著 者 マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山口雅裕
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マーク・ダグラス(Mark Douglas)
シカゴのトレーダー育成機関であるトレーディング・ビヘイビアー・ダイナミクス社の社長であり、日米でロングセラーになっている『ゾーン』と『新装版 規律とトレーダー』(いずれもパンローリング)の著者。自らの苦いトレード経験と多くのトレーダーの話や経験から、トレードで成功できない原因とその克服策を提案している相場心理学のパイオニア。ダグラスの著書は投資業界の古典として、またウォートン・ビジネス・スクールはじめアメリカの多くの大学院で使われている。2015年に多くのトレード関係者に惜しまれながら、亡くなった(享年67歳)。
ポーラ・T・ウエッブ(Paula T. Webb)
トレード心理の第一人者であり、投資トレーダー、ベストセラー作家、トレーディングコーチ。マーク・ダグラスのパートナーであり、ダグラスとともにトレード心理という分野を開拓した。彼女はこの分野での長年のリーダーとして世界的に有名であり、彼女が開発したパワー・トレーディング・マインドセットは多くのトレーダーから絶賛されている。著書に『新装版 規律とトレーダー』(パンローリング)がある。https://paulatwebb.com/
原題:The Key to Power Profits : Mastering the Psychology of Market Behavior by Mark Douglas & Paula T. Webb PhD
第1部
第1章 トレーダーとしての自分を知る――ポーラ・T・ウエッブ博士
第2章 着実な成果を上げるためにはプロのように考える必要がある
第3章 トレードに影響する複雑な心理
第4章 相場分析は着実な成果を上げるための唯一のカギではない
第5章 値動きは結局のところ、注文の流れ次第
第2部
第6章 トレードの仕組み
第7章 売買注文の片寄りを生む代表的な市場参加者
第8章 売買注文の流れからテクニカル分析を理解する
第9章 テクニカル分析の根本的な限界
第10章 分析に対する幻想を理解して、受け入れる
第11章 確実に損失を避けて勝つために分析に頼っても行き詰まる理由
第3部
第12章 トレードの世界では確かなモノの見方・考え方が絶対に必要
第13章 着実に成果を上げるための精神的な基礎
第14章 スロットマシンプレーヤーの視点
第15章 分析に基づいて値動きに賭けるのはギャンブルなのか
第16章 復習
第4部のまえがき
第4部
第17章 確率に基づく考え方を身につける
第18章 メカニカルトレード
第19章 裁量トレード
第20章 直観的トレード
ところで、東洋の文化のなかで生きる私たち日本人には、もともと世の不完全さを受け入れる精神的な土壌がすでにある。したがって、アメリカ人とは違ってトレードにおいても必ずしも「勝つことがすべて」なのではない。このため本書の読み方も、自己効力感や全能感が強い 国の読者とは当然違ってくることになる。実際、私がこれまでに会った日本人の機関投資家の運用者のすべてと個人投資家の過半の人は、運用結果は市場が決めることであり、自分の意志でそれをコントロールすることはできないと正しく理解していた。こうした現実的な考え方は、多少のトレード経験と観察力があれば、日本人ならだれでも自然に習得済みのことである。
一方で、逆に多くの日本人は著者の説く確率・統計に基づいた戦略に対する理解が希薄である。これは曖昧さをよしとする文化の裏返しでもあるが、「何が客観的に正しいのか?」を限界まで突き詰めて考えるという習慣がないため、ともするといとも簡単に疑似科学にだまされることになる。この欠点は投資においては致命的な結果をもたらす。本書では、テクニカル分析を取り上げてその誤謬を解説しているが、その構造的な欠陥については名著『テクニカル分析の迷信――行動ファイナンスと統計学を活用した科学的アプローチ』(パンローリング)を本書と合わせてお読みいただければより理解が深まると思う。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山口雅裕氏には丁寧な翻訳を、そして阿部達郎氏は緻密な編集・校正を行っていただいた。トレードにおけるメンタルマネジメントの先駆者であるダグラスの遺稿を日本で発行できたことは関係者一同の誇りであり、本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2017年7月
『新装版 規律とトレーダー』(パンローリング)が出版された当時、私たちは自分を見つめ直し、世界中の何千人ものトレーダーを指導し、ワークショップを開催してきて、トレードは八〇%の精神的アプローチと二〇%の行動で成り立っていることに気づいた。しかし、その後何十年もトレーダーを指導し、ワークショップを主催し、自らもトレードをするうちに、状況は変わってきた。今日、一貫してトレードで成功するには、九〇%の精神的アプローチと九%の手法とわずか一%の行動力が必要になっている。これはいつでも、どこでも、どんな電子機器を用いても簡単にトレードができるようになったからである。まだトレードを学習している段階の人には信じられないかもしれないが、エクイティカーブ(純資産曲線)が上昇して、トレードがうまくなり始めれば、信じられるようになるだろう。相場を動かすもの、もっと正確にはマウスをクリックし、デバイスのボタンを押すように仕向ける精神的なものを手法として取り入れるようになるだろう。
まず自分自身に対する理解を深め、次に本書の残りの部分を読みながら真の相場データのとらえ方を身につけるために、彼女が書いた章は重要なカギとなる。一方が欠けると、もう一方は機能しない。つまり、自分が何を考え、なぜトレードで行動するのかを知らなければ、毎年負け続けることになる。このことは、私たちの本を読んだか、個人指導を受けたか、ワークショップに参加したことがある人なら、すでに分かっているだろう。私たちの教材にまだ触れたことがないのならば、本書を手に取る絶好の機会である。今日の世界市場の不安定な情勢を乗り切ろうと試みているのならば、特に本書をお勧めする。
この序文を読んでいる人のなかには、トレードを始めたばかりで、私のことを聞いたことがあっても、彼女の名前は聞いたことがない人もいるかもしれない。しかし、すべてのトレーダーに知っておいてほしいのだが、私たちはかなりの年月、執筆やトレーダーの指導を共同で行ってきた。このことは親友であり、仲間でもあるラリー・ペサベントやアレクサンダー・エルダーを含めて、この分野の多くの専門家が証言してくれる。彼女の教材はいつも私たちの合同ワークショップで使われてきた。今日のトレーダーに知っておいてほしいのは、『新装版 規律とトレーダー』(パンローリング)の共著者であり、『ゾーン』(パンローリング)の編集者でもある彼女の協力なしには、どちらの本も出来上がらなかったし、共同ワークショップも実現できなかった、ということである。ましてや、ライブでのプレゼンテーションも、一九八〇年代半ばに始まった彼女の専門家としての協力がなければ実現しなかった。ポーラは、私が「内助の功に徹した女性」と呼ぶ存在だ。トレーダーに対する優れたコーチであり、成功したトレーダーであり、好評を博した彼女自身の著書もある。彼女はトレードで成功し続けるためにどういう手助けが必要かを身をもって知っており、それをほかのトレーダーに非常に効果的に教えている。私たちのワークショップに参加したことのある人なら、これまで何度も言ってきたように、このことをよく知っている。私は小学生のときから文章を書くのが苦手で、『新装版 規律とトレーダー』を書き始めるころでもそれは変わりなかった。あの当時、ポーラと偶然に出会っていなければ、これらの本のどれも生まれなかっただろう。
これから数年間、本書や私たちのほかの本で学び始めれば、私たちの共同作業をもっとよく理解できるだろう。私が彼女の貢献を認めているのは、彼女がそれに値するからである。投資業界が男性優位の世界だった一九八〇年代や一九九〇年代から時代は変わり、今日ではポーラのような女性もこの業界で名を成すことができるし、またそうであるべきだ。
あなたが本当に利益をしっかり上げられるトレーダーになりたければ、第1章で彼女が述べた指針に従い、各部の最後にある彼女の質問に答えてみよう。トレーダーとして成功するための幅広い考え方の作り方について、もっと詳しい説明が必要であれば、彼女のワークショップに参加するか、個人指導を受けてもらいたい。お察しのように、私は二人の共同作業だけでなく、人生のパートナーとしても、彼女のトレードに関する洞察力と専門知識に感謝している。
あなたのトレードがうまくいきますように!
マーク・ダグラス