序論で述べた。この序論は私自身とほかの人たちがトレードで成功することを見越して、明るいムードのなかで幕を閉じた。

 同書を出版したあと、多くのパートナーシップが提示された。なかでも最も魅力的だったのは、名前は明かさないが、よく知られたウォール街のリサーチ会社からのものだった。この会社は何十年にもわたりすべての株式公開企業を独自の評価基準でランク付けしてきた。この会社のランク付けの実績は実に素晴らしい。私へのオファーは簡単なものだった。私のウエブサイト(http://www.Befriendthetrend.com)と私が出版するもののすべてでこの会社のことを述べる代わりに、この会社のパワフルなスクリーニングツールを使わせてくれるというものだった。私は、まず準備に若干の時間を必要とする旨を述べて、この契約に条件付きで同意した。

   この会社のパワフルなサーチンエンジンをフル活用するために、私は3カ月かけてファンダメンタル分析についてがむしゃらに勉強した。ビジネスのバックグラウンドがないテクニカルアナリストとしては、ファンダメンタルなスクリーンからトレードシステムを構築することはかなり難しいことは分かっていた。それで私は綿密なリサーチをすることにした。専門家を雇い、世界の偉大な投資家について書かれたあらゆるものを読んだ――バフェットにナベリア、ピーター・リンチ、マーティン・ツバイク、ジョン・テンプルトン卿、フォスター・フリース、ウィリアム・オニール。読みながらメモを取り、肝要な要素がどこで堅牢なマーケットリターンと関連するのかを記録した。その結果が次に述べる15のファンダメンタルなパラメータだ。これは定量化でき、サーチエンジンに機械的にプログラミングすることができる。

●価格レシオ
 ●PEGレシオ<1.0
 ●PSR(株価売上高倍率)<3.0
 ●PER<S&P500のPER×1.5

●ROE(株主資本利益率)とROIC(投下資本利益率)
 ●ROEの5年平均>15%
 ●ROE>業界平均
 ●ROIC>15%

●EPS(1株利益)の成長率
 ●四半期ごとのEPSの成長率>20%
 ●四半期ごとのEPSの成長率>年ごとのEPSの成長率
 ●四半期ごとのEPSの成長率>S&P500のEPSの成長率×1.25

●収益の成長率
 ●収益の5年の成長率>0%
 ●四半期ごとの収益の成長率>20%
 ●四半期ごとの収益の成長率>年ごとの収益の成長率

●利益指標
 ●会計年度の上昇予測>5%
 ●最近の四半期のサプライズ>5%
 ●前の四半期以降の業績上昇予測

 これらのパラメータに加え、スクリーンが10社以上を返してきたら任意のハードルを設定した。これらのハードルには、負債比率が低いこと、売上高利益率が高いこと、フリーキャッシュフローがプラスであること、レラティブストレングスが平均以上であることが含まれる。この会社の巨大なデータベースを使い、リバランスと損失管理のアルゴリズムをバックテストで最適化することで、私はこれらの数字をメカニカルなシステムに組み込むことができ、おかげで莫大な利益を手にすることができた。ある5年間の検証では、このスクリーンは127%の平均年間非複利リターンをたたき出した。「聖杯」を見つけたような気分だった。

   この新しいシステムで実際のお金を使ってトレードを開始する前に、私はスクリーンをパスした企業に対して相当に厳しいルールを設けた。敬虔なるクリスチャンとして、主たるビジネスが聖書のモラルを外れているような企業の株は買いたくなかった。顧客を尊重し、労働者を守り、透明性を重んじるといった商道徳のない企業の株は買わなかった。人命を守らない企業に慈善寄付をするような企業もリストからは削除した。こうしてトレードへのまったく新しいアプローチを立ち上げる準備が整った。

   2008年3月、ニュースレターの購読者がフォローできるように、「トレンドトレード」と「チープストック」というニュースレターで2つのポートフォリオを立ち上げ、私自身も自分のお金をこれらのポートフォリオに投資した。私のポジション管理法は単純なものだった。毎取引日の終わりにスクリーンを実行して、フル投資になるまで新たにパスした企業を加えるというものだった。フル投資に達すると、スクリーンを1カ月に1回実行して、リバランスを行った。スクリーンから外れた株は売り、成長の可能性が最も高い候補と入れ替えた。こうしてトレード・投資のビッグリーグへのチケットと思えるものを私は運用した。

   あとで分かったことだが、2008年3月は基本的成長の評価基準に基づいて買いオンリーのシステムでトレードを開始するのに打ってつけの時期だった。S&P500はベア・スターンズの破綻と住宅市場の急落というニュースを受けて、過去5カ月間で20%下落し、今、200週移動平均線からの反発する時期に来ていた。そして実際に反発した。3月から4月にかけてS&P500は15%上昇し、5月に5カ月の高値を更新した。強気のアナリストたちはニュース番組に出まくって、経済は回復した、住宅危機は底を打った、信用危機は誇張されすぎ、米国の消費者は依然として「消費」傾向にあるといったことを主張した。だが、こうした主張がすぐに藻屑と消えることになろうとは、われわれの大部分は気づかなかった。

   市場が回復してからの10週間はすこぶるうまくいった。4月、5月とわれわれは素晴らしいリターンを叩き出し、6月も好調なスタートを切った。この成功で本の売り上げが伸びると私のサービスに注目が集まり、新たな顧客も多く獲得した。ビーフレンド・ザ・トレンド・トレードはすべてが順調だった。しかし、それは嵐の前の静けさにすぎなかった。

   今にして思えば、2008年5月の高値がもっと良いことが起こる兆しだと思っていたことはとんでもない間違いだった。前にも述べたように、急上昇にだまされたのは私だけではなかった。しかし、次に起こったことに関しては言い逃れはできない。私が使っていたテクノファンダメンタルシステムは損切りを置いていなかったのだ。月1回のリバランスは大きな損失に対する損切りの役割を果たしていた。なぜなら振る舞いの悪い株はスクリーンからすぐに外されてしまうからだ。だから、月1回リバランスしているかぎり、システムは壊滅的な損失を防いでくれるものだと思っていた。事実、バックテストはすべて損切りなしで行い、その素晴らしい結果に私は自分のアプローチの正しさを信じて疑わなかった。

   この愚かな過ちは私のトレードキャリアにあわや終止符を打つところだった。2008年5月に若干の修正があったが、これが私独自の「トレンドトレード」買いシグナルの多くを生みだした。当時私が使っていたすべてのインディケーターは「押し目買い」ムード一色だった。新しいハイブリッドスクリーンが良さそうに見える候補を上げてくるなか、私は5月の終わりに多くの負けトレードを手仕舞って、新たに仕掛けた。ボラティリティが高く、ほとんど買いのポートフォリオだったにもかかわらず、6月には素晴らしいリターンを上げた。これに気をよくして、ポジションサイズを増やした。もちろんそれは上げ相場から下げ相場へと転じるときだったことは言うまでもない。6月の終わりから7月の初めにかけてS&P500は数年来の安値を更新し、私は崖の先端にぶら下がっている状態だった。2008年夏、市場の下落によって私の新しいシステムはブレークイーブンに押し戻された。でも、私にはまだ自信があった。結局、イーブンで、市場は新たな安値を更新した。私の自信が上昇したのは7月の終わりから8月にかけてだった。市場が少しだけ急上昇したのだ。まだ希望は捨てなかった。

   2008年9月1日、ポートフォリオをすべて手仕舞う羽目になった。持っていたすべてのポジションがスクリーンをパスしなかったからだ。再びフル投資になるまでに2週間以上かかった。これ以上最悪のタイミングはなかった。2008年9月7日、政府がファニーメイとフレディーマックに対する緊急支援策を発表したのだ。そして2008年9月15日、リーマンブラザーズが破産申請し、バンクオブアメリカが株式交換でメリルリンチを買収した。2008年9月16日、政府はAIGに850億ドル融資すると発表した。これは第3四半期の市場にとって、そして私のトレード口座にとっても大打撃だった。

   しかし、それは始まりにすぎなかった。2008年10月3日、総額7000億ドルの不良資産救済プログラム(TARP)が議会を緊急通過した。その週だけでS&P500は25%下落し、私の保有残高も下落した。その月の終わりにはボラティリティは恐ろしいほどに上昇し、ゆくゆくは2008年11月の集中売りの第二波を招くことになる。混乱が収まったとき、S&P500は2007年10月には1576ポイントの史上最高値を更新したところだったが、わずか1年後には741ポイントという数十年来の安値まで下げ、666という不吉な水準で底を付けた。実に60%の下落である。分散化していなかった私はさらなる打撃を被った。深い穴にころがり落ちたような気分になり、もう這い上がれないのではないかと思った。

   この下落で私がパートナーシップを組みたいと思っていたウォール街のリサーチ会社も打撃を被った。リサーチ会社は数多くの幹部役員のレイオフを余儀なくされた。そのなかにはわれわれのパートナーシップのお膳立てしてくれた人も含まれていた。結局、私の電話に答えてくれる人も、メールに答えてくれる人もいなくなってしまった。まだ契約は成立していなかったため、その会社のリサーチツールの使用を中止するのは自由だった。かくして、ファンダメンタルズをベースとするトレードをマスターするという望みは断念した。

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マナの原理

 朝の勤行として聖書の1章か2章を読むことは私の長年にわたる日課だ。このペースでいけば、3年ごとに聖書を読破することができる。私の新しいシステムが破綻した2008年10月初期、私は出エジプト記を読んでいた。これはエジプトで奴隷としてしいたげられていたユダヤ人をモーセが率いて脱出させるという物語である。

 S&P500は自由落下モードにあり、その週だけで18%も下落した。2008年10月10日の金曜日、市場は前日にギャップアップで寄り付いたあと7%もの下落をし、その日はギャップダウンとなり、3つの指数先物も大きく下落した。第16章の出エジプト記を読み始めたのはその日の朝だった。ユダヤ人たちはモーセの指揮の下、当てもなく灼熱の砂漠を歩き回ることに疲れてきていた。そのとき、彼らはエジプトで奴隷としてしいたげられていた日々を思い出した。

奴隷として働くことは確かに辛かった。でも、少なくとも食べ物だけはたくさんあった。神はまるでこの「不毛の地」で飢え死にするために奴隷から解放してくれたように彼らには思えた(出エジプト記 第16章3)

 私はシナイ砂漠に行ったことがある。いろいろな意味で見ごたえがあった。地震で隆起した岩が地形に官能的な輪郭をかもし出していた。乾燥して澄んだ空気のため、夜空には信じられないくらいろいろなものが生き生きと浮かび上がっていた。しかし、それもわれわれの惑星の一部にすぎず、月面の光景によく似ている。「不毛」とはその場所がいかに荒涼としているかを表すものではない。しかし、神の選んだ道に導こうするモーセの誠実な努力にもかかわらず、ユダヤ人たちが「不満」を抱くのはよく理解できる。

 聖書なかでよく起きることだが、神は物事がうまくいかなくなると親切に手を差し伸べてくる。神は彼の民に「天からパン」を与えたことを彼の民が不満に思っていることを見落とした(出エジプト記 第16章11〜12)。聖書ではこのパンのことを「マナ」と言う。マナの語源は不明だが、「一体それは何なのだ?」(F・ベクテル「マナ」、『The Catholic Encyclopedia』New York: Robert Appleton Company, 1910)といった意味を持つヘブライ語が由来ではないだろうか。神は飢えた人々の前に幅が1.5キロほどもあろうかと思われる粘り気のある甘い霜のカーペットを引く。そして人々はまず最初にレシピを尋ねるのだ。

 しかし、そこには制約があった。ユダヤ人たちは3つの単純なルールを観察して、神の意志に対する服従を学ぼうとしていた。その3つのルールとは、マナは朝にだけ集められる、マナは朝まで残しておいてはならない、マナは安息日には集められない、だ。

 この節を読んだとき、胸がドキドキした。何だか訳は分からないが、この話を通じて神はトレードについて私に何かを語ろうとしていたのだと私は思った。誤解しないでもらいたいのだが、私は神が謎めいた聖書の暗号のようなもので秘密のトレードシステムを教えてくれようとしていたなどとはこれっぽっちも思ったことはない。神の言葉は神を信じる者にとっては強力な力であり、これによって神を信じる者は神の心により一層近づくことができる。しかし、おのれの欲のために神の言葉の力を利用しようとするのは大バカ者のやることである。

 しかし、私は神はこの節を通じて私の心に重要な原理を刻印しようとしていたのではないかと感じた。私のトレードに革命を起こすような原理を。毎朝食べる肉であるマナのように、新たな日は新たな市場機会をもたらす。朝まで残しておくと腐るマナのよういに、市場機会も夜間のボラティリティによって翌日には消えてしまう。神はまたユダヤ人たちに、自分と家族が必要とするだけのものを取りなさい、と命じた。そして、「多く集めた者は余らず、少なく集めた者も不足しなかった」(出エジプト記 第16章16〜18を参照)と付け加えた。つまり、「貪欲になるな」ということである。

 その朝、出エジプト記の第16章にしたがって、トレードするときに神が私に考慮しなさいと思っていると思われる4つの原理を書いた。

  1. 今の市場状態を考えると、時間枠を短くするのがベスト
  2. 短期間のうちに得られる小さな利益に満足せよ
  3. 市場が利益を提供してくれるときに利食いせよ――特に朝の時間帯は利食いの絶好のチャンス
  4. オーバーナイトしたい気持ちに抗え
 こうして生まれたのがミクロトレンドトレードである。このあと詳しく解説するが、おそらくこのトレード形態はこれから何年にもわたって利益を生みだす数少ないトレード形態のひとつになるだろう。  

ミクロトレンドトレードの定義

 私は新たな目的意識を持って、聖書からインスピレーションを得たこれらのトレード原理をすぐに利益の出る短期トレードシステムにすることを目指して開発に乗り出した。これらのシステムが準拠すべき4つの重要な基準は以下のとおりである。
  1. バックテストとリアルタイムトレードのいずれにおいても堅牢でなければならない
  2. あらゆる市場状態で頻繁にセットアップを提供するものでなければならず、簡単にトレードできるものでなければならない
  3. 5日以上保有してはならない――だたし、もっと良いのは1日トレード
  4. 他人に教えることができるように、百パーセント、メカニカルなものでなければならない
 ミクロトレンドの「ミクロ」とは、ほとんどの場合、見るのは日中トレンドや日中のパターンであることを意味する。常にこうとは限らないが、われわれが見るトレードデータはわずか3日分、あるいはそれ以下である(3日以内の短期マルチデイトレードはマナの原理に合っている。なぜなら、ユダヤ人たちは安息日にはマナを集めないように命じられたからだ。つまり、金曜日の朝に集められたマナは奇跡的に日曜日まで持つだろうということである。これが聖書でいうところの3日である)。ミクロトレンドトレードでは、経済的、地政学的、イベントドリブンなトレードの日々のノイズを超えて、比較的正常な時間枠で利益を得ることを目指す。この2年にわたって見られたように極端にボラティリティが高いとき、スイングトレードやポジショントレードに打ってつけの持続可能なトレンドはなかなか見つけられない。そんなとき、表面を掘り下げる、つまり寄り付きと引けの間の空間に注目することで、機会を見つけることができる。ミクロトレンドは、混沌とした市場のなかにある、小さな、通常は隠された、合理性のポケットなのである。

 ミクロトレンドトレードでは、1つのトレードから得られる利益は長期トレードに比べると非常に少ないことを認識する必要がある。ミクロトレンドトレードではトレード資金に対して1%のリターンであれば理想的な利益と言える。例えば、50ドルの株なら、1株当たり0.50ドルである。しかし、ほとんどの場合、これより少ないのが普通だ。その代わり損失は非常に少なく、勝率は高く、大きなポジションサイズが可能で、仕掛けるトレードの数は多い。利益の少なさは、健全なミクロトレンド戦略で要求されるこれらのことで埋め合わせできる。損失を含め1トレード当たりの平均利益は通常0.15〜0.4%である。手仕舞ったトレードの通常の勝率は60〜70%である。バイ・アンド・ホールドのトレーダー、ポジショントレーダー、スイングトレーダーの場合、1トレードにつき口座資金の10%以下を投資するのが普通だが、ミクロトレンドトレーダーは信用取引を使って1トレードにつき口座資産の50%以上を投資する(信用取引とは金利を払ってブローカーからお金を借りること。このお金を使ってトレードする)。負けトレードは素早く手仕舞って、勝ちトレードはトレーリングストップを使って利を伸ばす。すべてとは言わないが、ほとんどトレードはオーバーナイトの前に手仕舞う。この信用枠のこの使い方は妥当だ。

 ミクロトレンドトレードの純利益率は非常に小さいかもしれないが、頻繁にトレードし、ポジションサイズが大きいため全体的なリターンは莫大なものになる。ミクロトレンド戦略が目指すものは年間口座リターンが40%をちょっと超える程度だ。ハイリスクなシステムで「ホット」な市場でトレードするベテラントレーダーはこれよりはるかに多くを稼ぐことができる。

 高いリターンに加え、現金自動支払機から得られるような収入を得ることができることもミクロトレンドトレードの特徴だ。ミクロトレンドトレードでは毎日市場に出たり入ったりを繰り返すため、各取引日の終わりに利益を「預金」できる。午後4時(東部時間。以降、すべて東部時間)までにはほとんどの利益を「現金化」できるわけである。したがって、収入が日々増えていく。ポジションを何週間も何カ月も保有する長期トレード戦略では、予測不可能な市場ダイナミックに翻弄され、株価の上下に伴ってドローダウンを喫するが、ミクロトレンドトレードではドローダウンは数分、数時間、長くても数日しか続かない。ほとんどの取引日では引けまでにあなたの口座は利益を確保できるため、あなたの純資産は次の水準にまで上昇する。

 ミクロトレンドトレードは日々のスケジュールに合わせて行うことができるのも大きな特徴だ。アクティブなミクロトレンドトレーダーのなかには朝だけトレードする者もいれば、ランチタイムの1〜2時間を使ってトレードする者もいる。また、引けの時間帯だけにトレードする者もいる。パートタイムのミクロトレンドトレードはフルタイムのトレーダーほど儲からないが、ほかの仕事を持っている人でも、専業主婦でもでき、夜間の作業も必要ではない。本書で教える方法を使えば、リサーチの大部分は株価がアクティブに動く市場が開いている時間帯にだけやればよい。

 それでは始めることにしよう。

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