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2015年8月発売/A5判 上製本 478頁
定価 本体5,800円+税
ISBN978-4-7759-7195-6 C2033
本書は、概念やトレードテクニックを驚くほど隠さず公開していることである。これはプライスアクションの仕組みに関する総合的な教材であり、そのなかには連続した6カ月間(2012年3月〜2012年8月の全取引日)のユーロ/ドルの5分足チャートも含まれている。396枚に及ぶ解説付きチャートを示した第9章だけでも、ほかのトレード本では見ることができない日中のマーケットを分析した膨大なデータベースになっているだろう。本書では、主にユーロ/ドルの5分足チャートを使ってさまざまなテクニックを紹介しているが、プライスアクショントレードは、どんなマーケットでも、どんな時間枠でも、どんなトレード環境でも応用可能だとボルマンは強調する。そのことを示すため、まとめの章では、いくつかの人気の銘柄や時間枠でボラティリティが低い状況が続いた場合(今日のマーケットではよくあること)の対処方法も紹介している。
本書は、トレードでの実践に必要な細部まで広く鋭く目配りしつつも非常に分かりやすく書かれており、すべてのページに質の高い情報があふれている。FXはもちろん、株価指数や株や商品など、真剣にトレードを学びたいトレーダーにとっては、いつでもすぐに見えるところに常備しておきたい最高の書だろう。
原書: Understanding Price Action : Practical Analysis of the 5-Minute Time Frame
第1部 実践的な分析
第3章 プライスアクションの原則――実践編
第6章 手動による手仕舞い
第7章 トレードを見送るときと、失敗ブレイクからのトレード
第8章 第1部のまとめ
第2部 評価と管理
第10章 トレードサイズ――複利で増やす
ところで、トレードではエントリー(仕掛け)とエグジット(手仕舞い)のどちらが重要だろうか、という議論がある。これはどちらかが必ず正解であるというわけはないのだが、本書におけるエグジットは、ほかの多くの個人投資家向けのFX指南書と同様に、利食いは20ピップスの指値、損切りは10ピップスの逆指値のブラケット注文を使用することが推奨されている。このエグジットについては、どの本を読んでもこれでリスク・リワード比が1対2となると書いてある。だが、利食いの値幅を損切りの値幅の2倍にしても、現実にはそれぞれの値幅に到達する確率は等しくはないので、真のリスク・リワードは必ずしも1対2ではない。
ここで、思考の単純化のために価格変化の対数正規性を仮定し、例えば利食いを2σ(標準偏差)、損切りを1σに設定すると、ランダムに取ったポジションが利食い目標値に到達する確率は、損切り目標値に到達する確率の約7分の1しかない。8回に1回しか勝てないのでは、利食いで値幅が2倍取れてもトータルで利益を出すことは難しい(この場合の、確率密度を考慮したリスク・リワード比は4対1と絶望的だ)。逆に、利食いを0.5σ、損切りを0.25σに設定すると、利食い目標値に到達する確率は、損切り目標値に到達する確率の約4分の3である。このように7回に3回勝てれば、利食いの値幅が2倍であればトータルで利益を出せる(リスク・リワード比は2対3と有利になる)。
このため、こうした目標値を設けるエグジットを用いる場合には、期待リターンのボラティリティに対し小さめの値幅を設定するか、もしくは期待リターンの正規性が破壊された有利な局面でポジションを建てる必要がある。それらはどちらも、勢いのある値動きが発生する直前にマーケットに入るべきであることを意味する。結論として、ここではエグジットよりもエントリーのほうがはるかに重要になる。著者が本書の大半をエントリーのタイミングの解説に充てているのはそのためで、プライスアクションのパターン認識によってその見極めが可能であるというのが彼の主張である。
実際、FXの値動きの変化はきれいな正規分布をしているわけではないし、株式や商品と言ったほかのアセットクラスと比較すると、保ち合いとトレンドとの2つの異なった位相が際立っている。したがって、著者の意見は荒唐無稽でもなんでもなく、むしろFXの特性を踏まえた試みであり、読み手はエントリーの重要性を認識したうえで相場に臨めばよいことになる。定性判断で行うトレード手法の常で、本書の解説はルール化が荒削りなところもあるが、幸い第9章には多岐にわたる実例が極めて豊富に収録されている。ほかの章とあわせて活用していただきたい。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の井田京子氏は分かりやすい翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
長尾慎太郎 ハイテク機器でトレードでき、ボタンをクリックすれば最新のガジェットが使える現代の時代に、プライスアクショントレーダーは、少し保守的に見えるかもしれない。使うのは価格チャートのみで、デジタル時代を示すようなものはほとんど見当たらない。彼らは消えつつある過去の名残りで、近いうちに絶滅するのだろうか。それともトレードの進化に頑固に抵抗し続けることに何かメリットがあるのだろうか。
そのひとつの答えとして、過去何年かにトレード業界で流行したさまざまな指標の利点を挙げてみてほしい。これがあまり思いつかない。もしかしたら、プライスアクショントレーダーに注目して、彼らの唯一のツールである価格のみのチャートをよく理解することのほうがずっと簡単なのかもしれない。
そこで、本書はプライスアクションという手法の長所を述べるだけでなく、その実践的な手引書となるように書かれている。本書でしっかりと学べば、喪失感に襲われたり困窮したりすることなく、近い将来必ず価格チャートのみを使い、自信を持ってトレードし、利益を上げることができるようになるだろう。
内容を説明するために使うチャートは、基本的に何でもよいのだが、ユーロ/ドルの5分足チャートは最適なひとつだと思う。これは長年、世界中で非常に多くのトレーダーが好んでトレードしているマーケットで、テクニカル分析について語るうえでこれ以上身近なチャートは考えられないからだ。
私は本書の執筆を決めたとき、いくつかの厳選したチャートでトレードの概念を並べるのではなく、日々、実際に利用できるということを示したいと思った。そのため、本書は2つのパートに分かれている。
第1部では、プライスアクションの原則を紹介したあと、仕掛けと手仕舞のテクニックをさまざまなチャートを使って学んでいく。そして、第2部ではこれらのことが継続的に有効かどうかを見ていく。この検証には、連続した6カ月分のユーロ/ドルのチャートを使っている。これは、膨大な量の教材であるだけでなく、これを見ればプライスアクションというテーマには、驚くべき継続性と効果が毎日のようにあるということが確信できると思う。
私の最初の著作である『FXスキャルピング』(パンローリング)が出版されたあと、最も多く寄せられた質問のひとつが、短期のスキャルピングチャート(70ティックチャート)で紹介したことが、それよりも長い日中の時間枠(例えば、2分足や5分足や1時間足)にも応用できるのかということだった。答えはひとつしかない。プライスアクションの原則も、需要と供給という普遍的な法則に基づいているため、あらゆる時間枠に応用することができる。特定の時間や特定のマーケットに限定されないのだ。銘柄が違っても、時間枠が変わっても、平均的な値幅や動きを調整するだけで、プライスアクショントレードの概念は、先物でも、指数でも、株でも商品でも、債券でもそれ以外の何でも、FXと同じように使えるのである。
また、プライスアクションの原則はマーケットや時間枠を選ばないばかりか、あらゆるトレード環境にも応用できる。このことを示すため、本書の後半では低ボラティリティが続く状況に合わせて通常の方法にひねりを加えて対処する方法も紹介している。そのセクションでは、例としてユーロ/ドル以外の通貨ペアの日中の短い時間枠や、FX以外の人気のマーケットのチャートを使っている。
ちなみに、まったくの初心者の場合は、常に分析のみに集中するということを念頭に置いて読んでほしい。本書では説明のペースを乱さないために、一般的なトレード本やインターネットに書いてある初歩的な説明は省いてある。ただ、テクニカル的に言えば、本書は新人トレーダーと、経験を積んだトレーダーと、それ以外のプライスアクショントレードのメリットと可能性を追求したい人すべてに向けて書いている。
次のホームページから本書の一部を無料でダウンロードできる(http://www.upabook.wordpress.com/)。
とはいえ、マーケットの仕組みを正確に理解していなければ、どんなトレーダーでもマーケットのよく知られた教訓と、それに伴う高いコストから逃れることはできない。しかし、何段階にもわたる学びの旅は簡単ではないし、その途中には痛みも困難もある。そして、多くの人が手ごわい最初の段階すら超えることができない可能性が高い。しかし、あまりコストをかけなくても生き残るためにトレーダーができることはたくさんある。要するに、正しい知識を学べばよいのだ。
ただ、トレードは黒板を使ってすべてを教えることができるものではなく、せいぜい準備の重要性を強調することくらいしかできない。しかし、多くの人たちが成功する前に散って行った戦場で生き残ることこそが目的ならば、そもそも十分な準備を整えないで参入することなど考えられないはずだ。
安全な脇道にどれくらい長くいるのかは、その人次第だ。おなじみの原則を、数カ月かけて何度も繰り返して覚える人もいれば、ずっと早く準備が整う人もいるだろう。しかし、すべての概念やテクニックが分かりかけてきたとしても、成功したければ、しっかりとした計画ができるまではマーケットにけっして飛び込まないでほしい。経験に学ぶことは大事だが、それを試すのに不当に高いコストをかけたり自滅的な体験をしたりする必要はない。
頭からダイビングする以外に、とにかくトレードを始めたくてあわてて他人の手法を導入する新人も多くいる。しかし、このような学びの近道をしても、その方法を仕事として継続して使うことはできない。特に、マーケット環境がその手法に合わない時期はどうにもならない。結局のところ、十分な時間と努力を重ねて、どのような時期にも適合できる自分に合う手法を作り上げ、予測不能な変化や他人の勝手な変更などに惑わされないトレーダーになるほうがはるかに効率的なのである。
これから紹介するのは十分機能的で独立した手法で、本書ではこれを「私たちの」手法と呼んでいるが、それは便宜的にそうしているだけで、これをすべてそのまま使ってほしいということではない。これらの概念やテクニックはあくまで構造的な基盤であり、必要に応じてカスタマイズしながら使っていってほしい。
自分に最も合うスタイルを見つけるには多少の時間と経験が必要かもしれない。しかし、個人の好みに関係なく、少なくともテクニックは、どれも繰り返す動きをとらえるという同じ目的のためにある。つまり、だれにとっても最初の課題はプライスアクションの原則のデータベースを頭に叩き込むことなのである。次の2章では、これらの必須事項を、理論的な観点と実践的な観点の両方から詳しく見ていく。そして、それ以降は5分足チャートを使ったトレードについて、さらに細かく見ていくことにする。
著者紹介
ボブ・ボルマン(Bob Volman)
1961年生まれの自己資金のみを投資している独立系トレーダー。その創意性と実用性で、積極的なスキャルパーに幅広く支持されている『FXスキャルピング』(パンローリング)の著者で、この本は2011年の出版以来、安定的な人気を誇っている。
本書はプライステクニカルトレードに関する第2弾で、トレード本に期待できるすべての洞察と実践的な知恵が詰まっている。目次
(本テキストは再校時のものです)
第1章 トレードするとき、勉強するとき
第2章 プライスアクションの原則――理論
ダブルの圧力
支持線と抵抗線
ダマシのブレイク、ティーズブレイク、適切なブレイク
ダマシの高値、ダマシの安値
プルバックの反転
天井への試し
切りの良い数字の効果
第4章 注文と目標値と損切り
第5章 トレードのセットアップ
パターンブレイク
パターンブレイクプルバック
パターンブレイクコンビ
プルバックの反転
ニュースで手仕舞う
抵抗線で手仕舞う
反転で手仕舞う
典型的な間違い
第9章 連続した日中チャート
2012年3月
2012年4月
2012年5月
2012年6月
2012年7月
2012年8月
第11章 ボラティリティが低いときのトレード
第12章 最後に
監修者まえがき
本書はボブ・ボルマンによる“Understanding Price Action : Practical Analysis of the 5-Minute Time Frame”の邦訳で、FX市場におけるプライスアクションのパターンを分かりやすく整理してまとめたものである。
2015年7月
■序章
■第1章 トレードするとき、勉強するとき
トレード指標の流行は自然に収まり、多くのトレーダーが「少ないほうが良い」という価値観に注目し始めている。そして、それには理由がある。不要なものをすべて取り払ったチャートは、とびきり穏やかだ。解読しなければならない謎もないし、矛盾するシグナルを避ける必要もないし、画面に情報を詰め込む必要もない。あるのは事実のみで、すべてが明らかになっている。チャートの足は何も隠していないし、情報が遅れることもない。これらのメリットが分かっていれば、プライスアクショントレーダーは単純に、「チャート上に高勝率のトレードが見つからなければ、仕掛けるべきトレードはない」という前提を順守することができる。
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